ザ・グレート・展開予測ショー

3人一緒に。


投稿者名:東一華。
投稿日時:(05/ 2/18)

小さな部屋がひとつ。

ドアを開けると…中には小さなベッドと
いじりかけのラジオや液晶テレビなどが入ったダンボール箱。

男の子の部屋かと思うと、ベッドのシーツやタオルケットは
女の子らしい、色とりどりのお花が描かれているもので。

ベッドの上には可愛らしいクマのぬいぐるみと…
バンダナを巻いている人間の男性をかたどったぬいぐるみが、にっこりと笑っている。
そんな小さな部屋。

ベッドの上に座っているのは、パジャマ姿の10才に満たないであろう小さな女の子と。
パジャマを着て、頭にはバンダナを巻いている…



「ナイショったらナイショ。」
「え〜。教えてよパパ〜。」

聞こえてくるのはそんな他愛のない親子の会話。
女の子の服装を見る限りでは、どうやらもうお休みの時間らしい。
寝る前の少しの時間を、彼女は一番の楽しみにしているようで。
毎晩色々な面白いお話を聞かせてもらったり、本を読んでもらったり。
一番父親に甘えられる、そんな時間…

「何でまたパパとママが初めて出会った時のことなんて…」
「いいでしょ。パパ。いつ?どこでママと知り合ったの?」

彼女が先ほどから父親を問いつめていることは、母親との出会い。
どのような出会いだったのか。どのようにして二人は…

対して父親の方といえば、娘に先ほどから責め続けられて敗色濃厚。
娘に妻との馴れ初めを話すことに抵抗はあるものの
それが一般的なものであったら彼は迷うことなく
全て話していたかもしれない。

…それが一般的なものであったなら。

「えっと…パパのお仕事はゴーストスイーパーだってことは蛍も知ってるな?」

それを聞くと、蛍と呼ばれた彼の娘はにっこりと笑って…頭を上下に大きく振った。

「うん。それはパパから何度も『じょれい』の話も聞いてるし、知らないワケないよ。」

娘の誇らしげな顔を見て、彼の顔は綻んだ。素直に娘が可愛いと思える一瞬。
人の親なら誰にでもある、親バカとも呼ばれるかも知れないものだけれど。
目の前の小さな生命を本当に可愛いと思える…そんな瞬間。
全て話してしまおう。ついそう思ってしまう。

「パパとママはね……」
「……ただの『しょくばれんあい』とか?」

グシャッ
観念して話し出した途端、まだ年端も行かない娘の口からとんでもない言葉が飛び出たことで
彼は床に頭を思い切り打ちつけた。
ベッドに座っていた状態から床で頭を打つという、何とも変な格好ではある。

「た…ただの職場恋愛…?あのなぁ蛍……どこからそういう言葉を覚えてくるんだ?」
「えっと、テレビとか…美神のおばちゃんとか。」

無邪気に、無表情にそう言う娘の言葉に、彼は右の手でこめかみを押さえた。
『美神のおばちゃん』
娘の話に…またこの人が出てきた。
娘の前世を知っているせいか、はたまたそういう気遣いが全く無いせいか…
今まで彼女が娘に与えてきた影響というと…

「あ…あの人のせいでまた頭痛が…」



「痛いの痛いの……飛んでけー!」

彼の頭をさすっていた蛍が不意にそう言った。
驚いたように、不思議そうに見ている父を見て、彼女は笑った。
このようなことを父親にしたのは初めてのことだったが…
どうやら怒られてはいないようで…
むしろ少しは喜ばれているように見えて…
でもその顔が、不思議そうに見ているその顔が少し変で。
いつもの父と違っていて。
彼女は笑った。

「これもね。美神おばちゃんに教えてもらったんだよ。まだ痛い?パパ。」

「い…いや。痛いのはどこかに飛んでいったみたいだ。ありがとう、蛍。
 美神さんもこういうことだけ教えてくれれば…」



「パパ?」

ふと下から声がしたことに気がつき、彼は視線を下げた。
人差し指をくわえ、よくわかっていなさそうな…
あどけない顔をしている娘。
少しばかり…思考が飛んでいたようだ。

