ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫奮闘記 62〜群体生物”人間以上”〜


投稿者名:ぽんた
投稿日時:(05/ 2/13)

妙神山の中に入った後、横島と雪之丞の二人は竜神の装具を渡されてパピリオと共に異界空間に
隔離された。超加速状態での軽いスパーリングである。パピリオは修行で小竜姫より超加速を
伝授されており、初めて体験するのは雪之丞一人だけである。最初中々コツが掴めずに苦戦していたが
パピリオの”話になりまちぇんね”の一言で一気に霊力が膨れ上がり超加速状態に入った。

入ったといっても超加速で動けるだけで、案の定パピリオの一撃で吹っ飛ばされてしまった。
そうなると残りは横島一人のみ、粘りはしたのだが最後はスタミナ切れでボコられてしまった。
二人が意識を取り戻した時は普段寛いでいる座敷に寝かされておりパピリオ一人がゲームに興じていた。

「俺達どれくらい気を失ってた?」
「大体一時間ぐらいでちゅよ」

そう教えられて、それ程長い時間でも無かったかと安心したのも束の間
すぐにこの場にいない人物に思考が及んだ。

「なあパピリオ、うちの所長は何処行ったんだ?」
「そう言や小竜姫もいねえな」

口々に尋ねてくる二人に対してパピリオの呆れたような視線が向けられる。

「二人共鈍いでちゅね、ここは何をする場所でちゅか?」

パピリオに言われて思い当たった、修行場を訪れ鬼門の試しを突破した相手を小竜姫が
連れて行ったのだ、やる事など一つしかない、気付かない自分達こそどうかしていた。

「なっ?」
「って事は?」

二人が慌てて立ち上がり外に向かおうとした時に小竜姫が入って来た。
背中には気絶しているらしい冥子を背負っている。

「小竜姫様、所長は? 無事なんですか?」
「おい! 大丈夫なのか? 生きてんのか?」

心配そうに問い掛けてくる二人に対し、小竜姫が安心させるように話し掛ける。

「大丈夫、力を使い果たして眠っているだけです。この方には本当に驚かされます。
素質だけで言えば、美神さんを凌駕しています。貴方達もうかうかしてられませんよ?」

美神と同じ試練を受けて、正面からクリアーしたのだろう。安心したように眠る笑顔は
子供のようにあどけないが見た目とのギャップは凄まじいらしい。

「どうでしょう? この方を集中的に鍛えれば飛躍的に戦力が上がると思うのですが」

小竜姫の言う事は解るが本人の意志が確認できない状態で他人が返事する訳にもいかない。
それにここに来たのは三人の連携を高めるのが第一の目的だ。個人の修行に時間を割きすぎる
訳にもいかない。その旨を伝えると小竜姫も一応は納得してくれたようだった。

となると今この場ではやる事が無い。斉天大聖はピートについているらしいしヒャクメは
一旦神界に帰っているらしい。ポカッと空いたエアポケットのような時間が訪れたので横島は
私事を優先する事にした。

「小竜姫様、これお約束の等身大パネルです。老師に渡していただけますか」

そう言って渡された物を見て小竜姫が困惑したような顔になる。

「これは・・・現代の姿絵は精巧なんですね〜。感心しました。それで?
他の写真は・・その、どうしましたか?」
「はい、俺の部屋に飾ってある分を除いてすべて処分しました」

それを聞いて安心したのか小竜姫がホッとしたような表情になる。余程他者の手に自分の
写真が渡るのが嫌なのだろうか。横島が思い出すのはかつて美神が行った宝船を乗っ取る
という暴挙。あの時七福神全員を招集する為に美神が毘沙門天を懐柔する為に渡した生写真。
あの事がバレたらどうなるのか、考えただけで背筋を冷たい物が走る。
小竜姫対毘沙門天の闘いなどシャレにもならない。神界の平穏の為にも沈黙を守るべきだろう。
表情に出ないうちに写真から話題を遠ざける為に他の話題を探す、が咄嗟に最適な物が思いつかない。
唐巣の若かりし日の事でも聞くべきだろうか、だが長くなりそうな気もする。

