ザ・グレート・展開予測ショー

目覚めて見れば…10


投稿者名:K.M
投稿日時:(05/ 3/12)

「雨だの…」

「雨だな…」

頬杖を突きながら窓の外を見ている心眼に見ながら気の抜けた相槌を打つ。

正直疲れているのだ。一応こないだの美神さんの除霊の報酬100万で(まさか本当にくれるとは…)、

金銭的にはとても楽になりったが、やはり子供と言え女の子と一緒の部屋と言うのは余り宜しくない。

別に俺自身はロリコンでもなんでもないが不可抗力部屋を仕切っているカーテンが捲れ、

心眼の着替え等を覗いてしまい三途の川を危うく渡りかけたりと細かい事で気苦労が絶えないのだ。

さらに、唐巣神父の下での修行のほか美神さんの手伝いもある。

別に美神さんの方が行かなくてもいいのだが、3.4日行かないと美神さんには『恩知らず』だとか言われるし、

おキヌちゃんには悲しい顔で『横島さん最近来てくれませんでしたね…』なんていわれてしまうのだ。

(俺…本当に事務所辞めたのか?)

ほかにも、学校の方でも除霊委員なる面倒事を押し付けられてしまうし…『もう、やってられっか!!』て言うのが現状だ。

「む〜!随分と投げやりな答えなだ?主様」

「…勘弁してくれ〜」

俺は情けない声を出し心眼に抗議をしていると不意に俺の部屋の中にチリン!チリン!と鈴を鳴らすような音が響く。


目覚めて見れば…10


「何だこの音は?」

「…休むな〜働け〜って音…あーーー!!俺に休息は無いのか!!」

「…何だそれは?」

そう言って小さく首を傾げる心眼の頭を撫でながら横島が『事件』と小さく告げる。

この音は'警/戒'の文珠から発せられる音だ。この音色は美神の事務所で小さくない事件が起きた事を示している。

(まだ風水盤の事件には早すぎる…そういえばハーピーの事件が有ったな…それか?)

すぐさま外出の準備のため服を着替えアマガッパを着込み必要そうな装備をカバンに詰め込み外出の準備をすると共に心眼もいそいそと動き出す。

「あっ…今日は連れて行かないぞ」

「なぬ!バンダナになってもダメなのか?」

その言葉に心眼が驚きの声を上げ横島を睨み付ける。

最近心眼は霊力が付いてきたためか、触媒になったバンダナに戻ることが出来るようになったのだ。

そのため普段横島が外出するときはバンダナになり一緒に行動している。

「うっ…しょうがないだろ…今日は'目的'に関係する仕事なんだから」

「どうしてもか?」

「…は、はい」

「ぐぬぬぬぬ…」

唸り出す心眼に対し何とか機嫌を取ろうと横島が必死になって頭を巡らせる。

「うぅぅ…あっ!そ、そうだ、唐巣神父に頼んで今週一人で除霊を許可してもらえたんだその時心眼と会ったことにするから、

そしたら一人で出歩いて大丈夫だから…その…今日は勘弁してくれ」

心眼がう〜んと少し悩んでからシブシブ「今日は勘弁しよう」と言った。

「じゃあ、行ってくるからな」

「…うむ…気をつけてな…それと約束を忘れるなよ」

横島はそう心眼に見送られ自宅を後にした。

………
……


「さてと…どうするか?」

ビルの屋上から双眼鏡で美神の事務所を覗きながら思案する。

偶然を装って近くで美神の傍に行くのも一つの手だが、そうすると美智恵と会う確立が高い。

別に今の美智恵が何かしたと言うわけではないのは判っているが、

わざわざ会いたいとは思わない、未来の美智恵は用も無いのに話しかけたりしなかったが今回来る美智恵は、

そんな気使いを持っているわけが無いので正直横島としても対応に困るのだ。

そのため濡れ鼠になりながら双眼鏡を使いストーカーのような事をやっている。

心眼に'目的'のためだと嘘を言って連れて来なかったのもこんなストーカ紛いの事をやって何も説明をしないというわけには行かないからだ。

「う〜…なんか楽しそうだな…はぁ…何やってんだろ…俺」

双眼鏡から見える事務所は雨に濡れる必要の無く、暖かそうだ。

それに今回来た'玲子ちゃん'のためか随分と楽しそうだ…(美神は疲れて死にそうになっているが)

向こうと比べると自分が酷く惨めに感じるのだ。

(はぁ〜俺って狭量なのかな?)

