ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫幽霊物語 −覚醒編−


投稿者名:とらいある
投稿日時:(05/ 2/27)

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横島忠夫幽霊物語 −覚醒編−

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投稿者名:○○
投稿日時:(05/xx/xx)

 太陽。
 それは水平線の遥か遠く雲の向こうから、あるいはもっと遠くからそれは訪れて街を、
 どこまでも照らし上げる。
 全ての光がここから生まれゆくような、それほど感傷的な輝きで、
 人も、
 町も、
 そこらの野良猫も、
 (以下略)を
 分け隔てなく照らし上げる。

  ・
  ・
  ・
  ・
 だが、何事にも例外があるようだ。


「・・・・・。あはは、体がかるいなぁ・・・と」


ぷかぷかと浮かびながら呟いてみる。
格好、風体におかしなところはない……と思う。
えっ?顔?
・・・ほっとけ


「浮いてて、半透明で、おまけにすり抜けて・・・」


そう。おかしなところはないって言ったけど、実は一つだけあって俺の身体は何故か向こう側が透けて見えたりする。
物に触れたり掴んだりする事はできる。強く意識すればの話だが。

壁の中を通り抜けたり、電信柱の中に身を潜らせ楽しんでいると、目の前を通りがかった女子高生と偶然目が合った。
両者の動きが止まる。 


「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」 
「・・・こんにちは素敵なおぜうさん、良かったら一緒にお茶でもしませんか?」


『電信柱の中からコンニチワ』とばかりに、電柱から顔だけ出したまま言った。
沈黙が嫌だったから流すつもりで話し掛けたのだが、硬直してた女子高生は残像が残る程の速度で回れ右をして


「――――――――――っ!!!」


声にならない叫び声を上げながら、砂埃を巻き上げつつ走り去っていった。
ふと、空を見上げる。日はまだ浅いようだ。先程の女子高生も通学途中なのだろう。


「おはようの方が良かったかな?」


ボケボケな事を呟いてみる。だが残念な事に突っ込み役がいない。
って、そんな事考えている場合じゃ無かったんだった。


「これは所謂・・・職業=幽霊?」


臨死体験なら何度も経験あるのだが、まさか更に一つ上の過程に進めるとは。
試しに手のひらを太陽に透かしてみても、見えやしないさ真っ赤な血潮。
ミミズだってオケラだってアメンボだって生きているのに俺だけ幽霊。
嗚呼、遥か異国の父母よ、忠夫はまた一つ成長しました。

って、だからそうじゃなくて。
   
  ・
  ・  
  ・
  ・

何だかんだ言って、突然なこの状況にかなり錯乱していたのだと思う。
意味のない行動・言動を一通り行ったあと、漸く気持ちが落ち着くことができた。
だが他のゴーストスイーパー(以下GS)に見つからんで良かったなぁ。
こんな挙動不審な幽霊、見つかったら即座に除霊されちまうよ。全く。

こんな所に居てもしょうがないから、さっさと移動を開始する。
まず事務所に行くことにした。
現在地は自宅と事務所の丁度中間地点だった。見覚えのある街並みだから間違いない。
自宅に帰っても何も無いし、何よりこの状況を美神さんに説明したほうが良さそうだった。

足はなぜかあるのだが、地面から10cm程度宙に浮いてる為歩く必要は無い。
前に進もうと思うだけで進める、便利だ。
これならシロとの、散歩という名の全力疾走フルマラソンも楽に違いない。

移動しながら色々と考えてみる。
疑問なのは自分の死因、全く思い出せないのである。
記憶も定かでない。
今が何月何日なのか、最後に食べた物とか、最近の出来事とか。

それに・・・なんで自分が成仏せずに現世に留まっているのか。
霊が成仏できないなんてのは、悔恨や恨み・心残りなどの生前の出来事が起因していることが多い。
あとは召喚されたとか魂が括られてしまったか、のどちらかだ。

