ザ・グレート・展開予測ショー

目覚めて見れば…5


投稿者名:K.M
投稿日時:(05/ 2/ 4)

「お主…こんなところで何をしているのだ?」

「う〜ん…時間潰し…かな?」

心眼の問いに気の抜けた声で俺が答える…

ここは試験会場の屋根の上だ、当たり前だが、たかが時間つぶしにこんなところに来る程酔狂じゃない。

少し前まで下で聞こえてきた「横島!何処行った!!」と騒いでいる美神さんが怖かったなんて事は決して無い…本当だぞ、うん!

まあそれは置いといて、これからの事に付いて考えていたのだ。

先ほどのピートの怪我は大したことが無かったが今度はそうなるとは限らない…いや、怪我ならまだいい、場合によっては命を落とすかもしれない…

一応俺の体験した過去(未来?)では犠牲と呼べるような犠牲はルシオラ以外無かったが、

今回も同じようになるとは限らない…いや自分が前と同じように動かないのだから同じになるはずが無い。

その時自分はどう行動すれば良いのか…ルシオラを助けられなくなる危険を犯し仲間を救うか…それとも見捨てるか…

「……………どうしたもんかな…」

ため息とと言葉が漏れる。

「…ウム…お主には似つかわしくないが…悩み事があるようだな…我でよければ相談に乗るぞ?」

「…似つかわしくないとは失礼な………まあ、そうだな…強いて言えば、

大切な人と仲間が共に危機に陥っていて自分には片方しか助けることが出来ない…さてどうする?」

「両方救える可能性は全く無いのか?」

「仲間の方は自分で何とか助かるかも知れない…大切な人の方はほぼ間違いなく駄目だと思う…」

「お主はどちらを助けたい?」

「大切な人の方………だと思ってた…でも仲間を見捨てることもやっぱり出来ない…」

俺は…あの人…美神美智恵も同様に悩んで出したじ結論なのかも知れないが、俺は同じ答えは出したくない。

「何だ…もう結論が出ているではないか…なら話は簡単だ。両方救えば良いではないか」

「………………………はい?」

それが出来ればこんな悩みはしてないだろ。

「む!…何だその『この馬鹿何言ってやがんだ〜』って目は!?」

「い〜え………………別っに〜」

その通りだけど。

「ふん!この豆腐頭が!!…何故出来ないと思う?」

………………えっ?

「お主の目的が何なのかは我は知らん…だが、

こんな所でボーと考えられるという事は今すぐどうのと言う状況ではなかろう?

なのに何故両方救え無いと考える?」

「そりゃ………………」

「ふん…理由など無いのだろ?」

鼻で笑うような心眼の言葉に俺の頭は一気に熱くなる。

「そうだよ!そうなるとは限らないよ!でも!でもよ…

あの時みたいになったら、結局選ばなきゃいけないんだよ!だったら…だったらさ」

「いっそそれ以外を全て捨てるか?」

反論できない俺に対し心眼は更に続けた。

「…確かに…どうしようもない状況で二者択一を選ばなければならない事が有るかもしれない、

どちらかを切り捨てなければならない事もあるだろう、

今のうちから守る者と守らない者を取捨選択しておいたほうが楽かもしれない、

だが…捨てるのは簡単だ…だが捨ててしまったものはもう二度と戻らない」

「……………」

「お主の目的が何なのかは我に分からん…だが、一つ言えるのはまだ未来は決定されていない…

今…取捨選択するものを決めておくのも一つの手だが、

全て捨てずに行けるかどうかを考えるのは捨てる前にしか出ない事だぞ」

そう心眼は小さな子供を諭すように俺に言った。

未来は決定されていない…か…そうだ、

まだ未来は決まって無いんだ!

