ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い39


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 3/22)

「人界に出回っている麻薬?」
「ああ、しかも・・・・世界的規模でだ」
魔神の戴冠式を終えた翌日、人界に戻った横島はネビロスの要請を受けて、Gメン本部の会議室に居た。
「普通の麻薬なら、警察の役目。なのにGメンやお前が出て来るってことは・・・」
「そう、オカルト絡みなのよ」
ネビロスに代わって、横島の疑問に美智恵は答えた。
「この出回っている麻薬の通称は『アポカリプス(黙示録)』・・・ハッキリ言って、洒落にならん名前だ」ネビロスは苦笑を交えて言う。べスパやワルキューレも調べていくうちにメドーサと同じ線―この麻薬に行き着いたらしい。
確かに神魔のデタントが進められている現在、ハルマゲドンを暗示させるような名前は不吉なことこの上無かった。
「で、この薬の効能というか、症状は?」
「幻覚、幻視、錯乱など・・・・これだけでは通常の麻薬と変わりが無い。だが、ごく稀だが、他の麻薬とは全く違うことがある」
「全く違うこと?」

「・・・・魔装術の暴走と同じ状態、つまり人間が魔獣化する場合がある」
「成る程・・・・・・」
ネビロスの答えは横島を納得させるのに十分だった。

ネビロスや美智恵によれば、目立った被害が出ているのはロンドンの街の一角。魔獣化した人間が、周りの人々を無差別に襲い、とうとう怪我人が出たという。この麻薬が出回ればその分だけ人間が魔獣化する確立は増えることになる。

「加えて、上海でも不穏な動きがある・・・・そっちのほうには俺やメドーサが行く。それで、お前のところの魔装術使い―雪之丞を貸してくれ」
横島はそれに快諾し、その後、いつ出発するかを取り決めた。



「で、俺は上海に行けばいいわけか」
「ああ・・・あの辺の地理にはお前は詳しいだろう?」
事務所に帰った横島は雪之丞にGメン本部での会議の内容を話した。以前、香港を初めとするアジアの裏社会を渡り歩いていたこの男なら、実力ある道案内人としては最適だった。

横島と砂川は、明確な被害が出たロンドンの方に行くことになっていた。

以下、メンバー表(西条はロンドン在住の経験を踏まえて、チームリーダー)

ロンドン組     上海組
西条        ネビロス
美神        メドーサ
横島        雪之丞
砂川        カオス
シロ
タマモ          マリア
おキヌはネビロスから課せられた特訓の最中で、べスパとワルキューレは魔界に報告へ戻っていた。

そして―――出発当日。
横島達はGメン手配の特別機に乗り込み、それぞれの目的地へ向かった。
「この事件の裏には、大物が絡んでいるな・・・」
「ああ・・・以前のGS試験でも、七十二柱のアンドラスが関わっていた・・・他にも魔神級の奴が居るかもしれん」
横島の呟きに隣に座っていた砂川が答えた。
何にせよロンドンの現場に着けばわかるのだが。


飛行機に揺られること約半日。
横島達四人は、ロンドンの地に降り立っていた。
それから、手配したホテルに着くまでは何事も無く進んだ。

某公務員の女性問題が浮上し、亜麻色の髪の夜叉が降臨したことを除けば・・・・

手配されたホテル
「じゃ、じゃあ皆それぞれの部屋に・・・・」
西条が『何か』の重圧に屈したかのような疲れた顔を見せながら、弱弱しく言った。西条の横では、やたら爽やかな表情の美神が神通鞭を手に微笑んでいた。

その後、横島達は手配されていた部屋に向かった。西条は海に乗り出す船乗りのように清々しい顔だったことを付け加えておく。




翌日になって、西条の運転する車で現場に向かった。
「ここで、例の薬―『アポカリプス』で魔獣化した人間が人を襲った場所か・・・」
「ああ・・・死人が出て行ないのが幸いだがね・・・」
横島の問いに、西条が答えた。
更に言葉を継いだ西条によると、魔獣化した人間はGメンとスコットランドヤード合同チームによって捕えられ、病院に運ばれたという。
「その魔獣になった奴は、何処で薬を買ったか・・・だな」
「ああ・・・それなら場所は割れている・・・・」
砂川の問いに、西条は左手に持っていたロンドンの街の地図の数箇所を指差した。

