World Cat Wars 2
投稿者名:777
投稿日時:(05/ 2/17)
放課後。帰り道で。
除霊委員としての仕事があったため、横島たちが学校を出たのは夕方になってからだった。
「手強い相手じゃったノー」
タイガー寅吉が、疲れているのか肩を回しながら言った。横島が頷く。
「武装して女子トイレに立てこもる人体模型とはなぁ。マシンガンなんてどっから手に入れたんだよ」
彼らは少し怪我をしているようだった。元気付けるように、ピートが笑う。
「でも、横島さんもタイガーも、二人とも強かったですよ。特に、横島さんの成長振りには、目を見張りました」
「ふっふっふっ、まぁな。今の俺はすごいぞ。文珠三文字同時使用可能!! 霊波刀が物質化!! さらに夕日が差していれば戦闘力三倍だ!!」
横島が胸を張る。タイガーが続いた。
「わっしの活躍も忘れてもらったら困りますノー。 従来の幻影がさらにパワーアップ!! 相手の精神に強引に侵入して情報を書き換える荒業、その名も『サイコハッキング』!! こいつがとどめを刺したんですケン」
「ははは。でも、僕の技がなければ危なかったですよ。キリストの力とサタンの力を合体させた極大消滅術式、通称『ドロメーア』!! マシンガンの弾をとっさに消滅させなければどうなっていたことか……」
珍しく、ピートが自慢めいたことを口にした。三人とも、強くなったことが嬉しいのだ。
その時、和気藹々と話している彼らに向かって、唐突に声がかけられた。
「面白そうな話をしてるじゃねぇか」
「誰だ!」
横島の誰何の声に、謎の人物は姿を現した。黒ずくめの怪しげな姿が、夕日の中に浮かび上がる。
「お前は……雪之丞!!」
伊達雪之丞はにやりと笑って見せた。その顔には、何事かをやり遂げた男の達成感が浮かんでいる。
「新技自慢か? そういうのは俺も混ぜろよ」
「お前、今までどこにいたんだ?」
横島の問いに、雪之丞は唇をゆがめる。
「魔界さ。魔界で修行をしてたんだ」
「クッ! なんて美味しいシチュエーション!! そうか、魔界で修行して、十分な力を手に入れて、死んだ恋人を復活させるために戻ってきたんだな!」
「弓は死んでねぇよ! 勝手に殺すな!!」
「誰も弓さんだなんて言ってねぇだろ! やっぱり付き合ってたのかお前ら!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて……」
にらみ合う二人の間にピートが割って入る。二人はなおも「大体お前この間俺ン家に飯たかりに来たばかりだろ! いつ魔界なんて行ってたんだよ!」「三日前から今日までだ」「短っ! それで何で新技ができるんだよ!」などと騒いでいたが、ピートが極大消滅術式『ドロメーア』の構えを取ったのを見て黙り込んだ。
「で……なんだって? 雪之丞、新技ができたのか?」
気を取り直して横島が尋ねた。若干ビビり気味の雪之丞が頷く。
「ああ。魔装術がついに最終形態に進化したのさ! 見てくれ、ママー!! この格好いい俺の姿を!!」
雪之丞が霊力を開放する。凝縮された霊力が彼の全身を覆い、物質化した。
「「「そ、その姿はっ!」」」
妙神山での修行により、雪之丞の魔装術はすでに限界近く鍛え上げられていた。それをさらに進化させるとどうなるか。
凝縮された霊力は物理法則すら無視する。大角度境界を突破した霊力は無衝突衝撃波をガウス鎖に構成し、それにより破壊電圧が非回転ベクトルとなって全身を覆う。α壊変された幽霊分子はとうとう再結合し、等価原理により同位心すら跳ね返すことができる。
雪之丞の全身を覆うそれは、まさに鉄壁の鎧なのだ。
「えーと? タイツマン?」
究極の防御物質とは、黒いゴムのようなものだった。
それで全身を覆われた雪之丞。その姿はまさにタイツマンと呼ぶにふさわしい。
「今の俺は、近接戦闘に関しちゃ文字通り無敵だぜ!」
