ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い5


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 2/ 3)

「全く年寄りに気を使わんか」カオスは額に包帯を巻いている。(ちなみに、魔鈴所有のバターナイフを凶器に使ったことに関しては、ゴモリーの魔術書を譲ることで魔鈴とは話が付いた)

「お主が、あの程度でくたばる訳が無かろう。カオスフライヤー・ネオとかいう訳のわからん乗り物に乗って、墜落してもピンピンしておったくせに・・」
ゴモリーはカオスの抗議をサラリと流し、彼の過去の発明の失敗を暴露する。カオスも横島も不可解指数が凄まじい。

「やっぱり、失敗ばっかりだったのか?」過去のカオスを多少知る横島としては、興味がある。
「私を呼び出した時、教会からは目を付けられ、領主とは問題を起こすなど散々だったろう」色々と危ない橋を渡ったらしい。
「少なくとも、小僧や美神も関わったヌルの一件以来、二、三百年先の話じゃからな。」しみじみと述懐するカオス。
「呼び出したのが私でよかったな。召喚者を騙したり、殺したりする奴もいるのだからな」魔神の中でも、彼女やアシュタロスはまだ温厚な方なのだ。

「カオスさんの時代の秘術には、興味がありますね」
まだ、店が忙しくなる時間帯では無いのか、魔鈴が話に加わってくる。やはり、魔女として、その方面の話となると興味が嫌でも有るようだ。

「おお、ちゃんとした形で話すのは初めてじゃな。魔鈴とか言ったのう。残念じゃが、それに関する書物は、ワシが書いたものはヴァチカンに発禁処分を受けたり、没収されたりしてのう。残っとらんのじゃ」カオスが、申し訳無さそうに言う。もし、残っていたならば美神が血の涙を流して欲しがるだろう。

「その他、嘗て私を従えたソロモン王の書物もな。いくつかは魔界の書庫にあるが・・・・神魔のデタントの流れを崩す恐れがあるので、持ち出し禁止だ。持ち出したならば、極刑は免れん」ゴモリーが、厳しい口調で言う。彼女はデタント関連で、うるさくいう気は無いが、流石に重罪を犯す気は無い。

「そうですよね・・・でも、自分で探求する楽しみが出来たってことにします」あくまで、前向きな魔鈴。もっとも、彼女なら自力で古代の秘術にたどり着きそうな気もする。

そういえば・・・・
「魔鈴さん、ゴモリーが魔神だって気付いてました?」
正体バレバレな会話をしていたことに今頃気付く。
「ええ、人間とは僅かに違う気配を出してましたから・・・・でも、私の料理をおいしいといってくれる方に種族の区別なんてありませんよ。それに、錬金術師や吸血鬼にも知り合いが居るんですよ、今更驚きません」裏表の無い笑顔。こんな人が西条のようなプライドが服を着て歩いてるような男の後輩とは・・・・・
(うう、世の中は分からん・・・)

なんだかんだで平和なひと時だった。



時を同じくして・・・・
『戦いの鐘は鳴る』

イタリア、ローマカトリックの総本山にしてキリスト教神族の拠点。
そこに、凶悪な笑みを浮かべた少年がいた。
「全く・・・用事があるとはいえ、胸糞悪い。一秒でも長くいたくないな」その少年はデミアン。宇宙処理装置にて復活を果たし、今は横島達への復讐に燃えている。なぜ、魔族たる彼が、敵地の真っ只中に居るのか?

「法王庁の地下牢獄に、ベリアルの野郎がいるわけか・・・戦力は多いに越したことは無い」
彼は、牢獄の悪魔を開放する気なのだ。デミアンは、少年らしからぬ笑みを浮かべながら歩を進めていった。

「よう、ベリアル」
「何だ、お前はギイッ!? 魔族かギイ?」
「そうだ。私の名はデミアンだ。ここから出たいだろ?」
「当然だギイッ!! 人間の肉を食いたいギイ」ベリアルは、獣のような腕を振り回し叫ぶ。少年と獣が、会話する様はいっそ奇妙ですらあった。しかし、それは文字通り悪魔の対話。ちなみに、衛兵達は先に侵入したベルゼブルによって皆殺しにされていた。

「いいだろう。出してやる、横島忠夫という人間を殺すのを手伝ってもらう」
「了解だギイ!! だが、その前に俺をここに放り込んだ忌々しい神父とエミの奴を殺してやるギイ」ベリアルにしてみれば、個人的な復讐が最優先だった。
「ああ、それでいい」デミアンにしても、横島を殺すための手駒が増えればそれでいい。何より、他人が傷つけば横島本人にも与える精神的ダメージも計り知れない。彼らの間には信頼など無意味。ただ、利用しあうだけだった。


―牢獄の最深部―

「ふむ。私は出してくれないのかねえ、それでも構わんが・・・」
前知魔ラプラス。彼の目には、デミアン達の行く末も無論『視』えている。だが、言ってやる気は無い。それほどの義理も無い。

それよりも・・・・
(あの吟詠公爵と文珠使いの坊やが・・・・・全く面白い。さらに、あの坊やが『剣の王』の・・・実に楽しませてくれる)
くぐもった笑いを漏らすラプラス。その笑いを聞いたのは、彼自身と周りの闇以外無かった。


