ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い12


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 2/15)

彼のことを分かった気でいた。その根拠は、一番長く、彼をそばで見てきたから。美神さんよりも、シロちゃんや、タマモちゃんよりも。しかし、それが自惚れに過ぎなかったのだと思い知らされたのは、『彼女』の死からしばらくたった日のこと。

夕焼けを見つめる彼の横顔を見た時。

『彼女』の死からしばらくして、彼は立ち直ったのだと思っていた。自分ばかりでなく、周りの皆もそう思っていた。本当は、気付いていたのに。彼の心が癒されていないことを。

『あいつはもう大丈夫。元気に笑ってるじゃないか』

周りのこういった言葉を免罪符にして、私は逃げたのだ。彼や、彼の抱え込んだ『闇』からも。





「・・・・殿。おキヌ殿!!」
「え・・・・」
私は、やや古くさい言葉で自分を呼ぶ声で、現実に引き戻された。2、3秒して、今、自分達は落盤事故を起こした鉱山の中にいるのだとわかった。

「どうしたでござるか。顔色が悪いでござるよ」
心配げなシロの呼びかけに対し・・・・
「ううん、大丈夫」そう言って、無理にでも笑ってみせる。今、自分達は鉱山の中にいて、周りは魔物や悪霊の群れがひしめいている。現在は結界を張ってしのいではいるが・・・

「おキヌちゃん。新しいお札を」
「はい、美神さん」
美神さんの声で、私は結界のお札を手渡した。
「よーし、これでしばらくは持つわ。でも、結界が消えたら白兵戦になるわ。覚悟しといてよ」美神さんの声に、他のメンバーは緊張した面持ちで頷く。
そんな中、閉ざされた鉱山の暗闇で、私達は、その辺の魔物とは比べ物にならない気配を感じていた。『それ』は、じっと息を潜めて、こちらの動きを伺っているような気がした。

「油揚げが食べたいわ」
タマモちゃんも、軽口を叩いてはいるけど、内心怯えている。

(こんな時、横島さんが居てくれたたら・・・)
私は、そう願わずにはいられなかった。


おキヌの回想から、数時間前。鉱山入り口。
横島と砂川、そして西条と彼の指揮下にあるGメンの現地部隊員数名。
「よし。皆、準備はいいな」西条の号令の下、皆が頷く。全員、スーツの上に霊的強化服。背中に水と食料や破魔札、精霊石などの備品が入ったリュックを背負っている。

Gメンの部隊員も優秀で気のいい連中ばかり。正直人員不足の中で、彼らを戦力に出来たのは、幸運といえるだろう。

一同は、二列ずつに並び、狭い鉱山の入り口をくぐった。順番としては、先頭と二番目を部隊員二人ずつ、次に西条と女性隊員。殿を横島と砂川が固めた。

鉱山内は、正に『魔の巣窟』を地でいくような場所だった。
最初は、鉱夫達の地縛霊。これは、大したことは無かった。簡単に除霊できたし、元々、数が少なかった。どうやら、おキヌのネクロマンサーの笛のおかげといえる。
次は、霊が寄り集まって発生した集合霊。いくらか、てこずったが、こいつらも少数だったので何とか除霊。

問題は、鉱山の中ごろまで来たところだった。丁度、ここで落盤事故が起き、道が塞がれ、美神達は奥へ避難せざるを得なくなったらしい。

今まで、来たところを浄化し、結界を施し、先へ進もうと思った時に、それは集団で襲ってきた。

二つの頭を持ち、火炎や毒液を吐く魔獣、レブルドル。数にして十数匹程。鉱山内では、入り口や浅い部分は悪霊、中ごろから奥にかけて魔獣といった具合に棲み分けが為されていたらしい。

毒液を吐き散らしながら、魔獣が迫る。

ギャゥゥゥゥゥ・・・!! オオオオ・・・・

ダンッ!! ダンッ!!

皆、それぞれの武器を取り出し、応戦する。遠距離からGメン隊員の精霊石や銀の強化銃弾が魔獣達を撃ちぬく。それでも、数匹は銃弾を逃れ、襲いかかって来る。

ザン!! ザシュゥ!! ドス!!