「あー横島さん、ある程度まで絞り込めたのねー」
「うむ、後は資料と合わせて確定するだけだな」

そんな発言をしながらヒャクメとワルキューレが部屋に入って来た。だがヒャクメがいて
”絞り込めた”とはどういう事なのか。千里眼で見ればすぐに解るはずではないのか。

「絞り込めたって? はっきり解んないのか?」
「やっぱり役立た「違うのねー! 私は役立たずじゃないのねー」

思わず、といった感じの雪之丞の呟きにヒャクメが必死の形相でツッコむ。ヒャクメの言によると
魔界側の調査により人界への逃亡までは確認出来た。そして人界の中でもヒャクメの千里眼が及ばない
場所もある。例えば厳重な霊的結界の内部、霊視を妨げる要因に満ち溢れている場所などがそうだ。
逆に言えば捜索場所が限定されるという事でもある。後はワルキューレの持参した土偶羅の演算結果と
その他の資料と照らし合わせれば1〜2箇所まで絞り込めるそうだ。

「場所の特定と事前斥候は私がやる、お前達は準備を怠るな」

標的の居場所の確定と防備の具合等を調査している間に訓練を終わらせておけという事か。

「解った、けど相手の特徴とか教えてくんないか? 今解ってる分だけでも情報が欲しい」

一応三人での訓練に入る前に、特に取り入れるべき要素があるなら考慮しておきたかった。
単純な力押しだけで通じないような特殊能力がある可能性もある。

「辛うじて末席に連なる程度ではあるが、一応上級魔族の端くれだ。お前達に解り易く言うと
メド−サより若干上といった処か。厄介なのは石化の魔眼を持っているという事だ」

以前メドーサの眷属ビッグイーターに、噛まれると石になるという能力があったがそれと同じ事が
見られただけで起きるという事か。視線を受けただけで石化するらしいが、それを防ぐ為には
相手の目を潰すか、それが無理なら視界を塞ぐという事ぐらいしか対抗策が無いらしい。

「ちなみに超加速は?」
「使えると考えるのが妥当だろうな」

やはり超加速状態での連携を最優先で突き詰めるべきらしい。それ以外の事はその後だ。
すぐにでも加速時空間に入って修行したいのだが斉天大聖がいなければあの空間は使えない。
取り敢えず通常空間で始めるべきかと思っていると小竜姫が助け舟を出してくれた。

「私が老師様と交代しますのですぐに始めましょう、六道さんを連れてついて来て下さい」

冥子はまだ疲れて眠っている状態なのでどちらかが抱えて連れて行かなければならない。
横島と雪之丞の間に微妙な緊張感が走る、互いに半身になって構えた。

「行くぜ」
「おう」




「「最初はグー! ジャンケンポイ!」」

雪之丞は気合のこもったグー、横島は受け止めるかのようなパー、横島の勝利に終わった。
これでどちらが連れて行くかは決まった、はずだった。

「「え?」」

二人同時に冥子の側にしゃがみ込み互いに意外そうな顔を見合わせる。雪之丞は罰ゲーム的発想で
負けた側が抱えなければならないと思っていた。横島は勝者への褒美的感覚で勝たなければ抱える
事が出来ないと思っていた。この二人の間の根源的なズレは女性に対する考え方の違いから来る
ものなのか、それとも”彼女”の有無がもたらしているのか。結局これ幸いと雪之丞が逃げたので
横島が横抱きにして連れて行く事になった、所謂お姫様だっこだ。
小竜姫の後をついて行くと途中で待つように言われた。その別れ際、

「六道さんには私の竜気を与えておきます。これで間も無く目を覚ますでしょう」

霊力を使い果たした冥子の為に自らの竜気を分け与え斉天大聖を呼びに行く。
やがて入れ替わりに斉天大聖が出て来るとパピリオも一緒になって加速時空間の中に入って行った。

冥子が目を覚ましてから全員で竜神の装具を身につけパピリオを相手に超加速状態での戦闘訓練を行った。
横島と雪之丞が前衛を務め、冥子が後衛から式神での援護を行う。十二鬼同時に使うと前衛を巻き込むので
それぞれに2鬼づつを援護につけて6対1の状況を作り上げて闘いを有利に運ぶ事が出来た。自分の不利を
悟ったパピリオが術者を倒せば式神が無力化出来る事に着目して直接狙ったが、冥子は残りの式神達を
使ってパピリオの攻勢を避け続けた。その間に前衛組がパピリオを再び包囲する。それの繰り返しになった。

