ザ・グレート・展開予測ショー

おキヌの夕焼け4 〜夢 そして決意


投稿者名:nvere green
投稿日時:(05/ 3/13)

現場に着くとそこは神社の近くのビルだった。
「なんか不気味ですね…。」
そのビルは異様な雰囲気を漂わせていた。
「数は少ないし文珠を使う必要はないな…。おキヌちゃん。ネクロマンサ−の笛で動きを鈍らせてくれないかい?その間に霊波刀で倒していくから。」
横島たちは文珠とネクロマンサーの笛しかなくかなりの軽装備だった。
「分かりました。」
おキヌはネクロマンサーの笛を構えた。
「行くぞ!」
横島はビルのドアを開いた。そこには五体の悪霊がいた。悪霊はドアの音に気付き横島とおキヌを目掛けて飛び掛かった。
「おキヌちゃん!」
こくっ、と頷いたおキヌは笛を吹いた。悪霊の動きは鈍り身動きも取れずもがいていたが成仏まではしなかった。
「よし!ここにいて!」
横島は霊波刀を出現させ悪霊を斬り払っていた。三体目を倒したところで四体目を斬り掛かるろうと霊波刀を振りかぶった。その瞬間、霊の動きが急に活発になり横島の腹部を目掛けて襲いかかって来た。おキヌの息が続かなかった。とっさにサイキックソーサーを展開したが遅かった。

−ドコッ!−

「うぐっ…!」
「横島さんっ!」
気を失いそうになったが必死にこらえ、さっき展開したサイキックソーサーを投げ付けた。あと一体。しかし最後の悪霊はおキヌの頭上にいた。
「おキヌちゃん危ない!」
横島はおキヌの所まで走った。悪霊はおキヌの頭を目掛けて襲った。横島は霊波刀を振ったが避けられ悪霊はそのまま下降しておキヌの足元を狙った。横島はさっきのダメージで動きが一瞬鈍った。

「きゃああっ!」
悪霊はおキヌの足を襲った。
しかし負けじとおキヌはその場に倒れながらも傷を我慢して笛を吹いた。
「よし!伸びろっ!」
伸びた霊波刀は悪霊を捕え消えていった。
「おキヌちゃん大丈夫!?」
横島は「治」の文珠を出しおキヌの足にかざした。おキヌの傷は回復した。
おキヌも横島にヒーリングをかけた。
「おキヌちゃんごめん。怪我さしちゃって。」
横島は本当に悪かったという顔をしていた。おキヌもそんな横島の顔を見て、
「いいですよ。私が除霊しませんか?って頼んだんですから。」
「本当にごめん。とりあえずこのビルから出ようか。」
二人はビルを後にした。
傘をさすと傘はボロボロだった。
「あっ。そっか…さっきの悪霊が…。」
おキヌが傘を持っていたので悪霊の攻撃を受けたときに壊れてしまったのだ。しかもここから事務所に戻るとかなり濡れてしまう…。
簡単に言えば横島のアパートの方が近い。二人ともその事は分かっていた。しかしおキヌはそんなことは言えないし、横島は美神の事を考えると恐くて誘えなかった。しかしおキヌの身体を別の意味ではなく真剣に考えたなら、家に来てもらうしかなかった。
「おキヌちゃん。もしで良いんだけど、よかったらうちに来ない?このままだと風邪引くし…。」
おキヌはその言葉がとても嬉しくて言葉がでなかった。
「やっぱり嫌だよね?じゃあ、おれ事務所に泊まるよ。」
おキヌが黙っていたので、鈍い横島は逆に気を使ってしまった。
「あっ、いえ、嫌じゃないですよ。じゃあ行きましょうか。」
おキヌは横島に慌てて返事をした。結局二人ともアパートに着くまでにはびしょ濡れだった。家に着くと二人とも言葉を無くした。
部屋はゴミというゴミで荒れ果てていた。前回来た時よりも格段に汚く、やはり横島の強さに比例して部屋の汚さも勢いを増していたのか?
おキヌには笑えなかった。
その場で固まってしまったおキヌに横島が声をかける。
「へ、部屋かたずけるから先にシャワー浴びてていいよ。風邪引くし…。」
おキヌはその気持ちを素直に受け取った。
「あとこれも。」
横島が渡したのは「乾」の文珠だった。おキヌはシャワールームに入り、横島はびしょ濡れのままかたずけを開始した。あまりの部屋の汚さで「覗く」という言葉はすでに二人の前から消えていた。おキヌはシャワーからあがり次に横島が入った。おキヌはその間に自分の部屋でもないのに手際よく部屋をかたずけていく。横島が部屋に来たときにはすべてかたずけていた。
「じゃあ寝ようか…。」
少し意識したのか(意識しまくり?)、横島は少し小さな声でおキヌに言った。
「じゃあ、おれあっちで寝るから。」
あっち?横島の部屋はあまりも小さすぎてあまり距離は変わらない。
しかし自分の煩悩に負けそうな横島は少しでも距離をおく作戦にでた。
そこは玄関だった。
「そんなに気を使わなくても…。大丈夫ですよ。私は横島さんを信じてますから。」
しかしこれだけは横島は譲らなかった。結局横島は玄関、おキヌはいつも横島が寝てる場所で寝た。


