ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い43


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 3/29)

横島や砂川達がロンドンで死闘を繰り広げている頃・・・・・・・
雪之丞達は、不穏な情勢の上海に居た。



「優秀な風水師の行方不明事件?」
ネビロスの説明に疑問の声を上げたのは雪之丞。
「ああ・・・・そこのメドーサを初めとする俺の部下が調べた所によると上海の優秀な風水師が数人、行方不明になっているそうだ」
加えて、ここでも例の麻薬『アポカリプス』が出回っているらしいとネビロスは付け加えた。

『風水師の行方不明』というキーワードで思い出されるのは、他ならぬメドーサ自身が起こした「原始風水盤事件」。それと似たような事件に彼女自身が行き当たるとは何とも皮肉な話だった。
「ハッキリ言って、耳が痛いけどね」
メドーサも流石にバツが悪いらしく、独特の口調も弱々しい。

今、現在、彼らが居るのは上海でも評判の中華料理店。
彼らは、円卓のテーブル上の昼食の中華料理を囲み、上海に忍び寄る不穏な影について話していた。

ちなみに、現在の所、会話に参加していないカオスは料理を夢中で頬張っていた。
「おい、カオス、てめえも話に参加しろ!!」
雪之丞がそんなカオスを一喝するが、先程まで一緒になって飢えた獅子の如く、料理を貪り食らっていたこの男が言っても、説得力は皆無だった。


「ほーじゃ、のう、敵のアジトはわかっとるんかいの?」一応、雪之丞の声に反応したらしいカオスがネビロスに問うた。
「ああ・・・どうもここらしいんだが・・・・」
そう言って、ネビロスは上海周辺の地図の一点を指差した。
そこは上海の地脈の中継地点でもある場所だった。
「ここはどんな場所なんだ?」
「この辺の人間が霊山と崇めている山にある洞窟だよ」
雪之丞の問いに、メドーサが答えた。

そして、彼女が続けた話によれば、付近の人間の何人かはこの山に入ったきり、戻って来ないという。彼ら全員は件の麻薬―『アポカリプス』の服用者、いや中毒者だったらしい。

「場所がわかったのはいいんだが・・・・不自然な点がある」
「不自然な点?」

「情報管理が甘すぎるんだよ・・・・・・まるで、いくらでも調べてくださいってな感じでさ」
ネビロスの言葉を引き継ぐように、メドーサが答えた。
「罠だということのかの?」
珍しくシリアスモードのカオスが推論を口にする。

「だとすると、待ち伏せの可能性は大きいな・・・」
雪之丞も思案顔で唸る。



「かといって、放っておくわけにもいかん。連中の狙いが何かだが、原始風水盤を用いての地脈の操作か・・・・・だが、これは違うだろうな」
「そうじゃのう・・・・一度、失敗しとる上に、情報が駄々漏れじゃ。わしらのような邪魔者が来ることも想定済みだとしても・・・・・・」
未だにシリアスモードのカオスが、ネビロスの言葉を補足する。

どうやら、横島から渡された『ボケ防止法』の魔術書に載っていた健康法―「特殊な体操と魔界の薬草を煎じて飲む」を実践したらしい。今の彼の頭は全盛期までとは行かずとも、一流の科学者の頭脳でさえも到底及ばないレベルになっていた。


ちなみにこんな彼を見た雪之丞は(こいつ、本当にカオスか? 宇宙人でも乗り移ったんじゃねーか)などと最初、思っていた。それでも同居人か、お前は。


ちなみに、小鳩は日本の屋敷でお留守番である。魔神の戴冠式での赤と黒の軍服姿の横島の写真をお土産として、ネビロスから渡され、嬉しがっていた。
さらに、この写真はフォックス、ウルフ、シルクなどのメンバーにも手渡され、大好評だったらしい。




閑話休題




「何にしても、その山の洞窟に行ってみるしかないんじゃねーか。時間が経てば経つ程、連中に有利だぜ」
「確かにの・・・・・罠を張る時間が増えるし、後手に回ってしまうわい」
シリアスなカオスの言葉は、重みと説得力がある。