その数匹を、横島の魔剣、西条の霊剣が切り裂き、砂川の槍が貫いた。

魔獣を一掃し、結界を施した後・・・・

「予想通り、気が抜けないな」
西条の言葉が、一同の気持ちを代弁していた。



安堵する間もなく、今度は下級悪魔が数体。下級とはいっても悪魔、それなりに手強くGメン隊員が二名軽傷を負うが、精霊石銃と『浄』の文珠などによって掃討に成功。

その後も、魔獣や狂った精霊などの襲撃が続き、ほぼ全員が大なり小なり傷を負った。



そして、ようやく鉱山の三分の二という所まで到達した。

一休みの意味も込めて、円状の結界を二重に張って、その中で作戦会議となった。

「さて、我々は今、この地点にいる」指揮官兼議長役を務める西条が地図を指差し、英語で言う(ちなみに、横島は『訳』の文珠使用)

西条が指差した地点は、二本の分かれ道がある地点。ドイツ製の霊探知機(見鬼君みたいなもの)によれば、左側には結界が張ってあり、その中に四つの生命反応、結界の周りにはたくさんの魔獣。右側には一つだけだが、桁違いに強力な気配。

間違いなく、左側に美神達がいる。問題は右側だ。

「右側に何がいるかは分からないが、関わり合いにはなりたくないな。しかし、放ってもおけない」

そう、もし『それ』が美神達が力尽きるのを待っているとしたら・・・・

単純な二者択一だ。数は多いが、何とかなる方。標的は一つだが、生存が絶望的な方。

「ベストとしては、数には数で対抗するしか無いだろうな・・・」横島が誰ともなしに、呟く。
「確かに。ネズミの群れを一人で退治しようとしても、無理なこと」砂川も相槌を打つ。

「しかし、メンバーをどうする?」
「決まってるだろう? 美神さん達の所へお前がGメンを率いていくんだよ」
「何だって、君が右側に行く気か?自殺する気か」
横島の声に西条が声を荒げる。

「この中で、指揮官として優秀なのはお前だろう。早くしないと美神さん達が危ないんだぞ。それに、俺一人じゃない、砂川も一緒に行くんだ」その言葉は、前半は西条の指揮官としての実力を認め、後半が砂川を相棒と決めたように、西条にはとれた。
見れば、砂川も頷いていた。

確かに、横島の言うことは最もだ。この中で、ほぼ無傷なのは彼ら二人だけ。怪我をした隊員を右側に送っても、死人を増やすだけだ。

しかし・・・・・

(令子ちゃんのことはいいのか・・・・横島君)
西条の内心を知ってか、知らずか・・・・・

「その代わり、絶対に助けろよ。美神さんも、おキヌちゃんも、シロやタマモもだ」

なんだかんだ言っても、彼女達の身を案じている。やはり、彼は横島だ。最も、確実な方法を彼は、プロとして提案したのだ。

「わかった、君も死ぬなよ。君は僕のジャスティスの錆となるのだから」
「へ、言ってろよ。てめえこそ魔獣のエサになんなよ」

お互いに二人は憎まれ口を叩きあいながらも・・・・・

『戦友』は別れた。互いに生き残るために・・・・



  右側の道では・・・・

ゆっくりと、そして慎重に暗い坑内を進む二つの影。言うまでもなく、横島と砂川志保こと魔神ゴモリーだ。

「しかし、お主。美神令子のことはいいのか?」
「ああ、西条に任せとけば大丈夫だろう。嫌味な奴だけど、腕は確かだし」

(そういう意味で言ったのでは無いのだが・・・・)
ゴモリーの思考を知るはずも無く・・・・

「そういえば、この先に居る奴って見当がつくんだよ。昨日の夜、ホテルの近くで俺を襲った奴と同じ気配だ」
「ああ、お主がフラフラと出て行った時のことか。しかし、だとすると・・・・」

(やはり、気付いていたか。しかし、フラフラはしてねーんだけどな・・・・)

「そう、そいつが通る抜け道がこの先にあるってことだな」

カランッ カラ



先を進むにつれて、人骨、しかも子供の骨が増えてきた。
「酷えな・・・・」
「ああ・・・・」
辺りの惨状に、驚いてしまう。


(予想通り、ろくでもない奴らしい。あのスクラップ記事の奴とも関係がありそうだが・・・)

砂川は、昨日の夜読んだスクラップ記事を思い出しながら、周辺に漂う悲痛な空気を感じていた。


敵の気配が強くなってきた。

そして、敵の所へ到達する。

横島は左手に文珠、右手に魔剣。
砂川は、愛用の三叉の槍を構えた。


二人の動きに合わせるように・・・・巨体が跳躍し・・・

   バゴオオオン―――!!

砂煙が上がり、爆音が轟いた。





後書き
さて、横島と砂川の敵は何でしょう、結構凄い奴ですが。次回は彼らのタッグバトルです。そして、西条とGメンによる美神一行救出劇。美神と砂川の初邂逅です、火花飛びます(一方的に) 一週間以上に渡って、書き溜めた分の最後がこれです。後は、横島と砂川のバトルです(戦闘描写に悩むので、書くまでに時間はかかりそうです)

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