ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫 再び修行中!!(3) 前編


投稿者名:Kureidoru
投稿日時:(05/ 3/15)







「とりあえず入る前にもう一度確認しておこうか」

振り向き様に横島は言った。


 あの後、荷物の準備を終え、四人は例の館の玄関前まで来ていた。
美神不在と、いつもと違った除霊のために遠足前の子供…のようにウキウキしてはいないが、やはり心配なのだ。
主戦力の横島の代わりに荷物を担いでいたシロが、バッグを下ろして横島に手渡す。

「え〜と、たしか神通棍が予備のを含めて3本、お札が各種、見鬼くんが1つ、結界魔法陣用チョークが2本・・・だったっけ?」
「いえ、チョークは3本ですよ」

おキヌからすぐさま注意される。あ、そーか;と言いながら、恥ずかしそうに頭を掻きながら続ける。

「…それにしても霊体ボーガンが無いのはやっぱり痛いよなぁ。あれって道具との相性とか関係なく敵にダメージを与えられるのにな」
「しょうがないですよ、美神さんならランクCの敵くらいなら神通棍一本と破魔札一枚でなんとかしていますし」
「まぁ、な。じゃあ、館に入ってからの事だけど…」

そう言いながらポケットから屋敷の見取り図を皆に見えるように広げながら続けた。

「まず潜入してからの事だけど、とりあえず状況確認だな。
見たところ敵がいなければ次の部屋に雑魚がいればいつもの除霊通りにシロとタマモが牽制しておキヌちゃんが援護、今回は美神さんの代わりに俺が仕留める役だな。
強い奴がいれば様子を見て、敵わないようなら撤退。内部の構造とか、詳しいことは後回しでいくから、これでいいか?」

三人の方を見て確認する。

「分かりました」
「了解でござる」
「まかせるわ」

 横島の説明に納得し、三者三様に返事をする。
それを見て横島は頷きながら大きく深呼吸する。

「よし・・・入るぞ!」

そう言いながら目の前のドアノブにかけていた手に力を込めた。








 ぎぃぃぃぃ・・・・バタンッ




「・・・・・うわっ、まっ暗だな〜」

 そこは大きなホールになっていた。
目の前の両サイドには真紅の絨毯がひかれた階段が二階へと伸びている。
奥へにはドアがいくつかあり、ドアの表札の「guest」のプレートから、どうやらゲストルームが連なっているようだ。
階段の両サイドにある灯火の消えた蝋燭に、天井中に張り巡らされている蜘蛛の巣、破れたカーテンなどが、なんともアレな雰囲気を醸し出している。

「シロ、見鬼くんはどうなってる?」

 玄関先だからとって悪霊がいない保障なんて全く無い。
横島は周りを警戒しながらシロに聞いた。

「駄目でござる。さっきからクルクル回っているだけでござるよ。」

見ると、見鬼くんは何処を示すわけでもなく、ひたすら回転し続けている。

「…妙だな。これだけ霊圧がビリビリ伝わってくるのに、検知出来ないなんて…」
「雑魚がここかしこに犇めいていて目くらましになっているのか、それとも敵が見鬼くんをジャミングしているのか・・・。多分、どちらかでしょうね」
「でも、少なくともこの部屋には霊の臭いはしないから、このホールはとりあえずでござるが安心出来るでござるよ」
「そうか・・・ありがと。じゃあ、まずは内部構造のチェックだな」

そう言いながら横島は再びポケットから見取り図を取り出しながら、全員を集めるた。

 しかし、説明を始めようとした横島だが、フっと、その手を休めて急に何かを思い出したように叫んだ。

「・・・!!あぁっ!そーいや完全に忘れてた!!」

そう言いながら横島は見取り図を床に置き、今度はシロの背負っているリュックに手を突っ込んで、モゾモゾさせながら何かを取り出した。

「はい、コレ。1人1個ずつ持っていてくれ」
「はい?なんですか、それ?」

 横島がリュックのサイドポケットから取り出した『ある物』をおキヌ達に手渡す。
渡された物は感触からいってどうやら二つ。
一つ目は、一見ただのお札なのだが、普通のお札より明らかに霊波が段違いに高い。
二つ目は、消しゴムより一回り程大きな物体で、淡く透き通った緑色をしている。
この二つの品、どこかで見たことがあるのだが・・・。
たしかよっぽどの除霊の時でしかお目にかかれない・・・。
そこまで考えたおキヌはハッ、とその二つ物体の正体に気が付き、今度は途端にぶるぶる震えだした。

「よ・・・横島さん・・・こ、こ、これって───?」

 体中を震わせ、消え入りそうな声で、その『物体』の正体を横島に聞く。
分かってはいるが、自分で答えを出すのが怖いのだ。
『それ』について尋ねられた横島は不敵な笑みを漏らしながら言った。

