ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い13


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 2/16)

砂埃が収まり、横島と砂川は敵の正体を見極めることが出来た。

ねじれた角。鋭くとがった牙と爪。蝙蝠のような翼。丸太のような手足に数メートルの巨体。まるで、RPGのダンジョンのボスとして登場しそうな・・・・・

「グレーターデーモンってやつか?」
「ああ・・・正にそうだな・・・」
横島の問いに、砂川は答えた。
そう、目の前に居るのはグレーターデーモン、所謂、上級悪魔といった奴だった。正にその姿は、一般人が抱く悪魔そのものだった。流石にこれでは、普通のGSやGメンには荷が重い。

「グググ、そっちにいるのは我の腕に傷をつけた人間だな・・・魔剣なんぞ持ちおって・・・・人の身には過ぎたものよ」
確かに、デーモンの左腕には傷があり、紫色の血がこびりついていた。

「一つ、二つ、聞くことがある。答えてもらうぞ」砂川が、デーモンに槍を突きつけながら詰問する。

「グググ、何だ? 冥土の土産に答えてやろう」嘲るような声で、悪魔は応じた。

「一つ、数十年間に渡り、子供をさらい、食らってきたのはお前か? 二つ、どうやって人界にやってきた?」最初の問いは確認、次の問いは疑問といった響きだった。彼女自身のように、力を人間レベルに制御できるのならともかく、この悪魔は力の制御がそれほど上手なタイプでは無さそうだ。これでは、力が大きすぎて、人界と魔界の境界をくぐれないはずだ。


「そうだ、我が喰らいつくしてやったのよ。それと、人界に来れたのは、負のエネルギーが、溜まり人界と異界の門となったため」

悪魔の話から、砂川だけでなく、横島も納得がいった。その場合ならば、力を制御出来なくとも、強引だが人界に来ることは出来る。つまり、召喚などによって、呼び出されたのでは無く、勝手に『向こう』からやって来たのだ。迷惑なことこの上ない話だった。

恐らく、この悪魔がやってきたのは第二次大戦前後。戦争は最大限に、負のエネルギーを生み出す工場になり得る。現地の子供達がさらわれ始めた時期も、丁度その頃だった。

「俺からも質問だ。落盤事故を起こしたのもお前か?」

「そうだ。のこのこやって来た獲物を喰らってやろうと思ってな。特に絶望に満ちた女の魂は格別だ。貴様らの魂も頂くぞ」
その言葉と同時に、悪魔は咆哮と共に、間合いを詰め、腕を横なぎに振りぬいた。

ブオンッ!!

「クッ・・・」
「ちい・・」
それぞれ、横島は左、砂川は右へ避けた。

それが、合図となり、槍使いと文珠使いの命がけのタッグバトル開始。



その頃、西条達は部隊の側面を結界で防御し、敢えて無防備にした正面に向かってくる敵を精霊石や銀の銃弾で迎撃。弾幕を抜けた敵を西条が、霊剣で片っ端から切り捨てていった。
敵である魔物や悪霊はそれほど強くは無いが、数が多い。その為に一分間に五メートルしか進めない。美神達の居る地点まであと百メートル以上。

(楽天的に考えても、二十分以上かかるのか。果たして長いのか、短いのか。無事で居てくれ、皆)
西条は、焦りそうになる自分を抑え・・・・

「気を抜くな!! 先は長いぞ!!」部下を叱咤しながら、霊剣を目の前の魔獣に突き刺した。



そして・・・・・

ガキン!! ヒュン ビュ ザシュン!!

鋭い爪と魔剣がぶつかる。衝撃で腕がしびれるが、必死で剣を支え、相手の鋭い爪の連続攻撃を受けきる。頃合を見計らって、後ろへ飛ぶ。

「砂川!!」
「応!!」
絶妙のタイミングで、砂川が、相手の脇腹へ槍を突き入れる。

だが・・・・・

ガギイイン・・・

「その程度で、我の体は貫けぬ」悪魔の肌は鋼より硬く、槍の穂先は跳ね返される。

ズガアン!!
相手の力任せの霊波砲。
危なげなく、避ける。
砂川にとって、魔神としての力を使えば、楽に倒せる相手だろう。しかし、ここは妙神山の時のような異空間では無い。そんなことをすれば、西条や美神はともかくとしても、Gメンに気付かれ、とんでもなく厄介なことになる。Gメンにとっては、魔神はアシュタロスの一件もあり、「敵」でしかないからだった。


