ザ・グレート・展開予測ショー

目覚めて見れば…11


投稿者名:K.M
投稿日時:(05/ 3/22)

あの後、俺はが植え込みから抜け出したのは美神さんが居なくなってから少し経ってからだった。

急がなければならないのは重々分かってはいるのだが、文珠の影響と…

なんと言うか気勢がごっそりと抜け落ちてしまった事により直ぐに追う事が出来なかったのだ。


目覚めて見れば…11


朝の天気からは考えられないほどに空は厚い雲に覆われかなり強い雨が降って来ている。

さらに少し前銃声が聞こえて来た。

多分美神が発砲したのだろう…横島の記憶では雨の中令子ちゃんを探した覚えがあり、

間違いなくこの付近に令子ちゃんと美神の二人が居るはずだ。

「よし!気を取り直し…うん?」

傘を振り上げと決意を改めようとした矢先、目の前を何かが通り過ぎた。

「って、令子ちゃん!」

渦中の人物を見て反射的に名前を呼んでしまったが、良く考えたら令子ちゃんとは初対面だ。

ヤバイと思ったときには既に遅く言葉に反応した令子ちゃんが横島の方を向く。

「…お兄ちゃん誰?」

「え〜と…」(ま、不味い何て答えれば良いんだ?)

美神の子供の頃だ…変な事を言えば間違いなく『変質者』や『誘拐犯』等と言われかねない、

しかも今回は何時もフォローしてくれたおキヌちゃんも不在だ。

もし警察に捕まったらそうそう簡単には出られない可能性が高い…いや最悪前科一犯になりかねない。

さらに背中を向けて逃げ出そうかとも考えたがそれも論外だ…周りからは『その子の関係者か?

そんな小さな子を雨の中走らせて自分は傘をさして何かやってんだ』と言う視線が横島にチクチク突き刺さる。

「はぁ…美神 令子ちゃんだね?僕の名前は横島…」

そう言って持っていたカバンからタオルを出し、

出来るだけ警戒心を抱かせないためにどこぞのキザ公務員のように『僕』等という言葉を使いながら自己紹介をするが…

「変質者!」

即座に断定された。

「なっ!ちっ違う!え〜と…その美神さん…そう!君のお母さんに頼まれたんだよ!!」

「…ママ?」

「そうそう」

これ以上変なことを言われても困るのでまるで壊れた人形のようにコクコク首肯する横島だが効果は無かった。

「嘘!ママが呼んでるよって後を付いて行くと令子にあ〜んなことやこ〜んなことする気でしょ!」

その声に周りから『警察を呼んだほうが良いんじゃないかしら』や『あんな小さな子に何をする心算なの』等とヒソヒソ話す声が横島の耳にも届く。

当然、横島もそんな陰口を叩かれていれば心中穏やかではない、『どんなことだよ!』や『俺はロリコンじゃね!』と叫びたくなる心を何とか押さえる。

「…お願い…人聞きの悪い事言わないで別に付いて来いなんて言わないよ…あのビルに来るからって言う伝言を伝えに来ただけだから…」

そう力無く脱力しながら先ほど受け取ってもらえなかったタオルと一緒に傘を渡す。

今度は素直に受け取ってくれた。

「む〜…これの代わりに令子を誘拐しようとしない?」

「…上げるからそう言う事言わないでね…それと追ってが着たみたいだから…早く行った方がいいんじゃないか」

「あっ!」

ガックリと肩を落とした横島が指す方を見て驚きの声を上げ、令子ちゃんは駆け出そうとするが何を思ったか急に立ち止まり、

「ありがとねお兄ちゃん!」

そう横島に向かって可愛らしくペコリと頭を下げる。

「…あっ…いやべつにいいよ」

「うんバイバイ!」

「ああ…気をつけてな」

そう言って再び駆け出す令子ちゃんを横島は見送りハーピーの方を見る。

当然だが何かを探すように飛びながらこちらに向かってくる、多分遠からず令子ちゃんは見つかるだろう。

(こう思うのも宇宙の修正力なのかなぁ〜)

