吟詠公爵と文珠使い0
投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 3/26)
「何だと?」
「『彼』に会いたくは無いかと言ったんだよ」
魔界の東方。『東の王』バエルの宮殿の一室、質素だが威厳に満ちた部屋。
その部屋に客人として招かれた『吟詠公爵』ゴモリーは、同じく七十二柱の筆頭であるバエルの突然の問いに疑問の声を上げた。
『東の王』は椅子に悠然と腰掛け、黒い衣を羽織った。
「『彼』がサタンやペイモンによって封印される際に『彼』の魂に特殊な術をかけてね、これで『彼』の転生先がわかる。最も私以外には不可能な術だが」
「それで・・・・あいつの転生先がわかると?」
問う女公爵の声は震えている。
「ああ・・・・彼が復活した暁には、私の陣営に加わって欲しい。君なら賛成してくれるだろうと思ってね、初恋の相手に会いたくは無いかな?」
「・・・・・お前が善意で復活させるわけは無いな、真意は何だ?」
「ああ、君もだが『彼』と共に私が魔界の長になるのに手を貸して欲しい」
バエルは事も無げに告げる。
「私にサタン様を裏切れと?」
「そういうことになるな、どうする? 忠誠か、恋かどちらを選ぶ」
ゴモリーの答えは最早決まっていた。
「・・・・・・あいつに会いたい」
「それで、『彼』の転生先なんだがアシュタロスに止めを刺した例の文珠使い・・・・・横島忠夫らしい。ある意味、親友と殺しあったともいえる。何とも皮肉な・・・・・」
バエルによれば横島に『彼』へ戻って貰うには「ルシオラの復活」を条件に提示するという。
「横島の心にはルシオラがいるんだろう? 私の想いは届くのか?」
横島の心を占める蛍。復活した以上、人間だった頃の記憶、想いも受け継ぐ。彼女が復活したならば自分の気持ちは空回りしてしまうのではないか。
「心配せずともいい・・・・逆に『彼』の心を捉えていたのは君だ。ルシオラ君とは互角、寧ろ彼女と組んで横島君を独占すればいい」
それこそ、他の女達のことに気付きもしないくらいに・・・・・・・
バエルの言葉は、甘い果実となって彼女の心に染み込んでいった。
「ルシオラ君に会いたくは無いかな? もう一度彼女の笑顔を見たくは無いかな? もう一度、彼女をこの手に抱けるとしたら?」
「・・・・・俺は・・・・・」
「もう・・・・何処にも行かないでくれ・・・・」
バエルの言葉に横島は戸惑う。そして、後ろから感じる『彼女』の温もりと弱弱しい声が心を揺らす。
「君や彼女に理不尽な運命を押し付けた連中が憎くは無いかね? 今は取り繕った笑顔を浮かべる連中に虫唾が走るのではないのかね」
「・・・・・・・」
そうではないと、言い切りたいのに言葉を紡げない。
バエルの言葉が心の中にどす黒い物―狂気、憎悪、怒りーあらゆる負の感情を撒き散らしていく。
そして、遂に
横島の心は堕ちた。深き奈落の底に。
そして・・・・・・・
「横島君!! 私は・・・・・」
「五月蝿いですね。もう聞く耳持ちませんよ」
美神の神通鞭を魔剣で捌きながら、横島は酷薄に告げる。
魔剣から放たれた黒い炎が美神の身体を舐める。
「こんなことをしてもルシオラは喜びは・・・・・」
「知ったふうな口を・・・・・・!!」
悲痛な美神の声さえも横島の憎しみを滾らせるのみ。
「横島さん・・・・・もう駄目なんですか・・・私じゃ貴方の心を癒せないんですか?」
号泣するおキヌ。
「先生・・・・戻って来て下され、もう無茶な散歩に付き合って下さらなくていいでござる・・・・・ただ側に居てくれるだけでいいでござる・・・・・拙者は・・・」
「もうアイツは横島じゃない・・・・・・もう、アイツは戻って来ない。油揚げや狐うどんを奢ってくれない・・・・・」
シロやタマモの絶望。
横島は暗い冥府の軍団を引き連れ、行進する。最早彼は人間ではなく、負の感情に取り付かれた魔神である。
魔剣を振るい、雷の雨を降らせ、あらゆる者達を滅ぼしていく。
陰惨な笑みが浮かぶ。
「ポチ・・・・こんなの、こんなの間違ってるでちゅ・・・・・!!」
「横島、今のお前は姉さんが好きだった横島じゃない・・・・!!」
