ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫幽霊物語 −接触編−


投稿者名:とらいある
投稿日時:(05/ 3/26)

鳩や猫なんかには帰巣本能というのが備わっているらしい
何処にも行く当ての無い幽霊にも、果たして帰巣本能が備わっているのだろうか
そう考えつつ目の前に聳え立つ建造物に目をみやった。

既に陽は落ちかけている。


自分だけが置いてかれたようなそんな寂寥感を伴いながら空中に躍り出た。



            横島忠夫幽霊物語 −接触編−



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舐めるように壁に掛けられたカレンダーを視姦する。
だがカレンダーに恥じらいという言葉は無いらしい、何ら変化は無い。


2013年だって?
俺の記憶だと、今は2000年でピッチピチの高校3年製の筈よ?
だって、ついこの間まで足りない出席数を、補習と追試で乗り切ったんだから。
あの時の困難と苦労は筆舌し難い。


お金が好きで好きで好きで、もうたまらんですノォ―――な美神さんが俺に勉強時間をくれる訳でも無く―→仕事の効率が下がるから
シロの奴が早朝マラソンを遠慮する訳でもなく―→進学できなかったらオカンの殺されると何度言っても聞いてくれず、挙句の果てには
「その時は拙者と手に手をとって駆落ちするでござる!!」とスカタンな事言いやがった


結局自分の力で・・・息抜き(現実逃避)に読んだ漫画の本をヒントに『文珠』にテスト範囲を全て記憶させ飲み込んだのだ。
まぁ失敗といえば、保険のつもりで飲んだ『解』の文珠のせいで、全教科全科目満点だった為、謂れ無き誤解を招いてしまったことか。
俺に奇異な物を見るような目で見る教師。教師なら生徒を信じろよ、と言いたい。


まぁ話を戻して。カレンダーの通り、今が本当に2013年だとすると俺は今年でえ〜と・・・31歳?!
み、三十路超えてんぞ!俺の貴重な青春を返しやがれバカヤロー!


時代は逆行再編&最強モノだった筈なのに、これじゃ逆逆行モノだYO!
ストーリーが世間の流れから逆行なんて如何致すのか。


激昂している最中、ふと姿見が視界に入る。
あわてて自分の姿を確認してみた。


姿見に写った姿は30代のオッサンじゃなくて、見慣れたバンダナ・Gジャン・Gパン姿の若い自分だった。
ムッ、この服装は確か高校卒業後はしていなかった筈だ。
確か高校卒業したあと美神さんが正式に正社員として採用してくれたんだった。んで・・・



『正社員になったんだから、仕事中の服装ぐらいもっとちゃんとしなさい。うちの看板を背負っているということを忘れるんじゃないわよ』



と言われ、美神さんがいつのまにか用意してくれていたスーツを着始めたんだっけ。
あの時は何かウラが有るんじゃないかって疑ってかかったら



『アンタが私の事を普段からどう見ているのかよぉっく分かったわ』



その後、怒りで震えている美神さんに文字通りシバかれた。
でも、あの時の自分の反応は正常だったと思う。
おキヌちゃんもシロもタマモも人工幽霊も皆一様に『えっ!』てな顔をしてたし(人工幽霊の場合は壁に大きなヒビがはいった)
 

用意されたスーツは耐霊効果のある霊糸を織り込んだ特注品だった。
厄珍曰く、値段にしたら福沢諭吉のおぢちゃんが数百人は必要になるらしい。
値段を聞いて、あとで何されるのか怖くてブルブル震えてたっけなぁ〜。


まぁそんなこんなで結局、仕事の際にはスーツに。普段着もこれまでの激務からボロボロになっていたから、全部一新したんだった。
あの服には愛着はあったが別に服装そのものにこだわりがあった訳じゃ無かったし。
ただ金が無かったから同じ服を着ていただけだったんだよな〜。




・・・・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・・・



・・・・・・・・・



・・・・・・・



・・・・・



・・・まて。今俺は何を考えていた?


    『高校卒業』『正社員として採用』


高校生の筈の俺から、なんでそんな単語が出てくるんだ?それも無意識に。
なにより・・・あの美神さんが俺の為にしてくれるなんて事、断じて有り得ない!
記憶が混濁して本来有り得ないことも有ったかのように認識してしまっているのか?


混乱する頭を必死になって落ち着かせる。
一人悶々と考えても埒が明かない。
力になってくれそうな人に今の状態をを相談し、なんとかするしかないか。


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「一体なんだってんだよ・・・」



あの後、考え付くあらゆる所に電話をかけまくった。
行ったわ良いが留守でした、なんて事の無いように。
小笠原除霊事務所、六道冥子の屋敷、妙神山、(断腸の思いで)Gメンオフィスビル、厄珍堂、そしてナルニアの両親の家。
だがどれも留守番電話だったり、呼び出し音が鳴り響いたまま応答が無かった。

電話番号の分からない魔鈴さんのレストラン、Drカオスのじいさんの家には直接出向いたりもした。だが誰も居なかった。
魔鈴さんのレストランの入り口には臨時休業というう張り紙が。カオスのじいさんも留守だった。
そして更に・・・