令子ちゃんを見ていたら、未来でよく面倒を見たひのめちゃんの面影と重なった。

別に助けなくても大丈夫なのは判っている。

だが、とてもかわいがり、懐いてくれた子と似ている子が痛い思いをするのを見て気持ちの良いものではなく助けたいと思うのは当たり前だろう。

(まっ…美神さんが来るまででも足止めするか)

そう考えたら自然と腰の方に手が伸びベルトに挟んであったS&W41マグナムを引き抜いていた。

当然(?)この銃は横島自身が購入した物ではないく、

美神の事務所の武器庫に山ほど転がっている中からガメて来た物であり、弾丸は純銀製だ。

ガメた当日の夜『美神さんを助けるために使いますから許してください!勘弁してください!』

と一晩中夢の中でワビを入れ続けたのは横島だけの秘密だったりする。

その拳銃をこちらの方に飛んでくるハーピーに狙いを付け引き金を引く。

「あっ…外れた」

強い衝撃を横島の腕に残し弾は発射されるが横島の言葉通りハーピーのかなり横を飛んでいったが、

横島も自分のへぼい腕でこの距離を当てられるとは考えていないので予想通りだ。

「誰だ!」

「誰って…拳銃で撃ったんだから敵に決まってんじゃん…それとも名前でも答えれば良いのかな?」

おちょくる様な口調で横島はハーピーを挑発する。

「そうだね!ならさっさと死ぬじゃん!」

言葉と一緒に放たれたフェザーブリッドを横に転がるように避け起き上がると同時に拳銃を三連射するが当たらない。

しかもお返しとばかりに横島の撃った数以上のフェザーブリッドが帰ってくる。

「げっ!なんだそりゃ!!」

奇声を上げ近くの路地に飛び込むと同時に今まで横島の居た場所に剣呑な着弾音がする。

(一発ずつじゃないのか!しかも向こうは残弾無限でリロード無し?そりゃ詐欺だろ!!)

心の中で盛大に叫びながらも手元では撃ちつくす前にリロードをしている。

その間にもドカンドカンと言う盛大な効果音が横島の周りにする。

先ほどまで居た歩行者も横島の発砲とハーピーの出現で近くには居ないのは不幸中の幸いと言えるだろう。

(美神さんが来るまでちょっと足止めの心算だったんだけど…マズったかな?)

路地から飛び出し拳銃を撃つが全く当たらない。

「よけるんじゃないじゃん!」

美神のようにボディーアーマーを着ているならともかく生身でこの攻撃にあたったら爆ぜた柘榴のようになるだろう。

横島は無茶を言うパーピーの攻撃を転がったり遮蔽物を利用して何とか避けるがこのままでは余り長く持ちそうもない。

「そらそら!何時まで持つかね!」

「くっ!」

避け切れないと判断したフェザーブリッドをサイキックソーサーで弾き歯噛みをする。

文珠等を使えば倒せるだろうがそれは論外だ。

出来ればここでハーピーにダメージを与えるのも避けたいと思っていたがこのままでは不味い。

しかも逃げようにも空を飛んでしかも強力な飛び道具を持っているハーピーでは旨く行くかは疑問だ。

(しょうがない…多少ダメージ与えてからばっくれっか…)

そう決断した横島は拳銃を腰に挿し右手に栄光の手を作り出す。

栄光の手ならば空中で避けられても横なぎの一撃を加えることが出来るし、

フェザーブリッドを沢山撃たれても左手のサイキックソーサを駆使すれば確実に迎撃出来るだろう。

「行く」ドオン!!