かくして、ヨーロッパGS業界では、ヴァチカンからベリアルなどの上級悪魔脱走の噂が飛び交った。だが、あくまで噂の域をでなかったこと、ヴァチカンが情報を公開しなかったこと、それらが対応の遅れを呼んだ。

唐巣神父の教会が襲撃されたのは、間もなくのことであった。





教会襲撃から翌日。魔鈴の店の食事から二、三日後。横島とゴモリーは、教会跡に来ていた。

「神父は大丈夫かな・・・」横島とて、神父の実力は知っている。しかし、これ程のことをやってのける相手だ。心配にならないはずが無い。(ちなみに、最近、彼女は魔鈴の家に泊まっている)
「ヤハウェの家も見る影なしか・・・」

教会は半壊状態で、以前原始風水盤での一件よりもさらに酷かった。

「神父、髪の毛の心配が増えそうだな」無事だったとしても、精神的なショックが髪に影響している可能性も否定できない。

「ご心配なく。なんとか元気だよ」
後ろから声がかかる。一瞬、ビクッとするが、見知った気配なので緊張を解く。
振り向くと、教会の主たる神父が立っていた。顔や手に傷を負っているが至って健康そうである。

「無事だったんすね」
「これでも腕に自信はあるからね。それとそちらの方は・・・」
「貴方が唐巣神父か。私の名はゴモリー、横島とつい最近知り合ったものだ」
「そうか、ソロモンの魔神の・・・とは言っても敵意が無い。私は唐巣和宏
ここの教会の主だよ」
相手が魔神であっても、敵意が無く、さらに横島と共にいる。それだけで信頼するには十分な根拠といえた。
横島が真に邪悪な存在を受け入れはしないのだから。

神父と握手をしながら、ゴモリーは
「ところで、神父。貴方の教会を襲撃したのはもしやベリアルでは・・・」
彼女の声には、疑問というより確信といった感じがあった。

「やはり、ソロモンの一柱。同族の気配はわかりますか」神父も重々しく、沈痛な表情で首肯した。
「知っている奴、というよりも大嫌いな奴の匂いだったのでな」

「ベリアル?」
横島が疑問符と共に呟く。実力はあっても、知識は不十分だった。

「私と同じソロモンの一柱だ。確か、悪さが過ぎてヴァチカンの牢獄に放り込まれたと聞いていたが・・・」
「放り込んだのは私とエミ君だよ。二、三日前に脱走し、憎悪の対象である私を襲ったというところかな」
各方面の対応の遅さから、襲撃を許してしまった。

「じゃあ、エミさんは・・・」ベリアルにとってエミも憎悪の対象のはずだ。
「彼女の方は大丈夫だ。教会という位置がわかりやすい私を狙ったんだろう。ピートはエミ君の所に使いに出した。
人々の心の拠り所たる教会を襲うとは我慢ならない。決着をつけなければ・・・・」
そう言って、神父は空を見上げた。
横島は、その唐巣の姿が、雄雄しく吼える獅子のように見えた。


その頃、ピートはエミのもとに向かっていた。
神父からは、一言だけ『ベリアル』と言えばエミは分ると言われていた。この一言が、どれだけ重い意味を持つのか、彼には嫌というほど
わかった。

エミのオフィスに到着した。あっさりと居間に通され、いつもは猫撫で声で擦り寄ってくるのだが・・・・
「そろそろ来る頃だと思ってたワケ」彼女は、既に準備を終えていた。トランクの中には、彼女の装備が詰まっているのだろう。
そこにいるのは、色ボケ黒魔術師ではなく、『過去』と向き合う一人の女だった。

「今回の一件はお色気無しで行くワケ。タイガーには休みを取らせたわ、連れてきてもアイツにとってはエサが増えただけなワケ」
車で教会跡に向かう途中、エミがピートに説明を兼ねて言う。成る程、直接的な戦闘力の弱いタイガーではベリアルとでは、勝負にならない。
ハンドルを握るエミの手にも、ジワリと汗が滲む。以前、勝てたのは奇跡に近かったのだ。
エミにとって、ベリアルは過去の象徴だった。美神にとってのアシュタロスと同じように・・・かといって逃げる気は無い。今までの自分を否定することだ。

「大丈夫ですよ。僕や神父、横島さんがいるじゃないですか」
「ありがとう・・・・」本心から、そう言えた。自分は一人じゃない。(涙で目が霞みかけた)

「覚悟するわけ、ベリアル!!」

ブオオオオオン!!

エミは力強くアクセルを踏み込んだ。教会跡へ・・・・決戦のときは近い。

スピード違反で捕まりかけたのはご愛嬌だが。






後書き
エミまで、シリアスに・・・・昨夜ネタの神様が降臨。一気に書き上げました。(勢いのある内にやっちまえって感じで) 唐巣とゴモリーのコンタクトがちょっと・・・もうちょっと詳しくやりたかった。

三局の戦いになりそうです。

組み合わせはベルゼブル対ゴモリー、ベリアル対唐巣神父、ピートそしてエミ、デミアン対横島、マリア(カオスはマリアの強化)

ラプラスの台詞に関しては、重要なキーワードになってきますので、頭の隅に置いといてください。(横島の設定がとんでもないことに・・・回収できるか、私)
それとデミアン戦で横島の『闇』が、表に出ます(少しですが)

今回の敵キャラ達は、美点が全く見つからない連中なので遠慮なくぶちのめせます。(メドーサだったらこうは書けないけど・・・) 



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