ザ・グレート・展開予測ショー

コウテツノカラダ


投稿者名:Kureidoru
投稿日時:(05/ 2/27)



(この作品は出来るだけブラウザを広げてご覧ください)


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これは小春日和のとある一日のお話・・・。





ここは幸福荘の一室、ドクターカオスの家。


住人は今年で1051歳になる『ヨーロッパの魔王』ことドクターカオスと、彼の作ったアンドロイドのマリアの二人だ。


彼らは今まで溜まっていた家賃を昨日入った給料でやっと支払うことが出来たので久しぶりにのんびりした一日を送っていた。


カオスは研究心ゆえか魔法学の本を山積みにして壁に寄りかかりながら読み漁っていた。


マリアの方は一冊の本を手にとってはいたが、それを読もうとはせず、その表情にもどこか陰りがあった。


少しばかり様子が変なマリアを心配したカオスは本を読むのを止めて質問してみた。


「どうしたんじゃマリア?ボーッとして。どこか調子でも悪いのか?」


「・・・ノープロブレム、ドクター・カオス。どこにも・身体故障箇所は・ありません。」


「じゃあ一体どうしたんじゃ?」


「・・・マリアは、今・悩んでいます」


「悩み?」


「イエス」


「お前は機械の体をしているが、その軸には魂が入ってるからの。
悩みくらいあるじゃろうが・・・悩みの一つや二つくらいお前の力なら簡単に解決できるじゃろう?」


「ノー。この悩みが・解決される・可能性は・ほぼ0%です」


「・・・その悩みが解決出来るかどうかは分からんがワシに話してみたらどうじゃ?少しは楽になるかもしれんぞ?」


「・・・・・。」



思いつめたように黙っていたマリアだったが、
話せば楽になると言う言葉に反応して、少しずつその重い口を開いていった。



「マリアは・・・最近、ミス・美神達と会うのが・怖いです。」


「なぜじゃ?ワシの目から見れば奴ら、お前に良いように接してきてくれていると思うが・・・。」


「イエス。ミス・美神達は、優しいです。・・・でも、だから会うのが・怖いです。」


「・・・・・どうゆう事じゃ?」


「ミス・美神達は、私が人造人間であるのを・承知の上で・友達になってくれました。
しかし、ミス・美神達は・人間です。同じ時間を・歩んでいく事が・出来ません。
・・・それに、また・あの時の様な別れ方は・マリアは・望みません。
・・・・・マリアは、時々・このボディであることが・辛く感じます・・・」


そう言いながらマリアは手に持っていた本をぎゅっ、と抱きしめて俯いた。



 ・・・・・・・・・・・・・・・。



しばらくの沈黙の後、カオスが思い出すように空を仰ぎながら話し始めた。


「ワシも似た様な事で悩んだ時期があったもんじゃよ」


「・・・それはもしかして・マリア姫の・ことですか?」


「ああ・・・。不死の体、人間でない者ゆえの実らない愛・・・。当時のワシもかなり落ち込んだものよ」


「・・・・・」


「だけどなマリア。同じ時を過ごせないからと言って、その時間に共に過ごしたという事は思い出として残るものじゃ。
出会いがあれば別れもある。生きているというのはそう言うものだとワシは思うようにしている。
ただ、ワシらだっていつかは死ぬ。ただそれが他の奴らよりも遅い、それだけじゃないのかのぅ?」


「それは・理解出来るのですが・・・・・」


「・・・それじゃあマリア。お前はワシに人造人間として造られた事を恨んでいるか?」


「ノー!マリアは、ドクター・カオスに造られたことを・感謝しています。
・・・それに、造られなければ・ミス・美神達に出会うことも・出来ませんでした。」


「・・・・・そうか。それを聞いてワシも安心したわい。
・・・でもマリア。お前が本当にそう思っているならもう答えは出ているんじゃないのか?」


「?どういう・意味ですか?的確な返答を・要求します」


「言葉通りじゃよ。
造られたから美神令子達に会うことが出来た。これが出会いと言うものじゃよ。
ワシだって不老不死のおかげでマリア姫に出会うことが出来たし、長い年月をかけてお前を造ってやることも出来たんじゃ。
ただ、出会いがあればまた別れもある。それを拒むのは自然の摂理に対するワガママじゃよ」


「・・・・・・」


「『心はいつも、あなたと共に』」


「その・言葉は・・・!」


「そう、お前がマリア姫からことづかって来た言葉じゃよ。
・・・どうやら姫はワシらよりもずっと先の所にいたようじゃのぅ」


含み笑いをしながらカオスは続けた。


「大切な仲間や、愛する異性と同じ時を過ごせなくとも、
彼らと過ごした日々はワシらの記憶として大事に残るものじゃ。
それに今はまだ、奴らとワシらは別れてはいまい?
だったら今は別れを恐れることよりも、思い出を作る事の方が重要なんじゃないのかのぅ?」


それを聞いてマリアは少し俯いた。


・・・しばらくして、今度はゆっくりと顔を上げて、静かにカオスに告げた。


「・・・・・センキュー。ドクター・カオス。
マリアの悩みは、完全に・無くなりました。問題解決の助力を・感謝します」


そう言ってマリアはカオスの目を見てにっこりと笑った。


「そ、そうか?それならいいんじゃが・・・」


そう言いながらカオスは照れ隠しか、そそくさと魔法学の本を手に取りまた読み始める。


マリアの方は手に持っていた本───シャーロックホームズの本を丁寧に本棚に戻した。


そして窓を開け、穏やかな表情で青々と広がる大空を眺めるのであった。






これは、そんな小春日和のとある一日のお話・・・。













【おしまい】







<あとがき>
こんにちは、Kureidoruです。
2作目はほのぼの(?)系ですが、どうでしょう?
現在執筆中の作品がいまいちアレなんで、
気分直しに前々から考えてたネタを書いてみました。

本当はマリアの横島への気持ちとかも絡めてみたかったんですが、
力量不足で断念・・・。残念です。

では、感想・批判、待ってますw

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