ザ・グレート・展開予測ショー

目覚めて見れば…8


投稿者名:K.M
投稿日時:(05/ 2/27)

「ヨコシマ…ヨコシマ…」

(あれ…誰か…呼んで…る?)

覚えのある懐かしい声だ、拡散しそうになる意識を総動員して思い出そうとするが、旨くいかない。

「む〜起きろ〜」

(そう言わないでくれ…俺も頑張っているんだよ〜)

まどろみの中、俺を起こそうとしている相手に心の中でそう情けない言い訳をする。

「も〜…しょうがないな…」

声の主がため息混じりにそう呟きスーと息を吸う。

そして…

「起きなさい!!ヨコシマ!!!」


目覚めて見れば…8


「どわー!」

耳を劈くような大音量の声と共に拡散していた意識が一気に収束する。

「や〜と起きたわね」

慌てる様子を見てクスクスと楽しそうに笑っている奴の方を、

睨みつけようとした横島だがすぐに振り向いた恰好で固まった。

「…あっ」

「………あれ?反応鈍いな…もしかして…忘れちゃった?」

「あっ…そっ、そんなわけ無いだろ!本当に…ルシオラ…なのか?」

横島自身、自分でもハッキリと声が震えているのが分かる。

「うん、そうだよ…私は寝てただけだからちょっと変な感じだけど久しぶりだね」

(久しぶり…確かにそうだ)

最後に会ったのは7年前、出会った期間もほんの一ヶ月程…

横島にとって一番愛しい人であり罪の象徴であった女(ヒト)…

もう、横島の中で'思い出'にしてしまった女(ヒト)があの時の姿のままそこに居た。

「ごめん…俺…お前を助けられなかったばかりか、忘れ「ストップ!」

行き成り謝りだした横島に対しそう少し困った顔でルシオラが待ったを掛ける。

「も〜会って早々謝りだすなんて相変わらずムード無いわね」

「だって…俺は」

泣きそうな声で言葉に詰まる横島を見て、ルシオラは'はぁ…’とため息を付き真面目な声で話し出す。

「…前も謝ってたけど、本当だったらヨコシマは私を責めて良いんだよ?」

(責める?俺にそんな権利が有るとは到底思えないけど)

「ヨコシマが命を掛けて助けてくれたのに、自分がヨコシマに死んで欲しくないっいて理由で命を捨てたんだよ?

しかも騙したし…もし、立場が逆だったら私…ヨコシマの事多分一生許せなかったと思う…

例え私のためだとしてもね…だから、これでよかったんだよ」

「でもよ…俺はお前に何もしてやってないよ…俺がやった事ってアシュタロスを裏切らせて姉妹で戦わせてた…それしかやってない…

幸せにしてやるなんて言ったのに俺は…」

ifを言ったら切がないのは分かっているがそれでも考えられずには居られない。

「そんな事無い!私が幸せだったかどうかは私が決める事!そして私はヨコシマに会えて良かった!これは間違いない!変な事言わなの!!」

ルシオラはそう言ってビシッ!と人差し指を突きつける。

そこまで言われてまだガタガタ言うほど横島も愚かではない。

「分かった…もう言わない、俺もルシオラに会えて不幸だなんて思ってないから」

「うん、よろしい♪」

「…ところで…俺は…死んだのか?ってことは心眼も…」

ルシオラに会い取り乱していたのが落ち着くと同時に大切な事を思い出した。

ルシオラが居る場所と言う事は少なくとも普通の場所ではないだろう

…ここに横島が居ると言う事は術は失敗した可能性が極めて高い。

(…俺は、また約束を破ったのか)

「あっ…大丈夫よ。貴方も心眼って子も生きてるわ」

沈む横島にルシオラが明るい声でそれを否定する。

「本当?」

「本当よ、心眼って子は無事転生完了…まっ貴方の場合死に掛けでわあるけど何とか生きているわ

…全く無茶をするのは相変わらずなんだから」

最初の無事と言う言葉でホッとした横島だが'無茶をする'というルシオラの言葉がナイフのように心に突き刺さる。

「うっ…すまん…お前に貰った命を粗末にするような真似して」

「ううん、責めてるわけじゃないわ。だたヨコシマらしいと思っただけ、

どんなに無茶に思える事でも何だかんだ言ってやって退けちゃうの」

「?意味が分からんが…俺はそんなに凄い奴じゃないぞ?」

「はぁ…全く…ヨコシマ自身が一番自分の価値が分かってないんだから…まっそれが、らしいと言えばそうなんだけど」

ルシオラが脱力したように肩を落とすが、「あっ」何かを思いついたように声を上げたかと思うとすぐに横島の方を見る。

「…もう、時間が無かったんだ、今から言う事をよく覚えておいてね?