そんなネガティブな事を考えている横島の脳裏に突然聞き覚えのある思念が頭に響く。

『おい…お〜い』

『うん?心眼?なんか用か?』

『いや…何と言うか…お主のラインの方から何とも言えない感情が流れてきて…な…その…心配で…』

横島の問いにシドロモドロになって言い訳をする心眼にピンと来るものがあった。

『…もしかして…読んでた?』

はっきりとした理由は分からないが、心眼と横島との間には霊的なラインが繋がっているのだ。

繋がっていると言ってもそれ程強くないもので少しでも霊的に不安定な所に行けば絶たれてしまう様な繋がりだが、

お互いがその気になれば念話などはできる。

他にも、片方が無防備に心を開いていてもう片方が聞こうとしていると簡単な思考や表層の感情が読まれてしまうことがある。

そう、今回のように…ようは横島の思考か感情を心眼が読もうとしていた事になる。

『…いや…その…あの…えっと…あううう』

必死になって言い訳を考えているであろう心眼を想像すると少し前の沈んだ気持ちが嘘だった様に横島の胸に笑いこみ上げてくる。

『いいよ…心配してくれたんだろ?』

『いや…まあ、そうなのだが…すまぬ』

『だから良いって…そのより今暇?』

『うぬ?…まあ、ニュースを見るか本を読むかして勉強する位だな』

『なら、少し暇つぶしに付き合ってくれないか?』

『…我は良いが…事件の方は大丈夫なのか?』

『大丈夫って言うか…長期戦になりそう』

『うむ、そうか…ならば付き合おう…で何を話すのだ?』

そう、横島の脳裏にうれしそうな心眼の思念が届く。

『そうだな…先ずは心眼が、ちゃんと勉強しているかテストだな。一番!今の日本の首相の名前は!?』

『な!なぬ!?ちょ、ちょっと待て!行き成りは卑怯だぞ!!』

『待ったなし!出来なかったら勉強のしなおしだからな』

横島は自分の言葉にオタオタとする心眼に思念に出ないよう細心の注意を払い『ありがと…心眼』と感謝を述べて。

余談だが横島が首相を小泉○一郎と答え心眼にとても馬鹿にされたとか…

………
……


「はぁ…未だ異常なし…か」

昨日は日が沈むと同時に家に帰り今日は7時頃から昨日と同じ場所で美神の事務所を監視している。

昨日から美神たちを見張っていても美神が育児(?)ノイローゼ気味であること以外は大した事件は起きてない。

(まさか今日も何も無いなんてこと無いよな?)

横島の記憶では雨の中玲子ちゃんを探した覚えがあるが、今は快晴と言って良いほど晴れやかな空だ。

もし今日一杯この天気が続けば今日も昨日と同じく徒労に終わってしまう…というか、ハーピーを倒すまでこの生活を続けなければならなくなる。

はぁ…とため息を付きながら、双眼鏡を覗くと、パジャマ姿で何か騒いでいる美神を見ていたら行き成り背筋にゾクッ!とした悪寒が走る。

(なっ何だ?今の悪寒は?)

