ザ・グレート・展開予測ショー

取るに足らない日々


投稿者名:Arih
投稿日時:(05/ 3/13)


○月×日 日曜 晴れと曇りが半分位


私がニンゲンの群れの一つ(彼ら的にはカイシャ、という)、正確には『美神除霊事務所』とやらに住むことになって一年が経ったらしい。

ニンゲンの暦に然程興味も湧かなかったのであまり気にしてなかったのだが。

とにかくそういうことで、おキヌちゃんがそのことを祝してご馳走を作ってくれた。

お揚げのフルコース。美味しかった。バカ犬の「お揚げなんかよりも肉の方が旨い」という、日本全国に一千万人はいるであろうお揚げ信者を敵に回す発言にはムカついたが、食べ始めてしまえばその発言を忘れてしまえる位に。

というか、今日はもうそのあたりのことしか覚えていない。恐るべし、お揚げ。

なんで日記なんて面倒なものを書いているのか、ということも思い出せない。これもお揚げの魔力か。

少し気になるが、まあいい。どうせまたバカ犬が何か言い出したのだろう。気にしないことにする。

三日坊主という事態にさえならなければ満足だ。





○月△日 月曜 雨


二日目にして早くもやる気が出ない。でも日記ごときで三日どころか一日坊主になった、というのがシロにバレたら死にたくなりそうなので書いている。

今日は別に何もなし。雨がふっていたので仕事も無し。

相変わらずミカミが理由も無くヨコシマを殴り、ヨコシマが血を振りまきつつ殴られ、おキヌちゃんがそれを止め、シロが何故か吠える、そんな一日だった。


日記を書き始めた理由が未だに思い出せないのが何故か気になる。





○月◇日 火曜 雨のち晴れ


とりあえず二日坊主は脱出。明日書けば目標達成。待ち遠しい。

今日は午後から晴れたので仕事。しかし一件しかなかったので全員で行く。

私とシロは別に必要ないのに連れて行かれた。その辺りのことを聞いてみる。

曰く、「あたしが働いている時に部下が働いていないのはムカつく」らしい。

ごもっともだとは思う。思うが、美神が言うと釈然としないのは何故だろう。



何か重要なことを忘れている気がするが思い出せない。





○月*日 水曜 晴れ


目標達成。これで心置きなく止められる。満足。

昼ごろ、ヨコシマが出勤するなり真面目な顔して

「美神さん、大事なお話があります。」とか言い出した。

一瞬、静寂に満ちる室内。

「な、何?」

美神の声にも、やや緊張の色が混じっている。

耐えられなくなる程高まる緊迫感に、なんとなく周りを見ると、おキヌちゃんが視界に入る。

彼女は何故か、驚愕・悲哀・焦燥の三種の表情を順々に浮かべた後、細かく震え始めた。

そしてヨコシマが再び口を開いたその時。

「実は・・・「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」ぷろっ!」

獣である私の動体視力は、ニンゲンのそれよりはるかに高い。その私ですら捉えきれないほどのスピードで閃く、フライパンらしきモノ。

そして飛び散る血潮、弾け飛ぶ灰色の何か。・・・・・・あれは・・・・・・脳漿?

「あ、あの・・・・・・ご、ごめんなさいっ!」

顔をトマトみたいに紅く染めたまま、部屋を走って出て行くおキヌちゃん。それをミカミとシロが追いかける。

まあ、彼女のあの行動の理由については大体察しがつくので放って置くことにして、既に再生を開始しているヨコシマに聞いてみる。ちょっとグロい。

「アンタ、何を言いかけてたの?」

「いや、給料上げてもらおうと思っただけなんだけど。」

「・・・・・・・・・・・・」



まっ、いいか・・・・・・





○月#日 木曜 晴れ時々曇り


なんとなく反骨心で続けてみる。

なんとはなしにシロの散歩に付き合ってみた。

失敗だった。

チョウシコウ、って何処? なんか水平線がみえるんだけど。なんで午前に出たのに帰ったら暗くなってるの?

夕食後、その辺りのことを、普段シロに付き合って散歩しているヨコシマに聞いてみた。

「お前はまだいい方だ。俺なんてなあ、この前チャリで高速乗せられて岩手県まで連れてかれたんたぞ。」

戦慄する。あれであいつは遠慮していたのだ、ということに。そしてあいつの本気に付き合って尚生きている、ヨコシマの生命力に。

「・・・遠野ってどこだよ!? なんか農村広がってんですけど!っつーかそもそも高速を徒歩、いや徒走で行くなよ!? そして時速120キロをマークするなよ!? 俺、道交法で指名手配されそうで怖いんだけど!? しかも帰ったら次の日の昼だったんですけど!!」

段々興奮してきたのか、語気が荒くなってきた。このままだと延々と愚痴を聞かされそうなので早々に切り上げることにする。

「わかった、わかったわよ。私からもシロに言っとくわよ。」

「・・・ああ、頼む。このままだといつか・・・・・・いや、近いうちに俺は死ぬ。」

本当にそうなりそうで怖い。あいつを犯罪者にしたくは無い。

「でも、お前も優しいな。なんだかんだで最後まで付き合ってんじゃねぇか。」

「!?」

予想外の指摘。頭が真っ白になる。





「あが・・・・・・あ・・・・・・な・・・な、ん、で・・・?」

我に返ったとき、ヨコシマは炭化していた。





○月$日 金曜 曇り


もはや惰性で続けている。

ヨコシマは覗きの常習犯だ。何故か、ここではミカミしかその対象にはならないが。

そのことは皆も知っている。だから他の者は安心してお風呂に入れるから良いことのはずなのに、おキヌちゃんとシロは少し残念そうな顔をする。

まあ、その理由もわからなくはないのだが。乙女のなんたら、ってやつ。

話がそれた。今日もヨコシマは覗く→見つかる→星になる、の定番コースを当たり前のようにこなしていたが、今日はいつもと違った。

ヨコシマの再生がいつまで経っても始まらないのだ。慌てておキヌちゃんとシロの二人がヒーリングを開始。やはり再生しない。

さすがに不安になってくる私たち。限界に達したのか、救急車を呼ぼうとしたおキヌちゃんを制して、落ち着き払ったミカミが小声で何事かをヨコシマに語りかける。

「っ!! どこじゃーっ!? 何処に、何処にぼんきゅっぼんであはんうふんなねーちゃんが!?」

再生速っ! もう完全体!? ってかグロっ!

「ね? 大丈夫でしょ?」



はあ、色々な意味で良いコンビだわ、この二人。





































そして土曜日。




「っ!? ちょっとヨコシマ、アンタなに他人の日記勝手にみてんのよ!」

どうやら見られたらしい。別に見られては不味いものを書いた憶えは無いが、羞恥心は感じるので火刑に処することにする。

「いや、そこに落ちてたし、表紙に何も書いてなかったから・・・ってちょっと待っ・・・・・・」


断末魔。


「ふう、死ぬかと思った。」

ヨコシマ、三分後に完全復活(過去有数の早さ)。カップうどんみたい。グロいけど。

「それより良いのか?こんな所で油売ってて。」

「は? 何がよ。」

意味がわからない。だからちゃんと聞いてみる。

「いやお前さ、明日の日曜、お揚げ研究会だっけ?の論文発表会があるからって、油揚げの食べ方について研究日誌を書くって言ってたじゃんか。」

あ。

「偶然とは言え、日記を見ちまったからさ、ちょっと心配になって聞いてみたんだが・・・・・・駄目そうだな。」





し、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!

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