ザ・グレート・展開予測ショー

GS新時代 【鉄】 其の四 7


投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(05/ 2/19)


――――――――――――シュウウウウウウン――――――――――――

 
アトラクション全域の全ての結界が停止していく。

上手くいった・・・・・
電撃のダメージと出血、裂傷・打撲・及び骨折・・・・満身創痍のダメージで朦朧とする頭の中で汰壱は思った。

圧倒的に強い相手と遭遇した場合、自分はどう戦うか?

これが今回汰壱が、シロと対戦の後に思ったことであり、自分に課した課題でもあった。
GSの仕事は戦闘が多い、無論その中で自分より圧倒的に強い、手も足も出ない相手に出くわす事もある。
そういう時に自分はどうするのか?

シロと対戦したとき自分は力の限り全力で戦った。
だが結果は一撃入れることもできない完全敗北・・・・
汰壱の心情からすれば悔しい限りであるが、所詮は腕試し、万に一つも死ぬことはない。
シロとの時はこれでよかったが白蛇の場合そうもいかない、むこうはこちら完全に殺すつもりである。
まともに戦えば勝ち目は皆無、それゆえ自分の土俵に引きずり込んで勝負をかけた。
だが現実は厳しかった、唯一の勝機を見出した接近戦では全く歯が立たず一撃入れることすら適わずボロボロにされてしまった。
(勝てねぇ)
そう思いながら残り少ない体力で汰壱は必死に頭を働かせた、どうやって全員で生き残るかを・・・・・
獅子猿の時には、やり方次第で逆転可能な文珠が有ったが、残念な事に今は持っていない。
トカレフはロナルドの時に使い切り、残弾ゼロ・・・・
【任侠道】での奇襲も考えたが留美を奪還する際にスペツナズである事はバレているので、これもダメ。
先ほども言ったとおり、格闘戦では歯が立たない。
要するに汰壱では白蛇に勝つ事はできない・・・・・・
ここで問題なのは汰壱は勝てなくても負けてはいけない事だ。
獅子猿の時は言ってしまえば死ぬのは自分だけであるが、今回の場合では自分の死は即全滅に直結する。
なんとしてでも負ける訳にはいかないのだ。

(じゃあどうする?
このアトラクションの外には出れねぇ、中にいる限り霊能力は一切が封じられる。
霊能力が使えなきゃ誰も白蛇以外は結界を破れないし、シロさんタマモさん二人は封印されているし、俺自身も力が出せん
って言うか出せてもこいつには勝てん!どうする?どうやって・どうやって生き延びる?)

白蛇の猛攻に耐えながら汰壱は必死に考えていた。

そしてある事にようやく気がついた。

(そうだ霊気吸引結界!!)

話が逸れるが結界の原理は意外と単純である。結界も機械と同じでエネルギーがなければ作動はしない。
結界陣、魔方陣等は決して描くだけではそれ自身に力を持つ事は無いのだ。
エネルギーの伝達、増幅、展開をするのが依代・魔方陣であり、それを発動させるのはあくまで霊力や気となるのだ。
もちろんエネルギーとなれば、それらは電気などでも十分に対応できる。
そしてこのアトラクション内の結界の発動は全てが電力によって賄われている。

要は電力の供給さえストップさせれば、中の結界をとめる事はできるのだ。
霊気吸引結界さえ止める事ができれば、シロもタマモも復活できる。自分で勝てないのは悔しいがあの二人ならば、
何とかしてくれるはずだ。

あの【大剣豪】と【ファントム・レディー】ならば・・・

しかしこれは、汰壱にとてつもなく負担を強いる物でもあった。結界を停止させるにはどうしても霊気が必要となってくる。
霊力が封印されている結界内でどうやって霊気を使うのか?それが最大のネックであったが、それは【真呼吸】が解決してくれた。
【真呼吸】は自然界にある外気を取り込み、体内の内気と混合させて霊力を発揮する技である。
そして電気も自然界の外気に該当する・・・・・・・
だがこれが最大の難関であった。汰壱は電気が霊力に変換可能というのはある著書を読み、知っていたが
(著書・戦闘機を斬った女)
それには馬鹿デカイ複雑難解な魔法陣に、扱う本人自体の体質・及び極限の技量が要求されるのだ。