前者は理性が残っているか残っていないかで篩(ふる)いにかけられる。
理性が残っているなら交渉の後、祓ってもらうかそのまま現世に留まるか。暴れるようなら即、強制成仏。
理性が残っていなかった場合は暴れているのが多い為、やっぱり強制成仏。

後者の場合、土地・若しくは物に括られる為、その土地や物から離れることが出来なくなってしまう。
召還された場合だったら近くに召喚者と儀式の跡がある筈なのだがそれも無かった。

自分は別に理性がない訳でもなく、破壊衝動にも駆られていない。
かといって心残りがある訳でもない。なんせ記憶が曖昧だからだ。
行動にも制限が掛かっているような感じは無い。

これは幽霊の頃のおキヌちゃんと同じ状況といえる。
すれ違う人々との殆どがこちらに気づき一瞬ギョッとした表情をするが基本的にスルーだった。
霊を見ても騒ぎ立てないのはGSや心霊現象等が一般ピープルに広く認知された為だろう。
最も、関わりたくないというのが本音なのかも。


「まぁ、難しいことは美神さん担当だしな」


そうこうしている内にいつの間にか事務所前に到着していた。
いざ入るとなると緊張してしまう。
こんな自分を見て美神さんは悲しむ・・・わけ無いよなぁ。


『丁稚の癖に何の断りも無く勝手に死ぬとはいい度胸だ!』


なんて言ってしばかれるかも・・・十分有り得る話だ。
おキヌちゃんが止めに入るのが早いか、横島忠夫は二度死ぬ方が早いか・・・

まぁなんとかなるんじゃない?なんてったって俺幽霊だし。
逃げ足に更に磨きが掛かった分(仮定)やばくなったら逃げだしゃ良いし。
・・・いざとなったら隊長の所に逃げ込めばなんとかなるさ。・・・多分。

前向きなのか後ろ向きなのかよく分からないが無理矢理自己完結できた。
そう、俺はどんな逆境にも負けないオポチュニスト(楽観主義者)なのだっ!
いざっ!勇気を振り絞り玄関を開け


『お〜い、人工幽霊。美神さん、どんな様子だ?』


小声で尋ねる。やっぱり誰がなんと言おうと怖いものは怖いんだい。
だが人工幽霊から一向に返事が返ってこない。
流石に声が小さすぎたか?そう思い、多少声を落とした状態で再び問いかける。
・・・だがやっぱり返事は無かった。
フム、じゃあ今人工幽霊が居ないって事なのか?

考えられる理由として挙げられるのは、総出で仕事に出掛けたのだろうか?
最近のスケジュールに、人工幽霊を投入する程の大掛かりな依頼があっただろうか?と思い記憶を弄ってみるが、すぐ諦めた。
記憶が混濁していて鮮明でない為だ。
まぁ人工幽霊も投入するぐらいだから、事務所には誰も残っていないだろう。
皆が出払っているなら車が無い筈だと思い、表へ出て裏の格納庫に行って確認してみる。

人狼族のシロと妖狐のタマモがメンバーに加わった為、移動手段として新たに1BOXカーを美神さんは買った。
それまでも二人乗りのコブラを、三人+獣っ娘×2で運用していたのだが、流石に警察が黙っていなかった。
当然、警察如きに屈する美神さんじゃない。
だが美神さん相手に長年の辛酸と経験から警察も心得ているようで隊長経由で話が伝わっていった。
結局、美神さんは折れて(当然一悶着あった)折角だからと新車を買うに至った。

だが美神さんの怒りの矛先は、当然俺と・・・可哀想な事にカーショップの店員&店長だった。
鬼のような気迫で当然値切りに値切っていた。あんときの店員&店長の怯えきった顔といったら・・・傑作でした、ハイ。
他人の不幸は蜜の味とは良く言ったものだ。

