ザ・グレート・展開予測ショー

挑むのならば全力で その1


投稿者名:ホフマン
投稿日時:(05/ 2/16)



 ――さて、とりあえずは自分が今出来る事を把握しよう。

 サイキックソーサーは作れる。栄光の手も…少々不安定だけどまぁOK。で、文殊は…

「ぐぐぐぐ…っ!」

 右手首を左手で思いっきり掴んで右手に力を集中。イメージするのは凝縮、そして多様性に
長けた――横島 忠夫の最強の武器の一つ。

 五分ほど粘って何とか一つ作ることが出来た。

「ぜっ…ぜっ…こ、こいつは無理だな…作り方は感覚で覚えてるけど霊力が足りてねぇ…寝る
前に作り貯めだな、暫くは」

 未だぴりぴりと痛む右手を振ってから一息つく。とりあえず武器は一通り作れる。並列文
殊も――多分、三つまでならいけるはずだ。
 元の世界じゃ最高六文字だったけど、未来から来た俺は十文字近くを制御して見せてたし――
気合を入れればその領域までいけると思う。

「しかし…十文字って何いれりゃいいんだか…」

 制御にも相当時間がかかるし、攻撃に方向性を向けたとしたら多分洒落にならない威力になる
だろう…かなり危険だが。
 だがそれくらいやらないとアシュタロスは倒せまい。出来るなら究極の魔体に入る前に倒して
しまいたいんだけどな…
 究極の魔体には弱点があった。だから火力がとんでもなかったけど何とか出来た…でもこっ
ちの究極の魔体に弱点があるとも限らない。
 神魔の最高指導者達曰く元いた世界とは少々異なっているとの事だ。楽観は出来ない。
 やることは山ほどある。霊力の底上げ、身体能力の向上、戦闘技術の練磨、頼れる仲間にこれ
から起こるであろう事件に対する予防策…

「頭パンクしそうだな…」

 それに何より今考えなきゃいけないことが、一つ。

「美神さんの事務所、どうすっかなー…」



    ―――挑むのならば全力で―――
                一話:で、何処が違うわけよ



 美神さんの昔の事務所のほうへと歩く。今の時期なら恐らく人口幽霊一号のところには行って
ないはずだしな。
 で、苦もなく発見。

(妙にあっさりだなおい…いや、一悶着あっても困るんだけど)

 目の前には亜麻色の流れるような長髪を持った美女がいた。かなり際どい服を着ている――
そう、美神さんだ。
 見た目は全く変わらず。多分年齢は変わってないんじゃないだろうか…この世界の美神さん
は元のほうと大して変わりないのかな?
 そんな事を考えると美神さんはペタペタと広告を張って事務所の中に入っていってしまった。
ここで彼女に突っ込まなかったから――この時点で未来は多少変わるのかな。
 この時点で美神さんに頼るのはどうなんだろな…つーか多分今回もメフィストが転生した形だ
とは思うんだけど…そこら辺の主軸は流石に変わってないよな。
 美神さんはまぁ狙われるよな…守るためにも傍にいたほうがいいんだろか…でもなぁ。

 ここで考えちまうのが「ここはパラレルである」という事だ。

 例えば元の世界で俺がタイムスリップしてこの時間に来たとしよう。それで美神さんのところに
行かなかったとしよう。
 自分で言うのも何だけど俺がいなかったら美神さんは死んでたんじゃないかな、と思える場面が
幾つかある。無論逆も然りっていうか逆のが多いんだけど。
 でも、その場所に俺がいなくとも美神さんは絶対に死なないし、俺も死なない。何でかっていう
と確定した未来から俺がやってきているからだ。その時点で大筋の話は”完成”してしまう。
 そうなると脇道の話とかは変わってしまうが美神さんが生き残りアシュタロスが死ぬのは変わら
ない。
 だから俺はルシオラの救出だけを頭に入れておけば後は世界が勝手に修正してくれるというわけだ。
世界というか――宇宙意思って奴か。まぁどっちでもいいんだが。

