ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い7


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 2/14)

一週間後、決戦の日。ピートや横島は、学校を休み、またその他の面々も、魔鈴の店で待機していた。

ジリリリリ―――!! 電話がけたたましい音をたて、魔鈴が応対する。

「連中が来ました」Gメンからの連絡に、魔鈴の緊張した声が響く。唐巣神父の交渉の努力により、連中がきたら自分達に連絡が来るように手配してもらったのだ。彼女から場所を聞き出し、彼らはそこへ急行する。


(横島さん、そして皆さん、どうか無事で・・・・・おいしい料理作って待ってますから)
魔鈴は、魔女であるにも関わらず、神に祈りを捧げていた。


オカルトGメンが指揮する、現場に到着し・・・・横島は見知った長髪を見つけた。

(ち・・・・復活してたのか)毒づく横島に対し・・・・
向こうもこちらに気付き・・・・
ツカツカと歩いてきて・・・・
「死にたまえ。横島君!!」
「てめーこそ、来世からやり直せ」

ガギイイイイン――――!!

西条の霊剣ジャスティスを、横島は魔剣ゲヘナで受け止めた。甲高い音が響き、ギリギリとお互いの霊力と剣が火花を散らす。
「この数日間、僕は地獄を見たぞ。フフフ、やはり君は、永遠の敵だと認識したよ!!」
「抜かせ。てめーの自業自得じゃねえか。魔鈴さんから聞いたぞ、イギリスじゃ54人の彼女を作ったんだってな」微妙に冷たい霧のようなものを漂わせながら、横島は西条の過去を暴露する。
「失敬な。そんなに口説いていない。せいぜい36人程だ」さりげなく外道なことを口走る西条。
「お前の方が、女の敵じゃねえか。正義の公務員なんて、お題目返上しろ」
「ご心配なく。アフターケアはばっちりだよ。君こそ、その魔剣はどうしたのかな」女性関係について、釈明(言い訳)しながら適確に魔剣のことを見抜いている。やはり、この男も「人間」としては、相当な実力者だろう。
「知り合いからの貰い物だよ。欲しいか」譲ってやる気は毛頭無いが、
「生憎、魔剣はごめんだね。しかし、君にそんな危険な物を持たせておくとろくなことがなさそうだ」

そんな微妙な死闘を続ける二人に対し・・・・

「それはそうと、お主ら、あいつらをどうする」
砂川が、ため息混じりに聞いてくる。そう、向こうでは、半分忘れられていたデミアン達が、暴れていた。

「ああ、そうだったな。このムカつくキザ公務員のおかげですっかり忘れてたぜ」
「くっ・・・・僕としたことが、公私を忘れるとは・・・・横島君、次こそジャスティスの錆にしてあげよう」八割方、本気という台詞を吐きながら、西条は「奴らをどうする」といった視線を向ける。

「言ってろ。西条、現場の後始末を頼む。連中をここから、妙神山へ移す」
「何だと?」
疑問符を上げる西条に構わず、横島は『妙』『神』『山』『強』『制』『転』『移』の文珠を発動、さらに後ろに控えていたカオスが、術を用いて、範囲を広げ、対象を特定する。

「事情は、後で説明するから、ここの処理は任せた。隊長の次に、指揮能力があるの、お前だからな」転移する際に、横島は西条に伝言を残していった。


「僕は、置いてきぼりか・・・・」
ため息をついた西条は、現場の処理の指揮を取る為、部下の下へ走っていった。(幸い女性関係云々のことは周りには聞こえていなかった)



―妙神山―

それぞれ、敵味方に別れ、妙神山の別空間に転移した。

組み合わせは、ベルゼブル対ゴモリー、ベリアル対神父、エミ、ピート、そしてデミアン対横島、マリア、カオスの三局である。こうなったのは、術の効果・性質によって因縁のある相手と当たるように、ある程度決定されるからだった。ベルゼブルに友人を傷つけられているゴモリー。ベリアルとの因縁について語るまでも無い神父、エミ、その二人に引きずられる形のピート。横島の文珠が切っ掛けで、倒されたデミアンと横島のサポートに回るカオスとマリア。この組み合わせはある意味、必然といえただろう。


第一戦「蝿の王対吟詠公爵」

「けっ、誰かと思えば、てめえだったか。ゴモリー、人間なんぞの味方をして馬鹿な女だぜ」
大量の蝿が、耳障りな声を出し、飛び回る。ゴモリーは、本来の魔神の姿に戻り、翼をはためかせた。

「貴様こそ、私の元部下のワルキューレが世話になったな。貴様らはデタントの戦力外指定だからな。遠慮なく八つ裂きに出来るわけだ、元『三流魔王』」そう言って、ゴモリーは穏やかな冷酷さを持った笑みを向ける。

重症を負って、魔界の病院に担ぎ込まれた彼女を見た時は、飄々としたポーカーフェイスとは裏腹に、内心は砂嵐のように荒れ狂っていた。彼女は、軍を退役した自分をずっと「大佐殿」と呼んでいたが・・・・彼女は良き友人兼部下だった。

