ザ・グレート・展開予測ショー

〜 『キツネとチョコとラブソングと』 中編 〜


投稿者名:かぜあめ
投稿日時:(05/ 2/14)



―――――CASE.2


――――3学年教室内――――


「あぁぁん♪横島くん・・私、私・・・もう体が熱くて、我慢できないの!何も考えられないのっ!
 だから、お願い!チョコと一緒に美冬も・・美冬も、まるごと――――――食・べ・て☆(キュピーーン)」

「もちろんさっ!丁度、僕もハラペコだったんだ!!チョコと一緒に何度でも蕩けさせてやるゼッ!!!
 さぁっ!!2人で一緒に、Go to Heaven!! ☆」

「あ、あの・・2人とも・・?」

「う〜ん・・今のはちょっとイマイチじゃないかなぁ・・。ふゆふゆの神秘的な魅力がいかされてないよ」

「そうだよねぇ・・もっとこう、清涼で、聡明で・・なおかつ、エッチさ大爆発!って感じじゃないと・・」

「え、遠藤さん、佐々木さん・・・一体、何の話を・・」

「あ!じゃあさ!こういうのはどう?『ハァ・・ハァ・・横島くん・・私の今の下着の色は・・』」

「それじゃあ、ただの痴漢電話だってば」

「・・・・・。」

・・・・こんな会話が為され始めて、すでに半刻。
早朝の教室の一角――――――神薙美冬(かんなぎ みふゆ)の机を囲んで、女生徒2人が、黄色い声を張り上げていた。
珍しく、困り果てた表情を浮かべる神薙を、すれ違う男子生徒が、チラリチラリと眺めていく。
中には『萌えるぜ』だの『美冬たんハァハァ』などと、得体の知れない呪文を唱えている者も少なくなかったりして・・

・・無理からぬ反応だった。何しろ彼女は、絶世・・と言っても差し支えないほどの美少女なのだから。

流れるような薄赤のロングヘアーに、透き通った白い肌・・大きな黒い瞳。
信じられないまでに整った顔立ちに加え、制服を完璧に着こなしている・・・。
異性ばかりか、同性までもが、吐息を漏らすような・・・・そんな彼女が、

「ふっふっふっ・・それでは、美冬。そろそろ、『例のブツ』を出してもらいましょうか?」
「れ、例のブツ?」

今は冷や汗を流しながら、完全に椅子の上で硬直している。
そもそも自分は・・・何ゆえ、このように理不尽な状況に立たされているのだろう?
たしか自分は・・玄関で靴を履き替た後、そのまま教室に直行して・・・。

「またまた〜渡すんでしょ?横島くんにチョコレート♪」
「・・・。」
「白状しちゃいなさい。そうすれば、名誉ある扱いを保障するよ〜・・・ぐっふっふっふ・・」

・・気付いた時には、こういうことになっていた。何がなんだかさっぱり分からない。
ちなみに冒頭部の会話は、《遠藤+佐々木 合作『横島忠夫×神薙美冬 絶対ラブラブ化計画 胎動編』》のシナリオ(らしい)。
もうどうしよもない・・そう察したのか、神薙は一つ嘆息して・・・

「冷静に聞いてください、2人とも。これは・・横島くんに対する、私の、日頃の感謝のあらわれであって・・
 決してそれ以外の他意など含まれては・・・」

「「ほっほ〜〜〜〜う。これが!」」

・・・聞いていない。鞄から出現した、控えめな青いラッピングに・・クラス中の目が釘付けになる。

間。


―――――――「うぉおぉおぉおぉおぉお!!!神薙さんの!神薙さんのチョコレートだとぉぁ!!!?」

「馬鹿な!?校内オークションに賭ければ、10万は下らない品だぞ!!」
「そんな・・美冬っ!美冬・・!俺との・・俺との愛はどこにいってしまったんだ!?毎晩、夢の中で密会してたのに!?」
「2年の・・横島か・・。殺してやる!!殺してやるぞ!考え得る限りのむごたらしい手段を使って・・この僕が殺(ピ―――――――ッ)」

・・・こう言ってはなんだが、グダグダだった。

(先程から・・一体、何が起こって・・)

