ザ・グレート・展開予測ショー

THE MOVIE「踊るゴーストスイーパー」(5)


投稿者名:3馬鹿鳥男
投稿日時:(00/ 5/28)

第5章「ルシオラの影」

横島がなかなか目を覚まさないのを心配しておキヌは顔を近づけて、
横島の肩をゆさゆさ揺らした。
「横島さん起きて下さい。もう大丈夫ですよ。横島さん・・・」

横島は夢を見ていた。
女性が立っていた。
その女性はどこか懐かしい感じのする場所・・・・
東京タワー展望台の上に立っていた。
白いカーディガンを着た女性・・・ルシオラが横島の方に振り返った。
笑っていた。楽しそうに笑っていた。悲しいくらい楽しそうに・・・
そして、横島に近づき囁くように言った。
(思いは届くよね。この思い。絶対に届くよね。)
(ああ)
横島は手を伸ばしルシオラに触れようとしたが、
ルシオラはスルリとかわし、くるくる回りながら笑っていた。
(今度はちゃんと捕まえてね。この思いを)
(ルシオラ、俺は俺は・・・)
横島はルシオラの後を追った。でもまったく近づくことが出来なかった。
(いいの・・・もう・・・でも忘れないでね。この思い。
この世界を・・・あなたの居る世界を守ってね。)
横島は走った。そして手を伸ばし捕まえようとした。
(今度こそ、絶対ルシオラを守ってみせる!だから行くな!)

「絶対に守るから!」
突然、横島はそう声を張上げると目の前の女性に抱き付いた。
おキヌはいきなり抱き竦められ、「きゃっ」と声を上げた。
そして、まだ寝ぼけているのかなかなか離してくれない横島に顔を真っ赤にして、
「横島さん。あのこんな所では私、困ります。それに心の準備が。」
とよく解らないことを言った。
横島はやっと相手がおキヌと気付き、「ごめん」と離れた。
おキヌはうれし恥ずかしそうに
「いいえ・・・でも何か夢を見ていたみたいですね。どんな夢だったんです?」
とまだ顔を赤くしたまま何かを期待しているような目をして聞いた。
横島はおキヌを見て(夢か・・・なんであんな夢を)と思いながら、自分の姿を確認した。
傷はどうもおキヌが治してくれたらしい。
おキヌにありがとうと言い、周りを見渡した。
銀一がにやにや笑っていた。ほたるは少しムスっとしていた。
おキヌは恥ずかしそうにしていた。でもその他は誰も居なかった。
「あれ?美神さん達は?」
横島はおキヌの質問には答えず、立ち上がりながら聞いた。
おキヌはそんなことで気を悪くした様子もなく立ち上がって答えた。
「もう帰りましたよ。なんでも仕事があるとか・・・
美神隊長から何か頼まれたみたいです。」
「そう・・・でも美神さん。ほんとうに冷たいよな。」
横島は不服そうに言った。
銀一は横島が話を誤魔化したのが解ったが、あえて追求するのはやめて本題に入ることにした。
「横っちはこれからどうするんや?」
横島は銀一とほたるを見て、
「美神さんが何を言おうと、もちろんほたるちゃんの護衛をするよ。」
と安心するようにと微笑んだ。
そして、不安そうにしていたほたるの側まで行き、真剣な表情をしてほたるの手を両手で握った。
「大丈夫。俺が絶対守るから」
「はっはい・・・よろしくお願いします。」
ほたるは最初驚いたが、顔を少し赤らませて横島の顔を見つめ笑った。
その様子を見ていたおキヌは、にこにこしながら強引に横島の手からほたるの手を横から引き離し、ほたると握手をした。
「私もお手伝いします。よろしく織田さん。」
「ありがとうごさいます。おキヌさん。できれば私の事は「ほたる」と呼んで下さい。」
ほたるもおキヌに負けないほどにこにこしていた。
横島はいつまでも握手を止めない二人を交互に見て「仲がいいな」と呟き、おキヌに聞いた。
「でもいいのかい?おキヌちゃん。美神さんは「駄目」と言っていなかったかい?」
おキヌは握手を止めて、横島を困惑そうに見た。
「言いました。けど・・・私も美神さんが間違っていると思うし・・・それに・・・」
「それに?」
横島はおキヌを覗き込むようにして見た。
おキヌはジロッと横島を睨んでから、
顔を赤くし横にプイッと向いて怒ったように「何でもないです」と言った。

