横島忠夫 再び修行中!!A 前編
投稿者名:Kureidoru
投稿日時:(05/ 3/ 9)
「・・・・・こりゃ、思ってたよりずっとヤバそうだな・・・」
そう言いながら妖しげな洋館の前に立たずむ横島は力任せにコブラのドアを閉めた。
ここに来る途中、車の中で確認した報告書によると、
十数年前、この洋館にとある大富豪が住んでいた。この大富豪がまたクセ者で、
例によってとんでもない高利貸しで人々に金を貸しては身包みを剥ぐ、という行為を続けてこの豪邸を建てたのだそうだ。
だが、その時に建設に携わった人の中にこの大富豪に酷い目にあった者がいたというのだから何も起きない筈が無い。
建設の時にとある二人の霊能者と呪術士を雇ってこの洋館に強力な呪いをかけてしまったのだそうだ。
そして大富豪は毎日毎日訳の分からない怪現象のフルコースを喰らった挙句、心身共にズタボロになりながら死んでしまったのだという。
それからというもの、この洋館は呪術士の呪いのカスと大富豪の怨念、ダブルの心霊障害のせいで危なくて近寄ることもできなくなった、というわけだ。
この程度の話はGSの仕事としてはけっこう目に付く部類で、
だからGSランクCの仕事というのも頷ける話なのである・・・・・が、問題はこの後にある。
この洋館を訪れてから、やたらと怪しげで大きな疑問が二つばかり浮上したのだ。
一つ目の疑問は、よくよく考えてみれば分かることだが、なぜ「今」になってこの依頼を申し込んできたのかだ。
依頼書によれば十数年間もの間、この洋館は『幽霊屋敷』として誰も近づくことが出来なかったらしい。
長年の間、ほっとかれていた屋敷を何の理由で今更除霊したがるのか・・・?
しかも、今まで金が無くて除霊出来なかったのなら分かるのだが、それなら今はオカルトGメンの日本支部がもう出来ている。
それをフリーのGS、しかもよりによって除霊の費用に高額の金をむしり取る美神除霊事務所に依頼してくるなんて、明らかにおかしい。
そして二つ目の疑問は・・・・・
「あ、二人が帰って来ましたよ」
「ん、ありがとう。おキヌちゃん」
準備をしていたおキヌが横島に告げる。横島はそう頷きながら、偵察から帰ってきた二人に尋ねた。
「どうだった?」
「明らかにヤバイわね。少なくとも相手はランクC程度じゃないのだけは確かよ」
「この鼻が曲がるような嫌な臭い・・・。ただの悪霊ごときに出せる臭いではないでござるよ」
難しい顔をしながらシロとタマモが同時に答えた。
そう、二つ目の疑問は、相手の霊波が明らかに雑魚霊のソレとは違う、ということだ。
普通、依頼として来る仕事のランク付けは、その依頼主の話す内容を元に決められる。
どういった類の霊か、その霊がもたらす被害、出現場所、などあらゆる話を聞いてそれに基づいてランクを決めて、フリーのGSに仕事を回す仕組みになっている。
だが、この霊波から感じられるモノはランクC程度の仕事になるはずがない程に強力である。
相手が、馬鹿みたいに強い霊一匹なのか、雑魚が数百匹集まっているのかまでは分からないが、総合的な霊力は明らかに高い。
なぜこんな仕事がランクCなのか・・・?
・・・兎にも角にも、考えていても仕方が無いのでとりあえず新しい指示を出す。
「じゃあ、今度はおキヌちゃんとシロで屋敷の裏口の様子を見てきてくれる?後、その時に少しでも異変や違和感を見つけたらすぐに報告してくれ」
「分かりました」
「了解でござる」
いつもの除霊でやっている作業を、屋敷の見取り図を広げながら二人に的確に指示していく。
二人も横島に従ってすぐに裏口の方向に歩いて行った。
・・・・・ちなみに第三の疑問で、ランクCの仕事の割には『なぜか』成功報酬の額がやたら低い、ってのがあるがコレは秘密だ!
おキヌ達が行ってから数分後。
「・・・・・・」
「どしたの?もしかして、まださっきの事考えてるわけ?」
「ん?あ、まぁな。いや、だって気持ち悪ぃじゃん;。何があるのかも分からない屋敷に謎なんてさ」
そう言いながら横島は苦笑いしながら洋館を眺めた。
実は、この話題はさっき四人の間でちょっとした議論になり、とりあえず
「ある程度様子を見てから行動しよう」
という結論にいたったのだ。
「横島も意外と小心者ねぇ。謎なんて分からないから怖いんであって、いざ分かっちゃえば大した事ないもんよ?」
「いや、そーかもしれんけど・・・」
「?何をウジウジ悩んでんのよ?」
「いや、別に何でもねぇよ・・・。それよりタマモ、お前はこの依頼、どう思う?」
横島が急に話題を切り替える。
「どうって?」
「いや、この怪し過ぎる依頼についてどう思う?って。
俺はせいぜい、依頼主がGS協会の上層部に圧力かけてんのか?ってぐらいしか考えられんかったなぁ〜。
ま、よく考えたらそんな事しても何のメリットもねーし、そんな権力者がこんな屋敷一つでごたごた言う訳ねーしな;」
頭をぽりぽり掻きながら苦笑いして言った。
「バッカねー。んなこと詮索しても答えは分かりゃしないのよ?」
「いーじゃねーかよ、減るもんじゃねーんだし」
そんな言い訳(?)をしながらタマモの考えを催促する。
それを聞いて、タマモは少し考えこみ、やがてゆっくりと口を開いた。
「美神さん、もしかして横島のこと騙したんじゃないの?」
「え・・・?」
タマモがいかぶしげに洋館を見ながら横島に言った。
突然、自分が考えもしなかった事を言われたので返答につまってしまう。
「だから例えば・・・実はランクB以上の仕事なんだけど面倒臭くておっつけた、とか」
「・・・いや、それは無いだろ。いくら美神さんでも面白半分でそんな危険なことはしない」
そう言って横島はキッパリと今の考えを否定した。
タマモとしては、あれだけ催促されて出した考えをすぐさま否定されてあまり面白く無い。
「・・・なんでそう言いきれるのよ?あの女、金のためならなんでもやりそうじゃない?」
正直な話、過去殺されかけたタマモとしては、横島にしろおキヌにしろ、二人が美神に対して絶対的な信頼を寄せている事が全く理解出来なかった。
少々いつもより興奮気味なタマモに困惑しながらも、横島は答えた。
「いや、理由なんてないけど・・・・・なんとなくかな?俺、あの人と付き合い長いし」
「な、なんとなくって・・・;。・・・・・少なくとも今の私はあの女を横島みたいに信用なんか出来ないわね」
「ははは・・・まぁ、昔の俺も、お前みたいに美神さんの事は全く信用してなんかいなかったよ」
「え?そうなの?」
少々意外とばかりにタマモが横島を見る。
空笑いしながら横島は恥ずかしそうに続けた。
「霊能力に目覚める前の俺って、本当に利用価値が無くってさ。事あるごとに無茶な仕事おっつけられてたもんだよ」
「へぇ〜、例えばどんな?」
「ん〜、例えば…雪山に死体探させに行かされたり、宇宙にいる化け物を退治しに行かされたり、悪霊の囮させられたり……」
「・・・今と全く変わらないじゃない」
「なっ!し、失礼な!!これでも前よりだいぶ良くなった方だぞ!美神さん、俺のことをちゃんと見ててくれてるんだなぁ・・・」
少し幸せそうな横島をよそに、タマモは思った。
こ、この男、心の底の底から美神令子の奴隷になっている!・・・と。だから横島は美神のことを信頼(?)しているのだろうか?
・・・いや、それではおキヌの説明がつかない。それでは三人を結んでいる強い「何か」というのは一体なんなのか?
う〜ん、、と考え込むタマモなのであった。
〜後編に続きます〜
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