「何があるか分からないからな。ちょっと『借りてきた』んだよ」
「だ、だ、だ、だってコレ、全盛期のカオスさんが造った破魔札に、精霊石じゃないですかっ!!」
「ワハハハハッ!!俺は命を守るためには手段を選ばんのじゃっ!!その場の空気に流されるままになるほど甘ないでぇーー!!!」

 握り拳を作りながら声高らかに言う。
これまでの経験上、こんな事をしでかした横島の迎える末路を容易に予想出来る彼女は不安が拭えない。

「で、でもこれって美神さん、よっぽどの事が無い限り絶対に使わないじゃないですかっ!!無くなったらすぐにバレちゃいますよ!?」
「大丈夫だって〜。それに、可愛い弟子の修行のためなら美神さんもきっと許してくれるって」
「と、とてもそうは思えませんけど…;」
「おキヌちゃんも心配性だな〜。もしもの時は、札は紙にそれっぽく書いて元に戻しておくし、精霊石は文珠置いときゃバレないって」
「は、はぁ…」

 意気揚々と高笑いしている横島に対して、
何をどうヒイキ目に見ても、そう遠くない未来に、自分がボロ雑巾と化した横島にヒーリングをする姿がチラついてしょうがない、そんなおキヌなのであった。





「じゃあ、気を取り直して…次にどこに行くかを決めるから集まってくれ」

そういいながら床に落ちている見取り図を拾い上げ、呼集をかけた。

「今後の方針だけど、ぶっつけで富豪の霊を祓う前に、俺が霊アイテムをどの程度使いこなせるかどうか知っておいたいし、まずは雑魚霊と戦ってみたいんだけど、いいかな?」
「それはいいでござるが、行った先に富豪の霊が出ない保障は無いのではござらんか?」
「確率的にはな。けど、普通、自縛霊のほとんどは生前に思い入れがある場所に縛られているものなんだ」

横島がそう説明すると不思議そうにおキヌが質問する。

「え?私も自縛霊だったですけど、色々な場所に行けましたよ?」
「や、、、おキヌちゃん…;。おキヌちゃんはワンダーホーゲル部と代わったから移動できたんだろ…?」
「あ…そーでしたね;」

おキヌが恥ずかしそうにしているのを見て、横島は苦笑いしながら続ける。

「だから、ここの富豪の霊も生前に思い入れがあった場所にいると思うんだ。そこを避ければいいんだと思う」

横島が解説し終わったのを見計らって、タマモが至極当然な疑問を述べた。

「で、その思い入れのある場所って何処なのよ?」
「へっ・・・?え〜と、、、ど、何処だろう;?」

横島は美神の受け売りのセリフをつらづら語っただけなので、勿論そこまで分かりはしない。

「多分、こーゆーののセオリーは書斎とかじゃねーか?」

「富豪さんの寝室とかにもいそうですよね」

「拙者なら食堂あたりが怪しいと思うでござるが」

「意外とトイレなんかもヤバいんじゃないかしら?」

「ト、トイレに一体なんの思い入れがあって言うんでござるかっ!?適当なこと言うんじゃないでござるっ!!」
「なっ!?あんたこそ食堂なんかに何の思い入れがあるってゆーのよっ!?ただあんたが腹が減ってるだけなんじゃないの?」
「し、失礼なっ!別に拙者は腹なんか減っていないっ!!」
「ムキになるところがまた怪しいわね?ほらほら、何か芸でもしたら食べ物の一つくらいあげるわよ〜?」
「ば、馬鹿にするなぁぁぁっ!それに、拙者に犬と同じ扱いをしようだなんて不届き千万っ!!この場で剣の錆にしてくれるっ!!」
「はっ!やれるものならやってみなっ!!」
「お前らええかげんにせんかぁ───ッ!!!」

四人が思い思いの考えを張り巡らせるが、意見がまとまる様子は全く無く、そればかりか少々ヒートアップなご様子。


 しかたがないので、書斎と、寝室と、食堂、トイレ以外の場所を捜索することにする横島一行なのであった。






 その後、富豪の霊がいなさそうで尚且つ雑魚霊がいそうな場所を話し合った結果、2階のL字廊下の一番奥にある部屋、ダンスホールに決まった。
昔から、人が集まる様な場所には霊的存在が溜まり易いからだ。
で、現在四人はそこに向かって長い長い廊下をテクテク歩いているところである。

