ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌの夕焼け12 〜独立


投稿者名:never green
投稿日時:(05/ 3/21)


「じゃあ独立の事はよろしくお願いします。」
「えぇ、任せて。じゃあ早く体を治すのよ。心配は要らないようだけど。」
美智恵は病院の出口をくぐった。缶ジュースを飲み干し自販機の隣にあるごみ箱に入れる。自分の病室に入ると窓から光が差した。
窓越しに見える景色を見ながら自分の世界に浸る。

この日の四日前
「お願いします。」
おキヌは頭を下げる。美神はもう退院していた。
「何言ってるの。起きないあいつが悪いんだから。」
「けど私が怪我さしたんです!横島さんが起きるまで看病さして下さい。」
おキヌは全てが自分の責任だと主張する。
「まぁ、いいわ。起きたらお見舞いに行くから。」

明らかにお見舞いの意味が違っているのは気のせいか?

「お見舞いの意味が違うでござるよ。美神殿…。」
美神は霊力ではなく怒りのオーラを身に纏っていた。
しかし今回は台所には隠れず横島の肩を持つ。
「しかし、ラボロスを倒したのは先生でござる!」
思わぬ伏兵の登場に美神は怯む。
しかし彼女の理論武装は美智恵以外の相手なら、ほとんど通用する。
「違うわよ!私達の記憶を消した事が気にくわないのよ!」
「確かにそうね。何をしてたのかしら?」
タマモは考える。
「修行したって言ってましたけど…。」
「それにしては何ヶ月もかかったわね。」
美神は頭を抱えた。
「世界の修行場を回ったからですよ。」
ドアの向こうから小竜姫の声。
「しょ、小竜姫様!」
「話しましょう。この半年間の横島さんを。」

この話の次の日、カオスが血だけの姿で家主に発見されたのは言うまでもない。



「そんな…。じゃあ皆の事を守るために。」
「そうです。そのために修行に励んだんです。眼が覚めないのも修行のし過ぎですね。日本に帰ったらすぐ竜族との闘いでしたし。」
「あいつらしいわね。」
タマモはいなり寿司をつまみながら呟く。
「で、それだけのために来たの?」
意味ありげな言葉を発する。
「いいえ。もちろん報酬の方を…。」
美神はそれを聞くなり喜ぶ。
このチャンスを逃がすまいとおキヌが美神に話しかける。
「じゃあ、横島さんの折檻はなしですよね?」
顔色が変わる。よっぽど根に持っているらしい。
「じゃあ、誰を折檻すればいいのよ?」

横島じゃなくてもいいのかよ…。

「先生はもはや道具でござるか…。」
「少なくとも私が会った時からそうよ。」
シロとタマモは微妙だが同情する。おキヌは横島の折檻を避けようと、
「じゃあ…………。」
さらば、カオスっ!(死なんが…)


結局おキヌは横島の看病に行くことに。





「此処は…。」
眼が覚めた。頭がまだうまく機能していない。
「横島さんっ!」
おキヌが顔を覗きこむ。
「あ、あれっ?おキヌちゃんだよね?」
寝ぼけ顔で相手を確かめないと分からない。とりあえず上半身をベットから起こす。おキヌは泣きながら横島に飛び付く。
おキヌが看病をして三日目の事だった。
(あぁそうか。ラボロスを倒しておれも倒れたんだ…。)
やっと今の状況を理解する。頭の回転も戻ってきた。彼女の温もりを感じる。
(そういえば記憶をまだ戻してなかったけな…。こうなったら此処で何かするしかないな…。)
横島は皆の記憶が戻る直前に気を失ったので知らなかった。
「横島さん…?」
おキヌは抱き着いても反応がない横島の顔を覗きこむ。
「………。ごめんおキヌちゃん。」
「えっ?」
そう言うと横島はおキヌを押し倒した。
「きゃああああ!横島さん!?」
「ね〜ちゃんがええんや〜!」
記憶を戻そうと奮闘する横島。おキヌにとってはいい迷惑だ。
「い、いい加減にしていださい。」
おキヌのアッパーが見事に横島のあごに命中する。
「しかたないんや〜。これも記憶を戻すためなんや〜!」
男の涙を流しおキヌに訴える。
「記憶?もう戻りましたよ。」
「へっ?本当に?」
さっきまでの涙はどこにやら…。
「はい。横島さんが最後に言ってくれたでしょ?」
「おれ何か言ったっけ?」
意識が朦朧(もうろう)としていたので、覚えてなかった。
「もう!言ったんですよ。覚えてないんですか?」
「あはははは…。実は何にも覚えてない。」
頭を掻きながら横島は答えた。おキヌはそんな横島に抱き着く。
「おキヌちゃんがいてよかっただろ?って言ってくれたんですよ。」
「えっ?あの、おキヌちゃん?」
さっきも抱き着かれたのに今回はかなり動揺している。
場の雰囲気がさっきとは違った。
「大好き…。」
横島は頭が真っ白になった。何も考えられない。しばらくこの状態が続く。
「横島さんは私の事をどう思ってるんですか?」
抱き着いているのでわからないがおキヌの顔はかなり赤い。
「お、おれもおキヌちゃんの事が好きです…。」
横島は突然の告白に驚いたが、もう迷いはない。
「嬉しい…。」
そう言ったきり、おキヌは横島をずっと抱きしめていた。