(ちい、やはり一筋縄ではいかん)
砂川は、忌々しげに舌打ちするが、四つ、こちら側に有利な点があることに気が付いた。

相手は力はあるが、技が無い
砂川の正体を見抜けていない
横島の文珠について、よく知らない
抜け道から漏れ出る光で、暗闇での戦闘ではない

同じことは、横島も気が付いていたが・・・・

(それでも、駄目だ)
絶対的に攻撃力が足りない。相手の体の頑強さはデミアン以上だ。『爆』や『滅』のような攻撃力の高い文殊でも、駄目だったのだ。

何か、もっと貫通力のある攻撃は・・・・

「横島、文珠で結界を張れ!!」
「わかった!!」
砂川の鋭い声に、『防』の文珠を発動させる。

悪魔が足止めを食ってる間に、砂川に近寄る。


「何か、思いついたか?」
「ああ、お主、五分間、文珠無しで奴を足止め出来るか」
砂川の言葉に、横島は自分の装備や文珠を除いた霊能力を確認する。
魔剣ゲヘナに、Gメン隊員達から貰ったのも含めて精霊石が十個。霊能力としては、サイキック猫だましなどの小技など。その他諸々、どの道心もとない。

それも、承知の上で彼女は横島に作戦を説明する。

作戦の前提条件として
『文殊を用いないでの十分間の足止め』が必要だった。文珠は作戦の最終段階で必要となってくるのだ。

迷っている時間は無かった。

「わかった。なりふり構わないでやってみるぜ」
横島は、頼もしい笑みで頷いた。

命がけの十分間が始まった。




その頃、西条達はとうとう、美神達の元へ到達した。見た所、全員疲労は激しいが、命に別状は無さそうだった。

「令子ちゃん!!」最後に残った魔獣を切り裂き、西条は美神に駆け寄る。
「西条さん!! 来てくれたのね」
美神は思わず、西条に抱きついていた。

(昔、ママのことで、こうやって泣きついて困らせちゃったことがあったわよね・・・)
あの時は、西条は背中を軽く叩いて、頭を撫でて励ましてくれた。
あの時は、彼は『優しいお兄ちゃん』だった。今は・・・・・・

昔を懐かしむ二人に対し・・・・・

「あの、西条さん。横島さんは・・・・」戸惑いがちにおキヌが問う。
「ああ、別ルートでの手強い奴を、『砂川志保』という女性と一緒に倒しに行ってる」意図してか、否か、一部分を強調する西条。

(やっぱり・・・・あの物凄い気配の方へ行ったんだ)
確かに、自分達を助けるために、彼が必死なのはわかる。でも、直接会えないことが嫌だった。
しかも、自分達の知らない女性と一緒に・・・
半ば解っていた。向こうの方で、見覚えのある懐かしい気配。それと戦う禍々しい気配。そして、自分の知らない気配がもう一つ。

(多分、砂川さんて綺麗なんだろうなあ・・・・・やだ私、どんどん嫌な子になってる)
女の勘で何となくわかってしまう。思考の闇にとらわれかけたおキヌだったが・・・・・


「すぐ、助太刀に行くでござる!!」師匠の危機を助けんとばかりに意気込むシロ。
「馬鹿、満身創痍のあたし達じゃ無駄死にがオチよ。横島の心の傷を増やしたいの。馬鹿犬」クールに、それでいて横島の内面を察して突っ込むタマモ。

「その通りだ。我々では、足手まといになる。彼らを信じて待つほか無い」
「そうでござるが・・・・・」
なおも、言い募るシロ。

「待つことも強さだよ。それに、僕は指揮官として、君らの命を預かっている。死なせでもしたら、横島君に取り殺される」

西条の冗談交じりだが、重い言葉に沈黙するシロ。

タマモは・・・・・・
(やっぱり、この人も相当骨のある男よね)
場違いながらも感心し・・・・

おキヌは・・・・・・
(そうですよね・・・待ちます。横島さん、そして砂川さんも、どうか元気で・・・)
暗い思考を振り切り、天に祈り・・・・・・




そして騒ぎの元凶たる美神は・・・・・・
「あ、あう・・・・マ、ママが怒ってる」
横島のことを聞く前に、西条から手渡された書類を見て、自分の母が激怒していることを知り、真っ白になりかけていた。(三白眼で微笑む母の写真同封)

神も魔も恐れぬ女も、母は怖いらしい。



後書き 
思ったより早く書きあがりましたが、本格的なバトルは次回に。あと戦闘後、砂川が横島に膝枕を・・・これを見た事務所のメンバーの反応やいかに(修羅場好き)  

美神、金に目がくらんで人に迷惑かけるのは、アシュ編以降に限っても、これで三度目ですからね(タマモ、ユニコーンに続き、しかも今回が一番やばい)  美智恵さんも我慢の限界でしょう。

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