「あぁ…ごめんごめん。それで、どうした?」

「続き…話して?」

こういうことには抜け目が無い娘に、少し母親に似たのかな、と彼は思う。
ふぅ…と諦めたような溜息をつくと、彼は語り始めた。

「パパとママが出会ったのは、パパが美神のおばちゃんと…
 お仕事で白骨温泉の方に行った時なんだ。」

「白骨温泉って…おじいちゃんおばあちゃんや、早苗おばちゃんが住んでる…?」

蛍は白骨温泉と聞いて、少し意外そうに聞き返した。
彼女自身、何度も両親に連れられて行った白骨温泉…
そこで両親が出会ったということに、今ひとつ実感を抱けない。

「そう、その白骨温泉。
 そこの近くの山を登っている時に、ママと出会ったんだよ。」

ふーん、とうなずきながら、続きをうながす蛍。

「ママの『だいいちいんしょう』はどうだった?パパ。」

「え…いや何だ。とっても可愛かったよ。うん。」

「………どうしたの?パパ。パパのことだから
 『可愛かったに決まってるだろ?』って言うと思ったのに。」

いつも間近で父と母の幸せそうな生活を見ている娘、蛍からしてみると
汗を流してムリに笑おうとしている父はとてもおかしく見えたのだろう。

「いや…パパな、ママに出会い頭に殺されかけたんだよ。」



「え。」



固まる娘をよそに、彼は話を続ける。

「ママが生まれたのは三百年以上も昔で…
 パパと出会った時ママは『ゆうれい』だったってことは
 ママからもきいてるよな?」

「う…うん。」

そう言いながら上下に頭をぶんぶんと振る蛍。
話についていこうと必死になっているように見える。

「ママは白骨温泉の近くで、神様みたいなゆうれいだったんだ。」

「ママが…神さま?」
「そう、神様。でもそろそろ神様も嫌だ、天国に行きたいなって思ってたんだよ。」

彼女の問いにゆっくりとうなづく父。
しみじみあっさりと話しているものの、話の内容と…その軽い口調とが一致しない。
とても嘘にしか見えないような話。
そもそも母親が神様だったなんて聞いたのは蛍にとっては初めてのことで…

「そこにパパが来たんだけど、ママが天国に行くためには…
かわりの神様がいないといけなかったんだよ。」

何となく話が読めてきたらしく、蛍はじっと父の話を聞いている。

「その神様のかわりを、パパに頼もうって…ね。」

その時のことを思い出し、彼はつい苦笑してしまう。
初めて出会ったとき、巫女服を着て宙にふよふよと浮かんでいた妻。
本当に岩で潰し殺されそうになった時のことが彼の頭の中に浮かんでいた。
ただただ苦笑する父を見て、蛍は叫んだ。

「でも…ママもパパも生きてるよね!」



いきなり娘が叫んだことに、彼は驚いた。
目が何だか必死になっている娘を見て、彼は笑い出した。
確かに生きている。
不思議な家族だと、そう思う。
妻は300年前に一度死に、現世で生き返った。
そして自分が生きているうちに恋人として死んだ女性は…
今、目の前に娘として在る。

「あぁ、そうだな。色々あってママも今、生きてる。
 そしてお前が生まれたんだよ、蛍。
 パパも、ママも、そして蛍も生きてるんだよ。」

そう言うと、蛍は嬉しそうに…本当に嬉しそうに笑い出した。
そして、母親から常々聞かされている文句を思い出した。

「パパ。ママがね、『パパが助けてくれたんだ』って
 『パパはママのヒーローだ』って言ってたよ。」

「はは…ママが、ね。でもパパはママだけじゃなくて
 蛍、お前のヒーローでもあるんだぞ〜。」
「きゃっ!」

彼は愛娘を抱き上げ、腰掛けていたベッドから立ち上がった。
大きくなったものだと彼は思う。
そして触角こそ無いものの
彼女に段々似てきていると、そう思う。



「ね、パパ?」

笑いながら蛍は、父に訊いた。

「何?蛍。」

「ぷろぽおずはどうだったの?」

ドグシャッ
激しい音をたてながら彼は床で鼻を打った。

「み……美神さん〜〜!!」
「違うよ!美神おばちゃんじゃなくて、ママがそう言ってたの!
 結婚しようっていうのがぷろぽおずなんでしょ?
 ママがね、『ぷろぽおずはパパの方からなのよ』って嬉しそうに言ってたから。」

