ザ・グレート・展開予測ショー

まごころを君に−4


投稿者名:ゆうすけ
投稿日時:(05/ 2/ 3)


まごころを君に−4


【9】
警告ランプは消えて窓の外が青と白の二色になった頃、客室乗務員が飲み物を配りに来た。
シロは離陸の時から俯き、頑なに口を閉ざしていた。
横島は持久戦の態勢を取ったのか、のんびりした感じで客室乗務員から飲み物を受け取り、それぞれに手渡した。
(ちょっと…昨日の今日で聞いたらマズイんじゃない?)
ルシオラがシロの気持ちを察してか小声で横島を嗜める。
「そんなわけにゃいかんだろう。飛行機が着いたらどうこう聞いてる暇は無いかもしれん」
ルシオラの施しも無視し、彼女が小声で話したのに反発するように強い口調で喋る。
「シロ、少しでも良いから話してくれないか?何も解らないんじゃ俺は何も出来ない」
横島は半ば強引とも言える切り口でシロに迫った。















「…一週間と少し前の事でござった」










シロは縫われた様に塞がれていた口を静かに開けた。
それは凄惨なる記憶が呼び戻された瞬間でもあった。











「へ?イギリスに行くって?」
「はい。あの、ダメでしょうか?」
全てはおキヌ殿この一言でござった。書類整理をしていた美神殿は思わぬ言葉に仕事を中断する。
拙者は二人のやりとりを傍から眺めていました。
「なんでまた?」
美神殿はひとまず書類を一纏めにすると再びおキヌ殿に尋ねました。
「ええ、留学に行った弓さんが落ち着いたって言ってたんで一文字さんと遊びに行こうかと思いまして」
「へぇ、二人して随分友達思いじゃない」
美神殿は微笑むとでもさ、と言葉を続けました。
「え〜っと。これ、覚えてる?」
おキヌ殿の目の前に四五枚の書類を差し出しました。
するとおキヌ殿はしまったと言うような表情をして、黙り込みました。
「……しょうがないわね。仕事は私達でなんとかするから、二人で行ってらっしゃい。その代り、ちゃんと時給から引くんだからね?」
照れ隠しに片膝を抱える美神殿。おキヌ殿は感激して美神殿に抱きつきました。
「こ、こら!?抱きつかないの!」
満更でもない表情でおキヌ殿を嗜める美神殿。
「でも海外って危ないんだからね?向こうに着いたら絶対護身グッズを買うのよ?いい?あと通行人とかに記念撮影を頼まないこと!それに必ず集団で行動すること!それから…」
おキヌ殿を引き離した美神殿は色々な事を忠告してました。
「それなら心配無いでござる!道中の警護は拙者に任せるでござる!」
これで拙者もかいがいりょこおが出来るでござる。
「何言ってんの、あんたパスポート持ってないじゃない」
「ふっふっふっふっ♪」
確かこの棚の引き出しに…あった。
「じゃ〜ん♪拙者知ってるでござる。これで拙者もかいがいりょこおが出来るんでござろう?」


『飼い主証明書』


「あっ」
美神殿はしてやられたと言う様な表情をとりました。
「わかったわよ。あんたもいってらっしゃい」
するとどこで話を聞いていたのかタマモがどこからともなく現れた。
「私も行きたいぃ〜。私のは?」
明らかに甘えた感じで美神殿の首にまとわりつくタマモ。
「あんた予防接種してないでしょ?だから無いの」
呆れた表情で美神殿はタマモの言葉を叩き落しました。
「じゃあ明日それする」
「明日は獣医は休み、ここらへんにはあそこしかないから無理よ。あんたは私と仕事すんのよ」
タマモは信じられない物を見たと言う顔を浮べて
「う、うわぁああーん!!」
と部屋を飛び出していった。
「タマモちゃん!」
「良いのよ。仕事には助手が必要だったし、丁度良いわ」
追い掛けようとしたおキヌ殿を美神殿が制止しました。
そうでござる。たまにはあいつも事務所のために何かするべきでござる。













そして二日後…











「じゃあ行ってきます。美神さん」
「おみやげ楽しみにしていてくだされ」
おキヌ殿はきゃりーばっぐ片手に、そして拙者はけーじ片手に美神殿の見送りを受けていた。
「…やっぱり、タマモちゃんも連れてった方が良いでしょうか?」
「気にしないの、なんか食べに連れてってしばらくほっといたらケロッと忘れてるわよ」
不貞寝してるであろうタマモに気後れしているおキヌ殿に、美神殿が陽気に振舞いました。
ま、日頃の行いってやつでござるよ。
「それより本当に空港まで送らなくて良いの?」
「ええ、途中で一文字さんと落ち合う約束ですし、遊びに行くのに美神さんにはあまり迷惑はかけたくないですから」
「気にしなくて良いのに。じゃあいってらっしゃい」
「はい、いってきます。美神さん」
拙者達は陽気に事務所を後にした。





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