 でも今俺がいるのはパラレルワールド。いくら”ある程度”大筋が同じとはいえ美神さんが死な
ないとは限らない。
 だから傍についてるべきかもしれないんだけど…

(美神さんの性格考えるとなぁ…文殊の事とかばれたら色々とこき使われそうだし、ちゃんとした
霊能技術を教えてくれるかわからんし、お金もあれだし、修行する時間があるかもわからないし…
あの乳尻太股は大いに興味をそそるけども…ルシオラのためだ。やめとくかな)

 長考の末”とりあえず美神さんには今は当たらない”という結果を出してみる。
 終始一緒にいなくとも必要なときに手助けできれば何とか出来そうだし…


 そうなると誰を師事した方がいいのだろうか。
 ぶっちゃけた話あの後もほぼ独学、ないし実戦で培った技術と知識と悪知恵だ。自慢じゃないが
基礎なんて無理中の無理無理だ…まぁ基礎の基礎辺りは一応修めてはいるけども。
 せっかく戻ったんだしこれを機に下地をしっかり作るのもいいかもしれない。底力を鍛えておいて
損はないからな。
 とすると…誰がいいだろうか。
 エミさんは却下。タイプが違うしな。あの乳尻太股はまたそそるものがあるが…
 冥子ちゃんも…却下だな。六道家の力を得られるのは大きいけどリスクも半端なくでかい。
 西条…確かに能力も高いけど…今海外だしな、それにGメンって柄じゃねーし俺。

「…やっぱ神父しかいねぇか」

 ため息。あの人には色々と苦労かけたからこっちの世界でもあまり世話になろうとは思ってなかった
んだけど…でもま、しょうがないか。
 あの人以外そういった事で頼れそうな人はいないし…つーか鍛えるだけなら妙神山のがいいんだけど
なるべく離れないほうがいいからな。
 それに神魔界の最高指導者たちは出来る限りの援助をするっていってるけど…キナ臭い。何か裏が
あるような気がしてならない。あまり頼りたくはないというのが本音だ。とはいえ妙神山には行くこと
になると思うんだけど。
 大体ルシオラを助けるためだけならもっと簡単に事を運べるし…確定した未来がどうこうっつー理由
で元の世界でタイムスリップしても意味がないかもしれないって懸念はわかるけどな。ペスパと戦って
なくても、あそこで俺が止めたとしても、別の原因でルシオラは死んでしまい俺はそれを助けられない
という懸念――間違っちゃ、いないと思う。
 それでもパラレルの、しかもこんな過去に送る必要性はない。大体の歴史が同じというならルシオラ達
が現れる頃にでも行けばなんとかなると思うし。


 ――でもま、大体の考えは読めてんだけどな。


「やっぱ頭使うのはシンドいな…ったく」

 面倒くさい、とぶちぶち呟く。
 とりあえず教会に行くか。確かあっちの方だよな…
 んー、しかし今の時期の神父って何してんだろなぁ…お、懐かしいなあのビル。もうあっちじゃ潰れて
たのに…あ、あのゲーセンまだ残ってんのか、懐かしいなー。つーか微妙に古臭い感じがするなぁ、そん
な時間たってねぇのに。ん? 何々? 依頼一つ果す毎に50万ん!? すげー割のいいバイトだな…
美神除霊事務所ねぇ。っと、可愛い子みっけ…まぁどうするわけじゃないけどな。おお、懐かしいジュ
ースが売ってら。あっちじゃもう売ってないからな…


 ……………今、何か恐ろしく大切なものをスルーした気がする。


「…って、何ぃぃいいい!?」

 即座にUターン。美神除霊事務所前に止まるように両足でブレーキをかける。
 到着、広告を読む。

「――依頼一つ果す毎に50万円。危険とスリルが紙一重、GSの助手をしませんか…? 命、賭けて
みませんか。美神除霊事務所……あ、あと写真」

 色々とひっかかりそうでひっかからなそうな際どい写真がついてる。しかもこれ除霊中か。
 ってちょっとマテマテマテ。おかしい、おかしいぞ。俺は今とんでもないものを見逃している…っ!!