それでも迷っている暇はなかった、どの道このままでは死を待つばかりだ。
死ぬ可能性は高い、今この状態で大量の電撃を受ければ、下手すればそれだけで命を落としかねない、
なにより、全ての結界が無事停止したとしても、二人が自分の所にまで到着するのには2〜3分はかかる。
その間、能力が完全復活した白蛇を相手にしなければならない。

だがこれしか方法はない。







配電盤を見つけ最後の力を振り絞り



有りっ丈の力で拳を叩き付けた。



凄まじい電流で身が焼け、血が蒸発する


体の中で暴れる無機質なエネルギーを少しずつ、少しずつ丹田に廻し霊力に変換していく
アッというまにチャクラ回路がボロボロになっていく・・・・・・
電気の変換を補助する魔法陣も、電撃に強い体質でもない
膨大なエネルギー操る技量も備わっていない身体を、容赦なく電撃が傷つけていく・・・・・。


それでも僅かずつ、本当に僅かずつではあるが、汰壱の身体が霊気を纏い始めた。

(いまだ!!)


身体に纏った霊気を一気に利き手に集中、そのまま自分の血を媒介にした血塗れのワイヤーの銀線を通り道にして
有りっ丈の意思の篭った霊力と大量の電気を流した。




――――――――――――シュウウウウウウン――――――――――――





                     結界停止成功



「なるほど結界を止めたのか・・・・ならば出ろ【クラウンズ】」


特に驚くこともなく、白蛇が一言そう呟くと白蛇の周りを囲む要に数十体のピエロの式神が現れた。
先程のような緑の派手な服ではなく、黒を基調としたマントを羽織っている。


「さて、お遊びはここまで・・・・・名残惜しいがお別れだ」


ジャキン


数十体の黒の道化が武器を構えた。




「マーチ(行軍)」


「・・・・・・・こっから正念場か」



さて最後の悪あがきを始めよう。





震える身体で必死に構える。
いつもの構え、いつも道理の構え

もう立っているのすら辛かった。

文字道理、黒い波となって押し寄せる黒の道化たち。

繰り出される間断の無い、最後の悪あがき摘み取る、無慈悲な物量による攻撃

【真呼吸・耐久力強化最大】

ズガガガガガガアドウグシャ!!

情け容赦のない黒の嵐は汰壱を木切れのように吹き飛ばした。
最大限まで防御力をあげても数秒持たすこともできなかった・・・・・


身体は焼け焦げ電撃による痺れが残る。
口で息をするのも億劫で、鼻から息を吸おうとして吸えないことに気付く・・・・・


・・・・・畜生鼻が折れてやがる・・・・・

無様に地面に這いつくばる、地面は自分の流した血で汚れていた。

汰壱の回りはすでに二重三重の完全包囲をされいた。逃げ場はすでに無かった。

立たなきゃ


もう一度立ち上がろうとするが、足が手が動いてくれない


「動・・・け・・ぇよ」
か細い声で自分に言った

ああ畜生!!
どうして俺はこんなに無力なんだ。

勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい・勝ちたい
いつも思う・何度も叫ぶ
しかし
心のどこかがこう言う
(ここまでやったんだからもう十分だ)


身体のアチコチが言う
(もう動きたくない)

心に落ちた小さな雫は瞬く間に波紋を広げる
心に諦めが広がり始めた。

白蛇が呆れた様に言った。
「いいかげんに諦めたらどうだ?いくら足掻いても無駄な事ぐらい、その足りないお頭で考えれんのかね?
そうやって無駄に足掻くから余計に苦しむ事になる。諦めて一言(殺してくれ)と言えば楽に死なしてやろう」

無慈悲な提案を持ちかけるが
今のその言葉が途轍もなく甘美にも聞こえてしまう
心が身体がすでに限界を迎えていた。

よくよく考えれば留美の事にしたって自分は封印を解いたのだ、後はシロとタマモが何とかするのだから、
自分はお役御免である。もうこれ以上耐える必要はないのだ、我慢する必要もないのだ。


