ザ・グレート・展開予測ショー

剣と槍が奏でる協奏曲(前編)


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 3/28)

まだ神と魔が人界を戦場としていた頃・・・・・・・・

「ようやくこれで、露払いは終わったか・・・・」
最後の座天使を大鎌で切り裂いた『死霊公爵』ネビロスは、一息をついた。
「ああ・・・だが、本当の戦いはこれからだ・・・・・」
赤い髪と三本角の男ー『西の王』ペイモンの言葉を裏付けるかのように、周囲の空間が歪み、その歪から圧倒的な重圧が放たれている。

既に配下の軍団は、万魔殿へ下がらせていた。これからやって来る神族の連中を相手にするには足手まといな上に、先程の激戦で、戦える状態の者達は殆ど居なかった。



そして、神界とのゲートが開かれ、天使階級第二位―智天使二十数名が人界に顕現した。
「流石の俺もあれだけの数の智天使を一度に相手するのはきついかもな・・・・」
「ふ・・・・・弱音か? お前らしくもない・・・・・」
ペイモンと同じ赤と黒の軍服を纏った長い銀髪の男―『恐怖公』アシュタロスはやれやれとため息を漏らした。
「ほざけ! お前こそ、でかい図体している癖に途中でへばるなよ!!」ペイモンが軽口を叩いて応じる。
ちなみに、アシュタロスの身長が190cm、ペイモンが180cm。ここに居ないもう一人の将軍階級の一人が177cm。直接的な戦闘能力はこれと逆で、アシュタロスが一番低い。見事なまでに身長と実力が反比例していた。さらに言えば腕相撲でもアシュタロスが一番弱かったりする。どうでもいい事だが。



ちなみにネビロスは大急ぎで万魔殿へ死傷者の数や救援要請を初めとした重要事項の報告などに向かい、この戦場には留まっていない。

「・・・・・しかも、熾天使が二人も来ているとはな」
「それだけ、焦っているのだろう神界側も・・・・」アシュタロスが何処か投げやりにぼやく。
見れば、彼らの他の数名の七十二柱も智天使と睨み合っている。


とはいっても、その熾天使の二人はここには居ない。ほぼ間違いないことだが、三人目の将軍階級『剣の公爵』アスモデウスのところに行ったのだろう。彼は別働隊を率いて、天使軍を蹴散らしていたはずだ。

もう一人の熾天使はその相方の『吟詠公爵』ゴモリーのところか・・・・・・・


恐らく、総合力が最も高いアスモデウスをミカエルが、アスモデウスの相棒であるゴモリーをもう一人が叩く。そして、その間を智天使二十数名がペイモン達を足止めする。

実に理にかなった作戦だ。立案したのは恐らくミカエルだろう。


「あいつらに貧乏くじ引かせちまったか・・・・」
「仕方あるまい・・・・『神に似たる者』ミカエルと渡り合えそうなのは彼だけだからな」
アシュタロスやペイモンからしてみても、ミカエルは桁外れなのだ。他の熾天使達と比べても数段強い。

というよりもミカエル以上に強い神族などまず居ないだろう。


「まあ、俺達も気が抜けないんだがな・・・・」
既に彼らの周りを智天使達が取り囲み、二対四枚の翼をはためかせている。周囲には彼らの神力と魔力がぶつかり合い、台風の目と化している。

いくら最上位の魔神二人を初めとする七十二柱のメンバーといえど、これだけの数の智天使を相手にするのはきつい。しかもまだ智天使の増援が来る気配がする。残る二人の熾天使までは来ないだろうと思いたい。


もっとも、ミカエルと一騎打ちするよりかは数段マシだが・・・・・・


「くくく・・・・・ミカエル様が相手では、貴様らの親友『剣の公爵』アスモデウスも終わりだ・・・そして、貴様らもな・・・・」
陰険な笑みで智天使の指揮官『神の智』ゾフィエルが言った。確か、この男はゴモリーを助けに来たアスモデウスに返り討ちにあった天使だったか。

その証拠とでもいうように彼の顔には、深い刀傷が縦に走っていた。


「ゴモリーとかいう女公爵のほうにはガブリエル様が向かわれた。この私の手で仕留められないのが残念だがな・・・・」
ゾフィエルはくぐもった笑いを漏らし、部下に攻撃の指示を下した。

「ち、ほざきやがれ・・・・・こいつらを片付けて、アスモとゴモリーの援護に向かうぞ!!」
「異議なしだな。智天使諸君、覚悟して貰おうか」
ペイモンの叫びにアシュタロスは答え、彼は左手に持っていた魔力増幅の杖を握り締めた。