決意を固めた横島が'ぞ!'と続けようとしたがそれより早くに右側から凄まじい轟音が聞こえる。

「…………えっ?」

横を向いた横島の目に飛び込んできたのは腰ほどもある花壇とその上にある植木を飛び越えてきた車だった。

「ギャーーー!!」

まるで津波のように圧し掛かってくる車を悲鳴を上げ、なりふり構わず横っ飛びに避けその直後ズドン!と言う着地音がした。

車の持ち主は予想通りと言うか、美神だ。

「ハーピー!!」

美神は当然(?)横島の存在には気が付かずハーピーに向けて凄まじい勢いでライフルを乱射する。

「げっ!もう来やがった、関係無い奴は後回しが吉じゃん」

「このヤロー逃げるなーー!!」

ハーピーが視界から消えるまでダダダダダ!とライフルを乱射し続けた美神が舌打ちをし、車を勢い良発進させる。

その様子を横島にとっては懐かしい黒いゴミ袋に囲まれながら見送る。

美神の車を避けたときに飛んだ場所がゴミ置き場だったのだ。

「…もう帰ろうかな…」

滂沱の涙を流しながら頭に乗った魚のホネを取りながら呟くが、

ゴミ置き場から湧き上がる香不思議な臭いにその呟きも次第にに飲まれていった。

………
……


「…居た」

三階から吹き抜けのエントランスホールの一番下を見てそう呟く。

さっきの事で本当に家に帰ろうか迷ったが結局無視する事が出来ずここに来てしまった。

横島の視線の先にはベンチに座った令子ちゃんが居た。

先に記したように美神を方を守らなければならないのだが、美神が何処に居るか分からず、

仕方が無いので二人(?)が探している令子ちゃんを張っているのだ。

多少美神が心配ではあるが、まあハーピー自体美神の方を狙うのではなく令子ちゃんを狙っているし、美神一人なら大抵の事は乗り切るだろうとは思っている。

『本日はご来店ありがとうございましたまもな閉店です』と言うアナウスンスが流れ出す。

ここに令子ちゃんを誘導してから結構な時間が経った。

にも関わらずハーピーはまだ来ない、このままではハーピーより先に美智恵が来てしまうかも知れない。

(あれ?…それでも、問題ないのか…)

ハーピーが令子ちゃんを発見する前に美智恵が来て美神と一緒にハーピーを退治する。

そうすれ問題無い、しかも横島が変に手を出す必要も無い。

だが、運命の皮肉か…『名案かな?』と思った直後、矢先天井の窓が割れ何かが突っ込んでくる。

それと同時にドカン!と言う爆音のような音と共に自動ドアを突き破り、車がエントランスポールに突入してきた。

美神とハーピーだ。

その様子を見た横島は顔を青くし、直ぐ美神の車を凝視し、赤いモノを引きずった跡や車の一部だけ妙に赤くなっていないのを確認してホッとする。

(…ひき逃げの…跡はないか)

まさか人身事故等起して無いとは思いたいが先ほどの運転や今の行動を見ると万が一と言う事が考えられるからだ。

ホッとしたもの束の間、何時までも気を抜いているわけには行かない。

すでにハーピーと美神の戦闘は始まっているのだ。

今は美神が令子ちゃんを背に庇いフェザーブリッドを神通棍で防ぎライフルで攻撃すると言った戦いをしている。

どちらかと言えば美神の方が押しているように見えるが残弾の問題と令子ちゃんと言うハンデを抱えている分攻勢には出られないようで状況は、ほぼ互角だ。

「これなら大丈夫そうか?」

美神の戦いを見ながら横島はそう呟く。

このまま行けば美智恵が来て問題なくハーピーを倒すだろう。

念のためにと'消/音'と'必/中'の文珠を使った拳銃を構えるが無駄になりそうだ。

そう横島は考えたが一つ忘れてた事がある…どうも、最近やる事成す事考える事が裏目に出ると言う事を…

「美神さん〜!」

(げっ!)

