ザ・グレート・展開予測ショー

BEAUTIFUL DREAMER


投稿者名:たつる
投稿日時:(05/ 4/ 3)

―夢だ。

―夢を見ている。

―自分で自分に見せた夢だ。







BEAUTIFUL DREAMER







「ヨコシマっ♪」

―ん? なんだルシオラ?

「えへへ」

―なんだよ、俺の顔になんかついてるのか?

「ううん。ちょっと呼んでみたかっただけー」

―なんだそりゃ……

「な、なによその顔はぁ」

―どの顔だ?

「なんか……呆れた、って感じの」

―い、いや別に呆れてるわけじゃ……

「もうっ。ふたりっきりなんだからもっと楽しそうな顔できないの?」

―二人っきり……そうだよな!! 二人だけなんだから何をしてもオッケ

「ここで飛びかかってきたらボコボコにするわよ?」

―……あい。

「はぁっ……焦ることないじゃない」

―うるへー。おあずけくった男の気持ちが解るかいっ。

「ふふふ。ほーら、すねないの」

―すねてへんわい。

「そんなふくれっつらで言われても説得力ないわよ?」

―わるかったなー。

「……何もするのがイヤってわけじゃないのよ? ……ん」

―!!

「もっと……ムード作りうまくなってね?」

―……おう。

「よし♪」

―……でも!! やっぱりほとばしる若さには勝てまへーんっ!!

「あっ……ちょっ、こらっ、ヨコシマ―」




夢だ。
文殊を使って、見ている夢。
せめて夢の中だけでも。
幸せで……いや、これはただ自分勝手な妄想か。
俺が、心が壊れないために、俺が、俺を慰めるための。
解ってるんだよな。
でも……今はまだこうしてたいんだ。




「横島」

―え? なんだタマモかよ。

「なんだとはご挨拶ね」

―ごめんごめん……ってどうしてお前がここに?

「言ったじゃない、お昼ごはんおごってくれるって」

―え? 言ったっけか? あれ? ていうか……あれ?

「なにをごちゃごちゃ言ってるのよ。さ、早く行きましょ」

―え? あ、あぁ……



タマモ?
あれ? これは俺の夢で、何もかも思い通りのはずの夢では?
つーか……あいつはどこに行ったんだ?
おーいルシオラー?



「横島!」

―いだだっ!! な、何すんだタマモ!!

「……今何考えてたの?」

―い、いや別に……って、何で夢の中なのに痛いんだ?

「どうでもいいじゃないそんなこと。それよりさっさと行くわよ」

―お、おい何を急いでんだよっ!?

「早くしないと―!! ちっ、遅かったみたいね……」

「ヨコシマっ!!」

―あ、ルシオラ。

「『あ、ルシオラ』じゃないわよっ!! 一体なんなのかしら? その手は……」

―手?



ルシオラに言われて自分の手を見る。
俺の右手は……タマモの左手と、仲良さげに繋がれている、わけで。



―いやいやいやいや!! この手は別に

「私と横島が手をつないでいたら問題なのかしら? おばさん」

「おばっ……なんですってぇぇぇ!?」

―あの

「私はまだ生まれたてのホヤホヤだもん。事実でしょ?」

「くくぅっ……わ、私だってまだ生まれたばかりよ!!」

―あの、お二人とも。これは僕の都合のいい夢のはずなんですが

「それでも、私よりはおばさんよね?」

「おばさんじゃないっ!!」

「あら? ムキになって否定するのは認めてるってことかしら?」

「こ、この小娘……よくも飄々と……」

「小娘? あぁやっぱり認めるのね、自分がおばさんだって」

―おーい。

「ヨコシマは私の恋人なのよっ!!」

―て、照れるぜ。はっきり言われると嬉しいもんだなぁ。

「ふーん」

「『ふーん』ですって?」

「すぐに横島は私の虜になるわ」

―た、タマモさん? あの

「なんですって?」

「横島はぴちぴちが好きだもの」

―いやしかしお前に手を出すってのは

「こ、この……もう許さないわっ!!」

―お、おいおいルシオラ

「うるさいっ! とりあえず起きなさいヨコシマっ!!」



そう叫んだルシオラの霊波砲が、俺の顔寸前まで迫ってきて―



「うわぁぁぁぁぁぁっ!?」

 がばっ、と。
 俺は布団を蹴っ飛ばして跳ね起きた。

「えーっと……?」

 なんだなんだ?
 なんなんだ今の夢は!?
 いつもなら、もうそれはそれは煩悩全快な夢を見れるはずなんだけど……

「おはようヨコシマ」
「おはよ、横島」

 呼ばれた声に顔を向ければ……ルシオラとタマモ。
 布団の両端にちょこんと座っていたりする。
 えーと……

「……なんでいるんだお前ら?」

 そう、ここは俺の部屋。
 彼女達が朝っぱらからいる意味が解らないぞ。
 しかし夢に出てきた二人がいるってのは出来すぎじゃないか?
 何かの陰謀か?