シャッターを開けて中を確認すると、案の定車は無かった。
仕方が無いから他を当たることにする。
この状態を相談できそうな相手といえば、隊長か唐巣神父しかいない。

隊長ならすぐ隣のGメンのオフィスにいる筈だから、一番手っ取り早いのだが・・・問題がある。
西条・・・そう金魚の糞の如く隊長の傍にいるあのいけ好かないロン毛の道楽公務員野郎。
あいつが俺の姿を見たら何と言うか?当然小馬鹿にしたあと鼻でせせら笑い


『横島君、過ぎてしまった事は仕方が無い。令子ちゃんは僕に任せて君は安心して成仏するが良い』


と言うに違いない。ムキー!想像しただけで腹が立ってきた
あのチチ・シリ・フトモモは俺の物なんじゃー。既に売約済みじゃボォケェ!
と言う訳で、唐巣神父の所に大決定!異論などあろう筈も無い。

唐巣神父の教会はここから然程遠くない場所にある為すぐ着く。
本当に「あの」美神さんの師匠なんか?と言えるぐらいの人望厚き人物だ。
きっと親身になって相談に乗ってくれるに違いない。それも見返りなしで。


「まぁ解決したら差し入れでも持って行くか」


清く貧しく美しくを地で生きている人だ、食べ物なんかが喜ばれるだろうな。
こっちも経済状況が良いとは言えないから特売のカップラーメンを一箱位が精々だが。


「ちわーす、横島です。唐巣神父いますか〜?」


扉を開けて中を覗く。礼拝堂には誰もいない。
そのまま中に入って行く。中はシンっと静まり返り人がいるような気配が感じられない。


「唐巣神父〜 ピート〜。誰も居ないのか〜」


自分の声だけが虚しく響き渡る。
庭にも顔を覘かせてみたが、新生命体となった野菜たちが妙な笑い声を上げているだけで誰も居ない。
唐巣神父の執務室にも無断だったが入らせてもらった。
部屋や机の上はきちんと整頓が成されていて、けっして豪華ではないが落ち着いた雰囲気の綺麗な部屋だった。

唐巣神父が除霊を行うのは専ら自分の教会内だ。
神の加護を最大限に得られる場所であると共に、神聖な場所でもあるから悪霊の力も弱まる為である。
除霊依頼者も直接ここに訪れるため、神父が除霊に教会を空けるというのは殆どない。

自分の知らない内に大きな仕事が入って、美神さんが神父とピートも連れて除霊に行ったのだろうか?
神父もあれで周りに流されやすい人だからな〜 そこが「いい人」なんだろうけど。

なにか手掛かりがあればと思い部屋に入ったのだが、信仰関連の本しか置いてなくて何も得られなかった。
仕方なく引き返そうとしたところで、壁に立て掛けてあるカレンダーが目に付いた。
15日の所が赤く丸でチェックが入っていた。きっと今日は15日で、唐巣神父は用事があって出掛けたのだろう。
多分ピートも連れて行ったのであろう。神父は自分が外出する際はピートに留守を頼んでいるからだ。


「いくら貧乏だからって無用心だよなぁ、鍵くらい閉めていけよ。まぁ俺も人の事言えた立場じゃない・・・け・・・ど」



ソレが視界に入ったあと、言葉が紡ぎ出せなくなった。
カレンダーから目が離せない。冗談なら、夢なら今すぐ覚めてほしい。
だって・・・だってカレンダーの日付は・・・


『 2 0 2 3 年  3 月 1 5 日 』






無い筈の心臓が・・・






握りつぶされたような感じがした。








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『another story』更新せんで何やっとるかぁ!
どーも、とらいあるです。皆様お久しゅう御座います。
6話を考えている最中に思いつき書かせて頂きました『another story』本編とは全く関係ないお話です。
6話の方もいい加減出させて頂きます。ご期待なさっている方々はもう少々お待ちになって下さいまし(いるのか?)
このお話は(寒い)ギャグを基本に進めて行きたいと思っています。といっても最大5話位で完結の予定です。
少々悪ノリ&電波な文章になるかと思われますが、雰囲気にそぐわないのであればいつでも削除してください。
では、また。







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