それらの場所は、いずれもロンドンの裏町にあたる部分だった。
「いかにも麻薬の取引とかがありそうな場所ね・・・」
「ああ、噂ではバックにマフィアが居るとか・・・」
美神の呟きに西条が答える。西条の言葉が本当ならば、かなり厄介だった。

マフィアを敵に回して、銃撃戦といったことにはなりたくは無いのだが・・・・





そんな彼らの願いも空しく・・・・
ガキュ-――――ン!! ガガガガガガ!!「逃がすなあ!!」「サツの手先があ!!」ドカーン!!!
真夜中の静けさを破るかのように銃声と怒号が響く。

「く・・・・俺達は警察じゃないってのに・・・・」
「連中にとっては、Gメンもスコットランドヤードも変わりないってことだろう!!」
横島のうんざりした声に、何故か西条は興奮した様子で車を運転していた。

読者諸兄にはお分かりの通り、現在彼らはマフィアに追われていた。


シロの嗅覚とタマモの第六感で一番可能性のありそうな場所を特定し、そこに待ち伏せて、例の麻薬『アポカリプス』の取引現場を押さえたはいいが、その場にはマフィアまで来ていたのだ。
彼らにとっては、西条達は利益を邪魔する邪魔者以外の何者でも無かった。


こうして、地元警察も巻き込んでの西条率いるGメン部隊VSブリティッシュマフィアのカーチェイス&銃撃戦が始まった。


「とうとう俺達だけになったぞ!!」
「どうもそうらしいね!!」
横島の言葉どおり、自分達の隣に居た筈のGメンの装甲車がいつの間にか居なくなっていた。
それでもマフィア側の黒塗りの車が、銃弾をばら撒きながら五台しつこく追ってくる。幸いこちら(Gメン)側は装甲車なので、並の銃弾ではびくともしないが、グレネードランチャーまで持っていたら不味い。最近のマフィアは装備も近代的なのだ。ちなみに、警察の車両はとっくの昔にリタイアしていた。

「大体、何でお前、嬉しそうに斬りつけてるんだよ!?」
「気にしない、正義の刃だよ!!」
横島の言葉から解る通り、西条はマフィアの一人に斬りつけていた。
『悪漢ども、正義の刃を受けたまえ!!』の台詞と素敵な笑顔つき。




「ふふふ、一度やって見たかったんだよ。マフィアとのカーチェイス」
西条は怪しく笑う。決して、普段からの仕事や諸々のストレス(主に某親娘による)で壊れたわけでは無い・・・・筈。

以下、同乗者達の心境
(西条さん・・・ママの最も優秀な弟子だったのに)
(西条・・・・とうとうそこまで来たか・・・・まともな方だと思っていたのに・・・)
(一度、壊れるとこんな風になるのか。違和感が無いような気もするが・・・魔鈴に見せてやりたい・・・・)
(西条殿・・・・・怖いでござる)
(私達の周りの男って、まともなの居ないのかしら・・)
上から、美神、横島、砂川、シロタマの順。普段、真面目な者が壊れるとこんなものである。これは極端な例かもしれないが。対空ミサイルを主の御名の下に接収した某神父も居ることだし・・・・ついでにその神父の弟子は、ナルシー気味で、ホ○疑惑有りのバンパイア・ハーフだったり・・・(ち、違います!! ぼ、僕は決して、そんな・・・・)←某所からの電波です。



「まあ何にせよ、数は減らした方がいいな・・・」
そう言うと、砂川は懐から拳銃[colt-double-eagle]を取り出し、車の窓を開けて、横付けしようとしていたマフィアの車のタイヤに向けて発砲した。

ガキュ―――ン!!
ギュギュワワワ―――――!!!
「Oh―――――!? what?」「No――――――!!」
ガチャ―――――ン!!!