「「なんで、って横島を起こしに」」

 そう答える二人。
 いや、そう当たり前のように答えられても困るんだが。

「そしたらなんだかニヤけて寝てるじゃない? しかも枕もとにこれが転がってて」

 そう言って文殊をつまんで見せるタマモ。
 それには『夢』と刻んである。
 うん、俺が使ったものだよな。

「それでちょっと夢に参加させてもらったのよ」

 うん? いや確かにお前は幻術とかそーいった類が得意なのは知ってるよ。
 だけど寝てる俺に? 夢に? 参加? 出来るもんなのかそれは?

「あぁ、もちろんこれも使ったわよ」

 くりくりと、文殊を指で転がすタマモ。
 あぁ……まぁ除霊の時に渡しておいたりしたもんなぁ。
 よし、タマモのことはまぁ納得。

「で、ルシオラ……」

 ……あ、やべ。
 ふくれっつらだよ。
 もう、「ぷぅっ」と音がしそうなほどふくらんでる。

「ぷぅっ」

 あ、言った。

「えーと……その……」
「ヨコシマを起こしに来たらそのコが隣で寝てるじゃない? 問答無用でひっぱたいてやろうかと思ったけど―」

 そ、そうしてくれなくてありがとう。

「ヨコシマの寝顔かわいかったし……文殊に気が付いて……私も夢の中に入ってみたのよ」

 ぽつぽつと説明してくれるルシオラ。
 うーん……ルシオラにも文殊は渡してあったしな。
 俺が傍にいられなくても、これを渡しておけばとりあえずは安心できるし。
 関係ないけど、いじけた顔も可愛いぞーっ!!

「コホン」
「むっ」

 俺の心の内を察したわけではないだろうが……ないと願いたいが。
 咳払いをするタマモ。
 それに反応するルシオラ。
 いやまぁそれはとりあえず置いといて……
 とりあえず、事態の全貌は掴めたぞ。
 俺、文殊で夢を見る→タマモ襲来→文殊を使って夢に出てくる→ルシオラ強襲→文殊使用で夢に入ってくる→起きる、と。

「ま、まぁまぁ二人ともケンカはするなって」
「そもそも横島が変な夢見てるのが悪いのよ」
「夢で、なんて……あんまり感心しないわねー」
「う……だ、だって仕方ないじゃねーかっ」

 我慢しすぎて心が壊れないようにっ。
 我慢し続ける自分を慰めるためにっ。
 大げさじゃないぞ。
 若い身ならば死活問題じゃっ。
 つーか、それもこれもなんもかんも『おあずけ』がっ……『おあずけがいかんのじゃっ!!』

「仕方ないじゃないわよ、勝手に夢想されたんじゃたまったもんじゃないわ」
「別にタマモで何かしてるわけじゃ」
「何ですってぇっ!?」
「な、なんでそこで怒るんだよっ!?」
「あた、あたしは別に怒ってなんかっ……」
「怒ってるじゃねーかよー」
「怒ってないったら怒ってないのっ!!」

 と、俺とタマモが不毛な口争いをしていると……黙って俯いているルシオラが目に入った。
 う、また怒らせちまったか?
 恐る恐る彼女の顔を覗き見ると……赤い。
 や、やっぱ怒ってんのか?

「る、ルシオラ……?」

 声をかけても反応なし。
 こりゃ相当怒ってんなー。
 横でまだタマモが「無視するなーっ」とか言ってるんだが、ルシオラをほっぽっとくわけにもいかない。

「あの……ルシオラさん?」

 もみ手なんぞしながらなおも話しかける。
 卑屈やなー、とは自分でも思うが仕方ないのだ。

「……」

 ルシオラは黙って俺の方を指差した。
 正確には、俺の下半身?
 …………………かはっ。
 ぃゃいやまぁまぁ、そこはそれ。
 朝ですし。
 さっきまであんな夢見てましたし。
 俺、一応健康だし。
 あ、タマモも気づいたのか目ぇまんまるにしてる。
 そっか、さっきルシオラの顔が赤かったのはこれのせいか。
 いやぁまいったまいった。
 あははは。


「……」
「……」
「……」


 ま、間が痛い。
 うーん……よし! ここは男らしく!!
 素直な気持ちを伝えるんだっ!?

「ふっ……」






















「―退かぬっ! 恥じぬっ!! さらけ出すっ!!」
「少しは恥じろぉぉぉぉっ!!」
「さらけ出すなぁぁぁぁっ!!」


そういうわけで。
横島家では朝も早くから―
おいしいとはとても言えないであろう、こげくさい臭いがたちこめるのであった。

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