これから俺の知っている歴史を変えようとしているのに、

最初から可能性を限定して諦めるなんて馬鹿馬鹿しいわな。

サンキュー心眼…


目覚めて見れば…5


「…何か御用ですか…ミカ・レイさん」

「この際、今まで何処に居たかは今は不問にしてあげる…で、アンタ…何考えてんの?」

('今は'何ですか?て言うか美神さん正体隠してんでしょ?こんな風に呼び出したらばれますよ…)

試合開始直前に美神に呼びつけられた横島が現実逃避気味に心の中で突っ込むが、当然美神には聞こえない。

「アンタが居ない間に小竜姫様が白竜会の調査から帰ってきて物的証拠は無かったけど殆ど真っ黒…

それにあの雪之丞…アンタも見たでしょ?危ないわ…棄権しなさい…」

「…大丈夫です」

「…………」

「…………」

「アンタ…私の言うことが聞けないの?」

暫し横島と美神の間に沈黙が続いたかと思うと、

行き成り美神が横島の襟首を引っつかみ引き寄せドスの聞いた声で凄む。

「いえ!このまま棄権したらGS資格まで無くなるじゃないですか!そ、それに心眼も居ますから大丈夫です」

「……横島君…」

「……判ってくれましたか?…」

何となく良い雰囲気が流れたかと思うと美神がおもむろに横島の顔に手を沿えると…

「いだだだだ!!」

「私の言う事が聞けないなんて随分偉くなったわね!!」

思い切り真横に引っ張り、

離す時に「勝手になさい!」と付け加えた。

「うう…頑張ります…」

………
……


『第4試合、横島選手 対 伊達選手! 初め!!』

「うおおおおっっ!!!!」

審判の合図と共に、雪之丞は魔装術を発動させる。

「虚弱で母親に甘えていた俺が、こんなにカッコよく強くたくましくなれたのは、

霊力にめざめ、鍛えぬいてきたからだ!!!

貴様はどことなく俺に似ている!楽しませてくれよ!!!」

(カッコイイって…ちょっと美的感覚疑うぞ…雪之丞…でも、確かに…最後の似てるってえのは賛成だな)

ともに大切な人のために力を欲し、強くなろうとしたのだ確かに似てると言えるだろう。

未来の親友の親友から横島に向けて大きな霊波砲が飛んでくる。

それをサイキックソーサーを使い弾き、舞い上がった埃の中からサイキックソーサーを飛ばす。

「甘い!」

『あっ…やっぱり避けられたか…、陰念の時に見せたからな…』

『何を暢気な!来るぞ!』

心眼が横島警告を発するがそれより早く、

ドガシャァァァ!!!と言う音と共に雪之丞がリングへ叩きつけられる。

『…アレを操ったのか?』

心眼の呟き通り、雪之丞が躱したはずのサイキックソーサーが行き成り角度を変え無防備な背中に命中したのだ。

「ガァハッ…なっ…何が?」

喰らった本人の雪之丞は何が起きたか分からないだろう…

「行くぞ!」

混乱している雪之丞に止めを刺すべく両手にサイキックソーサーを構え一気に横島が走り出が…

「ギャーーーーー!!!」

『どうした!攻撃か!?』

「あ…あ…足が…足が痛い…」

『…………………………………………はぁ?』

心眼はあきれたというか困惑した様な思念を返すが当の横島にとっては洒落にならない痛みなのだ。

何とか倒れないで居るのが精一杯だ。

どうやらスタートダッシュが良くなかったらしい…陰念で痛めていた体がヒーリングの効果範囲を超えたようだ。

試合中で無ければ文珠で直してしまうえばいいのだが生憎と今治療する訳には行かない。

(最悪…)

『来るぞ!』

「そう言う事か…流石俺が見込んだ奴だ!次は俺から行くぞ!!食らえ…必殺連続霊波砲!!」

混乱から立ち直った雪之丞が一気に勝負を決めようと名前通り凄まじい数の霊波砲が横島に殺到する。

「ちっ!」

舌打ちしながらも両手のサイキックソーサーで弾くが衝撃までは逃がせない…足にガンガン響く。

『我も霊波で助力した方がいいのではないか?』

『…イヤ…いい…それはフェアじゃないだろ?』

『そうか…いらぬお世話だったようだな…』

横島に断られながらもどこか嬉しそうだ。

(ってカッコつけて見たものの…いっって〜!!!コレじゃ長く持たない…さっさと霊力切れてくれ!コンチキショ〜!!)

