ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌの夕焼け9 〜空間隔離なのね〜


投稿者名:nvere green
投稿日時:(05/ 3/18)


本当は分かっていた。みんなが自分を必要としていて、自分にはちゃんとした居場所があるという事を…。
しかし自分を必要とされるだけの力があるのだろう?怖かった。
必要とされた自分がその期待に応えられかどうか…。
このまま自分を必要としている人の元へ戻ったら彼女は受け入れてくれるだろう。それであいつは許してくれるのだろうか?




ルシオラ…。



妙神山で修行した横島は、小竜姫の勧めで世界でもトップクラスにあたる修行場で沢山の事を学んだ。これまでの横島の柄にもなく、何かに取り付かれたように虎視眈々と修行に励んでいた。
強いて言うと意識の持ち方の違いといった所か。
妙神山の修行は横島の強さだけではなく意識の持ち方までも換えてしまった。
それはどうやって自分の負った心のキズを乗り越えるかということを・・・



−妙神山の門を叩いてから四ヶ月

横島はアメリカの空港に居た。
「ふぅ〜。さて、日本に戻ったら何からすればいいんだ…。やる事が多すぎてワケ分からん。」
飛行機のシートに腰掛け、遠い眼で窓に映った景色を眺めていた。
「とりあえず小竜姫様の所から行くかな…。それからカオスのとこかな。そしてみんなの記憶を…。」
優先順位を決めていく。エンジン音が聞こえる。
空高く上がっていく飛行機。青く澄み切った空に向かって飛ぶ。
横島はゆっくりと波に飲み込まれていく。
そう、あの雨の日のように。眼を閉じた。
ゆっくり、ゆっくりと海の中へ吸い込まれ横島は眠ってしまった。



いつの間にこんな遠くまで来たんだろう?
あの日からおれは、あいつの事を乗り越えるため、高い高い丘を登り始めた。
そこは何も生気のない丘。誰もいない。分かっている。
自分一人で登りきらなければならない事を。
他人には頼れない。いや、頼らない。おれがその事を考えると彼女も悲しむから。分かっている。それでもおれは考える。
忘れそうだから?
そうかもしれない。
認めたくない。あの日、あの事を。

見上げても深く深く群青色に染められた景色は続く。
死ぬまでにそれを乗り越えられるか?
いや、死んだ方が良かったかもしれない。
だけどあいつは死は望まない。
死んでもいいというのは自分の意思。だがそれを望まないのも自分の意思。
蛍とおれは二人で一人なのだから。
どうすればいいんだ?
終わらない自問自答が繰り返される。
蛍は答えない。
おれも答えを見つけていない。いや、見つけたくなかっただけかもしれない。
答えを見つけたら、丘を登り切れるだろう。
登り切ったその先は蛍はいないかも?
きっと、丘を登った先には、蛍は少しずつおれの中で消えていくような気がして…。

気がつけば霧は晴れて頂上が見えた。
おれは答えを見つけたのかもしれない…。


なぁ蛍?おれは答えを見つけたのかなぁ?

蛍は答えた…。




体がぶるぶると震えている。眼を覚ますと飛行機の中だった。
飛行機は着陸している最中。
眼を擦るその手にはもう涙は無かった。



−関西国際空港

「ふうっ!座りっぱなしだったから体がうまく動かん。」
横島はあまり多くない荷物を手に取った。足はふらふらしていた。
「と、とりあえず家に帰るか。」
横島は結局、妙神山には登らず家に帰った。

ー横島のアパート

「あ〜っ!我が家が一番だな〜。」
横島はそのまままた眠りに就いた。

朝が来て妙神山には行かずとりあえずカオスの家へ行った。
多分、アメリカと日本の時差にやられて、妙神山に行くのがだるかったのだろう…。

−ドンドン−

三ヶ月前に壊したドアは直っていた。
「なんじゃ?こんな朝から…。」
カオスがドアから顔を出した。
「よっ!」
「! 小僧!帰って来たか!連絡も取れんで死んだかと思ったぞ。」
「まあ、とりあえず顔を出しに来た。これから事務所に行って記憶を一人一人戻していくよ。」
「一人一人戻す必要はない。元々一つの呪文で出来ておるから一人思い出すだけで連鎖して消えていくのじゃ。」
「そうなのか?じゃあ事務所に行くよ。」
「しっかりやってこい!」
横島は事務所に向かって歩き出した。

ー美神除霊事務所

「ちぃ〜す。」
と声を上げてドアに手を掛けたが開かない。
「あれ?留守かな…。」
「美神マスターは除霊の仕事に行かれています。」
どこからもなく声がした。
「おっ!人工幽霊号じゃね〜か。久しぶりだな!」
「久しぶり?」
(しまった。記憶が消えたままじゃね〜か!)
「い、いやこっちの話だ…じゃなくて話です!美神さんはどちらに行ったか知ってますか?」
「詳しい事は話せませんが、東京に行かれました。」
(東京か…。)
「あぁ。ありがとう人工幽霊。」
(なぜ私の名前を…。)
横島は事務所は諦めそのまま妙神山に行く事になった。

