ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い20


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 2/23)

ある元幽霊屋敷の前。数名の女性陣が固まっていた。
「とりあえず、中に入ったらどうだ?」
フリーズする要因になった砂川の言葉に再起動する女性陣改めおキヌ一行。

(新婚さん・・・)
(若妻・・・)
(愛妻弁当・・・)
訂正、どこか、おかしな再起動をしているメンバーがいるようだ。

何はともあれ、一同は屋敷に入ることにした。
屋敷の三階の方から降りてきた横島は・・・・・
(な、何だ、この寒気は・・・・・)
氷河期に迷い込んだかのような錯覚に襲われていた。

その後、実際には砂川がハーブティーを入れていただけだと知って、おキヌを始めとする横島に好意を抱く女性陣は、胸をなでおろした。だが、安心は出来ない。砂川志保という女性は、横島と最も近い位置のパートーナーであり、文句なしの美人なのだ。いつ横島と『特別な』関係になってもおかしくは無い。
≪横島を巡る上で、砂川志保が最強の敵≫というのは彼女達の共通認識となったらしい。
驚くべきは、砂川と初対面のはずの小鳩でさえも、そう認識したことである。
恋する乙女の勘は、霊能者をも凌ぐのだろうか?

女性陣の葛藤を露知らず、当の砂川は、横島とハーブティーを楽しんでいた。
精神面で、初っ端からおキヌ達は、敗色濃厚である。無意識ながら砂川、恋敵達に先制ジャブ。

しかし、その二人の光景を見ても・・・・

(小鳩は負けません!!)
(横島さん、私だって・・・!!)
(拙者だって・・・負けないでござる!!
(まだまだ勝負はこれからよ!!)

氷河期の氷を溶かすかのように、ある特定の女性達の心には静かな炎が燃えていた。


一方、横島から、屋敷内の構造を聞いた約二名は、自らの棲家(微妙に違う)があると解り、大喜びしていた。
「おい、横島!! この屋敷、鍛錬場まであるのか!! 嬉しいじゃねえか」
「おお、これは素晴らしい。実験室まであるとは、ロマンに溢れ取る!!」
マザコン戦闘狂と大ボケ錬金術師が叫ぶ。ハッキリ言って、そんなことで喜ぶのはこいつらだけだ。

「あいつらはほっとくとして、この屋敷は不自然な物が多すぎるぞ」自分の世界に飛んでいる二人を視界から追い出し、この屋敷の不可思議さに首を捻る横島。

確かに、鍛錬場や実験室、果ては謎の倉庫など得体の知れないものが多すぎる。
「考えるのは後にして、そろそろ夕食だ。おキヌ達が腕を振るって作ってくれているぞ」
「そうだな。もうそんな時間だったか」料理は張り切っている者達に、任せることにしたらしい砂川の言葉に、一時思考を中断し、夕食をとることにした。



大厨房の側にある食事の広間には二十人近くが座れる大テーブルがあった。おキヌ、小鳩、魔鈴が腕を振るった夕食の席で、女性陣の小さな戦いがあった。
即ち『横島の両隣は、誰が座るか』というものである。
右隣はおキヌと小鳩が、左隣はシロとタマモが、それぞれ牽制しあっている内に、砂川と魔鈴に取られてしまった。四人の乙女は惜敗を飲みながらも、席につくことになった。


夕食の席で、皆から独立について、お祝いの言葉を貰った。
特に、唐巣神父からの『独立してからは、大変だが、その苦労が君を育てる畑になる』という言葉が、特にありがたく聞こえた。

シロや雪之丞が、飢えた獣のように食事を貪ったのもご愛嬌か(シロは人狼だが)

さて、食事も一段落ついた頃。
「しかし、横島。 経理とか事務関係の仕事はどうするんだ?」雪之丞らしくない、細かい質問だったが切実な問題だった。横島や砂川がやってもいいのだが、仕事の依頼が二人が現場に出向いている時に入ることも考えられる。となると事務専門のメンバーが必要になってくる。
「そうなんだよな。誰か、いい人いないかな」横島が、答えるのとほぼ同時に、小鳩が高々と手を挙げ、名乗りを上げていた。
「あ・・・・あの、私でよければ、使ってください」
「こ、小鳩ちゃん・・・・俺は独立したばっかりで給料を出せるかどうかも・・・・」
「お給料は、いくらでも構いません!! お願いします」
小鳩は必死だった。何しろ、横島が独立してしまえば、ただでさえ少ない接点が減ってしまうのだ。だが、逆に同じ職場ならば、会う機会も増える。今の彼女にとって、給料の額など二の次だった。


「給料はブレジ銀山での報酬から出していけばいいだろう。私とお主で、合わせて五億円近くあっただろう。忘れたのか?」返答に困る横島に、砂川が助け舟を出した。
先の銀山事件での報酬日本円にして五億円は、直接事件を解決した横島達に支払われていた。その報酬の取り分は、Gメンは二千万円。砂川と横島が、それぞれ二億八千万円ずつ。この辺で、新しく土地を買うのには中途半端な額の為に、すっかり忘れていたが個人の給料を支払うには十分すぎる額だった。ちなみにGメンは公務員のために、過度の報酬は貰えないのだが、銀山での一件は、全体の報酬が五億だった為に二千万円というのも決して取りすぎとはいえなかった。
「あ、そうか。そんな大金持ったこと無いから忘れていたな」貧乏性が染み付いているのは仕方が無いにしても、横島は金銭感覚を養っていくべきだろう。
結局、小鳩は事務員として採用が決定し、勤務時間や給料などについては、後日話し合うことになった。(ある三人の女性は、ますます危機感を募らせていたが)
「そういやあ、その銀山事件でお前、グレーターデーモンを倒したんだってな。俺も闘いたかったぜ」生粋のバトルジャンキーとしては、グレーターデーモンと聞いては黙っていられないようだ。
「ああ、殆ど無我夢中で、途中から意識は無くなるしで散々だったけどな」横島は、苦笑交じりに答える。実際に、あの時は必死だったのだ。この側に置いてある魔剣と砂川が居なければ、自分はどうなっていたか。