 ちなみに隊列は、先方が横島とタマモ。間におキヌ。後ろがシロの順番だ。
今までの除霊経験で、この隊列が一番スムーズに敵の攻撃を迎撃出来るからである。
最も、美神不在の今は美神の代わりに横島が先方である違いはあるが、それでもこれが肌に合うのでこうなったのだ。


「しっかし、広い屋敷でござるなぁ…。しかもここまで暗いと、地図無しでは迷ってしまうでござるよ」
「そうね、気をつけて進みましょう」

 シロの呟きにおキヌが同意した。
時刻はすでに六時を過ぎ、山中の館は闇色に染まりきっていた。
手元の懐中電灯以外に周囲を照らしてくれる物は何も無い。
…ってゆーか女性なら少しくらいビビってもいいくらいに見事に真っ暗である。
全く動じていないのは日々の除霊経験からの賜物か、あるいはただの野生児と天然だからなのか…。



 後列パーティがそんなことを話す中、前列パーティに男なのにビクついている者がいた。

「な、なぜお前らはこのクソ暗い中を平気で歩いて行こうとするんだ…?」
「なぜって…そーしなきゃ目的地に辿り着けないからに決まってるじゃない」

オドオドしている横島の隣で何でも無い風にタマモが答える。

「だいたい暗い所に来るなんて珍しい事じゃ無いじゃない。いい加減慣れたら?」
「怖いもんは生理的に怖いんだよっ!それに、自分で提案したが、これからコレ使って除霊だろ?ううっ・・・緊張する・・・」

そう言いながら淡い光を放つ神通棍をぎゅっ、と握った。手には汗がびしょりしてたりする。

「でも、霊アイテムって公式に売り出されてる物なんでしょ?だったら、誰でもオールマイティに使いこなせる物なんじゃないの?」
「いや、そーでもないさ。出掛けの事務所でもチラッと話に出たけどさ、俺って前に冥子ちゃんの所で除霊の手伝いをした時があったんだけど…」

タマモが聞きなれない名前を聞いて眉をしかめる。
が、ハッと思い出したように言った。

「もしかして冥子って、時々美神さんに会いに来る女の人?」
「ん?あぁ、そーいやお前とシロって直接的な面識は無いんだったな」
「まぁね。あの人が事務所来ると嫌でも霊圧がビリビリ伝わってくるわ。詳しくは分からないけど、ハッキリ言ってあの人、天才よ」
「ま、まぁ、それは誰もが認めるんだけどな…」

そう言いながら苦笑いして言葉を濁す。

「?認めるけどなんなのよ?」
「いや、冥子ちゃんって精神的にアレな所があってな…。」
「ふ〜ん…(性悪なのかな?そーには見えないけど)」

横島が詳しく語らなかったこともあり(別段興味も無かったし)タマモはこれ以上追求はしなかった。
ジト汗を流しながら横島が話を元に戻す。

「い、いや、話が反れちまったな;。まぁ、彼女の手伝いに行った時、霊アイテムだけの除霊のアシスタントをした事があるんだよ」
「あんな天才にアシストなんて必要なの?むしろ横島、足手まといだったでしょ?」

あの霊圧はそんじょそこらのGSのモノとは訳が違う。
いつも美神の側にいるタマモがそう思うのだから、この返答は当たり前である。
それを聞いて横島が苦笑いしながら続けた。

「いや、これがまた文字通り『死ぬ程』大変でさぁ。冥子ちゃん、これがまた全然使いこなせなかったんだよ」
「へ〜!それは意外ね。でも、なんでなのかしら?」
「それが今回の仕事で俺が悩んでる事なんだよ。とどのつまり、霊アイテムと使用者との相性だな」

言われたタマモは、普段霊アイテムの力に頼らないせいかピンとこない。

「相性?たしか入り口でもそんな事言ってたけど、そんなのあるの?」
「そりゃあ、な。GSつったって、皆、色んな方法で戦うだろ?俺やシロみたいに何も無い所から霊波刀を出したり、美神さんやおキヌちゃんみたいに道具を使って道具の真価を引き出したり」
「あぁ、そう言われれば皆違う戦い方ね」

今更って言われるかもしれないが、彼女達だって命を懸けた除霊中に仲間の除霊方法を気にしている程の余裕は無い。
言っている横島本人だって、こんな立場にならなかったら考えもしなかった事であろう。

「独自の戦闘スタイルが身に染み付くと、他のやり方はあんまり馴染まないんだ。ま、才能うんぬんの問題もあるけどさ」
「ふ〜ん…。あっ、じゃあさ、その理論でいくと、この四人の中で一番道具を使いこなせるのって…」
「ああ、案外おキヌちゃんかもしれねーな」

そう言いながら二人は、後ろの大人しそうな少女をチラリと見るのであった。






  〜後編に続きます〜

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