今こうやって、私がヨコシマと話せたのは貴方が文字通りの意味で魂を削る程の霊力を出したから、

命の危機を感じた私の霊基構造が活性化したの」

「魔族因子が暴走したのか?」

「本当ならそうなってたわ…でも今回は私の自意識も覚醒した。だから暴走は起きないわ…ううん、起こさせない」

「また…助けられたのか…ありがと」

「何水臭い事言ってんの私とヨコシマの仲じゃない、助けるのは当たり前でしょ?

…あっ!でも次も同じ期待をしちゃ駄目だからね!私が起きたのは本当に偶然何だから!もう絶対やっちゃダメだよ?」

そう言って先ほどと同じように人差し指を横島に突きつけるが指の先が薄くなっている。

「ルシオラ!」

「大丈夫、時間が来ただけだから心配しないで…それより話を聞いてね」

「でも!」

「良いの!後ね、えっと…そう!大切な人が出来たら我慢する事は無いんだからね?

鈍い振りして好意に気が付かないフリなんて相手に失礼だよ?」

「…………わかった」

ルシオラが短い時間の中でワザワザ腰を折るような真似はしない。

さらに、横島自身自覚もあることだ。

好意を寄せられても、気のせいだと強引に思い込み気が付かないフリをしていた。

そのことをルシオラは言っているのだろう。

「場合によっちゃあ好意を寄せてくれる全員ってのもいいわよ?」

「ブッ…そんなことしたら'女の敵'って事で誰にも相手にされなくなるよ」

「はぁ…やっぱり自分の事分かってないな…まあ良いわ…」

『こ…!お…ん…か』

「良くないと」横島が反論しようとするがその前によく分からない声が辺りに響く。

「何だ?」

「もうお別れってこと…最後にこれだけは覚えておいてね…ヨコシマの幸せは私の幸せ

…この世の全てが敵に回っても私はヨコシマの味方だからね…それじゃあ」

「ちょっと待てよ!今、会ったばっかりじゃないか!もう少し…もう少しだけ!」

「…無茶言わないの」

そう苦笑するルシオラの姿も瞬く間に薄くなっていく。

「ルシオラ!!!」

ルシオラを掴もうとする横島のが虚しく通り抜け叫びだけが辺りに響いた。

「ヨコシマ…私は何時も貴方と一緒…だから悲しまないでね」

この言葉を切欠にしたかのようにルシオラは、辺りを覆う強烈な光となり、それと共に横島は意識を失った。

………
……


『た……!…きて……』

ペシペシと誰かがまどろみの中にいる横島の頭を叩く。

(何………後…………五分…だけ寝かせて)

声を上げなければ相手に伝わらないのだがそれすらもやる気が起きないほど体がだるい。

当然横島を叩いている相手はそんな事は判らない無い、

次第に頭を叩く力が強くなりペシペシからパシパシとなり今ではガンガンと剣呑な音になっている。

最初こそ無視していた横島だが流石にここまで成るとそう言うわけにもいかない。

意識とは裏腹に自然と体の感覚が覚醒してくる。

「頼む!起きてくれ!!」

意識はまだ起きるのを拒否しているが、

聴覚は先ほどより明瞭になり言葉の意味はキチンと判る。

(まだ…眠いってのに…あれ…?さっきも、同じような事があった様な…えっと…誰だっけ?

あぅ〜〜………そうだ…ルシオラだ…ルシ…オラ…?…!!!)

その瞬間先ほどのやり取りを一気に思い出す。

「ルシオラ!ぐわっ!!」

「うきゃ!」

ルシオラの名前を呼びながら一気に身を起こした横島だが直ぐに額を何かにぶつけゴン!と鈍い音がした。

「いっぅ〜な、何だ?」

痛打した額を押さえながら障害物の有った方を見ていると、

月の光に照らされた白い肌と地面に

惜しげも無く広がっている白い髪が印象的な小柄な女の子が横島と同じように額を押さえ蹲っていた。

やがて、目の縁一杯に涙を讃えたダークブラウンの瞳が横島の方を向き…

「こっ、この愚か者!!」

行き成り怒鳴られた。

「えっと…」

「誰?」と続けたくなる横島だがそう言えば間違いなく罵倒が飛んでくると考え少し頭を働かす。

(え〜と…どう見てもルシオラじゃないよな…じゃあ)

「…まさか…心眼?」

「このウスラトンカチ!他に誰がこの場に居ると言うか!」

結局怒鳴られた横島はだがそれ以上の驚きに支配されそれどころではない。

ブルブルと震える指をゆっくりと心眼に向ける。

「なっおっお前…」

「?何だ?」

「…男じゃなかったのか!!」

ドム!!「ぐほっ!」

「…目を覚ましてみるとお主はグッタリとなって動かんし、脈も弱くなっていくし…ずっと、ずっと心配しておったのだぞ!!」

「む、無視かよ…」

無言で放たれた強烈な一撃を鳩尾に受け悶絶する横島がそう突っ込もうとするが、声がうまく出ない。

これは(も?)横島が悪いだろう。

「なのに…なのに〜いぃぃ!起きて早々そういうボケをかますか!これか!この頭が悪いのか!!」

(訂正…無視じゃなかったんだ)