そんな膠着状態が続いたので一旦中断して斉天大聖からの助言を聞いた。有利に闘いを運ぶ事は出来るが
決め手に欠ける。持久戦になれば人間側が不利になるのは目に見えている。短時間でダメージを与える
手段がいる。その方法を何か考えなければいけない。

「式神使いのお嬢ちゃんは十二鬼同時に使えるという話じゃったな? ならば時々全鬼同時の攻撃を
織り交ぜるパターンを取り入れてみてはどうじゃな? 二人が離脱するタイミングが大事じゃがな」

斉天大聖の忠告に従いもう一度しきり直しで再開した。前回と同じに前衛で相手を押して同時に一箇所を
狙い、間合いが空いた瞬間に二人の影から式神達が飛び出した。二人はそのまま飛び離れ十二神将の
集中砲火がパピリオを襲う。魔力のフィールドを展開して凌いでいるが所々フィールドが弱まって
いる場所を見て取った瞬間、二人の霊波砲がそこに集中しフィールドが突破されダメージを与える事が
出来た。タイミングは若干早かった為、式神達にもダメージがいってしまったがタイミングさえ
補正すればこの方法でいけそうだった。後は繰り返してタイミングをものにするだけだ。

「ふむ、良さそうじゃの。じゃがモロに決まるとパピリオが怪我をしそうじゃの。相手を変えるか」

斉天大聖がそう呟くと体の毛を抜いて息を吹きかけた。するとその毛が斉天大聖そっくりに変化した。

「身外身の術じゃよ、パピリオより少々強くしてある。遠慮はいらんから思い切りやれ」

分身の術のような物だろうか、外見は斉天大聖そっくりだが能力はかなり低めに設定してあるらしい。
それにこの相手なら何の気遣いもいらない。思い切りやっても分身が消滅するだけだ。そう思い
第二ラウンドの開始となった。最初から全力の攻撃を叩き込む。だが、

「どこが”少々”なんだーっ!」
「サルと変わんねえじゃねえかーっ!」
「ふえ〜ん、強すぎる〜」

ちゅど―ん!

三人はちょっぴり焦げ目がついて香ばしく仕上がった。パピリオがつっついているが何の反応も無い。
気絶している三人を斉天大聖が無理矢理叩き起こして特訓は続行された。情容赦無く。





「よお、俺達どれくらいこの訓練してんだ」
「さあな、気絶と訓練の繰り返しで時間の感覚が無い」
「でも〜ご飯なら〜20回ぐらい食べたわよ〜」

三人は完全にヨレヨレになっていた。言われるままにパピリオが作ってくれた食事を食べていたが
味などさっぱり解らない。何やら恐ろしげな食材を使っているようだったが、味覚を斉天大聖に
消されているらしく何の味も感じない。それでも腹は減る、他に何の楽しみも無い以上は食事時間が
唯一の楽しみだった。冥子がゴネるかとも思ったが、食事を味わう事よりも皆とのお喋りが何よりの
疲労回復薬のようで食事の時だけは楽しそうにしていた。それでも泣き言一つ言わずに訓練を続けている。
大した精神力だった、いや強固なる覚悟と言うべきだろうか。

斉天大聖の分身と闘える時間は随分と長くなってきていた。だが粘っているというだけでとてもでは
ないが攻勢に移るまでは行き着かない。その時、当の斉天大聖がとんでもない事を言い出してくれた。

「大分慣れてきたようじゃの、それじゃ次は無視界戦闘をやってもらおうかの」

一同耳を疑う思いだった。ようするに目隠しをして闘えという事だ。今の状態でさえ歯が立たないのに
目隠しまでされたら闘いようが無い。横島自身は同様の訓練を受けた事はある、雪之丞もあるはずだ。
だが冥子は無いだろうし第一三人の連携など不可能だ。そしてバラバラに闘ってどうにかなる相手ではない。

「何じゃい往生際が悪いのう、覚悟が決まらんならワシが後押ししてやろう」

斉天大聖がそう言うと三人の視界が闇に包まれた。どうやら味覚に続いて視覚まで封じられたらしい。
その途端に近くで闘気が膨れ上がった。分身が掛かってくる前触れだろう。仕方無く横島と雪之丞が
見えないなりに仕掛けるがまるで連携が取れていない。あっさり叩き伏せられた。冥子に到っては動けない。