「よし・・・・・準備が整い次第、例の山に出発しよう」
ネビロスの言葉に一同は頷いた。


「よーし、わしの新しい武器を試す時が来たようじゃのう!!   アダッ!?」
勢いよく立ち上がったはいいが、その際足を何処かにぶつけたらしい。いくらボケがなおっても、やはり彼はカオスだった。



(((大丈夫か・・・・・こいつ・・・・・)))
微笑ましさと同時に、一抹の不安を感じる面々だった。


その頃、マリアはというと・・・・
(横島・さん・かっこいい)
先の写真―横島の軍服姿を見て、喜んでいた。もっとも顔は無表情のままだったが。






霊山の洞窟最奥部
「そうか・・・・・連中がここを嗅ぎつけたか」
町に張り込ませていた使い魔からの報告に、見た目初老の老人―『不和侯爵』アンドラスはくぐもった笑いを漏らした。
もとより、奴らがここを嗅ぎ当てるのは予想済みだ。むしろ、突き止めてくれないと困る。
これは、「本当の計画」を隠すための隠れ蓑の役目も持っているのだから。

「さて・・・・・薬で操っている人間共は案外使い勝手がいいな・・・・」
彼の視線の先には、夢遊病者の如く、辺りを徘徊する人間達の姿が見えた。こいつらにもそれなりに役に立って貰わなければ。

加えて・・・・・・・・
「それに、嘗ての同門の奴と再会できるんだ。嬉しいだろう?」
アンドラスの視線の先には、二足歩行で浅黒い肌で角を何本か生やした魔獣―元人間だった男が立っていた。

「ギュイイイイ・・・・・」
件の魔獣は言葉を解して、否、意識があるのかすら疑わしいが。何処か、その声は物悲しい。



「アンドラス様、原始風水盤の周りに火角結界を配置し終えました」
アンドラスの配下である忠実な魔装術使いー砕破が報告にやって来た。
彼は元々、軍需産業にオカルト技術を取り入れようとしていた南武が、優秀な霊能者同士の精子と卵子を掛け合わせて、作った人口実験体だった。南武がGメンによって、事実上、潰れた後も、砕破はアンドラスに仕えていた。

元々、南武は捨て駒だった。捕まった連中も、記憶を操作した上に、偽のダミー情報を植えつけておいたから、真相までは辿り着けない。Gメンも捜査に行き詰まっているはずだ。

敵が打つ手が無く、歯痒がっているのは実に愉快だった。


「ご苦労だったな・・・・・お前が気にしていたあの男、伊達雪之丞も来るらしいぞ・・・」
砕破は答えず、静かに頷いた。

魔獣が雪之丞という言葉に反応したように思えたのは気のせいか。




彼らの狙いは原始風水盤によっての地脈の操作などではない。

むしろ、その逆―原始風水盤の破壊による地脈の崩壊だった。

もし、そんなことになれば、アジアの経済は大打撃を受けるだろう。
唯一の幸いは、ここが地脈の中継点に過ぎず、原始風水盤も小型のために仮に破壊しても、アジア全域が魔界に沈むことは避けられることだろうか。

それを抜きにしても、もたらされる災禍は計り知れないものになることは間違いない。

「さあ・・・・早く来い・・・・」
アンドラスの暗く、奈落から響くような声が洞窟内に木霊する。



アジアの運命を掛けたカウントダウンは既に始まっていた。





後書き 例の麻薬―『アポカリプス』服用し、中毒に陥った人間を操ったり、魔獣にしたり出来ます。(作中の描写より)その他にも・・・・・・
さて、Gメン側も手詰まり状態。神族側も我慢の限界でしょうか・・・・・そこで、神魔の話し合いの席には神族側の代表者として『あの二人』がやって来ます。
アンドラス、というか敵陣営の企みは、アジア経済の破壊とは・・・・・日本経済は大丈夫か(オイ)
ここまで非道な敵陣営が未だかつて居たでしょうか。そして、魔獣の正体は・・・・・

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