息をするたびに激痛を感じる

目開ける瞼が当方もなく重い

動かそうとする筋肉が断裂していくのが解る

意識を保つのが辛かった。

頭の中身を適当に掻き回され程好くシェイクした最悪の気分


何をしようが決して勝てない、手も足も出ない


「さあ!一言!一言はっきりと言いたまえ・・・・・・・・・(殺してくれ)と」
恍惚の表情を浮かべ白蛇がせかす。



「・こ・・ろ・・・・・」
「なんだい聞こえないな?」


地面に倒れ伏している汰壱を、数人の道化が引き摺る様にして立たせる
すでに瞼は閉じられその身体には力というものが感じられなかった。
「さあ私の耳に囁いてくれ!君の短く詰らない人生の終局の言葉を」


「こ・・ろ・・・・・・し」
「んんっもう少し!もう少しはっきりと」

汰壱の口元に大きく耳を寄せる。


「さあ返答やいかに?」





























勝てない、勝てやしない、どんなにやっても届かない

手も足も出ない、手も足も出ない・・・・・・
















        










ああ畜生          何で俺はいつまでも弱いんだ      





ああ畜生                      それでも






それでも                        逃げたく無い
                      

  





























「殺してやらあ!」

グワシャ
声高に叫ぶと汰壱は白蛇の喉笛目掛けて噛み付いた


「ぎゃああああああ!!」

初めて白蛇が悲鳴を上げた
まったく予想外のおおよそ人間の技ではない獣の噛筋力が、白蛇の喉笛に文字道理食い込んでゆく
瞬く間に純白のスーツの襟元が血に染め上げられていく。

「この糞餓鬼がああああ」

ドゴッ!!
怒り狂い汰壱を引き剥がし蹴り飛ばす。
踏み止まる事もできずに数メートル程地面を転がり横たわる。


「へへっ手も足も出ないが【歯】は立つみたいだな」
腫上がった顔でニヤリと笑ってみせる

「もう終わりだ!もう終わりだ!!さっさとこの餓鬼をぶち殺せ!今すぐ首を切り落として女狐と雌犬の前に
突きつけてやる。それが終わったらあのチビだ散々弄って殺してやるぅぅぅ皆殺しだ。」

顔は真っ赤になりこめかみには血管が幾重にも浮き出ている。怒っている明らかに怒っていた。

「だまれ!糞ロリコンの変態野郎!!もうお前の負けだ。てめぇはここで終わりだ」
汰壱が宣言するように叫ぶ。

「だまれぇえええ 【クラウンズ】!!」


黒の道化達が一斉に襲い掛かる今度こそ最後の止めが入る。
もう正真正銘自分には何の力も残っていない。




シロさんタマモさん後は・・・・・












幾重にも重なる凶刃が自分の体に降り注ぐ


目は瞑らない。
打撲で腫れ上がった瞼の中には【意地】の光が確かにあった。

最後の時が迫った・・・・・・























「汰壱・・・あんた・・・・・・・ちょーっと、カッコイイじゃない」
        「九成尾!」
金色の焔が醜悪な黒を薙ぎ払って行く。


「良く頑張ったでござる」
        「壬生狼!」
ブオォン     斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬 斬     
塵芥を払うかのように銀の疾風が駆け抜けた


交差し

弾け

交わり

舞い踊るかの様に駆け抜ける

銀の風

金の風

極彩色の二つの風が

黒の道化を瞬きする間に打ち払い、焼き尽くし、木端微塵に散華してゆく。


「おおっ!?」
ただ、ただ圧倒された。
眼前の光景にただ圧倒された。
自分が傷付き立つ事もできない程のダメージを受け朦朧する意識の中で、ぼやけた視界が映し出す。

極彩色の舞を・・・・

悔しいと感じることすら忘れるほどそれは美しいと思えた。

情けないと感じるよりも、もっと見ていたいと思った

眼前に迫る脅威を打ち滅ぼすと、汰壱を庇う様に二つの光がそこに舞い降りた。

「ちいいいい」
予想外の早さの助っ人の登場に、白蛇は歯噛みした。
先ほどまで浮かべていた、絶対勝利を確信した余裕の笑みはもうなかった。
あの二人と正面から戦っては勝ち目はないと思うや否や、高速で印を組み捕縛結界を発動させる。