「よお旦那、何で今更無視界戦闘なんだ?」
「馬鹿者が、相手は石化の魔眼の持ち主じゃろうが。暗闇での戦闘も選択肢の一つじゃ」

ようするに見られなければ石化は無効になる以上、闇は相手の視線を遮る壁になってくれる。
その状態で闘えば魔眼を気にする必要は無くなるという事なのだろうが。

「それにしたってこれじゃ連携なんて出来ませんよ」
「頭を使わんか、雪之丞と嬢ちゃんは人間が集団になって一体の”人間以上”として
闘える事を知っておろう。それと横島、お主だけの特殊能力は何じゃ?」

ここからは三人の相談タイムだ。横島だけの特殊能力といえば文珠だろうがその活用次第という事か。

「なあ、俺は皆とパピリオの闘いを見てないんだけど、応用できそうなんか?」

南極の闘いの時、横島は美神と二人で先行してアシュタロスと対峙していた為直接見ていない。
後で話に聞いただけなので実際に闘った者達の考えを聞いておきたかった。

「あんときゃタイガーの精神感応とおキヌの心眼が鍵だったな」
「そうね〜相手を見失わないで〜全員で思考を〜共有できたものね〜」

心眼で敵に幻惑される事無く動きを見切り、どう対応するかを精神感想で伝える事が大事なのだろう。
だがこの三人にはそのどちらも無い。無い物ねだりをしても仕方が無い以上は他に考えなければならない。
斉天大聖が言う以上は何か方策があるのだろうが教えるつもりは無さそうだ。自分達で気付かなければ
意味が無いという事だろう。取り敢えずどうやって暗闇状態にするかはおいといて、まずはおキヌの
心眼に代わる物を考えなければならない。お互い超加速状態でいる以上は見失う可能性は考えなくても
良い。というよりそもそも見えない。闇の状態で敵を見透かす為にはどうすれば良いか。

「あ、所長クビラなら闇ん中でも見えますよね」
「それは見えるけど〜、私だけが見えても〜意味が無いでしょう〜?」

見えるのであれば心眼の代用はそれで良い。後はその視覚をどうやって共有するかだ。
精神感応の代わりになりそうな物といえば。

「あっそうか、そこで文珠の出番なんだ」

横島は単文珠を三つ生成すると《伝》の文字を刻み二人にそれぞれ渡した。その途端に既にクビラを
出していたのか封じられた視覚に周囲の状況が写りだす。他人の目から自分を見るのは妙な気分だった。

「妙なんて〜言わないで〜」

どうやら考えている事も筒抜けのようだった。変な事を考え始める前に訓練を再開した方が良さそうだ。
他人と感覚を共有するという一種慣れない状態ではあるが、とにかく訓練を再開する事にした。
最初は相手が手加減してくれたらしく、おっかなびっくりだったが何とか感覚を共有しながら闘えた。
共有状態に慣れてくると徐々に相手の手加減具合が減って来た。少しづつレベルを上げていくような
段階で長い時間闘えるようになると更にレベルを上げるといった具合だった。

何時しか自分と他人の感覚の境目が曖昧になっていった。それに比例して三人の連携は
高度な段階まで達しており、一糸乱れぬコンビネーションを取れるようになっていく。
正しく三人で一体の”人間以上”だった。




「よお、俺達どれくらいこの訓練してんだ」
「さあな、気絶と訓練の繰り返しで時間の感覚が無い」
「でも〜ご飯なら〜60回ぐらい食べたわよ〜」

答を聞く以前から相手の考えが解る為本来なら会話する必要も無いのだが、全くの無言状態で過ごす
というのも中々辛いものだ。視覚を封じられたままどれぐらいの時間が経ったのかもはっきりとは解らない。
おそらく睡眠とは気絶している時間が長くなっているだけだろう。何の為に訓練をしているのかも
忘れかけた頃、唐突に視覚の封印が解かれ斉天大聖が話し掛けて来た。

「そろそろ一段落といった処かの、一旦通常空間に戻るか」

いきなりそんな事を言われても何が一段落なのかが解らない。相変わらず分身には歯が立たないままなのだ。
急に戻された視覚に戸惑いながらもお互いに顔を見合わせる。こんな状態で闘えるのだろうか。