べスパ、パピリオの叫び。
彼女達の想いは届く事は無く・・・・・・・・・・・・
「これで・・・・我々に歯向かう者は居なくなった。よくやってくれた我が友よ」
「はい、我が主」
万魔殿の頂上から魔界を見下ろすバエルと横島。
横島の左隣には腰まで届く鳶色の髪と翼や角を持った美女、右隣には頭に触覚を付けた短い黒髪の美少女がそれぞれ佇んでいた。
後書き 吟詠公爵と文珠使い0 最初のダーク路線ダイジェスト版です。こっちの路線は書く予定は無いはずです。需要があるのかなーと思いつつ投稿してみました。
最後に横島の両側に控える女性二人は勿論・・・・・・・
復活したルシオラはかつてのルシオラなのか(復活させたのがバエルですから・・・・性格が残虐になっているかも・・・それでも横島のことを愛しています)こっちのルートではルシオラは復活します。
ス○ーウォーズエピソードVをご存知の方はイメージが重なって見えるかも・・・・・
おキヌちゃん達の悲痛な想いが伝わってきたでしょうか?
今までの
コメント:
- ほんっっっとにこっちじゃなくてよかった!!!!
ルシオラが性格変えられてるっぽいのもいやですし、ゴモリーも弱い女って感じで気に食わないです!!
だいたい自分に惚れてる女を都合よく利用されてて、その相手に従うアスモはいやだーー!!
あいつもゴモリーもルシオラも、もっと誇り高いんだーーーー!!! (九尾)
- そうでしょうか?
これはこれで、面白そうですが。 (ダソス・マソ)
- うん、良いんじゃないかな。
けっこう好きだよ、こうゆうの♪
個人的にはシリーズ化希望 (沙耶)
- Whether goodness is not understood when what.. commenting.
Still, the development for which the individual hoped was learnt that the individual had to create it. I create the development for which he hopes about either.
I feel the unpleasantness in far apart of me from the satan who nderstands, and interesting distortion of the Japanese of others' religious feelings without permission. (hideki)
- 翔です。私はこのストーリーには反対です。この作品は今までの吟詠公爵と文珠使いのイメージを損なう。今までと違う設定はある意味賛成何ですが内容に不満です。ゴモリーとかとか、横島はやはり我が道を行くと行ったものがよいです。 (翔)
- この話はある意味、あり得たかも知れない未来程度に考えておいてください。私にとっても、実験的な意味合いの代物でした・・・・・私自身、かつての味方が敵同士になる展開はきついので、書きません。
それでは読んでくださった皆さん、ありがとうございました。 (アース)
- これはこれで面白いと思います。
横島、ゴモリー、ルシオラの3人が納得していれば問題無し。
アシュ大戦で使い捨てにされかけた横島がこうなる可能性はあったと思います。 (ナマケモノ)
- 展開予想としてはある意味正しい物語ではありますね。
先を読んで見たい物語ではありますが、残された実神たちのことを考えるとちょっと・・・ (Dan)
- 元がいいから、ダーク路線でも面白そうですね。 (つーちゃん)
- 初めてコメントさせていただきます、文・ジュウです。このシリーズは前々から愛読させていただいてますが、こういった展開も嫌いではありません。
横島がバエルの下に就くのは納得がいきませんが、まあ、横島たち三人が幸せならそれでいいでしょう。
・・・・ついでに、小竜姫様やワルキューレ大尉は、どうなったのでしょうか? (文・ジュウ)
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