その生真面目な元部下からの話、月での一件などが、横島に興味を持った切っ掛けの一つだったのだが・・・・

ゴモリーは、取り留めの無い思考に区切りをつけ、目の前の浅ましい蝿を見据える。

「覚悟するんだな、ベルゼブル」
その言葉と同時に、ベルゼブルのクローン十数体が、一瞬で風船が破裂するかのように、弾け飛ぶ。彼女の槍の連撃や、その衝撃波にクローンは為す術も無い。だが、何体かはその嵐を抜け、彼女の体に傷を入れる。

「ちっ・・・!」傷自体は、大したことは無いが何十回も食らえば不味い。

「俺は、本体がやられない限り、何度でも復活できるわけだ。てめえは、俺の攻撃を少しずつもらいながら、ジリ貧になるってわけさ」ベルゼブルの勝ち誇ったような嘲笑が、響く。何しろ、自分から見れば、彼女は巨大な的と同じ。狙う所には事欠かない。

だが、ゴモリーは動揺せず・・・・
「最速の魔王『ベルゼビュート』も、その程度か。やはり、『アイツ』に敗れてこの程度になったか。いや、最初から貴様の器はこの程度だったか」
わざわざ過去の名前で、蝿をあざ笑う。この蝿はかつて、見下していたはずの『彼』に勝てなかったのだと。

「てめえ、許さねえ!!」
ベルゼブルは過去の古傷を抉られ、激昂する。それが、相手の魔神の策略だとも気付かずに・・・・クローン達の統率が、怒りと動揺で乱れ、それを槍が狙い撃ちする。それでも、あと数十体のクローンが残る。
「けけけ、動揺を誘おうたって、無駄だぜ」クローンの数を減らされたことで、かえって冷静になったベルゼブルが吠える。動揺していたのは僅か、十分程度。だが、彼女が王手を掛けるには十分な時間。

「動揺を誘う必要も無い。貴様はもう罠にかかっている」ゴモリーの厳然とした声。

(何―――――!?)
気がつけば、ごつごつした岩だらけの修行場が、果ての無い砂漠に変わっている。
いわば元の妙神山という空間の中にもう一つの『箱庭』が出現したようなもの。
「横島との戦いでも、同じことをしたが、今度は訳が違うぞ。砂漠そのものが貴様の敵になるのだ」
横島との戦いでは、砂漠は『戦いの場所』に過ぎなかった。しかし、今回は砂漠は『生き物』であり、獲物を貪り食らおうとする。

そう、ベルゼブルという獲物を。『砂漠』が、その冷酷な一面をさらけ出す。

「「「ヒイイイイ――――!!!」」」クローン達は、ある者は砂嵐で引き裂かれ、ある者は灼熱の砂と光に焼かれ、干からびていく。

クローンが全て、倒され・・・・・残ったのは

余力を使い果たし、砂の上でのた打ち回る本体のみ。

「ふむ。思ったより、簡単にいぶり出せたな。本体だけあって、いくらかしぶといな」既に勝負がついたのを確認し、悠然と、それでいて隙を見せずに歩み寄る。

広範囲に広がるクローンを片付けるため、攻撃特性を持たせた『砂漠』を創造する必要があった。だが攻撃性がある分、いくらか構築に時間が必要。そこで、時間稼ぎとして『昔話』をして、蝿の王の動揺を誘った。もし、挑発に乗らずに彼女が、『砂漠』を創るのを見抜き、それを妨害出来たとしたら、もっと善戦できたはずだ。だが、結果は覆らない。

「ちきしょう、これがてめえの切り札ってわけか!!・・・」ベルゼブルは、憎悪を含んだ声でわめく。
「この程度、切り札でも何でもない。最上位の神魔ならば、時間を掛ければ出来ること。貴様如きに《切り札》は必要なかった。私のあだ名の由来こそが、切り札のヒントだが」わざわざ、そんなことを敵に漏らす理由はただ一つ。
「ま、待ってくれ・・・・助け・・・ゲフ」

―ヒュンー  ドスッ!!  

「永遠にさようならだ。蝿の王」
命乞いを意にも介さず、まるで害虫を駆除するかのように、槍を突き立て、止めをさした。

槍を収めて、彼女は魔神から砂川志保という、人間の姿に戻る。

一息ついたところへ・・・・

「助太刀は、必要なかったようじゃのう、吟詠公爵」
「久しいな、斉天大聖。恐らく、他の連中も無用だろうよ」
何処からともなく、妙神山の主のゲーム猿の声。砂川も、かつて一戦交えた武神に親しげに返事をした。その声には、会って間もなくだというのに『彼ら』への信頼がうかがえた。

後書き
諸事情のため、間を空けまくっての更新ごめんなさい。ゴモリー、圧勝。彼女の《切り札》については、まだ当分出てきません。ベルゼブルは所詮、やられ役ってことでしょうか。冒頭の西条と横島の剣の応酬。やはり、二人はこうでなくては。西条には、横島の『人間』としてのライバルで、頑張ってもらわねばなりません・・・次は、ベリアル戦、若返った神父熱血冷徹バージョンで大暴れします。多分



ちなみに、バトルは時系列としては同時に進行してます。私が、ヘタレなので並列して書けないだけです。  横島は、負けろという方が無理かも・・・・

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