妙神山

「おぉ。横島と言ったか?久しぶりだな。また修行に来たのか?」
「久しぶりだな鬼門。今日は修行の報告だ。」
「そうか。通れ。どちらにしろ修行は出来んがな…。」
「? どういう事だ?」
「詳しい事は知らんが小竜姫様は竜族危険人物と闘って大怪我をした。」
横島は小竜姫の家へ走った。
「小竜姫様っ!大丈夫ですかっ!」
横島は部屋に入るなり、小竜姫に迫った。
「だ、大丈夫ね〜横島さん。命に関わる怪我ではないのね〜。」
横にいたヒャクメが答えた。
「ヒャクメ!戻ってたのか。」
ヒャクメのその言葉を聞いてホッとした。
「すいません。心配させて…。しかしここまでやられるとは…。」
「あれっ?横島さん霊力が前よりかなり上がってるのね〜。」
「そうですね。ここを出たとき以上に強くなっていますね。よく帰ってくれました。実は重大な話が…。」
「そんな事よりその怪我は?」
横島は「治」の文珠を出し小竜姫にかざした。
「ありがとうございます。大分、楽になりました。」
小竜姫は一息つくと話を始めた。
「実は、横島さんが来たときに話しましたが、竜族危険人物ブラックリスト入りのラボロスがほぼ完全体になってしまったんです。」
「それで闘ったんですか?」
「えぇ。やられてしまいましたけど、奴の体の一部を封印する事に成功したんです。昨日、美神さんたちにトドメをさすように頼んで来ました。」
(それで事務所にはいなかったのか。)
「奴はブラックリストの竜族の中でも最強だったのね〜。いくら小竜姫様でも敵わなかったのね〜。」
「そんなに強いんすか?じゃあ美神さんで大丈夫ですか?」
「えぇ、封印したので強さは半減とはいきませんが確実に弱くなってます。」
「元々、五つの石碑に分けて封印されていたのね〜。けど小竜姫様が封印した所を解かれたら危険なのね〜。」
「どこに封印したんだ?」と横島。
「富士の樹海なのね〜。あそこなら磁場が狂っているから直ぐには見つからないのね〜」
「しかしラボロスには特殊な能力があって…。」
小竜姫は横島に説明を始めた。


東京

「いい?今日は気合い入れて行くわよ。」
美神は声を上げた。なんせオカルトGメンと小竜姫からの依頼だ。
報酬は高額になるのは間違いない。
もちろん危険も高いのでタマモ、シロも付いて来ていた。
「今日の相手はそんなに強いんですか?」
おキヌは美神に聞く。
「えぇ、そうよおキヌちゃん!なんせ相手は竜族なんだから。」
「竜族でござるか?」
「小竜姫様がやられたのが本当ならやばいわよ。」
冷静なタマモ。
「えぇそれは本当よ!」
美神の母、美智恵が言った。
「その事を聞いたオカルトGメンが小竜姫様からの依頼をあなたに知らせたのよ。」
「へぇ。」
タマモはど〜でもいいって顔をしている。
今回は美智恵も同行する事になっているのだ。
仕事の内容を伝えた。
「………ということで、ラボロスがその封印を解く前に倒すって事なの。」
「用はラボロスを倒せばいいのね?」
美神が簡単に主旨を言い換える。
「そうよ。けどラボロスには特殊な能力があるの。」
「どんな?」
「空間隔離。って言うの。」

「空間隔離?」
横島は小竜姫に聞き直した。
「えぇ。」
「つまり、結界みたいなものなのね〜。ラボロスは霊力を使って空間を作り上げて、その中に閉じ込めるのね〜。」
「私も空間隔離を使われてしまって、全身全霊の神通力を込めてやっと脱出したの。」
「あの、そんなに強いのに美神さんに任せて大丈夫なんですか?」
横島は冷や汗をかいた。
「今はすこし体を封印したから空間隔離が使えないけど解かれたらいくら美神さんでも敵わないません。」
「もし復活して使われたら、破壊する他に脱出する手はないんですか?」
「それはあるね〜。」
とヒャクメが答えた。
「空間隔離は自分もその中にいないといけないから、倒すか、相手が自主的に解除すれば脱出は出来るのね〜。」
「その空間で倒しちまえばいいんじゃねぇか?」
「確かにその通りね〜。けど霊力で作った空間だから相手がどこにいるか分かりにくいのね〜。空間隔離がなければ小竜姫様より弱いのね〜。」
「とりあえずおれ東京に行きます!」
「それがいいのね〜。実力を発揮するいい機会ね〜。」
「記憶も戻してきて下さいね。」

横島は東京へ向かった。

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