「おキヌちゃん!?来ちゃ駄目!!」

「えっ?」

美神が静止の声を上げるがもう遅い。

「おキヌお姉ちゃん!危ない!」

美神の背後に匿われていた令子ちゃんがおキヌちゃんの方に走り出す。

当然そんなチャンスをハーピーが逃すはずも無く令子ちゃんに向けてフェザーブリッド発射する。

「もう!伏せて令子!」

舌打ちをした美神が狙われた令子ちゃんを抱えるように庇うと同時に、

横島はすぐに構えていた拳銃の引き金を引く。

拳銃から無音で発射された弾丸が美神の背中を襲おうとしたフェザーブリッドをことごとく迎撃する。

おキヌや令子ちゃんには何が起きたか判らず、

美神は令子ちゃんを庇っていた為見ていなかったのでなぜフェザーブリッドが何故爆ぜたのか判らないはずだ。

「くっ!また貴様か!」

上から見ていたハーピーには何が起きたか分かったのだろう、

すぐさま羽を一振りし横島に向かって数発のフェザーブリッドを撃つが冷静さを欠いたためか狙いが甘かったのか直撃はしない。

だが、着弾した衝撃は強烈で横島は通路の壁側まで吹っ飛ばされる。

「痛っ…」

「お前は後で殺してやるからそこで少し大人しくしているじゃん…じゃ…今度こそ死ね美神令子!!」

いくら美神が凄くても令子ちゃんとおキヌちゃんを庇ってではバラ弾のように撒かれたフェザーブリッドをすべて迎撃するのは難しいだろう。

横島は通路の手すりが砕けた場所からその様子が見えた。

美神達に今の力がばれるのを覚悟して'護'の文珠を使おうと振りかぶったが、

その前に何処からか飛んできた破魔札がすべてのフェザーブリッドを打ち落とす。

「あっ…!」『ママ!』「貴様!!」(間に合った…)

破魔札が飛んできた方を見ると、頬に止血テープを貼った美智恵が居た。

「まさかあの状態から戻ってこられるなんて…今度こそ確実に止めを刺してあげるわ!」

そう言うと退魔札を美智恵が構え戦闘態勢をとる。

「遅い退魔札を使うより早くアタイのフェザーブリッドで!!」

「そうはさせるかーっ!!」

「!!」

ザーブリッドを投げつけようとするハーピーに美神の投げた精霊石が直撃し、

その機を逃さず美智恵が退魔札を放つ。

「ギャアアアア」

美智恵の退魔札によってまるで空中に解けるようにハーピーは消えていった。

………
……


「…御免なさい令子…ハーピーが戻ってくるなんて私のミスだはわ」

「何言ってんの私はママの子よ?あんな魔族なんてどおってことないわ!!」

「強くなったわね…令子」

美智恵に頭を撫でられながら美神が赤くなる。

そんな珍しい様子を腹ばいになって横島が覗いていた。

(ふぅ…一応無事終わったな)

途中色々と苦労はしたものの結果として誰も犠牲が出ず、

横島の力もばれなかった…結果としては最上といって良いだろう、そう思っていると不意にピシリと薄氷を割るような小さな音が聞こえる。

(?…何の音だ?)

その間にもピシピシと音が段々大きくなり不意にガラガラと言う音と共に床が崩れ横島の体が空中に投げ出される。

(…………冗談だろ〜!)

三階の高さから落ちながら悲鳴を上げなかったのは誇れる事だろう…何の慰めにもならないが。

「何!?」

ガサガサドスン!!と言うけたたましい音にまだ『ハーピーが生きていたのか!』と、

美神達が臨戦態勢を取るが地面にぶつかる瓦礫を見てホッとする。

「ハーピーの攻撃で脆くなってたのね…全く当然人騒がせね」

「そのようね…でも、何故ハーピーの攻撃であんな所が崩れるのかしら?」

美智恵の何気ない一言が辺りを沈黙させる。

ハーピーが後でどうのという言葉を思い出したのだろう。

「…………」

「………………」

「……………………」

「って!あそこハーピーが攻撃したんじゃない?!おキヌちゃん巻き込まれた人が居ないか見てきて!」

「あっ、はい!」

ピュー!と飛んで行き恐る恐る辺りを見回すが誰も居ない。

「美神さ〜ん…誰も居ませんよ!」

「本当?赤いモノとかも無い?」

「うっ…え〜と…はい…崩れていますけど…そう言ったモノはありません!」

その報告を聞いて皆ホッと胸をなでおろす。

「良かった…でも本当に何であんな所を攻撃したのかしら?」

「さあ?でも良いんじゃないの?巻き込まれた人が居ないんじゃ。はぁ…それより今日は疲れたわ…」

そう言いながら美神がベコベコになってしまった車に近つく。

「さっ、みんな帰りましょ」

美神の言葉に各々賛同の声を上げ車に乗り美神の事務所への帰途に着いた。


〜追記〜

横島はと言うと先ほどのガサガサの所で途中の木に引っかかっていたのだ。

奇跡的に大きな怪我等はしていないが、体中枝に擦りキズだらけだ、当然服もボロボロになっている。

まあ三階から落ちたにしてはとても幸運だろう。

だが横島の心中は

(…もうやだ…)

だそうだ…

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