痛みのため、徐々に鈍くなってくる体を必死に動かしながら耐える横島の祈りが通じたのか霊波砲の嵐がピタリと止んだ。

「ちっ…ちきしょ!全弾凌ぎやがった…」

横島同様荒い息を吐きながら雪之丞が呟いた後、魔装術を解く。

「お前を倒すにはこれしかない様だな」

そう言って雪之丞もサイキックソーサーを構えるが右手にしかない。

「おいおい…俺は二つあるんだぞ」

「ふん…無駄に残弾が多ければ良いってもんじゃない、当てれば同じだ…それに貴様、足を痛めているだろ…俺の攻撃を躱すことが出来るのか?」

確かにその通りだ今の横島にとって2:1の状況はさほど有利と言うわけでもない。

次第に辺りの空気が張り詰めていく。

先に動いたのは雪之丞だ、サイキックソーサーを維持する霊力が無くなるのは先ほどまで霊力を浪費した自分だと思ったのだろう。

(よし…勝った!!)

後はサイキックソーサー二つあるうちの一つを迎撃にもう一つも本人に…

そう、予測を立て横島は自分の勝利を確信した。

だが、

「あ〜〜〜〜!先に動いた〜っ!!令子ちゃん、

あの人先に動いたわ〜〜〜!バカね〜〜〜負けるのね〜〜〜!?」

この冥子の言葉でズッコケタ雪之丞は、サイキックソーサーを明後日の方向に投げてしまう。

これは横島にとって予想しなかった事態だ。

雪之丞のサイキックソーサーの軌道は雪之丞が複雑に操ったとしても雪之丞と一緒に視界に捉えられる範囲だと思っていた。

だが、雪之丞のサイキックソーサーは横島の頭上を越え横島の視界から消えた。

コレでは迎撃する事は出来ない。

しかも、すでに一つは投げ二つ目のサイキックソーサーも投擲モーションをとめる事は出来ない。

(迎撃すれば雪之丞に躱される…もしここで仕留め損ない接近戦など許したら俺に勝機は無い、

それなら、雪之丞を倒してから迎撃するしかない)

もうすでに横島の足は限界だ。

一度倒れればもう起き上がれないだろう。

そう決断を下し、サイキックソーサーを操る事に意識を集中し目標目掛けて一直線に飛ばす。

それに気が付いた雪之丞が小さいながらも霊波砲を放ちサイキックソーサー爆発させた。

「俺の勝ちだ!喰らえ!!」「お前がな…」

迎撃されたサイキックソーサーの真後ろに隠していた残りの一つが爆煙を切り裂き、

勝鬨を上げた雪之丞に残ったサイキックソーサーが突き刺さり崩れ落ちる。

「ふ〜う…何とか何とかなったなやっぱり一つより二つだな」

それと同時に

『おい!後ろだ!』

雪之丞を倒し少し気が抜けた横島に心眼の警告が届くが遅かった。

慌てて振り向いた横島の目に映ったのは視界一杯大きさのサイキックソーサーだ。

(確かに…当れば同じか)

