ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い41


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 3/27)

ハルバートと魔剣が火花を散らし、ぶつかり合う。

「ち・・・・・・」
「く・・・・・・」
横島とアムドシアスはお互いに相手を見据えながら、睨み合う。
こういった均衡がどれ程続いただろうか。アムドシアスが「力」でハルバートを振るえば、横島は「技」で魔剣を操り、衝撃を受け流す。一見、拮抗しているように見える。
だが、実際はそうではない。病み上がりといってもいい『剣の公爵』、一方ほぼベストコンディションの『一角公』。長引けば、どちらが有利かは明らかだ。

徐々に『剣の公爵』こと横島は押され始めていた。

「くくく・・・・どうした? 段々と押されてきているぞ。ミカエルやサタンとも渡り合った実力が見る影も無いぞ」
「その割には仕留めきれない。技が荒いぞ、『ユニコーンもどき』、いや、一緒にしては失礼だったか。ユニコーンに」

「減らず口を・・・・・・・・・!!」
逆に相手から嘲笑を受け、仕留め切れない苛立ちも合わさり、声を荒げる。

揶揄された事で攻撃は敵の苛烈さを増すが、本人でも無意識下で、ほんの少しではあるが、荒く大振りになった。当たれば致命傷だが、かわしやすい。

現在、横島は威力の高い雷撃系、暗黒系魔術を使えない。以前、魔狼に雷の矢を放ったが、あの程度はまだ初歩の段階のものだ。
威力が加減出来ない上級技は美神達を巻き込む。一瞬で、彼女達は消し炭と化し、周辺は焼け野原となるだろう。

アムドシアスの霊波砲などは、モノリスを媒介とする防御結界を展開して何とかしのげる。

仕留められないことで、益々敵の焦燥は募る。自ずと接近戦にならざるを得ない。


横島は、こうしてアムドシアスの焦燥を誘いながら、『ある瞬間』を待っていた。







一方、ゴモリーとサルガタナスは互いjに牽制しあいながら、相手の出方を伺っていた。

「くくく・・・・お前の血が吸いたいって俺の剣も言ってるぜ、なあ」
睨み合いに飽きたらしいサルガタナスの言葉と同時に、彼の持っていた黒い片刃の剣が小刻みに震えた。
いや、それだけではなかった。

〖ギイイイイ・・・・・・早く、あの女の血を吸わせろォォォ・・・・・・・!!!〗
剣が言葉を発した。耳障りで不快な声で、血を吸わせろと叫んでいる。

(いかれている・・・・・・)

主が主なら、剣も異常だ。今まで、戦った中でここまでまともではない敵が居ただろうか?
なまじ顔が整っているだけに、顔に浮かぶ陰惨な笑みが不気味だ。

「貴様にピッタリの剣だな、いいコンビだ」
「くく、そうだろう? 剣の名前は『クリムゾン』っていうのさ。特に強くて美しい女の血が大好物なんだ」

正にゴモリーは剣の嗜好にピッタリだ。絶対に御免だが。

サルガタナスの言葉と同時に均衡が破れ、黒い片刃の剣と三つ又の槍がぶつかり合った。






「くうううう・・・・・・・・!! こいつらを何とかしないと・・・・・」
「だが、こんな状況では・・・・・・令子ちゃん、何か手は・・・・」
「拙者の霊波刀で斬っても、きりが無いでござる!!」
「狐火も殆ど効果が無いわ・・・・・・」
そんな中、美神達は一番の苦境に立たされていた。

アムドシアスの力で、生み出された命無き草の大蛇数匹。元が草なので火で燃やせばいいのかと思えば、魔神の力を受けた蛇はタマモの狐火程度ではびくともしない。少し焦げても、周りの草が集まって、欠損部分を補充してしまう。シロの霊波刀でも結果は同じだった。

とうとう美神達は追い詰められ、蛇達に取り囲まれてしまった。


「く・・・・・・ここまでか・・・・・!!」
「まだよ!!  西条さん、精霊石、何個持ってる?」
「全部で五個だが・・・・・・まさか!?」
「そのまさかよ、全員の精霊石全部をタマモに!!」
美神自身もタマモに手持ちの精霊石十個を渡しながら、叫ぶ。


「これでどうすればいいの・・・・・?」
精霊石十数個を渡されたタマモはやや困惑顔だ。

「私達全員の霊波と精霊石の加護で、あんたの狐火を何十倍にも増幅させる!! 殆ど自爆技だけどこれしかないわ!!」

未熟とはいえ九尾の妖狐のポテンシャル。精霊石の加護、この場全員の霊波集中。
確かに威力は十分かもしれない。だが、下手をすれば、いや、間違いなく、自分達も巻き込まれる。今まで、美神が使うのを躊躇っていたのはこのためだ。

「で、でも・・・・・・・」
「構わない!! やってくれ、タマモ君」
「拙者の命、お前に預けるでござる!!」

「わかったわ、死んでも文句言わないでよ!!」
全員の霊波と精霊石の加護を受け、タマモは迷いを振り切り、狐火を放った。


最早、それは狐火などという生易しい物ではなかったが。

巨大な九つの炎の柱が立ち昇った。
極限の状況下、精霊石の加護、何より仲間の危険という要因が重なりタマモは凄まじい力を解放した。

九つの炎の柱は、草で出来た蛇の群れに襲い掛かる。仮初の蛇達は一瞬で灰となり、跡形も残らず、消え失せる。
「流石、九尾の妖狐の転生・・・・・・とんでもないわ」流石の美神も息を呑まざるを得ない。

その様子は、九尾の狐が、焔の尾で敵を打ち払うようにも見えた。





「何だと!? 俺の蛇がやられただと・・・・・・」
アムドシアスが驚愕の声を上げる。
それなりに力を込めた蛇達が、人間とちっぽけな土着の妖魔如きに敗れるとは?

「相手を侮りすぎたな・・・・・窮鼠猫を噛むという言葉を知らないのか?」
「ほざけ・・・・・・そういう貴様は満身創痍だろうが、貴様から先に始末してやる!!」
事実、横島は膝をついて、肩で息をしている。こいつを倒した後、人間共を殺せばいいのだ。

止めを刺そうとアムドシアスはハルバートを振りかぶる。
「死ね!! アスモデウス」
無意識の内にとはいえ、焦りや怒りからか、大振りになっている。
それはほんの少しの僅かな隙ではあったが、横島は見逃さなかった。






ハルバートが横島を真っ二つにすると思われた瞬間、横島の左手から放たれた〖何か〗がアムドシアスの脇腹に鋭く突き刺さり、さらに彼は『爆』の文珠で、数メートル吹き飛ばされた。








後書き    タマモ大活躍、シロ(拙者の出番は? え、やられ役!? ウオオーン!!)の百倍役に立ちます。シロが一番出番無しになりそうです。シロニストの方々、御免なさい。
サルガタナスここまで危ない奴とは・・・・・・・後に、こいつのおかげで、ある女性キャラが(原作登場です)えらいことに・・・・・・・
さて、アムドシアスに突き刺さった〖何か〗とは? 一、『剣』の文珠 二、西条のジャスティス(オイ) 三、全く新しい武器 さあどれでしょう? アスモデウスの象徴に関係あるものかも・・・・・・横島はかっこよく書けているかな。
霧がいいので今回はここまで・・・・次回こそ、ロンドン編決着です。(洒落ですよ、霧の部分はセンスないですが)
ちなみに、壊れ西条は切り裂き霊刀に乗っ取られた時のような感じです。(目が据わって怖いです)












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