吟詠公爵と文珠使い6
投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 2/ 5)
唐巣神父の教会跡に、横島、ピート、神父、エミやカオス、マリアの面々が揃った。ゴモリーのことを、ピートやエミに紹介した後、作戦会議となった。
「敵についてなんだが・・・・ベリアルの他にも、あと二体いるらしい」神父は重々しい表情で、写真を取り出した。
写真には、ブンブン飛び回る蝿と、目つきが悪い少年の姿が映っていた。どうやら、牢獄の隠しカメラの映像らしく、入手ルートを聞くと「聞かない方がいいよ」という言葉が、薄笑みと共に、返ってきた。(神父って何者?)
「確か、デミアンとベルゼブルだっけ・・・・」
忘れもしない。妙神山で戦った強敵である。既に死んだものと思っていたが・・・・
「アシュタロスの宇宙処理装置で復活した後、潜伏していたという事でしょうか」ピートが、至極、妥当な意見を出す。というよりもそれしか考えられない。
「ベルゼブルは蝿の王とも呼ばれた元『魔王』、デミアンは残虐で、腕の立つ殺し屋だ」
ゴモリーは、ベルゼブルの名前を言った時、若干顔が引き攣ったものの、至極平静を装った。横島は、その変化に気付いたものの、敢えて触れずに
「ベルゼブルって、あれでも魔王だったんか・・・?」横島の記憶の中には「強い」というより「うっとおしい」といった印象しかなかった。
「嘗てはな。或る者との戦いに敗れて、力と地位を剥奪されて惨めな蝿の姿になった。それ以来、自分より弱い者を嬲ることで、鬱憤を晴らしていたのだ」横島の問に、ゴモリーは、忌々しげに答えた。
他の二匹も、負けず劣らず凶悪な連中。正に多くの人間が抱く「魔族」のイメージそのものだろう。
「ベリアルは、先の襲撃の際、一週間後に来ると言っていた。奴は、本気で攻撃しては来なかった」
「神父、ベリアルは今までの姿は凶暴な獣の姿では無かったか?」ゴモリーの問に・・・
「ああ、そうだったが・・・・」
「まずいな。それは奴の本来の姿では無いぞ、奴は本来の姿は美しい堕天使で、その姿こそ真の姿であり、全力を出せる状態だ。おそらく牢獄から出たばかりで本調子ではないのだろう」
ならば、奴らが調子を取り戻した時こそ、決戦の時。
「ちょ、ちょっと待って。あれがさらに強くなるわけ!?」エミが、悲鳴じみた声を上げる。あの獣の状態でも、厳しかったと言うのに・・・・
「だが、大抵の魔族に言えることだが、奴らは人間を舐めている。そこに付け込む隙があるはずだ」神父の言葉に一同が納得する。
「相手が相手だけに、出切る事はやっといた方がいいな」
横島は、そう言って文珠を二つ生成し・・・・『若』の文字を込め、神父とカオスに手渡した。
「二人とも飲み込んで下さい」言葉に従い、二人が文珠を飲み込む。
まずは、唐巣の髪がフサフサになった。
「おおお――私の髪が・・・」神父の顔が晴れやかに変わる。
「ぬう、神父は若い頃は美男子だったのか」ゴモリーの呟きに・・・・
ビシッ 石化。 ザスッ 神父の胸にレーヴァテインが突き刺さった。
「グッ わ、私だって、青春があったんだよ・・・六道理事長や美智恵君が・・・・」一転してこの世の終わりのような雰囲気になり、ぶつぶつ呟く。
「すまん、触れてはいけないものに触れたらしい」
一同、神父の心中を察し、十字を切った。色々な意味で、彼の過去には謎がいっぱいである。
一方、カオスは・・・・
「ムオオオオ―――!! 頭の中がスッキリしとる。あらゆるアイデアがあふれ出てくるわい」彼は彼で、中世の全盛期に戻っていた。
「頭の中身と皺の数以外は変わっとらんような気がするが・・・・気のせいか」ゴモリーの言葉は、恐らく真実を指しているだろう。
「俺の文珠の効果は、飲み込んだら、二、三日は続きますよ。神父は若い頃の勘を取り戻して下さい。それとカオス、てめーは何か使えそうなもんを頼む」
「任せておけい。小僧、大船に乗った気でいるがええ」泥の大船で無い事を祈りたい。
「次はどこで戦うかだな」
なるべく周囲に被害が出ない所。候補として浮かぶのが、妙神山。
「妙神山しか思い浮かばないよなあ・・・」
「しかし、連中素直に来てくれるでしょうか?」
横島の呟きにピートが思案顔で、相槌を打つ。
おびき寄せるか。無理やりに引き込むか。手段としてはこの二つ。