「ああ、言い忘れておったが分身の強さはワシの半分程にしてある、そこらの上級魔族など比ではないぞ」
「「「はあ?」」」

今の今迄パピリオより”少々”強いだけの相手だと思っていた。その相手に全く勝てる気配すら
しなかったので落ち込んでいたのだ。それがいきなりのカミングアウトである、冗談ではない。

「って事は俺達の実力って?」
「うむ、三人揃えば完璧に”人間以上”じゃ、上級魔族が相手でも互角以上に闘えるじゃろう」

斉天大聖の言葉を聞いて三人は一気に脱力した。嬉しいはずのお墨付きなのに不思議な程それを感じない。

「お、俺達の悲壮な覚悟って・・・」
「何年掛かろうがブッ倒すすもりだったのに・・・」
「私〜急に眠くなっちゃった〜」

冥子の言葉を合図にしたかのように一斉に三人が気を失った。張り詰めていたものが切れて
急速に疲れが襲って来たのだろう、さながら電池が切れたかのようだった。

次に三人が目覚めた時は訓練前にいた部屋だった。神魔の皆々は暢気に茶を啜っている。
気になる事があったのでワルキューレへにじり寄って質問した。

「それで? 場所は解ったのか?」
「ああ確認もして来た、間違い無い。教える前に手掛りから推理してみないか?」

珍しくワルキューレが悪戯っぽい笑顔でそう言ってくる。訓練の成果を斉天大聖から聞いているのだろうか。
それとも三人の知的レベルでも測りたいのだろうか、だとしたら全く横島には自信が無い、雪之丞もだろう。

「俺達頭悪いぞ?」
「”達”って言うな横島、まあ否定はせんが」
「ひど〜い、冥子頭悪くないもん〜」

別に冥子まで含めての発言では無かったのだが。それどころか知識面では冥子が一番頼りになる。
そんな三人の様子を黙って見ていたワルキューレが口を開いた。何でも妙神山に来る前に人界最高の
占術者のルーン占いでリーディングしてもらった内容だそうだ。

「何か意外だな、占いなんか信じるんだ?」
「占いは当てずっぽうと言う訳ではない、森羅万象より事象を読み取る魔法科学だ」

当るも八卦という訳では無く、確かな技術体系に基づいたもう一つの科学という事か。

「では言うぞ、”周囲を海に囲まれた地”、”緑豊か”、”精霊の祝福”、”宝冠の治める地”」
「解ったわ〜」

冥子はこれだけであっさりと解ったらしいが後の二人にはさっぱり解らない。
知識面で冥子に及ばないのは自覚していたが、ここまで差があるとちょっとだけ悔しい。

「ちょ、ちょっと待って下さい所長」
「おうそうだぜ、まだ答は言わないでくれ」

何とか自分達で答を出そうとして馬鹿二人が頭を突き合わせて考えだした。ああでもない
こうでもないと意見を交換し合う。なけなしの知識でパズルをしているようなものだ。
周囲を海に囲まれた地=島国、緑豊か=自然が多い、精霊の祝福=?、
宝冠の治める地=偉い人がいる、天皇?
それっぽい意見を繋ぎ合わせて何とか結論っぽい物を導き出す。

「謎は総て解けた」
「ああ、ママの名にかけて」

二人は俄か名探偵になったかのように断言する。自信満々のフリをして答らしきものを言う。

「「日本だろ?」」

何とも言えない沈黙が場を支配した。気のせいか冥子の視線まで温度が下がったような気がした。

「馬鹿は放っておいて、標的の潜伏場所はザンス王国だ。廃鉱の一つに潜んでいる」

ワルキューレに放置されて話が進んで行く。宝冠の治める地とは王制の国、精霊の祝福とは
文字通り精霊の加護の厚い地という事だったのだろう。確かにザンスなら総て当て嵌まる。

「それと標的の名を教えておく、双剣使いの武闘派でエウリュアレーという。覚えておけ、特に横島はな」




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(あとがき)
今回難産でした。唐巣神父のエピソードを書こうとしたら長くなりすぎて書いた分
全部消してまた書き直しました。幕間書くのがつくづく下手だな〜。

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