ザ・グレート・展開予測ショー

横島借金返済日記 3


投稿者名:純米酒
投稿日時:(05/ 3/ 3)

「こんちわっす、神父」

「やあ横島君。いらっしゃい」

神の家はいつも通り、訪れるものに救いの手を差し伸べてくれた。

「今日はどんな用事でここに? まぁ、君の現状についてはおおよそ把握しているが……」

お茶を注ぎながら尋ねる神父に、横島はばつの悪そうな笑みを浮かべる。

「そういや神父は協会の役員になってたんですよね。俺が美神さんの所を辞めたのも知ってて当然だよなぁ…」

受け取ったお茶を遠慮なく飲み干す。

「ここに来たということは、何か悩みがあるのかな? 君ならば一人でも大丈夫だと思ってたのだがね」

以前、美神がオカルトGメンに所属して時、事務所の留守を任された時の横島の働きっぷりはピートから聞いていた。
だからこそ、今ここに彼が来ている事が意外だった。

「いや、自分でも何とかなると思ってたんですけどね。
 協会からの連絡待ってる間に気が付いたんすよ……
 やっぱり俺は美人がそばに居ないと調子がでないっつーか、やる気がでないっつーか」

危うく座っていた椅子から落ちそうになる神父。ついでにずり落ちた眼鏡をかけなおしながら、横島に問いかける。

「き、君ねぇ……だったら何故私の所に相談に来たんだね?」

「そんな事言ったって! エミさんは美神さんとタメ張るくらい性格悪いし!!
 冥子ちゃんのぷっつんに巻き込まれるのも、影に放り込まれるのも嫌やし!!
 魔鈴さんと一緒に仕事したって美神さんにバレたら何されるか分かったもんじゃないっすよ!!
 
 …ということで、神父に美人のGSを紹介して欲しいと思って……あ!GS見習いでもいいですよ!」

煩悩もここまで来ると大したものだと言わざるおえない。しかし、彼らしいといえば彼らしい。
どこか安心してしまう自分がいるのを認めると、笑みもこぼれてしまう。

「あいにくだが、そういう事では私は力になれそうにもない。すまないね」

「そんなっ! なんでですかっ!?
 ここは美神さんの師匠らしく、協会の役員っつー立場を利用して美人のねーちゃんを紹介してくれたってバチは当らんでしょーが!」

「横島君……私はまだ新参の役員に過ぎない。個人に便宜を図れる程の発言力は無いよ。
 あったとしても、そういうことは出来ればしたくない。私の良心に従うのならば、それは忌むべき行為のひとつだからね」

神父の真っ当な受け答えに落胆する。
対空ミサイルをガメたりしたことは有っても、神父は神父だった。
GSである前に神父でありたいという唐巣のスタンスだろうか。

「チクショー!! なんか俺だけ神様にイジメられてるような気がするっ!!
 俺はただ「美人の嫁さん手に入れて退廃的な生活をしたい」って思ってるだけなのにー!!」

「主の真意を慮ってはいけないよ、横島君。理解できなくとも、かならず意味はあるのだからね……」

「んなこと言ったって! 神父だって見たでしょーがっ!!
 そこの十字架に貼り付けられてるオッサンと、関西弁喋るモロ悪魔みたいな格好したオッサンが並んで親しげに話してる所を!!
 俺はその二人にイジメられてるんやぁ〜〜!!!」

「な、何を言ってるんだねヨコシマクン……私は何も見てないよ、うん何も見ていない……」

横島の言った事は神父の信仰を根本から揺るがすような事だ。だから彼は見なかったことにしていた。



十字を切り、祈りを捧げ、何とか落ち着きを取り戻す。横島はまだ頭を抱えて転げまわっていたが……

「……所で、仕事の方はどうなのかね? 協会に届けられた書類を見る限り、君の名前はまだ出て来ていないんだが……」

苦しい話題転換とは判っていたが、そうでもしないと話がすすまない。横島も転がるのをやめて、話を再開する。

「いや、まだ何もしてないっす。協会からの連絡もなかったですし…」

情けないとは思いつつも、正直に話す。助けを求めているのだから、隠し事をしても特にならないし、相手はこちらの事を自由に知ることが出来るのだ。

「そうか…では私から一つ依頼をしようかな」

神父は書類を差し出す。

「正確にはGS協会からの依頼という事になるんだがね、ちょうど人を探していた所なんだよ」

書類には「GS資格試験運営補佐」と書かれていた。

「資格試験運営補佐って…審判とかやるんですか?」

書類に目を落としたままたずねる。

「いや、審査や審判なんかは協会の役員がやる。補佐の仕事は、会場の整備とか参加者の受付、負傷者の治療とかそういった事だね」

「つまり、雑用っすか?」

「ありていに言ってしまえばそういうことだね。しかし、これがなかなか簡単な事ではないのだよ。
 知っての通り二次試験は受験生同士の試合になる。壊れた結界を修復したり、負傷者の傷を癒したり…忙しいものだよ。
 だが、メリットもある。有望そうな新人を見つけられたり、役員や同じく補佐をしているGSともつながりができるからね。
 君にとっても悪い話ではないと思うよ」

「やります! 是非やらせてください!! いやぁ神父も人が悪いっすねぇ〜。
 協力できないとか言っておきながら、ちゃんと用意してくれてるんじゃないですか〜〜!」

「いや、私は君に健全な人間関係を築いて貰いたくてだね……まぁ引き受けてくれるのなら問題は無いんだよ」

浮かれる横島に苦笑をこぼさずにはいられない神父だった。

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