ザ・グレート・展開予測ショー

夢から覚めて


投稿者名:浪速のペガサス
投稿日時:(05/ 2/16)



 周りが黒い。
 何もかもが真っ黒で、何も見ることが出来ない。

 ―――ここは何処?
 ―――何があるの?

 動いて辺りを散策しようと思っても、自分自身に五体がないのに私は気づいた。
 あるのは、自分の眼と自我意識だけ。


 しばらくして一人の少女が見えた。隣には見たことのある悪魔。声は聞こえない。
 泣きながら、必死になって何かを唱えている、口を動かしている。
 だけれど最後の一言が言えなくて。言いたくなくて。
 少女は口を塞いでその場に泣きじゃくった。
 悪魔は少女に対していらだたしげな対応をしてる。


 【殺らなきゃ、殺られるぞ?】


 聞こえないはずなのに、何故だかはっきり聞こえた悪魔の囁き声。
 そして少女は泣き叫びながら口を開いた。
 一瞬、目がくらむほどの光が放流する。
 次の瞬間、少女は何故だか真っ赤に染まり、悪魔は気分良さげにに高笑いをしていた。











 眼が覚めた。
 私は、寝床から静止して動かない。動けない。
 だけど手だけは動かせて。私は手を眼の真上に動かした。
 紅くない。
 紅くない。
 だけど、すぐに紅く見えた。そんなわけ無いのに。紅く見えた。



 ―――――気持ち悪い……



 刹那に感じる不快感、そして四肢に自由が戻る。
 洗面台へと駆ける。
 口に手を当てたくなかったから、必死に耐えた。
 だって口に手を当てると、血の匂いがするんだ。

















 ――じゃー

 蛇口から水がほとばしる。水の量なんか気にしない。
 体にかかっても顔にかかっても気にしない。むしろ好都合。
 だって水は洗い流すから。透明だから。


 ―――――紅くないから


 久しぶりに不快な夢を見た。
 人を殺した後に見る、自分が人殺しなのを自覚させる夢。
 一番最初に人を殺したときの夢。
 実際は返り血は浴びなかったけれど。あの時感じたモノは確かに血だった。
 人を殺した感触だった。






 ――じゃー

 もう人殺しはやめたけど。もうあの夢は見ることは無いと思ったけど。
 やっぱり無理なのね。
 眼が覚めるといっつもああなのよね。気持ち悪さと金縛りと、手のぬめり。



 ――じゃー

 闇の世界から抜け出して。正式なGSになって。あいつらに会って。
 私は変わったと思う。それに、人殺しは、本当は本当に嫌だったから。
 最初のうちはあの夢ばっかり見て泣け叫んだ。狂いそうにもなった。
 いつしか慣れて。
 自分を殺すことによって慣れて。人を殺すのに慣れて。
 そんな日々も終えて。



 終わったけど消えない。
 終わったけど終わりじゃない。むしろそれは始まり?

 紅い夢はいつも私に私を自覚させる。
 泣きじゃくる私は、それを急かす悪魔は教える。





 私は人殺しだって。










 ――じゃー

 ふとあいつらの顔が思い浮かべる。馬鹿女とプッツン女。
 あんなやつらでも、あんなやつらだからこそ私は一緒にいられる。
 何の打算もなしに私と共にいて、私の事を気にしない二人。
 きっとあいつ等には今まで分からないことだろう。
 あいつ等にはこれからも分からないことだろう。
 けど、だから……


 あいたいな
 あいたいな

 馬鹿やってくれるだけで良い。
 プッツンして迷惑掛けてくれていい。
 当たり前のことを謳歌できればそれで良いから。


 ただ、いっしょにいたい。
 あいつらとだったら、人殺しの私も許されるような、そんな思いがするから。

 あいたい











 ――じゃー





 手がまだ紅く見えるなぁ…




 気持ち悪い


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