神薙が顔を蒼くする。こんな経験は・・初めてだった。『バレンタインデー』なるものの特性と性質は、おおよそ把握していたつもりだったが・・。
彼らの・・周囲の人間たちの反応は、はっきり言って、常軌を逸している。
それとも、自分の現状認識が甘かった?
途方に暮れて、遠藤と佐々木を見やると・・・もう彼女たちは女神のような微笑を浮かべながら・・・


「も〜〜〜〜〜!!ふゆふゆってば、可愛いんだから!私、男子の『萌え』ってなんとなく分かったかも〜〜!!」
「なんかこう・・ムラムラっとくるものがあるよね・・。えい!抱きしめちゃえ!くすぐっちゃえ!ついでに胸も揉んじゃえ〜〜!!」

「だ、誰か、助けて・・・・」

旧世界の主神の一人。ゾロアスターの『虚』と『熱』を司る最古の魔神・・。
現在でも数多の魔族を従えるドゥルジこと、神薙美冬は・・・・その時、情けない声で悲鳴を上げて、2人の友人のエジキになったのだった。


                       ◇


―――――CASE.3


「勢いだけでここまで来ちゃったけど・・・どうしよう・・」

タマモは言葉を失っていた。
目の前には、横島たちの通う学校の・・・巨大な門がそびえ立っている。いや、実際の大きさは、通常の公立高校とそう遜色あるものではないのだが。
現在、キツネモードで隠密行動を取っているタマモには、どう見ても難攻不落の要塞にしか見えない。

(とりあえず、『家庭科室』には気をつけないと・・・。捕まってキツネ鍋にされるなんて御免だわ・・)

彼女は何か、大いなる勘違いをしているようだった。

――――――・・。

(ここは・・たしか、正面玄関。)

コソコソと・・。金色で、しかも九尾の狐が昇降口を疾る。
!前方に・・人影発見。緊急回避!そして離脱!!!・・シュタッ!!

華麗な隠密行動だった。
華麗すぎて、逆に目立つような気もするが・・道行く生徒たちは、特に気に留めるでもなく、自らのゲタ箱へ向かっていく。
幽霊やら、貧乏神やら・・・そんな物騒な存在までやすやすと許容する、この学校の懐の広さを、改めて痛感させられる思いがした。

(はぁ・・・馬鹿らしい・・)

化け物ですらお構いなしなのだ。今さら、生徒が一人増えたところで、どうという事もないだろう。
直感的にそう理解すると、タマモは、慣れ親しんだ少女の姿に変化する。
入念に、服装にまで細工を加えて、静かに校舎へ進入すると・・・・・

「・・でね・・・横島くんがさぁ・・・」
「う〜ん・・だよねぇ・・・」

!?

どこかはしゃいだ、楽しげな女子生徒たちの会話が聞こえてくる。タマモは物陰に身を寄せた。
(3−C 遠藤真帆・・・佐々木加奈・・神薙さんと、同じクラス?)
ネームプレートを確認しながら、さらに会話を聴き取ろうと、彼女は耳をそばだてて・・・・

――――「ちょっと、からかいすぎたかな〜ふゆふゆ、逃げ出しちゃうんだもん」
「まぁアレはどう考えても、私らが悪かったけど・・。それにしても、義理とはいえ、本当にチョコとは・・驚きだわ」

!!

タマモの心臓が高鳴った。神薙さんが・・チョコレート!?当然ながら初耳だ。

「美冬って、高校生とは思えないほど落ち着いてるし、冷静だけど・・恋愛にかぎったらかなりの素人だと思ってたのに・・。それが・・」
「横島くんとの共通点だって、GSだってことぐらいだしね〜腕、良いんでしょ?2人とも」

「良いなんてもんじゃないってば。両方とも超一流。片や、日本で唯一、ランキングトップ5入りの天才少女。
 片や、全GS内最強の霊力を保有している、ランキング15位のスーパールキーだよ?」