「そりゃ、まぁ。お前に殴られたらスピリチュアルアタックされたようなもんだしな」
「そんなにほめるなよ」
横島の言葉を、雪之丞は笑い飛ばした。
そして次の瞬間。彼は獰猛な唸り声を上げた。
「で? 俺たちに勝てると思うのか?」
横島たちも今までのおちゃらけた雰囲気を消し、真剣な顔で周囲を見回している。そう、彼らはとっくに気づいていたのだ。自分たちが囲まれていることに。
「さすがは、アシュタロス殺しの英雄たち、といったところか。我らの隠形に気づくとはな」
風に乗って、冷たい声が流れた。ざわり、と殺気が空気を尖らせる。
「――――猫?」
どこからわいてきたのか、気づけば数十匹の猫が横島たちを囲んでいた。
その中のリーダー格らしき黒猫が、ひげを揺らせて宣言する。
「この数の猫の騎士を相手に、一体どうするつもりだ? おとなしく、死ね」
雪之丞が獰猛な笑みを浮かべる。
「面白ぇ。事情はわからねぇが、新技のいい実験台になりそうだ」
「まー俺たちは人体模型相手にハッスルしたけどな」
横島の呟きには耳を貸さず、雪之丞は叫んだ。
「さぁ、戦闘開始だ!!」
<<<戦闘開始!!>>>
横島(文珠使い)
ピート(ハーフヴァンパイア)
VS 猫の騎士×35
雪之丞(マザコン)
タイガー(寅吉)
TURN 1
横島の攻撃!
「こいつを食らえ!!」
三連文珠! 『氷』『点』『下』
周囲の気温が下がりだす……
寒さで横島の動きが鈍くなった!
寒さでピートの動きが鈍くなった!
寒さで雪之丞の動きが鈍くなった!
寒さでタイガーの動きが鈍くなった!
猫の騎士は毛皮を着ているので寒さは効かない!
「横島ぁ! 余計なことすんな!」
「わりぃ。間違えた」
雪之丞の攻撃!
「うらうらうらうらうらぁぁぁ!!!」
スーパーラッシュ!!
クリテイカルヒット!!
猫の騎士全員に2063のダメージ!!
「くっ……馬鹿な! 何故、これほどまでに強い!?」
ピートの攻撃!
「右手にキリストの力……」
ピートは呪文を唱えている!
「後2ターン待ってください!」
「ターンって何だ!?」
猫の騎士×35の攻撃!
「食らえ、我らの力……」
猫の騎士たちは不可視の衝撃波を吐き出した!
横島に218のダメージ!
ピートに184のダメージ!
MISS! 雪之丞は攻撃を受け付けない!
タイガーに69のダメージ!
「何だこいつら! 結構強いぞ!」
タイガーの攻撃!
「これがわっしの力ジャーーー!!!」
サイコハッキング!!
猫の騎士たちの精神に侵入した! 死のイメージを書き込む!
猫の騎士×7が即死!
「即死効果!? 馬鹿な……危険すぎる!!」
TURN2
横島の攻撃!
「これが物質化した俺の霊波刀……その名も『火蛍』!!」
スーパーラッシュ!
猫の騎士全員に1687のダメージ!!
「もう嫌だ……こいつら、強すぎる……し、死にたくないぃぃぃぃ!!!」
「逃げるな!! 誇り高き猫族ならば、戦って死ね!!」
猫の騎士に恐怖が伝染する!
猫の騎士×1が逃げ出した!
雪之丞の攻撃!
「逃がすかよ……」
雪之丞は逃げ出した猫の騎士を追撃する!
バックアタック!
猫の騎士に9999のダメージ!!
猫の騎士は息絶えた!
死んだ猫の騎士には、来週子供が生まれる予定があった。
しかし、死の寸前に彼の脳裏に浮かんだのは、愛する妻の顔でももうすぐ生まれる子供のことでもなく、ただひたすらに死にたくないという恐怖だけだった。
もしその瞬間の彼に、『妻と子の命を差し出せば助けてやる』と言っていたら、彼は躊躇いなく妻子の命を差し出しただろう。
そのことを、彼の妻は知らない。今はただ、夫の帰りを待ちながら、生まれてくる子供の靴下を編んでいる。
雪之丞は、命を奪ったのだ……
「なんだ? このモノローグ!?」
「雪之丞君、ひっどーい!」
「誰だてめぇ!」
ピートの攻撃!
「左手にサタンの力……」
ピートは呪文を唱えている!