そして七十二柱の魔神数名と智天使二十数名の死闘が始まった。






その一方、ペイモン達とは数百キロ離れた場所では、あらゆる意味において対照的にも関わらず何処か似通った二人が対峙していた。

黒い外套を纏い、右手には黒い炎を放つ魔剣を携えた黒髪の男。
白い衣に身を包み、右手には白い炎を放つ神剣を構えた金髪の男。




前者が魔神アスモデウス、後者が熾天使ミカエル。

共通するのは双方整った顔立ち、そして放たれる圧倒的な気配。


「貴方が熾天使長ミカエルか」
「その通りだ」
彼ら二人の声は、放たれる強烈な重圧に反して余りにも静かだった。

だが、彼らはこうしている間にもお互いの動きを探りあい、様子を伺っていた。

「ラファエルから聞いていた通りの男だ。底知れない空気を纏っている・・・・」
ラファエルとミカエルは同じ熾天使。自分のことを聞いていてもおかしくは無い。

「買い被りだ。私はラファエルにあっさり捕まったことは知っているだろう?」
「その後、あっさり牢から脱走したそうだな?」

確かにその通り。でなければ自分はここには居ない。
もうとっくの昔にアスモデウスの部下は避難しており、ミカエルも追撃する気は無いらしい。あくまで狙いはアスモデウスただ一人だ。

「話は終わりだ。そろそろ始めようか?」
ミカエルが剣を一振りして告げる。同時に彼の三対六枚の純白の翼がはためき、神々しい光を放ち始めた。さらに放たれる重圧も増していく。

何を始めるかは言うまでもない。
お互い剣を抜いているのに、ダンスを始めるわけでもないのだから。


一瞬の沈黙が訪れる。それは『嵐の前の静けさ』だろうか。この二人の場合、嵐などという生易しい次元では済みそうも無いが。


ミカエルが一瞬で間合いを詰め、神速の斬撃を放つ。
アスモデウスは魔剣でそれを受ける。

お互いの剣が激突する。同時に剣から放たれる炎同士がぶつかり合う。一方は闇より暗く、もう一方は光よりも明るい。



(強い・・・・・!! 今まで戦った誰よりも・・・・・)
剣を通して相手の桁外れの「強さ」がひしひしと伝わって来る。
確かにゾフィエルや応龍も強敵だったが、この男は別格だ。

強さだけではなく、剣に込められた「重み」が違う。
そして、何処か自分と似た空気・・・・・

(この男は生半可な正義感や使命感だけで戦っていない・・・・・)

じりじりと鍔迫り合いを続けながら彼は確信する。
では何のためだろうか? 誇り、神としての性か、どれも違うような気がする。

考えている内にも、鍔迫り合いは続いていた。だが、力は向こうが上らしく段々押され始める。
(く・・・・・不味いな)
考えを一時中断し、ミカエルの体を蹴って、後ろに飛ぶ。最強の熾天使が追う。


(技はこちらが、力と速さは向こうが上といったところか・・・・)
追撃する相手の苛烈な、それでいて、一分の隙も無い剣技を捌きながらアスモデウスは、目の前の相手が今まで戦ってきた神族と強さの次元そのものが違うことを痛感していた。




『剣の公爵』と『神に似たる者』の死闘はまだ始まったばかり・・・・・・・




彼らが、『盟友』として再会するのは遥か未来の話である。




後書き 遂に出ました。神界側の最強戦力、熾天使ミカエル。私の中では、この男以上に強い神族が思い浮かびません。キリストは戦闘型じゃ無さそうだし・・・・・・本編では彼やガブリエルは強力な味方です。ゾフィエルは敵陣営になりますけど。次回、後編ではゴモリー対ガブリエルのカードとミカエルの戦う理由が明らかに・・・・・・ネビロスが本編で写真見ながら、言ってた天使軍との大激戦がこれだったりします。一番の功労者は勿論、ミカエルやガブリエルと死闘を演じたアスモデウスとゴモリー。
ミカエルこそアスモデウスが戦った中で最強の神族です。彼やキリストが唐巣神父やピートが信じる神の理想像に一番近いと思います。
ミカエルとガブリエルが神界側の重要人物になります。応龍とハヌマンだけではちょっと足りないので・・・・・
ゴモリーとガブリエル。こいつら共通するところがかなり多いです。好きな男の隣で戦うところとか。タイトルの意味はミカエルとガブリエルの武器も指してます。


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa