ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫 再び修行中!!@ 前編


投稿者名:Kureidoru
投稿日時:(05/ 3/ 4)




寂れた廃ホテルの一室で、破魔札を持ってたたずむ一人の女性。
目の前には全身に怨念に取り付かれ歪んだ顔をした紫色の悪霊が対峙している。

『オオオォォオォォ!!』

物凄い勢いで突進してくる悪霊。
しかし、それをもモノとせずに女性の方も悪霊に突っ込みながら叫んだ。

「忌まわしき黄泉の使者よ!!何故生者に害を為すかッ!!我、美神令子が自然の理と正義の名において命ずる!!」
 
「退け!!悪霊ッ!!!」

 ドッ!!

『ギャアアアアアアアァァ……!!!!』









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「それにしても美神さん、あいかわらず無茶苦茶な強さッスね〜;」

横島は苦笑いしながら美神に言った。

ここは美神除霊事務所。今は午前中にあった除霊の仕事を一件終えたのでメンバーでくつろいでいるところである。
 アシュタロスの一件から早1年。
台風一過の影響で押さえ気味だったザコ霊達がようやく活性化してきたために事務所はいつでも大忙し。
今では旧メンバーに加えてシロ、タマモといった仲間も増えたので前よりも仕事を多く取ることにしたのだ。

「あったり前でしょ?じゃなきゃ死と隣り合わせのGSなんてやってられないわよ」
「ですよねぇ。(それに、もちろん・・・)」
「第一、こんだけの金がもらえるのよ!?頑張らない方がどーかしてるわよっ!」
「(コレだよなぁ〜・・・;)」

鼻息荒く先程の除霊の報告書を見せてくる美神に横島はただただ苦笑いするのであった。




「お茶が入りましたよ〜」

台所で準備を終えたおキヌが御盆を手にして事務室に入ってくる。それと同時に

「お、もう先生達も来ていたでござるか」
「おキヌちゃん、お湯沸かしといてくれた?」

と、屋根裏居候組が同時に部屋に入ってくる。
除霊後のティータイムは彼らにとって皆で談笑したり出来るので事務所メンバーが一番のんびりできる時間なのだ。
各人お茶を受け取りながら
お茶菓子をパクついたり、楽しそうに話をしたり、キツネうどんにお湯を注いだり、と思い思いの時間を過ごす。

そして話題はいつの間にか横島がGSになった契機の話に。

「そーいえば、先生はGSになってから何年経つのでほざるか?」
「んー?まぁ、荷物持ちだった時期も含めるとだいたい3年くらいじゃねーかな?」
「もう3年間もGSとしてやっているのでござるか!?拙者が生まれるよりもずっと前ではござらんか!」
「まぁな。っつーかもう3年かぁ。早いもんだよなぁ〜・・・」

当時の事務所だった雑居ビルの前で、フェロモンの物凄さに面識の無かった美神に飛びついてから3年、色々あったなぁ。。
と、と横島が観照にふけっているとシロが思いがけない事を口にする。

「しかし先生、3年も師から教えを受けていればもう立派な一人前でござるよ?そろそろ師を越えて自立する時期ではござらんか?」

目の前にその師がいるため飲んでたお茶を全て吹き出してしまう横島。

「な、何言ってんだよ!!俺が美神さんになんかに勝てるわけないだろ!?」
「『なんか』ってどーゆーことよ?」

つり目で耳ざとく聞いてくる美神。

「はうっ?!
い、いや、俺は決して、美神さんの悪霊を凌駕するような化け物じみた強さが怖いのでは無く、、じゃなくて!
え〜と・・・その・・・み、美神さん今日もまた一段と綺麗ッスね!!」

「・・・・・言い残す事はそれだけ?」

思ったことが口に出てしまう男、横島忠夫。
この癖が彼へ対する好感度の良し悪しは人によるのであろうが、今は彼にとっては確実に「悪し」であろう。
なぜなら、鉄拳一発で済んものがそんな生易しいものでは済まなくなってしまったのでから・・・。




   ※しばらくおまちください※




自分の不要な発言で他界しかけている横島に必死にヒーリングするシロとおキヌをよそに美神が溜息をつきながら事務机に乱暴に座って書類整理を始める。
そして、午前中の除霊の報告書を書き上げながら数十分間ほど、さっきの話題について考えていた。

「(まぁ、なんだかんだ言って横島クンって一度は実力で私を倒しているわけだし、実力が無いはずは無いのよね・・・。
今までは丁稚としてしか見てこなかったけど、今は結構いいパートナーみたいな感じだし、そろそろGSについて本腰で教えてやるいい時期なのかもねぇ・・・。)」

