ザ・グレート・展開予測ショー

マリアと犬の夜。 第二夜


投稿者名:龍鬼
投稿日時:(05/ 2/25)

夜は更ける。
ゆっくりと、時には急ぎ足で。
それが、世界の中だったなら。

――それを待つのが、生命なら。




――マリアと犬の夜。 第二夜――




マリアは、静かに佇んでいた。
傍らには、少女。
音の無い静寂に、息が詰まる。

「……つまんない。」

先に音をあげたのは、少女。
ごろりと床に寝そべって、手足をばたばた。
昨夜から、何度目かのことだった。
いや、昨夜という言葉は正確でないかもしれない。
夜たちの玄関である窓。
その天窓から見える空は、いつまでも暗かったから。


「貴方は何故・ここに?」


素直な疑問だった。

不思議そうな表情を浮かべて。
寝そべったまま、少女の顔だけがマリアの方を向く。

「じゃあ、お姉ちゃんはなんでここにいるのさ?」
「……的確な解答を・計算中・です」

「でしょ?」

少女の体が、勢い良く起き上がる。

「ここにいる理由なんてないし、ここにいちゃいけない理由もない。誰だってそうだと思うよ?」
「ではここに・いなければならない・理由も・ありませんか?」

帰らなければならない。
その気持ちが、マリアにそう言わせたのかもしれない。

「……あー、ごめん。それはあるや」

少女が、窓から覗く空を見上げる。
マリアの目は、そこから離れない。

「私、犬なんだ。」


「………?」


「お迎えが来るのをじぃっと待ってる、仔犬」

冗談なのか、本気なのか。
そのどちらともとれない表情。

「情報の追加を・要求・します」

少女が、少し考え込む。
自分が発した言葉の意味を、反芻するように。

「野良猫はキスしたくなるくらいに可愛いけど、お迎えをちゃんと待てないでしょ?」

目線の先にマリアは無い。
何もない虚空の先に。
何か、別のものを見ているようでもあった。

「だから、仔犬。仔犬って、可愛いしさ」

次にマリアを見つめていたのは、幼げなしたり顔。




――沈黙。




「なんか言ってよー、私がバカみたいじゃない。」

やっぱり、先に口を開くのは少女で。
どこまでもおどけた調子で、二つの顔の距離を縮める。

「申し訳・ありません」

「……謝らなくても、良いの。」

ちょっとだけ、怒った表情。
ころころ変わる中でも、初めて見せる顔だった。





思考を働かせた結果、出た言葉。

「……犬には・見えません」
「えー、そう?じゃあ、うーん……」

ほっそりとした腕を組んで、難しそうな表情を見せる。
本気で考え込んでいるのか、ふざけているのかの判別は難しそうだった。

「……わんわん♪」

楽しげな笑顔。
無機質な表情。

乾いた鳴き声、響く。


つづく。

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