「…ママが……?」

こくこくとうなづく蛍に、父は固まっていたものの
固まってから10秒を経過した頃、無事再起動を果たした。

「と…とりあえずもう寝なきゃ…明日起きられないから。」
「え〜〜。」

不満そうな娘を彼はベッドにもぐりこませると
軽く頬にキスをし、耳元で小さく「おやすみ」と囁いた。

「…おやすみなさい、パパ。」

もう話なんてどうでも良くなった様子の娘を見ると
彼は部屋の明かりを消してドアを閉めた。

「って、こんなことじゃ騙されないんだから!明日絶対話してね!パパ!」

ドアの向こう側から聞こえる娘の声に、びくっと彼の体が震えた。
ふう、と溜息をつくと、彼はポケットの中に手を入れた。
ポケットから出した手には、ビー玉のようなものがにぎられている。
「忘」という文字が浮かび上がっているビー玉を彼はしばし眺めていたが
もう一度大きな溜息をついた後、それをポケットの中に戻した。
そのまま居間に戻り、ソファに腰掛けた彼の耳に聞こえたのは…

「どうしたんですか?蛍に何か訊かれました?」

くすくすと笑いながら話しかけてくる、その声の主を確認すると
彼は吹っ切れたように話し出した。

「美神さんといい…お前といい、何考えてんだ…蛍に変なこと教えるのは…ん…」

彼の口を塞いだのは、彼の妻の唇だった。
時間にして3秒ほどの、短い口づけ。

「美神さんのことはちゃんと苗字で呼んで、私の方は『お前』は無いでしょう?」

「…ずるくないか?キヌ。」
「ふふっ…あの子もそういうことに興味が出てきたみたいですから。
 たまには…あなたから話してもらってもいいでしょう?
 ね、忠夫さん?」

「…そうだ、キヌ。」
「なんです?」

「生き返ってくれて、ありがとうな。」

「…よく言います。
 待って下さいって言ったのに、聞かずにすぐ生き返らせようとしたくせに。
 もしかしたら思い出せないんじゃないかって、本当に不安だったんですよ?私も。」

「はは…そういえばそうだな。悪いことしたかな…「でも。」」
「でも…今は本当に幸せですよ。
 ありがとうございます。忠夫さん。」

彼は笑って答えると、明日からの娘とのやりとりを考え
どう答えようか考え始めた。

困っているはずなのに…
それでも、このような生活も…
また、幸せなんだなと彼は思う。

ふと、小さな考えが彼の頭に浮かんだ。
今度3人で…色々な場所を巡ってみよう。
キヌと初めて出会った場所や
前世の娘と夕日を見た…あの東京タワーに。

3人…一緒に。
キヌ、蛍…一緒に生きていてくれて…本当にありがとう。






あとがき(?)
えっと…何よりも初めまして、でしょうか。
このような駄文に最後までおつきあい頂いた方、ありがとうございます。
今まで皆さんの作品を読ませて頂いておりました。
みんな素晴らしい作品で。私は読むのが精一杯だと。
今でも正直、そう思ってますが…ちょっとした我が侭でしょうか。
つい投稿してみたくなってしまったんですね。
こんな予想はGS美神らしくないなぁと思う方。(私もどこかそう思ってるのかも)
文が幼いなと思われる方。(これは言うまでもなく)
反対票をどんどんお入れ下さいな。
ただ、横島にとって…こんな幸せが訪れればなと思ったので。
手が自然と動いていましたね(汗
それでは失礼しました。

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