銃弾は見事に命中し、マフィアの車は緊急停止を余儀なくされ、瞬く間に遠ざかっていく。
これで敵の車はあと四台。

「まあ・・・確かにな」
横島も砂川と同じく、窓から敵の車のタイヤに発砲。こちらも横付けしようとしていた車は強制停止させられた。
ちなみに横島の銃は[cz75-1st]である。今の横島は力の調整が難しく、攻撃系の文珠は威力が大き過ぎるし、出来る事なら文珠は温存しておきたかった。


「フハハ・・・二人ともお見事!!」
「ねえ・・・あんた達、その銃どうしたの?」
「令子ちゃん、僕が彼らにあげたのさ!! 君にも[desert-eagle]を渡しただろう?」
「私だけじゃ無かったのね・・・」
西条はますますヒートアップしている。というか武器を何処から? 足元に転がっている銃器類も気になるが・・・・
(私も人のこと言えた立場じゃ無いのよね・・・・)
確かに銃器類をたくさん保有し、核ミサイルさえ買った経験持ちの美神である。彼女に比べれば、西条はまだマシかもしれない。

「僕らを敵に回した以上、覚悟してもらわなくては・・・・フハハハ・・!!」
前言撤回、こいつが一番危ないかもしれない。

身の安全を祈りたい。寧ろマフィア達の。



残りの敵の車はあと三台。

そのうちの二台は、横付けしようとして、横島&砂川にタイヤを撃ち抜かれ、先の連中と同じく強制退場させられた。ご丁寧に今度は「remember us!!」「jesus!!」などの負け惜しみのドップラー効果のオマケ付きだ。

銃の扱いに関して横島はGメンの射撃場で、砂川は魔界軍で訓練を受けているので、これ位は朝飯前。黒スーツで銃を平然と扱う彼らは、シークレットサービスかCIAかKGBのエージェントのようだ。
西条よりも、彼らの方が色々な意味で、普通では無いのだが・・・・

「まるで、ゼロゼロナインでござるな!!」
「それを言うなら、007でしょうが」
興奮気味に言うシロにタマモがクールに突っ込んだ。


「西条!! 今はどこら辺だ?」
周りの景色は段々、草原のような光景になって来ていた。

「かなり街の方から離れてきた。ストーンヘンジの近くかな。存分に暴れられる!!」
確かにこの辺は、人家も見えず緑が広がるだけだ。
さり気なく西条が危ないことを口走ったのとほぼ同時に、Gメンの装甲車が縦に真っ二つに切断された。
「く・・・!?」
「ち・・・脱出・・!!」
横島達は急いで脱出し、草むらの上に転がり出た。

「何だ?」
「解らん、だがこんな真似は人間には出来まい・・・」
横島の問いに、砂川が答えた。

装甲車は大破し、あちこち炎上しているが、残りのメンバーも上手く脱出したらしい。

視界に上空に浮かぶ人影が入る。
「誰だ!?」
横島は、装甲車を真っ二つにした犯人―虚空に浮かぶ人影に鋭く言い放った。



「ふ・・・・気付かんか? 貴様とは以前、戦ったことがある者だが・・・」
その相手は、着地すると悠然とした声で言った。フードとローブで全身を包んでいて顔は見えないが、まだ若い男の声だ。



「あ、あんたは薬の元締めの・・・」
「よく来てくれた・・・そいつらをぶっ殺して下さい!!」
後から追いついてきたマフィアが口々に叫ぶ。

「こいつが麻薬をばら撒いた犯人か!?」
マフィアの言葉から西条には相手は何者か見当がついたが、先の行いと発する気配から相手は人間では無く、かなり格の高い魔族だということが解った。

「マフィアどもの前では、力を抑えていたが、貴様らの前ではそうも行くまい」
男はそう言い放つと、ローブを横島に投げつけ、ハルバートで斬りかかった。

ガキイイイイン!!

「お・・・お前は・・・」
「大体、二千年振りといったところか・・・・ククク・・・アスモデウス、いや横島忠夫と言ったほうがいいのかな?」
魔剣とハルバートがぶつかる音が響き、横島は、相手が見知った顔だということに驚愕の声を上げた。



後書き  次回、横島VS謎の魔神(七十二柱の誰か、何処かで聞いたような強力な奴です。名前の方は次回に)横島はこの頃、影が薄かった分、大活躍します。
マフィアとカーチェイス、銃撃戦。西条が壊れた――――!? 違和感無いような気もしますけど・・・
横島&砂川に銃を使わせてみたかったのと壊れ西条が描きたくて、こんな話に・・・・西条は壊すと面白いんですよ。
あの後、対空ミサイルどーなったんでしょう? まさか未返還とか

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