そんな中、ゴモリーは
(妙神山か・・・確か、ハヌマンの奴がいたな)
どうやら、彼女とゲーム猿には因縁があるらしい。
「それについては、ワシに考えが有る」若返ったカオスが、不敵な笑みを浮かべながら口を挟む。(割と二枚目である)
彼によれば、横島の文珠で『妙』『神』『山』『強』『制』『転』『移』を作り、効果を西洋の術で増幅し、かつ範囲を広げるというものである。横島が、現在一度に作れる文珠の回数は八個、数としてはギリギリだ。
つまり、連中が現れたら、即現場に行き、そこで先述の手段を用い妙神山へ移動するというものである。しかし、この方法だと横島は殆ど霊力を使い切ってしまう。といっても良案が思いつかない以上、これで行くほか無さそうだった。
横島の状況を危惧し・・・・
「お主に負担が、かかりそうなのでな。これを渡しておこう」そう言って、ゴモリーは虚空から、黒塗りの鞘に包まれた西洋剣を取り出し、横島に手渡した。一見、何の装飾も無い剣だが、放つ力はとてつもなく、まさに『魔剣』と言ってよかった。
「知り合いからの貰い物だ。丸腰よりはいいだろう、お主の牙にするといい」そういう彼女の声には、どこか悲しげな響きがあった。
横島は・・・・
(凄い力だ。西条の剣がおもちゃに見えるほど・・・・)
同時にどこか懐かしい感覚。剣の方も嬉しげに鳴いた気がした。
妙神山へ連絡を取り、ハヌマンの許可を貰った。ちなみに、小竜姫やパピリオは里帰り中。
ゴモリーは電話でハヌマンとにこやかに会話していたものの、彼女の額には青筋が浮かんでいたりする。(昔、何かあったらしい)
後書き 妙神山への移動方法が最大の難問でしたが、こんな形に・・・横島の伏線が微妙に更新。共闘するマリア(とカオス)には、横島の底知れない『闇』を目撃してもらいます。デミアンの末路も・・・(小竜姫達が横島の『闇』を知るのはまだ先なので、お帰り願いました。特にヒャクメが悪戯半分に横島の『闇』を覗いたら、えらいことに・・・・発狂するかも)
この剣は、実は「彼」の持っていたのをゴモリーが形見として譲り受けたものです。ある意味、剣が主のもとに返って来たとも言えますが。横島とゴモリーはお互いの間に、とんでもなく深い縁があることに気付いていません。(気付いたら物語が終わってしまう)過去編を御覧になってる方はやきもきしながら見てください。真相を知った周りの反応が怖い・・・(ちなみに、この二人の恋愛はカタツムリよりも遅いです)
ベルゼブルを破ったのは、実は・・・・・
今までの
コメント:
- 今回ちょっと短かったような気が・・・
余計に続きが気になります。
カオスは一時的に若返ったなら自力でその効果を持続する手段を
考案しようとか思わないんだろうか?そうすればマリアの苦労も
減るだろうに・・・
あと戦闘ではゴモリーはあんまり前面には出ないのかな?
出れば一瞬で終わりそうだもんな〜 (ぽんた)
- カオスは、自力で効果を持続する手段を思いつかないからこそ、カオスだと思います。(笑)
あと、ゴモリー、戦いますが苦戦もしないです。(その代わり、蝿野郎と一騎打ちです)
過去編を見ればわかりますが、彼女は元軍属です。(ある原作キャラは、彼女の元部下兼友人だったりします) 短いかも知れませんが、私は区切りが良い所で投稿するようにしてます。 (アース)
- いつも、楽しく拝見させていただいています。
ちょっと、話に関係のないことですが
物書きさんには”漸く”や、”嘗て”など普段使用しない漢字を
使う人がいるんですが
それって、どうなんでしょう?
ぱっと見読めなかったりする漢字を使われるとちょっと
萎えるんですが...
わざわざ難しい漢字を使用しなくても、ひらがなでいいとおもうんですが (アノニマス)
- どうも、夜叉姫と申します。
けっこうメンバー的に珍しいのでこれからの展開に期待したいです。
個人的に横島の心に『闇』があるというところには大賛成です。
よく光あるところに闇があるといいますし、どこで聞いたか忘れましたが本当におもしろいギャグは毒を内包しているともありました。
GSでも今読み返してみるとけっこう暗い設定があったりしますしね。
これからもがんばってください。 (夜叉姫)
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