目の前で美神にニラまれて(見られて)ビクついている男を見ながらそう思った。





ある程度の報告書を書き終えたので書類整理を一時止め、おキヌとシロと仲良くお茶を飲んでいた弟子にちょっとした質問をしてみた。

「ねぇ、横島クン。あんたと私の大きな違いって何だと思う?」
「美神さんと俺の違い?そりゃあ・・・美神さんの方が俺よりも金に汚いし、性格も悪───ブッ!!!」

言い終わらぬ内に鉄拳を何の容赦も無く顔面に叩き込む美神。
横島の顔面は昔のギャグ漫画よろしく怒りの拳が見事にめり込んでいる。

「全っ然違うわよッ!霊能力の話に決まってんでしょ!?」
「あ゛、そりゃそーッスよね・・・」

なぜか陥没していた顔が元に戻って鼻を押さえながら苦笑いする横島。
この妖怪じみた体力からスデに違うのだが、それはそれ。これはこれ。

「どこが違うと言われても・・・やっぱり美神さんの方が戦い方はうまいし、戦力的にも強いですし。比べろっちゅーても、能力も雲泥の差ですよ」
「ん〜・・・半分正解で、半分違うわね」

意味深に答える美神に不思議がる一同。

「え〜と、、どーゆー意味ッスか?」
「そのままの意味よ。たしかに私の方が戦いにかけては長けてるけど、能力の方はあんたの方が私より優れているわ」

それを聞いて冗談混じりに苦笑いする横島。

「またまた〜!俺が能力面で美神さんに勝てるわけないじゃないスか〜;」
「あんたねぇ・・・自分で気がついてないの?ハッキリ言って潜在能力は私も含めてこの世のどのGS達よりも優れてるわよ?」

予期せぬ返答に横島が「んなアホな!」という顔をしていると

「そうですよ!文珠なんて作れるの、横島さんだけですよ?」
「拙者をこんなに立派に育ててくれた先生でござる。強くない訳がないでござるよ!」
「・・・・・・!!もう3分たったかな?」

これにはおキヌ達も(一人を除いて)そうだそうだと賛成してきてくれる。
そんな自覚が全くなかった横島は謙遜しつつも、いつものごとく調子付く。

「そ、そう?そっか〜、そうだよな!そりゃそうだよな!!」

そう言うと急にニタニタ笑いながら脳内で今後の人生展開について考え・・・もとい妄想し始めた。

(そうだよ!二年もGSの元で働いていれば当然の結果だよな!以前の俺は貧弱な坊やとして汚れ街道を爆進してたけど、今は違う!
自分の独自の戦闘スタイルだって出来てるし、なにより文珠を造れるがデカいよな!!その内、もしかしたら実力で美神さんを抜く日も近い!?
そしたら・・・そしたら・・・今までのようなギャグ漫画なんかとオサラバして、美神さんとイチャイチャ出来るような恋愛漫画になるはずだ!いや、もうなってるのかも!?」

相変わらず思った事が声に出る奇病が治っていないところが彼らしいと言うか・・・。
勿論、直後に「そんな日一生来ないわよ!」とシバかれたのは言うまでもない。
ボロ布と化した横島をよそに指で額を押さえながら美神が続ける。

「あんたねぇ〜、丁稚ごときが私をそう簡単に抜けるワケないでしょ?」
「え?でも美神さん、能力面なら横島さんの方が上なんですよね?」
「まぁね。でも能力が強かったり、才能があるだけじゃそれが自身の強さに直結するわけじゃないわ。冥子なんかそれのいい例よ」

そう言ってすぐに暴走(プッツン)するおかっぱ頭のお嬢様の事を思い出して身震いした。
六道家の能力は式神を同時に12鬼も操るというとてつもない物だが使用者があの調子だといわゆる『宝の持ち腐れ』であるのは明確であった。
おキヌがナルホド〜と頷いてる中、美神が横島に続ける。

「あんたと私の違いはそこね。ま、要するに経験不足ってことよ。逆に言えば長い年月かけて修行や実戦を繰り返していけば間違いなく優秀なGSになると思うわよ」
「は、はぁ・・・。そーんなもんスか・・・?」

 イマイチ実感が湧かず頭をぽりぽり掻く横島。そんな彼に美神はくすりと笑った。
これがあのアシュタロスを倒した英雄には見えなかったのが少しだけ可笑しかったのだ。頬が少し緩む。
そんな可愛い弟子であり、同時に大事なパートナーでもある横島を見つめていてハタと気がつき、机の紙の束を掴んだ。
美神は机の紙───依頼書の束をめくりながら閃いたように言った。

「そうだ!修行の意味も兼ねてこの後スグに除霊の仕事が一件あるんだけどやってみない?」

 普段あまり師匠めいたことをしてやれないせいか良い機会だと美神が提案してくる。
普段から少しずつとはいえ自分に任せてくれる仕事が出来ている横島にはさほど不安は無く二つ返事でOKする。

「別に全然イイですけど・・・修行って言うからには手強い相手の仕事なんですか?」
「ん〜、、、いつもと比べて少しくらいは手強いわね。GSランクCの仕事よ・・・・・」

 美神的には、いつもはEやDの相手の仕事がメインだが、大怪我をした事は一度もないので多分大丈夫だろう。という算段だ。


 ・・・・・普通なら。ではの話だが。


 セリフの語尾の妙なタメに疑問と不安を持っている横島に美神は続けてとんでもない事を言い放った。








   〜後半に続きます〜


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