あの時の事件を思い出して、おキヌやシロタマコンビは複雑な気分だった。自分達を助けに来てくれたのは嬉しかったが、砂川に膝枕される横島を思い出したのだ。

彼女達三人の頬は、無意識ながら膨れていた。


そんな中、横島について全く無理解なのが弓だった。彼女の中では、横島は美神にくっついていた軟派な男といった印象なのだ。彼の実力を見る機会がなかったから当然とも言える。

(ちょっと、横島さんがグレーターデーモンを倒せる程の実力って本当ですの?)
(当たり前だろ。でなきゃアイツは生きちゃいねーよ)
隣の席の雪之丞をつついて、小声で尋ねている。対する雪之丞は、『敗北=死』の方程式が平然と成り立つような世界に居た為、凄まじい答えを返していた。
見れば、それは魔理も同じらしく、同じようなことを小声で隣の席のタイガーに尋ねている。

続けて雪之丞は・・・・・
(横島の実力が疑問なら、見てればいい。俺とアイツが戦うからよ)
(何ですって?)
(俺とアイツの戦いを見てれば、アイツの実力が解るさ。少なくとも横島は俺と同等かそれ以上に強いぜ)
弓自身、自分の恋人の実力は知っている。今まで、手合わせして一度も勝っていないのだ。

(その彼と互角か、それ以上?)

呆然とする弓を尻目に・・・・

「横島、今から鍛錬場で勝負しねーか? お前がどれくらい強くなったか。見たくなったぜ」そういう雪之丞の眼は、『闘わせろ』とハッキリ叫んでいた。どうやら弓に横島の実力を見せると言うよりも、自分で味わいたいらしい。根っからの戦闘狂の血が沸き踊っている。

「ああ、いいぜ」こうなると、収まりがつかない。横島自身、雪之丞が何処まで強くなったのか、興味が湧いた。珍しく、好戦的な笑みを見せて戦いに応じることにした。


二人が連れ立って鍛錬場に向かうのを、残りのメンバーは慌てて追いかけていった。
魔鈴や砂川だけは、コーヒーカップ片手に悠然とした足取りだったが。


鍛錬場。
「じゃあ、まずは砂川の旦那。審判頼むわ」砂川の秘めた実力を見抜いた上で、雪之丞は彼女を審判に指名する。
「私は女なのだが・・・・・まあいい。ルールは相手に重傷を負わせたり、殺したりしないこと、これでいいな」砂川は『旦那』という言葉を大して気にせず、実戦寸前のルールを提案する。
この場合は、危なくなったら自分が止めるという意思を含んでいる。言い換えれば、彼女に二人を止められる実力があるということだ。

もっとも、雪之丞の場合、それを見越して熱くなり過ぎた場合に備えて砂川を審判に指名したのだろう。

「ああ、それでいいぜ。ククク、久々に燃えてくるぜ」雪之丞は指をボキボキと鳴らし、呼吸を整える。
「相変わらずだな。お前も」横島も、そんなライバルの気質に苦笑しながらも、魔剣や文珠をいつでも使えるように身構えた。

鍛錬場を戦いが始まる前の独特の緊張感が包む。

「では・・・始め!!」砂川の声が、鍛錬場に響き、ほぼ同時に雪之丞の姿が横島に向かって、加速する。横島は、それに合わせるように、魔剣を抜き放った。

次の瞬間-―「ガイイイン!!」 魔装術の鎧に覆われた腕と魔剣が激突し、まるで、鋼同士がぶつかったような音を響かせる。

「腕を上げたじゃねーか、横島。魔剣まで使いこなすとはよ」
「お互い様だ。お前こそ、魔装術の錬度が上がってるぞ」
お互いの実力を認め合った二人は、軽口を叩き合いながら、同時に笑みを向け合った。


魔の鎧を纏う男と、魔の剣を扱う男の激闘が始まった。




後書き 席の取り合いという小さな戦い。(本当は席順の図があったんですが・・・貼り付けできず) 弓や魔理は戦いに関してはユッキーや横島よりは弱いだろなーと。
修羅場っぽくなりませんでした。そして何故か、雪之丞と横島のバトルに・・・・横島にとって、西条とは違った意味でのライバル、雪之丞。強さを求めながらも、自惚れない彼が好きです。自分的に最後の一文はお気に入りです。銀山事件での報酬、実は貰っていました。横島の場合、今まで、大金を持ったことが無かったので、実感が無かった模様。宝くじが当たって茫然自失となる人と似たようなものかも・・・・そして小鳩ちゃん、事務員に採用決定。さて、二人のバトルの行く末は?

次回で、カオスと雪之丞が館に生息するかも?



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