心眼の魂の叫びと共に振り下ろされる拳の嵐に横島の意識は次第に遠のいていった。

………
……


「え〜先ほどの失言この横島…一生の不覚です…真に申し訳ありません」

そお言ってヘコヘコ頭を下げる横島は上着を着ていない。

生まれたばかりで何も着てなかった心眼に渡したのだ。

「……………」

「本当に悪かったと思ってるよ…でもさ…話し方もそうだし、心眼の声とか思念って篭っていていたから男の声だと思ってから…」

横島が二度目の気絶から立ち直ってから 一度も口を開いてくれず、

鋭い視線を送ってくる心眼にちょっと情けないが言い訳をしてみるとこれが思った以上の反応を示してしまった。

「………しかたがないだろ!バンダナだったのだから!それとも何か!

好戦的で思いやりのもなくこう言う話し方しか出来ない我のような奴は、

ムキムキテカテカで頭が禿ていて足も臭く脇も臭いオヤジじゃないといけないと言うのか!!」

「いや…そんなこと思「そうか!主の期待に副えない生き物で真に申し訳ない!!」

怒鳴りつけながらも心眼の頬に一粒の雫が伝い、ようや本気でく横島は心眼がなぜそんなに怒っているのかが分かった。

(……あっ、そう言う事か…一応とは言え俺が創造主なんだ。なのに心眼が起きたとき死にかけているし、

会っても誰だが分からなくて、しかも「男じゃなかったのか」なんて心眼を否定するような事言っちゃったせいだ…)

ようは自分の親に'お前は要らない子だ!!'と言われたのと同じなのだろう。

横島はようやく己の迂闊さに気が付た。

「…心眼、本当に御免…ただ少し驚いただけなんだ。配慮に欠けていたのも謝る。

だから、心眼を否定する積もりなんて全然無いんだ…許してほしい」

先ほどのような謝り方では無く、本心から頭を下げる。

別に先ほどを本気で謝っていないというわけではないが、余り深刻に捉えていなかったので、

どちらかというと友達同士に悪りい悪りいといった感が強かったのだ。

「…本当にそう思っているのか?今のままの我で構わないと思っているのか?」

「ああ、本気でそう思っている」

涙を拭きながらそう聞いてくる心眼の頭を横島がやさしくを撫でる。

「それに…俺だって男だ。ハゲが移りそうなオヤジより可愛い女の子の方が良いに決まっているさ」

横島の少しふざけた様な口調の言葉に「馬鹿者が」と小さく呟き、心眼は生まれて初めて笑った。

………
……


「その、主様へ数々の暴言を吐き、あまつさえ手を上げた事、先ほどのようなことはもう二度と致しませんのでどうかご容赦ください」

「えっ?何だよその話し方…それに全面的に俺が悪いんだから心眼が謝ること無いだろ?て言うか主様って何だよ…」

先ほどと全く違う対応に横島の脳裏に『新手の仕返しか?』という考えが浮かんだが、それにしてはどうも様子がおかしい。

「いえ、創造主たる主様に対し例えどのような理由が有ろうと許される行為ではございません」

「いや…そんな堅苦しく言われても困るんだけど」

「いえ…そうはまいりません」

横島は本気で困惑したような声でそう言ったが心眼は頑として聞き入れる気配がない。

「あのさ〜言っただろ、相棒だって?相棒ってのは主従関係じゃない。

対等な者同士を指すんだ…今まで通りに接して欲しいな」

「いえ」

(おいおい…確か魂って確か創造者の心が反映されるんじゃなかったのか?

俺はこんなに真面目じゃないぞ?どちらかってえと不真面目なのになぜこうなるんだ??)

そんな事を悩んでいると不意に頭の中でデッカイ裸電球が灯る。

名案が浮かんだらしい。

「じゃあその、『創造主』の最後の命令…対等な者として今まで通りに接してくれ」

「………」

その言葉に『え?』と言うような表情を浮かべた心眼は、言葉を探すようにオロオロとする。

'困った顔もかわいいな〜'等とアホな考えを浮かべた横島だが直ぐに趣味が悪し俺はロリコンじゃね〜!と思いすぐと言葉紡ぐ。

「俺に必要なのは従順な手下じゃなく、間違ったことをしたらぶん殴ってでも止めてくれる相棒なんだ。

まあ、さっきみたいに嵐のようなのは困るけどな」

「あうぅぅ…わかり…分かった、今まで通り付き合っていく…だが、本当にそれで良いのか」

「ああ相棒なんだから当然だろ?よろしくな」

「相棒…か…うむ!よろしくな横島」

横島の差し出した手を心眼はやさしく握り返した。

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