4人は再び席に着き、これからの事を話合うことにした。
銀一は4人の飲み物を頼むためウェイターを呼んだ。
横島とおキヌはオレンジジュース、銀一はコーヒー、ほたるは・・・お水と砂糖であった。
銀一は思わずツッコミを入れた。
「おいっ、お前さんはやな客かい。」
ほたるはきょとんとして、駄目なんですか?と聞いた。
すると横から横島がそうだそうだとほたるを庇った。
「俺なんか客が来たらお水と砂糖しか出さないぞ!」
「それはそれでやな奴やな・・・。」
銀一はあきれた顔をした。
おキヌも怒ったように横島を小声で諌めた。
「横島さん。恥ずかしいから黙っていて下さい!」
横島は「俺は恥ずかしくないぞ」と抗議したが、「私が恥ずかしいんです」と言われたので黙った。
おキヌはほたるににこっと笑って「サイダーにしたらどうです?」と薦めた。
ほたるはサイダーが何か知らなかったが、逆らいがたい不陰気だったので
上目使いに「それでお願いします」とウェイターに言った。
しばらくして、それぞれの飲み物が出された。
ほたるはサイダーを一口含んで飲み、「あら、おいしい。」と喜んだ。
そんなほたるをおキヌは「でしょ」と笑った。
横島は楽しそうにしているほたるを見つめて考えていた。
(なんだかルシオラとだぶるとこがあるなこの子・・・・。
姿形は全然違うのに・・・・体付きは似ているか・・・。
 スレンダーなところとか・・・あと好みとか・・・覚えている記憶とか・・・。
あんな夢を見たせいだからかな?
そういえば明日だな・・・ルシオラが逝ってからちょうど1年目・・・)
そしてあの熱く悲しい思い出を思い出しそうになったがおキヌに腕を抓られて現実に戻ってきた。
「いてっなんで抓る?」とおキヌに振り向き抗議した。
「あんまり女の子の食事姿をじろじろ見ないの!」
おキヌはぷりぷり怒っていた。再びほたるを見ると恥ずかしそうにもじもじしていた。
「あっごめん考え事してたから」と横島は頭を掻き、笑ってその場を誤魔化した。

しばらく雑談してから横島は銀一に聞いた。
「銀ちゃんはこれからどうする?もう帰るのか?」
銀一は腕を組んで考えるポーズをした。そしてほたるを見て決心したように、
「俺が頼んだのやから、今日一日は付き合うわ。ほたるちゃんのことも心配やし。」
そのまで言うとほたるに笑顔でウインクをした。
ほたるは・・・なぜかおキヌもいっしょになって銀一の笑顔に顔を赤くしうっとりした。
横島はなんだか面白く無かったが、それならほたるちゃんの家まで案内してくれと頼んだ。
「それでどうやって行くんだ?」
「下の駐車場にマネージャーがワゴン車で待っているやさかい。
 それで行こうや。」
銀一は立ち上がり先に会計をするためレストランの出入り口まで歩いて行った。
横島たちも席を立ち、エレベータまで歩き出した。
その時横島は何気なくズボンのポケットに手を入れて、ペンダントが入っていることに気付き、手に持って取り出した。
「あっこれは・・・」
「あれっ・・・それって発信器じゃないですか?」
おキヌは横島が急に立ち止まったのを気にして振り向き、横島の手元を覗き込んでいた。
横島はペンダントを見ながら、
「うん・・・どうも美神さんが持たせたみたいだな。」
「それじゃあ」
「ああ。自分も後から駆けつけるからそれまでほたるちゃんを護衛しろってことかな。」
おキヌはクスクス笑い
「あの人ほんとに素直じゃないですね。」
「そうだね」
横島も笑った。
すると先に行っていた銀一が横島達に早く来いよと声をかけた。
ほたるはもうエレベータに乗ったようだ。
横島とおキヌはクスクス笑いながら走った。
「なにやら楽しそうやな。」
エレベータに乗り込んだ二人を銀一は不思議そうに言った。
横島は別になんでもないと答え、銀一を見た。
「そういえば、ほたるちゃんの家はどこにあるんだ?ここから遠いのか?」
銀一はエレベータの地下駐車場のボタンを押してから答えた。
「そうやな・・・車で2時間くらいかな。」
「結構遠いな。」
「ああ。場所は茨城県筑波山・・・。」
「随分遠いな。」
横島は溜息をついて訂正をした。

第5章 終わり。
第6章「ほたるの支配魔」に続く。

ほんとうはおキヌの視点で書こうとしたのですが
話が色恋沙汰になってしまうのでやめました。
やっぱり主人公は横島や美神なんですね。

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