'索/敵'の文珠を使い辺りを確認するが別段不審な気配は無いので、

風邪でも引いたのだろうと強引に結論付け横島たが『横島〜!何で昨日も今日!こんな時に限って来ないのよ!今度来たら覚えてらっしゃい!!』

と叫んでいる美神の声は幸か不幸か'索/敵'の文珠では伝わることが無かった。

「あっ?出かけるのか?」

あの後肩で息をするほど枕を振り回した美神がどこかに電話をした後服を着替え(覗いてないぞ!)出かけようとする。

「何処か行くのか…たく…後をつける方の身も考えてくださいよ」

ワザワザ後を付けて来るストカー(?)の事を考える人が居るかは疑問だが、

そうボヤき横島はせかかせかと美神の後を追う準備をする。

本来ならば美神より子供の玲子ちゃんの方を守らなくてはならないように思うが、その実守る必要が無いのだ。

既に玲子ちゃんは大人の美神に会っている。

この会ったという時点で玲子ちゃんは今の美神になることが決定されているのだ。

もし玲子ちゃんが途中で死んでしまえば今の美神が居ないことになる。

居なくなれば玲子ちゃんと今の美神が会ったにも関わらず会わないう矛盾…所謂パラドクスが起きてしまうのだ。

そうならない様に宇宙の意志がある程度矛盾を修正し玲子ちゃんを守ってくれるため、守るべきは玲子ちゃんではなく、美神を守らなければならないのだ。

そのガード対象である美神は車で事務所を勢い良く飛び出していく。

美神の運転はとてつもなく荒い…そのためタクシーでは後追う事は叶わない。

横島はあきらめた様にため息を付きながら双文珠を出し'強/化'の文字を入れ自分の足へ使い脚力を強化する。

「…余り遠くまで行かないでほしいな…」

後で襲われるであろう痛みを想像しながら美神の車を追うべく隣のビルへと飛び移った。

………
……


「大学?…あっ…確か美神さんのお父さんって大学の教授だったな…でも、何でこのタイミングでここに来るんだ?」

横島の記憶では美神と公彦は特に悪いとは言わないが何処か避けている節があると思っている。

確かに昔の自分が'今'に来たと言うのは美神にとっても大きな事件だがだからと言って助けを求めるとは美神の性格上考えずらい。

横島がう〜んと頭を悩ませていると美神が大学の研究棟から出てくる。

「あれは?」

何かブツブツと呟きながら美神は封筒の中から古びた便箋を取り出す。

横島も'遠/見'の文珠を使いそれを読む。

主だった内容としては美智恵に時間能力があり魔族が時間能力者を狙っていること等が書いてある。

他にも色々と美神の行動を嘆く内容が書いてあった。

(…パパが嘆いていたって、そう言うならもう少し考えて育てれば良いのに無責任だな

…って言っても、お金に執着しない美神さんか……想像できないな…うん?)

そんな下らない想像を巡らしていると唐突に美神の座っている側の木から一斉に鳥が飛び立つ。

そして、

「死ね!美神玲子!」

ズドンォォン!!と言う着弾音と共に弾丸の様な一撃を受けた美神が吹き飛ぶ。

余りの事に横島は何が起きたか分からない。

少なくとも前の時は美神がハーピーに襲われている玲子ちゃんを助けに来たのだから大丈夫だろうと、

甘く見ていた結果がこれだよ言う事はおぼろげながら分かった。

傍目から見ると大型拳銃の直撃に見えるほどの威力だ贔屓目に見ても絶望的だろう。

その美神を前に嬉しそうに『あかんたれ』や『アホボン』と言っているハーピーが居る。

(ぶ殺…違う!先ず美神さんの治療だ!)

自分の馬鹿さ加減とハーピーに殺意を抱き暴走しかける感情を何とか理性で押さえ込むみ、飛びでとびだそうとするが…

「誰がダメな二代目だって!?」

「何っ!?」「は?」

唐突に起き上がった美神にハーピーと横島の驚きの声が重なる。

先ほどの声と共に行き成り動き出し『よけられなきゃハネ返しゃいいだけよ!私がママより弱いと思わないことね!!』

と叫びハーピーにザシュ!!と勢い良く切りかかる。

そんな美神を見て、飛び出そうとしていた横島はズッコケ間抜けな声と共に顔面から植え込みに突っ込んだ。

(強化セラミックのボディーアーマって…美神さん…死んだフリですか?それはシロの専売特許ですよ)

美神が元気なのは嬉しい事なのだが何となく納得の行かない横島だった。

そんな横島の気持ちは露も知らず、美神の車に集っている学生に『どかんか!ガキども!!』

と怒鳴りつけハーピーを追うべく車を発進させる。

植え込みからそんな美神を見て『大学生なんだから場合によったら美神さんより年上ですよ〜』

等と突っ込んでいるまに凄まじい砂煙を残し横島の視界から消えていった。

------------------------
〜あとがき〜

ハーピー編一話で終わらなかった…

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa