ザ・グレート・展開予測ショー

THE MOVIE「踊るゴーストスイーパー」(3)


投稿者名:3馬鹿鳥男
投稿日時:(00/ 5/21)

第3章「美神令子(1)」

ほたるは2人の突然の登場に驚いて、しばらく固まっていた。
美神はそんなほたるに事務的な口調で声をかけた。
「今晩は、織田さん」
「こっ今晩わです。美神さん。小笠原さん。」
ほたるはあわてて立ち上がり、ぎこちない笑顔で会釈をした。
美神は手を軽く挙げて挨拶を返した。
「あれっ、2人は会うのが初めてではないんですか?」
軽く挨拶を交わした美神とほたるを交互に見て、おキヌは不思議そうに尋ねた。
美神は腕を組み、ふっと失笑しておキヌに答えた。
「映画製作の際、挨拶程度には会っているわ」
「でも、美神さん先ほど「そうあなたが・・・」と言っていませんでしたか?」
「その時は「愛川 恵」さんだったのよ。」
「えっと、それって・・・」
おキヌはひとさし指を顎に当てて考えるような仕種でほたるを見た。
ほたるはにこっと笑って答えた。
「芸名です。「愛川 恵(あいかわ めぐみ)」は。
映画製作中はその名で通ってましたから。」
「あっ」おキヌはパンフレットの名を思い出し、手でぽんっと相づちを打った。
「織田さん芸名を使っていたんだ。でも芸名より本名の方が断然かわいいですね。」
美神さんもそう思いますよねとおキヌは美神に振り返った。
しかし、美神はぶすっとした顔をしていた。
おキヌはたじろぎどうしたんですかと尋ねた。
美神はじろっと睨むようにほたるを見て「ちっ」と呟いた。
「その時、「織田一族」の人間と知っていたら
映画なんか手伝わなかったのに・・・
どうもエミは初めから知っていたみたいだけど・・・」
と、ぶつぶつと聞こえないように言い、エミの方にも睨んだ。
エミはまだ銀一とそして「銀ちゃん。俺のエミさんから離れろ!」と
横島まで加わってどたばたしていた。
ほたるとおキヌは美神の視線を追い、あばれている横島を見て呆れた顔をした。
「何しているのですか。横島さん!」
おキヌは暴れている横島を止めに入り、ほたるはそれを見てくすくす笑った。
美神はまたバカ横島があほなことをしていると思い、ほっとくことにした。
そして、4人を楽しそうに見ているほたるに視線を戻して唸るように考えこんだ。
(映画のときもそうだったけど・・・
やはり全然というほど霊力を感じないわこの子・・・・
どう見ても普通の人間・・・。
だから映画のときには気付かなかった・・・・。
エミも言っていたけど・・・。
魔族を支配できるほどの霊力があるとは到底思えない・・・・・
もし、私たちにその霊力を隠せるほどの持ち主なら、
小竜姫様やワルキューレクラスの高位神族もしくは魔族くらい・・・。
まさかね・・・。
あのクラスがそうそう下界に降りてくるわけがない・・・。
でもどうやって支配したのかしら・・・・。
今だって、魔族を連れているはずなのにその気配さえ感じさせない・・・。)
ほたるは美神の視線に気付いて、どうしたんですかと尋ねるようなに首を傾げる仕種をした。
美神はいや別にと視線を横島たちに向けて思った。
(絶対何か変よこの子・・・。)

6人は取り合えず、席に落ち着くことにした。
銀一は乱れた服をただし、ウェイターに美神さんたちの軽い食事を頼んだ。
そして、ワインを美神とエミに注いで乾杯の挨拶をしてから訪ねた。
「美神さん、よくここが判りましたね。」
「偶然にもエミに会ってね・・・。」
美神はワインを飲みながら、目を伏せて答えた。
ほんとうは美神と同じくエミも「ICPO」の美神隊長に呼ばれていた。
そこでエミが今日「織田ほたる」とここで会うことと、
横島たちも呼ばれていることを知り、ついて来たのだった。
銀一はほたるの方を向いて、
「なんだかお互い知り合いのようやけど、簡単に紹介するわ。
 こちらが現在日本でトップクラスのゴーストスイーパー「美神令子」さんと「小笠原エミ」さん。
 エミさんはほたるちゃんの演出コーチをしていたからよく知っているだろうやけど・・・
 美神さんは初めのころに2回ほど会っただけやったね。」 
「ええ。」
ほたるは2人に向かってよろしくお願いしますと軽くお辞儀をした。
「で、今回の依頼をお願いしているのが「織田ほたる」ちゃん。依頼内容は・・・」
銀一はこれまで横島たちに話した内容を簡単に美神たちに説明した。
「というわけで、織田家の当主を保護し、
 その逃げ出した魔族を退治もしくは封印してほしいやけど・・・」
「引き受けて頂けないでしょうか。」
ほたるは真剣な表情をして美神を見た。
美神はそんなほたるをちらっと見ただけで視線をすぐに外し
「嫌よ。」
と即答した。

「美神さん!冷たいじゃないですか。
それはいつも「イケイケ冷血クソ女」とは思っていましたが・・・」
どかっ!
「誰が「イケイケ冷血クソ女」よ!」
ほたるから一番遠い席にされ、いじけていた横島がいきなり立ち上がり
発言したのもつかの間、美神が投げたワインボトルの直撃をくらい、
また静かになった。
「ああ・・・横島さん・・・。」
おキヌは心配そうに横島を見たが、美神へ疑問をぶつけた。
「横島さんじゃないですけど、美神さん冷たすぎます。
どうして駄目なんですか?」
美神は困った顔をして呟いた。
「おキヌちゃんも横島君も知らないのよ。織田家がどういう一族か・・・・。」
「えっ?」
おキヌは美神の言いたい事がよく解らず「どういう事です?」と、聞き返した。
美神は全員の顔を見わたし、最後にほたるを見た。
ほたるは美神が言わんとしていることが解っているのか、
美神をじっと見つめ返していた。
それを確認してから美神は淡々と説明を始めた。
「織田一族はこの業界では有名な呪殺を中心として活動している暗殺一族なのよ・・・
魔族の魔力を使い、相手を呪い殺すの・・・。
わかる?殺人を主にしているのよ。
法的には犯罪者・・・・でも国が暗黙の了解で保護している・・・。
呪殺は物的証拠が無い事をたてまえにしてね・・・・。
もちろんゴーストスイーパー協会は魔族と手を結んでいるということで、
正式な免許は発行しないし、犯罪者として取り締まったりもする・・・。
そう、協会の立場は織田一族は「敵」と見なしているのよ。
だいだい、横島君の友達の雪之丞にしても
過去に魔族と手を結んでいたということで免許が持てないでいるわ・・・。
でも来年には小竜姫様が彼の推薦状を書くらしいから
雪之丞も免許が持てるようになる。あの子の実力ならすぐ合格だしね。
協会も小竜姫様の推薦状があれば文句は無いし・・・・。
これで私が嫌がる理由もわかるでしょ。
エミだってこんな仕事は引き受けないわ。
織田一族とかかわったと判断されただけで、
下手したら免許取り上げになるかもしれないし・・・・。」
美神はそこまで話すとエミを見た。
エミは・・・黙々とワインを飲んでいた。
どうも美神の意見に賛成らしいが、答えたくないようだった。
そこで美神は視線をほたるに戻した。
ほたるは下を向いて「そんなふうに思われていたなんて」と寂しそうに呟いた。
美神は「ふう」と溜め息を吐くとワインを一口飲み、続きを話し始めた。
「あと気に入らないのが、なぜ私なのかということ・・・・
エミはあなたの演出コーチだったんでしょ?
エミなら銀一君を経由しなくても直接依頼をできたでしょうに・・・・」
ほたるはエミをちらっと見て答えた。
「実はもうエミさんには断られているんです。別の仕事があるから駄目だと・・・・」
美神は驚いてエミを見た。
「えっ・・・エミ!そんなこと一言も私に言っていないじゃない。」
「それは聞かれなかったから、言っていないワケ。」
エミは首を縮めた仕種をして、しれっと答えた。
「じゃあなんで今日呼ばれて来たのよ!」
「だって・・・銀一君に「お食事でも」って言われたから・・・」
エミはしなを作って答えた。美神はあきれた顔をして
「何考えているのかしら、この色ボケ紫外線バカ女は。」
「いい男を前にして色気も無い鈍感な不細工女には言われたくないワケ。」
「なんですって!」
そうお互い言うと、険悪な2人の間に危険なスパークが飛び始めた。


第3章終わり
第4章「美神令子(2)」に続く。

すみません完全に説明の章になってしまいました。
やっぱり美神を出すべきではなかったかも。
横島、銀一、おキヌ、ほたるの4人ならこんな複雑な舞台背景は
必要なかったのに。
やっぱり文章を書くって難しいですね。

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