そして今に戻る

「暇だ…。」
昨日はおキヌはもちろん、タイガーやピート、雪之丞が見舞いに来た。
彼等は騒ぐだけ騒いで帰って行く。
結局次の日退院した。


場には気まずい雰囲気が流れていた。
「ですから独立をします。」
「………。」
美神は黙ってしまう。辞表の文字は横島らしくあまり綺麗ではなかった。
場の空気が時間が経つたび悪くなる。横島は美神を見つめていた。美神も見つめれている事に気付く。
「べ、別に横島君は要らないのよ(シロが居れば)!ただ、他のメンバーを連れて行かれるのが困るのよ!」
「別に誰も連れて行きませんよ。」
連れて行く。なんて言ったら前日の折檻が来るに違いない。
「おキヌちゃんはどうするのよ?」
この事務所にとって大きな戦力になるおキヌが抜けるのはかなりの痛手だ。
「う〜ん。それとこれとは関係ないんじゃ…?ただおれが独立したいだけですから。」
おれの部分を強調する。
横島にとっては出来るだけ美神の折檻を避けるために発した言葉だったが、逆に折檻を呼び込んでしまった。
「だ、だからおれが何を……ぐふっ!」
「うるさいっ!」
「ふぁい…。」
壁に顔をめりこんだまま返事をする。
「おキヌちゃんの気持ちが分かるの?」
「えぇ、付いて来るって言ってますけど。」
いつの間にかしらんが完全回復した横島は答えた。
「じゃあ何で連れていかないのよ?」
「だってこれはおキ………ぐぇっ!」
美神のデスクの下でお腹を押さえて悶絶する。
「だってじゃない!守りたいのなら私から奪ってでも連れて行きなさいよ!」
「………!」
横島は下を向いて黙ってしまう。
「はぁ、だから鈍感なのね…。たぶんおキヌちゃんの事だから気を使って言い出せないわよ。」
場を沈黙が支配する。
「じゃあ美神さんのか所から引き抜いていいんですか?」
またも完全回復した横島は言う。
「いいわよ。」
ケロッとした顔で言ってしまう。
「はぁ?大事な職員じゃないんですか?」
「じゃあ要らないわね?」
「いえ、そりゃ〜おキヌちゃんは傍にいてほしいけど…。」
横島は美神がなぜ許すか分からない。
「おキヌちゃんはね、私にとっても大切な人なのよ。だから好きに生きてほしい。別に横島君のためじゃないんだから!」
横島は納得する。なんだかんだ言っても美神とおキヌの絆は強かった。
「ありがとうございます。いろいろと迷惑をかけて…。」
「いいのよ。そのかわりしっかり守るのよ!そのかわり退職金は無しね。」
「ははははは。美神さんらしいっすね!」


その二日後、横島除霊事務所は完成した。
「これで荷物は全部だな…。ちょっと休憩しよう!」
「私、お茶入れてくるわ。」
「あぁ。頼むよ愛子。」
愛子は卒業して、そのまま学校に残り教員の手伝いとして残ったのだ。
たまたま事務所が出来るまで暇だった横島が学校に行った時に誘った。
「私、いなり寿司!」
「お前、昼に食べただろ?」
タマモは横島が独立宣言した次の日に家に押しかけて横島を燃やした。
最初に連れて行けと言ったのはタマモだったからだ。


「す、すまんタマモ…。」
見事に黒焦げに焼けていた。
「じゃあ、連れて行くのよ。」
「み、美神さんがいいって言ったのなら…。」
その後、タマモは美神を説得して横島の事務所に移る。
結構簡単に許してくれたらしい(タマモ談)。

ここで問題になったのはシロだ。かわいそうと思ったがあっちの事情も知っているだけに連れていけなかった。

「せぇんすぇ〜い!なんで置いて行くでござるか?せっしゃもお供するでござる!」
タマモが訪ねて来た次の日にシロが来る。あぁ、五月蝿い。
「だめよ、あんたじゃ。」
タマモは事務所が出来るまで居座っていた。
ただし寝るときは狐の状態というのが条件だった。
狭い横島の部屋で二人は暴れる。
「だぁああああっ!二人供は連れて行けないんだよ!美神さんの事を考えてみろよ!」
「じゃあ私が先に言ったから決定ね!」
「こんなグータラ狐を雇うのは間違っているでござる!ね?先生!」
「私だって働くわよ!GSを目指してるんだから。」
えっ?って顔をする横島とシロ。
「へっ?お前、GSになるのか?」
「えぇ。どっちにしろ、事務所で働くんだから資格があったほうがいいわ。」
「(まずいでござる)せ、せっしゃも目指してるんでござる!」
今の発言はかなり怪しいが、どちらも一歩も引かない。
「決めた!今回はタマモを連れて行く!」
笑顔のタマモとは対象的に泣いているシロ。
「せぇんせ〜い!酷いでござる!」
「話を最後まで聞け!両方GSになるんだろ?試験でタマモに勝ったなら連れて行く!それまで美神さんの所で修行しろ!」
「うぅっ…。」
最初は泣いていたが、納得したらしい。
「分かったでござる!実力で先生の事務所に行くでござるっ!」
「そうか。頑張れよシロ!」

と言うことで解決した。


事務所が出来てから、おキヌもこっちに移って来る。
皆の住居は決まってないが、ほとんど決まったも同然だった。
「じゃあ、タマモと愛子は事務所でいいな?」
二人はもちろん了解した。
「あとおキヌちゃんだけだな…。此処でいいかな?」
「わ、私…。」
と、おキヌは自分の意見を伝える前に代弁されてしまう。
「何言ってるの横島君!家に連れて行きなさいよ!」
「な、何言ってんだ!相手は高校生だぞ!それにおれの部屋に来たことあるだろ?」
しかし横島の口撃も空しくタマモと愛子に押し切られてしまう。何もしてないおキヌは横島の家に同居することになる。
もちろんおキヌは喜んでいた。
他方では美神除霊事務所は新しいGSを雇ったとか…。


とりあえず横島除霊事務所はスタートした。

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