そう考えた直後、脳天を貫く凄まじい衝撃と共に横島は意識を失った。

………
……


『美神さんを困らせないで。私は…十分満足してる。これでよかったのよ』

『ちょっ!ちょっと待って!』

…もう行くね。意識を残しているのも限界なの…短い間だったけど…楽しかったわ…ヨコシマ…ありがと…』

「ルシオラ!!」

「しっ!騒ぐな!」

それと同時に横島の脳天に凄まじい衝撃が加わる。

「ちょっとエミさん駄目ですよ!横島さん頭に怪我してるんですから」

「そのくらいの怪我、令子に比べら可愛いもんでしょ…大体誰よルシオラって…」

「えっえっ?…何?ここは?俺は??えっえっ???」

「おたくが寝ている間に試合は準決勝まで進んでるのよ!急いでメドーサと白竜会の繋がりを証明しなきゃならないワケ!」

「はい?」

端的なエミの言葉に横島が分からないと言った声を上げる。

「横島さんは先ほどの試合で雪之丞さんという方と相打ちになったて気絶していたんです…

その間に幾つも試合があったんです。それでもうすぐ試験自体が終わっちゃいますからそれまでに何とかしなきゃって事で焦っているんです」

「ああ、そう言うことか…で、具体的にどうするの?」

寝起きの混乱から覚めた横島が状況を把握する。

「はい、横島さんと戦った雪之丞さんを自白させるそうです…」

「なるほど…ありがとおキヌちゃん」

そういって微笑む横島をみておキヌが頬を染め、「…いえ」小さくつぶやきそっぽを向く。

「エミちゃん〜目が覚めそうよ〜マコラちゃんも用意はいい〜?」

(そう言うことなら俺も手伝えるな…)

隣の部屋から聞こえた声でそう思いベットから身を起こす。

おキヌた背を向け自分の世界に入っているためか横島の行動にきがついていない。

『おい…どうするつもりだ?』

『うん?…いやちょっと雪之丞に自白してもらおうと思ってな…』

アレじゃなといった様に雪之丞の部屋に堂々と仕掛けてある隠し(?)カメラを指す。

『どうやるのだ』

『まあ…見てな』

『おっ、おい!』

心眼の驚きこ声を無視しエミと冥子が張り付いているドアをおもむろに開け部屋の中に入る。

「よっ…雪之丞…気がついたみたいだな…」

「横島!…………なるほどな…そういうことか」

横島の登場に驚いたようだがすぐに冥子とマイクを持ったエミの姿を見て気づいたようだ。

「マコラ…戻っていいよ…」

メドーサの格好をしたマコラが迷うような仕草をするがすぐ冥子の元に行く。

「で…こんな手の込んだ真似までして俺に何の用だ?」

「用件は分かっているだろ…メドーサとの関係を自白してくれないか?」

あまりにストレートな横島の行動に一同声が無い。

「雪之丞…お前もうメドーサの下に付くのやめたんだろ?自白してくれないか?」

「…………何を言っているか俺にはわからないが…

例えそうだとしてもここで自白するメリットはないだろ?」

「そうだな…じゃあ…ここから逃げるとき俺たちは追わない…逃げれば、お前位強いやつは裏稼業はいくらでもあるだろ?

後は…………俺との再戦の約束…なんてどうだ?」

横島のこの言葉に少し呆けたような表情を浮かべた雪之丞だったが行き成り腹を抱えて笑い出す。

「お前…頭悪いだろ?」

「失礼な…これでも一応高校行ってんだぞ」

雪之丞の言葉に少し憮然した調子で横島が答える。

「そうか…だが、賢くないな…まあいい、確かに俺も勘九郎も陰念もメドーサの配下さ…奴は話を持ちかけたとき、

俺たちは金と術目当てで話に乗った…逆らった奴は石にされるか殺された。

首尾良く資格が取れたら妖怪どもに手心を加えるって計画だったな……これで良いか?」

「ああ…十分、サンキュー」

「ふん…これで俺の将来もパーだ…約束は守って貰うからな…それまでキッチリ腕を磨いて置けよ!」

「了解…あっ…逃げる時は派手にな」

手に出した霊波を床に叩き付け派手な爆発が起きた後にはもう雪之丞の姿は無かった。

余談だが横島は後ろで拳を鳴らしている夜叉(エミ)に気が付くのはもう少し後だった。

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