「横島さん起きてます?」
「起きてるよ。」
二人とも緊張して眠れなかった。
沈黙…
次に話しかける言葉がみつからなかった。しばらくして、
「今日は本当にごめん。おキヌちゃんを守るとか偉そうな事言って、結局怪我しちゃったし…。」
横島はその事が悔しくて忘れられなかった。
おキヌはうまく横島を励ます言葉が見つからず何も言えなかった。
「おれ、もっと強くならないとな。」
横島は呟いた。その言葉にはおキヌは声をかけれた。
「横島さんは今のままで十分強いですよ。」

朝が来た。横島は頭がひどくガンガンしているのが分かった。おキヌも少し喉が痛かったが熱は出さなかった。
「大丈夫ですか横島さん?顔真っ青ですよ。」
おキヌが心配そうな顔で覗き込んだ。ちなみにこの家には体温計などない。あたりまえだ。横島は健康だけが(強いて言うなら煩悩も)とりえで怪我以外に病気などしたことない。それでも見て軽く40℃前後はあると分かった。
「大丈夫。今日は除霊の仕事無いから美神さんに休むって伝えといて。」
おキヌには今日仕事があった。たいてい仕事を組むときは美神とおキヌのペアが多いのでこんなことも少なくない。
「じゃあ私仕事に行って来ますから。美神さんに伝えときますね。夕方また来ますから。」
「ありがとう。よろしく頼むよ。」
おキヌは心配そうな顔を見せながらも帰って行った。
急に家が静かになった。横島は風邪を治す事に専念するために寝ようとしていた。しかし昨日の事が頭に残って消えなかった。
自分が大切な人を守りきれてない事を。
そもそも横島は美神の方に好意を持っていた。しかしアシュタロスの事件の後に世話を焼いてくれたおキヌに傾いていった。おキヌとしては力不足だと感じていたが…。そんな事を何度も繰り返し考えているうちに睡魔に襲われ眠ってしまった。

夢を見た。

そこはどこか分からないが大都市で周りにいるのは日本人だった。
(ここは日本…?)
周りには横島の知っている人は誰もいない。
とりあえず横島は歩いた。歩き続けた。
気付くともう後ろには誰もいなかった。
見渡す限りそこは灰色の世界。空は雲ひとつなかった。
横島は言葉を失った。
横島は叫んだ。
誰も答えてくれない。
横島はその場に崩れ落ちてなにも考える事が出来なくなり、歩く気力さえ無くしてしまった。
すると前に見慣れた一人の女性がどこか遠い景色を眺めていた。
「美神さん!?どしてここに!?」
横島は駆け寄り肩を掴もうとした。だが横島の手は擦り抜けた。幽霊ではない。しかし美神はすぅっと消えていった。
「!!?」
横島は腰を抜かしてしまい、言葉がでてこない。すると前にタマモらしき人が背中を向けて立っていた。近付くとタマモらしき人影は消えていった。

シロも、愛子も、タイガー、エミ、ピート、マリア、美神隊長、弓、伊達、小龍姫、メドーサ、ヒャクメ、六道冥子、唐巣神父、厄珍・・・・・・。
みんな消えていった…。
諦めかけたそのとき、おキヌがいた。横島は立ち上がりおキヌに近づいた。
肩を掴めた。横島は喜びおキヌの顔を見て話しかけた。
「おキヌちゃん!よかった!やっぱりおキヌちゃんは優しいよ!」
と話しかけた、が反応は無い。おキヌはまったくの無表情のまま、動かなかった。横島はその場で膝をつき泣いた。
「うわぁあああああああ!!!」

目が覚めた。
目には涙が溜まっていた。汗がだらだら出ていた。
「横島さん!だ、大丈夫ですか?」
横にはおキヌがいた。
「あれ?なんでおキヌちゃんがここに?」
「何言ってるんですか?夕方にまた来るって言ったじゃないですか!電話にも出ないし…。」
おキヌの向こうにある窓を見るとオレンジ色に染まった空が見えた。
自分はかなりうなされていたらしい。
「また、あの人の夢を見たんですか?」
聞かれたくない質問をされてしまった。
「違うよ。ちょっと熱にうなされてただけだって。」
「嘘。」
「…。」
横島は言いかえせなかった。いやむしろこの方が良かったかもしれない。
本当にルシオラの夢ではないが、今回はそうした方が良いと思ったから。
皆が自分の前から消えていき、おキヌちゃんまでも自分の言葉に反応しなかった。なんて言ったら彼女はもっと傷つくだろう。おキヌもこれ以上は言わなかった。
夕食はおキヌがお粥を作ってくれて、早く寝るようにとすぐ帰っていった。
一人になった横島は夢の事を考えていた。

(あの夢が本当に現実で起きたら、おれはどうすればいいんだ…?
おれは皆を守りたい。もう自分の前で人が死ぬのを見たくない!)

そして横島は決意してその事を強く思った。



もっと強くなりたい…。


今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa