ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い40


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 3/25)

「お前は・・・・・・・・」
「ククク・・・・久しぶりだな」
横島の驚きを多分に含んだ呟きに、ハルバートを持ち、青い服を纏った一角の男は、薄笑みを添えて答えた。

「アムドシアス・・・・・・・」
声の主は砂川、否、ここでは七十二柱が一人『吟詠公爵』ゴモリーと言った方が適切か。

何にせよ、『剣の公爵』アスモデウス、『吟詠公爵』ゴモリー、『一角公』アムドシアス、この場には七十二柱の内、三柱が顕現していることになる。

「七十二柱が三人とはね・・・・」
「全くだわ・・・・・・バチカン関係者が知ったら卒倒するか発狂するかでしょうね」
西条の呟きに、美神が答える。
先に挙げた三人に加えて、最近、人界に顕現したのは『西の王』ペイモン、『死霊公爵』ネビロスに『不和侯爵』アンドラス、そしてもう輪廻の輪から解き放たれ、消滅した『恐怖公』アシュタロス、合計七人。

アンドラスを直接見知ってはいないものの、美神と西条は人類史上、最も多く魔神を見た二人かもしれない。

「クク・・・・思ったとおり、貴様ら二人が来たな」
「成る程、事が大事だけに俺達が来る事も見越していたと?」
「そのとおり、あわよくば貴様らを消せと言われてな・・・」
横島とアムドシアスは魔剣とハルバートをつき合わせながら、言葉でも斬りあう。
だが、アムドシアスの言葉から推察するに彼の上にまだ誰かいるのだろうか?

この男に命令できる実力の持ち主はそう多くは無い。同じ七十二柱の中でも、最上位級。
自分を含め、ペイモン、アシュタロス、そして・・・・・・・・・

(まさか・・・・・奴か?)
横島の脳裏に一人の男の名が浮かぶ。
謀略と変身術に長け、サタンに匹敵する実力を持つと言う男。

だが思索は其処までだった。

「は・・・・・他に考え事か? 余裕だな」
ハルバートが凄まじい唸りを上げて、横島を魔剣ごと跳ね飛ばす。

「ち・・・・・・・」
横島は勢いに逆らわずに後ろに飛び、バランスをとって着地する。




「横島!!」
砂川も魔神の姿に戻り、翼をはためかせて、横島の援護に割って入ろうとするが、後ろからの鋭い殺気を察知し、身を屈めた。
次の瞬間、彼女の頭があった場所を凍えるような狂気を伴った鋭い斬撃が通り過ぎていった。

砂川は、一旦距離を取ると、後ろを振り返った。
「貴様か・・・・・・・サルガタナス」
「よう・・・・・・相変わらずいい女だな・・・・・ゴモリー」
かつては『恐怖公旅団』の旅団長も務めた男ーサルガタナスが黒い片刃の剣を片手に立っていた。

「貴様もか・・・・・・・・」
「まあ、そういうことだな。臆病で神経質な主は最後は惨めだったな」
男は陰惨な笑みを顔に貼り付けて、嘗ての主君ーアシュタロスを嘲笑った。

「ふん・・・・・貴様には忠誠心なぞ最初からありはしなかっただろう。部下を試し切りの材料にする男をアシュタロスが信頼するものか」
結局は敵となってしまったが、ゴモリーにとってもアシュタロスは信頼の置ける『戦友』の一人だった。そして、根は穏やかだった彼が、今、目の前にいる男の残虐性と異常性に眉をひそめていたことも。結果として、この男は旅団を逃げ出した。部下の一人がやっと授かった幼子を試し斬りの材料にしたという罪で。アシュタロスに次ぐ実力だった故に、『追撃してはならない』と他ならぬアシュタロスから下されていた。最も、この狂気に取り付かれた男ー「斬撃狂」を追撃しようなどという猛者は居なかったが。

「さてと・・・・・愛しのアスモデウスのもとへ生きたいんだろうが、俺のダンスの相手をしてもらおうか。命懸けでな」
「いいだろう。今度は女の誘い方を勉強して来い。今度があればだがな」
ゴモリーは三つ又の槍を虚空から取り出し、男ーサルガタナスに向けた。七十二柱では無いにしてもこの男は強い。
油断すればやられる。
サルガタナスも黒い剣を青眼に構えながら、相手の出方を伺う。

黒い二つの闇が相手を食らおうと睨み合っていた。






「ふ・・・・どうした? 動きが鈍いぞ!!」
「く・・・・・・・」
横島はハルバートの鋭い連撃を魔剣で捌く。未だに直撃は無いが、押されている。
確かにアムドシアスの言葉どおり動きは鈍い。自分でもそれが分かるあたり、歯がゆい。




「貴様の今の魔力は嘗ての三分の二程度。動きも鈍い、病み上がりで戦場に出たのが運の尽きだったな!!」

そんなことは百も承知。だが実戦でしか取り戻せないものがある。勝負勘や死線を潜った上での経験は訓練では得られない。
訓練でもそれらが得られるのならば、Gメンなどで訓練漬けの日々を送ればいいのだ。
(今度、妙神山でハヌマンと手合わせを申し込んでみよう・・・・・・)

こんなことを考える辺り、まだ余裕があるともいえるか。
横島は、苦笑すると頭の中に浮かんだ思考を打ち切り、目の前の危険に対処する為に意識を集中させた。



「あの連中がうっとおしいな・・・・・」
「何・・・・・・!?」
そんな中、戦いの最中のアムドシアスの視線の先に在るのはマフィア達を叩きのめした美神達の姿。

微かに動揺する横島を嘲笑い、『一角公』は呪文を詠唱した。





次の瞬間・・・・・・・美神達の周りの草木が寄り集まり、巨大な蛇の姿をとった。根本的には草と木なのだが、その全長は十メートル以上に達しており威容は十分。しかも一匹だけではなく、数匹居る。
「ちょっと、冗談でしょ!?」
「こ、こっちに来るでござる!!」
「ぼ、僕は美味くないぞ!! ストレスで肉は不味くなってるだろうし!!」
巨大な草の蛇は、本物の蛇と同じく舌を鳴らしながら鎌首をもたげて、美神達に襲い掛かった。


「俺の得意分野が草木の操作だということは知ってるだろう? あの程度のことは訳も無い。元が草だから火に弱いが、俺の魔力を受けた今、ちっぽけな妖狐の狐火如きじゃびくともしない。解っているだろうが、連中を助けに行こうとすれば、俺が後ろからお前を斬る」
アムドシアスは、冷たく笑う。自分の絶対的有利を確信しているのだ。
「ち・・・・・・下衆野郎が・・・・・・」
「何とでも言うがいい。戦いとはこういうものさ。人間をやっていたせいで腑抜けたか? アスモデウス」
「さあ、どうだろうな。とりあえず、お前を叩きのめしてゴモリーか美神さんの援護に入る。これが最短ルートらしいな」
すぐに精神を静めた横島は、魔剣を向けながら目の前の一角の男に向かって不敵に笑う。

「やれるものなら、やってみるがいい。『剣の公爵』」
「そう言った言葉を吐いて、無傷で居られた奴は居ないぞ、『一角公』」




言葉を交わした一瞬の後、再び魔剣とハルバートがぶつかり合った。



後書き  丁度、四十回。黒幕の少年の正体がちらっと明らかに(ちなみに、こいつも最上位の魔神です)・・・・・・わかる方にはわかるかも・・・・・・でもまだ正体は明らかになりません。意外だったでしょうか? 今回、それぞれが大苦戦。次回には決着します。アムドシアスはいい味出してるでしょうか? 敵陣営にはまともな奴が殆どいません。


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