「馬鹿な!? 神と悪魔の力を同時に使うだと!?」
「信じられないか? でも、ハーフヴァンパイアの僕には、それが可能なんだ!」
猫の騎士×27の攻撃!!
「我らはここで散るのか……」
猫の騎士たちは諦め気味!!
猫の騎士たちは不可視の力を放った!!
横島に124のダメージ!
ピートに95のダメージ!
MISS! 雪之丞は攻撃を受け付けない!
タイガーに42のダメージ!
「効かねぇよ、その程度!!」
「防御力高すぎだろ! その魔装術は反則じゃないか?」
タイガーの攻撃!
「わっしは肉弾戦も可能なんジャーーー!!」
マッスルタックル!!
猫の騎士×4が避けきれずに押しつぶされた!
即死!
「霊力すらこめられていない攻撃で逝ってしまったか……」
「隊長! 我らの負けです!! 降伏しましょう!!」
TURN3
横島の攻撃!
「大した怪我じゃないが回復するぞ!」
三連文珠! 『全』『回』『復』
治癒の光が横島たちを包み込む……
横島のHPが9999回復!
ピートのHPが9999回復!
雪之丞のHPが9999回復!
タイガーのHPが9999回復!
「参った! 我らの負けだ!」
雪之丞の攻撃!
「無駄無駄無駄ァァ!!」
スーパーラッシュ!
クリティカルヒット!
猫の騎士全員に3214のダメージ!!
「ま、待て……我らは、降伏する……」
ピートの攻撃!
「合体!」
ピートの呪文が完成する!
極大消滅術式『ドロメーア』!!
猫の騎士全員に9999のダメージ!
猫の騎士たちは息を引き取った!
……横島たちの勝利!!
2145円を獲得!
1456の経験値を獲得!
<<<戦闘終了!!>>>
戦闘が終了する。
横島たちは苦い勝利を味わっていた。
「ちっ……胸糞悪い戦いだったぜ……」
雪之丞は悔しそうに吐き捨てた。その顔に、後悔がにじんでいる。
襲われたとはいえ、彼らは35匹もの猫を惨殺したのだ。
どんなに心の荒れた人間でも、猫という平和的な生き物を殺せば、少なからず心に傷を受ける。
横島たちは、心に重い傷を負ってしまった。
「降伏するのが、遅すぎますよ……」
死んだ猫の死体を前に、ピートが悲しげに呟いた。
「ターン開始前に降伏してくれなければ、僕らは攻撃を止められないのに」
「殺さず勝つには、強すぎたケン……わっしらを恨まんでくれ……」
タイガーが頭を垂れた。虎と猫は親戚のようなものだ。おそらく、彼らの中では誰より、タイガーが悲しんでいるのだろう。
「馬鹿野郎!」
その時。
横島が叫んだ。
「今は、過去を偲んで泣くときか? 後悔して悲しむときか? 違うだろう!」
彼らは見た。
横島が涙を流しながら叫んでいるところを。
「大切なものを失ったからって、泣いてるだけじゃダメなんだ! 立ち上がって、戦わなきゃダメなんだ!」
かつて、横島は戦いで恋人をなくした。
だからこそ、大切なものを失う痛みを、一番よく知っているのだ。
大切なものを失ったとき、誰かが叱咤しなければいけないと、知っているのだ。
悲しんでいるだけではダメだと。戦いから、逃げるなと。
「俺たちには、まだやることがあるだろう!」
「そうだ……俺たちには、まだやることがある!」
雪之丞が吼えた。
彼は知っている。今、最もしなければならないことを。
「まずは飯を食う! 話はそれからだ!」
修行帰りの雪之丞は腹をすかせていた。
ぶっちゃけた話、ここに来たのも横島に飯をたかろうと思ったからだ。
猫が落としていった金を握り締めて、彼は叫んだ。
「マックに行くぞ!」
「「「おおっ!!」」」
その時、彼らの心は一つだった。
今までの
コメント:
- HEY! YO!! 俺がCOOOOOOLなDJフィーバーだ! イェアイェアイェア!!
777からのお便りが届いてるZE! 早速読み上げチェケラ!
『横島最強化って流行ってるんでショ? だからやってみました』
ク、クレイジィィィィ!! やってみましたじゃねーんだYO! 安易にそういうことをやるNA!