「高速拘束術・・・・・黒封陣」

投げ捨てられた符の中から、新たなる数対の式神が飛び出しシロとタマモを囲むように散開する。
するとその体がゲルの様に広がりドーム状に広がり閉じ込めようとする。
「シロっ!!」
「あいわかった」
タマモが名だけ叫ぶと、シロは掻き消える様な速さで囲む一体を切り捨てる。
僅かに開いた隙間からタマモとシロは即座に獣形態へ、その穴に体を滑り込ませた。

「燃え立ち昇れ―――――緋岸」
ゴオオオオ
「はっ!はやい」

驚く白蛇を尻目にタマモは自分のナインテールを業火に変化させ白蛇めがけて解き放った。

「結・決・戒・界・止!とまれぇえええ」
カッ

白羽日の周りを囲うように黒の壁が展開、業火を押し留める。
「ははっ!この結界は私の術式でも最高の硬度を誇る結界だ、並大抵の攻撃では破れんぞ!」
しかしその額には汗がにじみ出ている。
「うーん確かに私じゃ無理かな・・・・・・でもね」



銀に輝く一振りの刃

高密度圧縮型霊破刀     【壬生狼】


「拙者ならば可能でござる―――――示現一閃」

                     大斬!!

低い腰だめの姿勢から超高速の抜刀居合い一閃!!回避は愚か認識外の速度の攻撃に白蛇は膝をついた。
      


「ぐっは!!ばっ馬鹿な・・・なぜ?」
血を吐き地面に崩れ落ちる
タマモはユックリと白蛇の前に立つ
「なぜ?簡単な事よ大剣豪の本気の一撃が、あんた如き二流のGSに防げる訳ないでしょうが」
「ぐっ!」


「さーてどうしようか?」
右手に金色の霊気を集中させる。
ヤル気マンマンの表情で相手に聞くのだからタチが悪い。
「なめるな女狐!」
懐から取り出したのは、握りこぶし大ほどのピンの付いた円柱状の物体

見るなり汰壱は叫んだ
「!?スタングレネード!!タマモさん離れて」


ピン!


――――――――――――カッ!!――――――――――――

目も眩まんばかりの閃光があたりを真昼のように明るくする。と同時に轟く耳を劈く爆音は聴覚・視覚を使い物に
ならなくする制圧兵器。

爆音と閃光がやんだ後には白蛇の姿は無かった。

「ああ!!逃げられた」
「あら逃げるの速いわねー」
爆発するまでの一瞬に有効射程外へ離脱という荒業をやってのけたタマモは事も無げに呟いた。

「落ち着いてる場合ですか!シロさんも暢気に俺にヒーリングしてる場合じゃ・・・痛ぇ」
「はいはい動くでないでござるよ・・・案ずるなすでに事は終わっているござる」
先ほどまで口を利くのすら億劫であったのに、ヒーリングを始めるや否やペラペラと良く喋る汰壱に、
安堵と飽きれ半分の表情のシロが宥めた。
「えっ?」
「まあもう少しかな・・・」
訳が判らんと言った表情の汰壱をそのままに、タマモ白蛇の気配を探っていた。



三十秒程後に突如



「ぎやあああああああああぁっぁあぁああワアアアアヤメロ来るなああああああああクルナクルナクルナクルアナ!!!!!!」


アトラクション全域に響き渡る様な馬鹿でかい悲鳴が聞こえた。


「・・・・・・・・・なっ!・・なにしたんすか?」
恐る恐る汰壱は聞いた。
語尾が震えているようなのは気のせいではないだろう・・・・・




汰壱のほうに向き直ると、タマモは人差し指自分の口にあて囁く様にいった。

「さあ?・・・きっと狐にでも化かされたんでしょ」(にっこり)

「あ・・・く・・・・じょ」
ぱたん
それだけ言うと汰壱はぶっ倒れてしまった。


「女は皆そうよ」
誰かが言った。




















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