・・・というか、全GS内最強の霊力を持っていながら、15位止まりだというのも、十分問題だが・・・

「・・横島君。ランキング認定の筆記試験、ヤバかったらしいよ〜。機関銃のように連発される珍回答に、お偉いさんがもうカンカン!」

「例えば?」

「第一問:呪いや怨念によって、特定の土地に縛られ、身動きの取れない霊の名称は?」
「・・普通に地縛霊だよねぇ」 ※横島の回答:『緊縛SM霊』

「第二問:その実態は生前の残留思念であり、あてもなく周囲をさまよっている霊の名称は?」
「・・浮遊霊だよねぇ、どう考えても」 ※横島の回答:『放置プ霊』

・・もはや狙っているとしか思えない。
いつかだったか・・美神にタコ殴りにされていた横島を思い出し、思わずタマモは頭を抱える。
それにしても、いやはやこれは・・・いくらなんでも・・・。

「話が逸れたね。でね、そのランキングっていうのなんだけどさ、実質はちょっとワケ有りみたいなの。
 オカルトGメン・・っていう機関に入っちゃうと、自動的に対象外にされちゃうらしいし。
 それに第一位だけは、何故か永久空席になってたり・・・」

「ふ〜ん」

ムツカしい顔で佐々木がうなる。遠藤の情報網の広さには驚いたが・・今回の件に関しては、それが大した重要性を持っているとも思えない。
今ここで重要なのは・・

「つまり、横島くんはすっごく強くて、ちょっとスケベだけど、とっても優しい・・ついでに言うなら、顔もなかなか。
 普段はお馬鹿だけど、緊急時の危機回避能力や、判断力はトップクラスってことでしょ?」

「うん。まあ、そうなるね〜」

「それでどうしてフリーなんだろ?」

・・・全くだ、とタマモは思った。遠藤と佐々木と言ったか・・・・ノリは軽いがなかなか鋭い。
特に遠藤(呼び捨て)・・一体、彼女は何者だったりするんだろう?
ニコニコ緩んだ口から飛び出す内容は・・時折、タマモも知り得ない機密事項が混じっていたような・・

(・・・。)
なんとなく、ビミョーに嫌な予感がして・・タマモは詮索するのをやめておいた。

「う〜ん・・私の気のせいかもしれないけど、横島くんって無意識のうちに女の子と恋愛するのを避けてるみたいなんだよね」

少し声を落として、遠藤がつぶやく。伏せ目がちな視線と、静かな口調。
どういうこと?不思議そうに尋ねる佐々木に向かって、彼女はかすかに首を振り…
「はっきりとは、分かんないでも…これは…憶測で言っちゃいけないことだと思う。横島くんに失礼だもん」

それきり、唇を結んでしまう。
佐々木の方も、『そっか…』と、こぼすだけで、そこから言葉が続かない。しばらくの間、気まずい空気が廊下に漂い…

……。

「・・ちなみに、コレはもう1つの可能性なんだけど・・」
不意に、遠藤が切り出した。いつの間にか戻っている明るいトーン。その表情は何故かニヤニヤ。
ふところから、何やら1枚の写真を取り出すと・・・

「――――――なっ!?ちょ・・・これっ!?」

佐々木が驚愕の叫びを上げる。

「ぐっふっふっふ・・本物よ?去年の冬・・私たちが行きつけの、あの喫茶店で撮影したの」

そこには、衝撃の事実が刻まれていた。
横島が・・・横島が・・見知らぬオカルトGメンの捜査官(♂)と、何やら2人きりで密会している。
しかも、互いの服を掴みあげ、取っ組み合うなどという徹底ぶりだ!!


「ふははははははははははっ!題して!《横島忠夫 もーほー疑惑!!!》」


(――――・・・も、もーほー?!!!!!!!)


一帯の空間に激震は走った―――――――!!(←特にタマモのあたりで)



(続けれ)


『あとがき』

誰かわたしにチョコをください(泣
バレンタイン強化週間ということで、本編をお休みしてこちらを書くことにあいなりました。
初めて読む読者さまのために、主要オリキャラの特徴描写を丁寧してみたのですが・・や、やっぱり駄目ですか(汗
『今回のお話が気に入った!』という方がいらっしゃれば、是非『キツネシリーズ』の方も御ひいきに・・って宣伝するな>オレ(笑
この中編は次回(今週中)で完結です。

ピートの幼なじみは、次シリーズ『不死王編』のキーパソンとして登場します。
いやはや、しかし『アルカード』・・月○でメインヒロインやっておられますね〜(発音は違いますが)。
このシリーズではムサいおっさんとして描かれたり・・(爆
それでは〜ここまでどうもありがとうございました〜また次回お会いしましょう。

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