大体なんで他の奴らも強くなってるんだYO! 戦闘バランスが崩れるから? だったら何でやるんだYO! 原作の技だけで戦え!
あと、LAST! 何で急にしんみりしてんだYO! 二重人格KA!
『横島がああいう台詞を言うのって格好いいでショ? だからやってみました』
ク、クレイジィィィ!! 格好良くない! 前後の行動がつながってないYO!
大体戦闘シーンもっと頑張って書けYO! 何でゲームっぽいんだYO!
エブリワン! 奴は危険だ! 今すぐ感想を送ってプレッシャーをかけろ! やりたいほうだいやらせるNA!
それじゃ、次の話で会おうZE! (777)
- テンポがいい。このままのペースで終わりまで突っ切ったらかなりおもしろいと思います。もともと原作からして無理無茶は当たり前、ノリとテンポでいけば名作となりうると思います。 (橋本心臓)
- たまにはこういう無茶苦茶なのも悪くないです。悪くないです!(何故二回言う?) (九尾)
- 猫の騎士ってどこに金を持っていたんだ?まさか、四次元ポッケ標準搭載でライフが無くなると所持金やアイテムを落して行くとか???
むむ、謎が解けない・・・
ここは、名探偵猫に依頼をせねばなるまい。
――――
「三〇猫ホームズの世界猫戦争」より(ありませんって)
※
「石津さん、ここはホームズを待ちましょう!私達だけじゃこの謎は解けないわ!」
仕事帰り、その現場に居合わせた片山晴美は、惨殺された猫を口元を押さえて見ると、膝が笑っている隣の男にキッと視線を向けた。なんでこんなガッシリした男が猫恐怖症なんか発症しているんだろう、とこういう時、いつも思ってしまう。
「そ、そうですね晴美さん。おにいさ・・・いや、片山刑事と『ホームズさん』のお知恵が必要なようです。こんな凄惨な現場、片山刑事は貧血を起こすかもしれませんが」
切り刻まれ押しつぶされ血に塗れた内蔵がヌラめいている無数の猫。反面刑事を地で行く血にめっぽう弱い彼女の兄の片山刑事がこの光景に耐えられたら奇跡だろう。
「まったくもう。誰よこんなひどいことしたの!!」
プンスカ怒った晴美。ホームズを飼っているから余計に許せない気持ちが大きくなっているようだ。石津はそんな晴美を宥めるのに四苦八苦しながら、早く片山刑事が来ないかなあ、と、猫から目を反らながら思っていた。
※
――――
って、違うトコ見てるし探偵猫の飼い主ッ(まあ、そうだろうなあ・・・) (HF28号)
- ね、ネコぉぉぉぉぉ!!…35匹惨殺ですかぁぁぁぁ!?酷っ!…そ、そりゃ、心の傷は深いでしょ。いつの日か、横島君達の精神が癒される事を願って止みません。
しかし…惨殺シーンもRPG戦闘シーン風の描写のお陰でコミカルに読めるのが何とも… (かれな)
- スマン、後書きの方が面白いw
この賛成票は後書きに対してって事で (MAGIふぁ)
- MAGIふぁさんの言う通り後書きも楽しませるなぁw
でも写実的に脳内で描写したら、リアル猫35匹惨殺・・・トラウマになりそう。
あとRPG風戦闘描写って手があったか!!と思いました。非常に斬新。 (GAULOISES46)
- ……宝石モンスター?(デマ&挨拶)
777さん、おそらくは初めまして。
向こうから襲われたからにはそれなりに正当とも謂えますが、「殺さず勝つには、強すぎた」にあまり説得力が感じられなかったので、ちょい反対です。
ゲイム風の代替描写は状況の凄惨さを軽減させてくれるものの、数値以外の部分が総じて抽象化されてしまったのがどうも。ネコの正体や能力が具体的に判らないので、忠夫たちがそこまで徹底してやっつけるべきだったのかどうか、ネコたちも何故あそこまで尊大だったのか、判断つきかねました。
いや、要はネコたちがあまりにフビンだったもので。全篇ギャグだったのならば全く的外れな意見なんですけど(ドクロ)。
それと忠夫たち、パワーアップしたのなら最近のっぽくリアルタイム・バトルに対応しようze!(あ、なんかイイかも) (Iholi@でもPS2は無い)
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