「いらいひとつはたすごとにごじゅうまんえん…」

 一文字一文字注意するように読む…間違ってない。確かに五十万と書いてある。

 GSの助手の金額としては少ないほうとも言えるだろう。でもそれが信じられない。

「あの…あの…あの美神さんが一回の除霊で助手に50万渡すだとぉ……!?」

 よ、要するにこの世界の美神さんは…その、元の世界の美神さん程お金が好きというわけではない…?
いや、この金額でも十分渋ってるのはわかるんだけど。
 というかあの時の時給を遥かに上回る…一月でいくらだ? えーと、ひーふーみー………


  ―――ここは貴方のいた世界とは――少々異なっています―――


 頭の響く神界の最高指導者、キーやんさんの言葉。少々どころのレベルじゃない気がするのは俺だけ
ではないはずだ。絶対。



 ■ ■ ■



 俺は今教会の前に立っている。
 美神さんの所の金額には驚いたが…多少性格が違えどそれでも実戦がメインになるだろう仕事場だ。
 実戦は元の世界で嫌になるほどやった。でも弱体化したし…さっきも言ったようにいい機会だから
基礎から学ぶのも悪くはない。
 というわけで予定通り神父の教えを請う事にした、のだが…

(あの美神さんがあんだけの料金を支払うくらいにこの世界は違うって事か…となると神父も性格が
変わってたりするんだろうか)


 頭に浮かぶはエクソシスト唐巣。
 断罪の十字架を持って悪霊、妖魔を薙ぎ払う――

『主よ――!』

 呟く言霊。霊気をのせた十字架が悪霊の頭をぶん殴り吹き飛ばす――!!
 微塵に消えた悪霊を見、口に咥えた煙草をプッと吐き出して神父は嗤う。

『全く救われん――お互いに、な』


「…ないな」

 あの人の性格がそこまで激変するとは思えないし、それにあのちょっとハゲの入った頭でそれは
似合わない…いや、似合うか…そこら辺は趣味にわかれるか…ま、まぁともかく、変わってないはずだ。

 息を吸う、吐く、吸って、吐く。

「…よし」

 平常心という皮を被っていざ教会。


 重々しい音を立てて教会の扉が開く。

 スタンドグラスから溢れる光が淡く教会内を照らし、神秘的な雰囲気を醸し出している。

「何か――」

 不意に、奥から声が聞こえた。

「教会に、御用ですか?」
「あ、唐巣しん…ぷ…?」

 視線の先。現れたのは黒髪の、かなり凛々しい齢25前後であろう男性がだった。
 男性は訝しげに眉を顰める。

「……えーと、あの…唐巣神父は…」

 ありえない、んな筈はないと頭の中で叫びまくる。
 似ている…というよりまんまだ、あの時見たまんまの人物がそこにいる。


「私が唐巣神父だが?」


 昔話をしてくれた時見せてくれた写真の中の、若い頃の唐巣神父がそこにいた――



――後書き――
まずは説明みたいなものを。
えぇと、とりあえず今回の話の中に「未来を経験した人間が過去に行くことで未来の大筋が決定する」
というのがあります。
結構昔に読んだ本に書いてあったもので(タイトルは忘れてしまいましたが)成る程なぁと共感した
考え方です。
タイムスリップした人間が例え未来を改変しても、同じような出来事が別の場所で起こってしまう。
確かGS美神にも載ってた気がしたりなんだり。

理想は一日一話更新で頑張りたいと…無理かもしれない(ぁ)とりあえず頑張っていきたいと思います。
それでは、また次回。

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