「ウソだろォ?」



住んでいたボロアパートは姿を消し、そこには建てられて数年しか経っていないような小奇麗なアパートに取って変わっていた。
ボロいとはいえ自分の住んでいた所である。当然思い入れもあった。
それが痕跡を残さず無くなっていたのは流石にショックだった。
あんなアパートでも心の拠り所の一つだったらしい。
心にポッカリと穴が開いたような、そんな喪失感が芽生えた。
それでも最後まで希望は捨てられず『横島』と、隣に住んでいた『小鳩』と書かれた表札を必死になって探したのだが何度探しても見つからなかった。




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「どうすりゃ良いんだ・・・俺は」



公園のブランコに乗りながら呟いた。
頭上にあった日はすでに傾き始めている。


別に今日会えないのはたまたまなのだろう。
明日ないし数日もすれば帰ってくる筈だ。その時再び訪れれば良いのだ。


だが気づいてしまった。
会ったからといってどうしろというのか。
今が2013年なのは間違いないだろう。
どのカレンダーを見てもそうだった。
街も、ところどころ細かい所で変移していた


あれから10年以上経っているのだ。
確かに友人達と話して、あれからどうなったのか聞いてみたい。
中には結婚している奴もいるだろう。そんな奴には幽霊となった自分の怨念攻撃をゼヒとも喰らわせたい。
だが、それだけだ。


皆に会えた俺は、満足して成仏でもするのだろうか。
こっちは満たされるかも知れないが、再び別れを体験する事になる者達の気持ちは?
残される者の悲しみは、横島自身が知っていた。
それに、下手に混乱や期待を抱かせたくない。だったら会わなければ良いだけだ。




皆と会ってしまう前に姿を消そう・・・




今の俺は霊力の塊に過ぎない。




霊力を消耗し尽くせば存在そのものがこの世から無くなるだろう。





でも・・・消えてしまう前に。最後に・・・




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訪れる場所は自分が愛した魔族・ルシオラと愛を語り、そして来世までのお別れをした所。
10年経ってはいたが、地上から見上げたその巨大な建造物は姿を変える事無く鎮座していた。
陽はだいぶ傾きはじめており、今から登れば丁度夕陽が臨める時間だ。
かつては文珠を使い登っていたのだが、幽霊となった今ではその必要は無い。


地上から150mの位置にある大展望台と、更にその上に新造された地上から250mの位置の特別展望台。
それらよりも更に上、一般の客が登って来れないような場所に降り立つ。
だが自分の他にいる筈の無い場所には既に先客がいた。



「えっ・・・子供?」



まだ年端もいかない少女が膝を抱えて座り込んで、暮れなずむ空を見つめていた。
年齢は10歳程だろうか。セーラー服を着て、髪型はボブカットの少女は背を向けており顔は分からなかった。
こちらの呟きが聞こえたのか、こちらの存在に気づき弾かれたような勢いで顔を向ける。
夕焼けに溶け込んで、顔を真っ赤に染め上げた少女の顔は逆光により良く見えない。
だが涙を流していたのか、頬は光を反射してキラキラ輝いていた。



「・・・パパ?」



縋る様な視線の少女の視線と声。
大きく見開かれた瞳がこちらを捉え、確認するとその場に立ち上がった。


―――ドクン


無い筈の心臓が、再び大きく脈打つ。
こちらに向き直った少女と、自分が愛し愛され儚く消えた蛍の化身の姿が重なって見えた。



「パパ、パパぁ」



少女はこちらに駆け寄りそのままの勢いで抱きついてきた。
よろけそうになるのをなんとか堪え、しなだれかかる少女を支えてやる。
少女は腕を背中に回し、胸に顔を埋め嗚咽しはじめた。



「―――蛍花?」



自分はこの少女を知らない。
声も、髪型も、雰囲気もルシオラであってルシオラでない。
だが現実には、自然と少女の名が口から言葉が出た。


『パパ』


そう呼ばれる事よりも


知らない筈の少女の名前が無意識に口から出てきたことに固まってしまった。



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あ、ども。とらいあるです。皆様お久しゅう御座います。本気と書いてマヂで。
己に対する戒めのつもりで「3月 15日」としたのですが・・・年度末は厳しいですなぁ
前回『 2023年  3月 15日 』と書きましたが『 2013 年 』の誤りでした。申し訳ないです。
『262 (05/ 2/27)』前回の更新日です。だいぶ前ですね(苦笑)
本編みてもワケ若布な方は一度、参照をお願います。
空回り?ギャグが空回りしてますカ?
次回はギャグ無いかも・・・


*GジャンGパ(以下略)でない服装・・・未来横島の服装がスーツだった為、こんな回りくどい設定にしました



>Iholi様。ご指摘有難う御座いました国語辞典で確認したところ、正にその通りでした。英語ムズカシィ。和英辞典は・・あっ無いや。



追記:さて、この少女は横島とダレの娘でしょう?当ててみて下さい(一応内定済みです)

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