ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫奮闘記 57〜フォトジェニック〜


投稿者名:ぽんた
投稿日時:(05/ 2/ 2)

妙神山来訪の主たる目的の一つを申し出たは良いがアッサリと断られてしまった。
小竜姫が嫌がる以上は横島としても重ねて要請するつもりなど無かったが、せめて竜一に
伝える時に理由ぐらいは教えてやりたかったのでその事だけでも尋ねてみた。

「私は闘う運命に生まれついた武神であり、容色など関係ありません。それにいくら武神とはいえ
私とて女の端くれ、見ず知らずの殿方に私の姿絵が渡るのはあまり気持ちの良いものではありません」

ようするに自分の写真を盗撮されてストーカーが悦に入ってるのを想像するだけで
怖気がするという女性心理に通じる物があるという事だろうか。

「小竜姫は頭が硬いのねー、横島さんが得体の知れない人の頼みで小竜姫の写真を
撮らせて欲しいなんて言う訳が無いのねー」

確かにヒャクメの言う通りで横島とて竜一の小竜姫に対する純粋な憧憬を知らなければ
引き受けたりなどしなかった。幼い頃より憧れて何時の日か小竜姫の眼前に参ずる事を
心の支えにして辛い精進を重ねてきたに違いないのだ。竜一の為にもその事だけは言っておきたかった。

「小竜姫様、確かに見ず知らずではありますが、縁もゆかりも無いという訳じゃないんです」

そう前置きして赤坂家の由来を伝えた。言わば流派が興った原因とも言うべきものが小竜姫の
存在であり神祖として崇められている事。その小竜姫の下で修行をつけてもらう事を目標にして
日々の研鑚を子孫達が積んでいる事。その修行に一層気合を入れる為に憧れの小竜姫の写真を欲した事。
少なくともその憧憬の想いは純粋な物であり何ら邪まな感情は混じっていない事等を一息に告げた。

「何とまあ、あの方の子孫と横島さんが出会っていたとは縁とは不思議な物ですね。
ええ確かに覚えていますよ、開祖になった方もここに修行に来た方の事も」

小竜姫が感心したように首を振りながら呟いていた。中学生組も初耳だったので意外な接点に
驚いている。横島はもう少し修行に来た方の赤坂家の先祖に興味があったので他にも聞いて
みたかった。特に”気魂の刃”について確認したかった。自分の想像に基づいて実演して
見せたが本当にそれで合っていたのかに一抹の不安があったのだ。

「ええ気魂の刃に関する解釈はそれで合っていますよ。ここに来た方は大変小柄な方で
一族の中では一番小さかったそうです。本人は江戸の小天狗などと名乗っていましたが
膂力に劣る分を霊気を練り上げる事で補い自分の奥義にまで昇華させたのでしょうね」

赤坂一族は代々体格的に恵まれており膂力にも優れている者が多かったそうで、霊力の不足を
他で補う闘い方が主流な為、その先祖とは真逆のアプローチになったのであろうというのが
小竜姫の見解だった。名を赤坂小源太というその先祖が言わば一族の異端児であった為、
まるで違う体格の者が口伝を元に技を再現しようとしても上手くいかなかったのも道理だとの事だ。

当時の武門では奥義の流出を防ぐ為、文字で残さずに口伝のみで伝えるのも珍しい話では
無く、奥義を実際に使える者が死に絶え、代を重ねる内に失伝したのだろうとの事だ。

「ですが横島さんが甦らせたお陰でこれ以降はきちんと伝えられて行くでしょう、良い事を
してくれました。そうですか、赤坂流を今に伝える家がちゃんと残っていたんですね」

小竜姫が感慨深げに呟いている。思いを馳せているのは戦国の世に出会った退魔師なのか
かつてこの地を訪れた修行者なのか。

一方シロと不動が横島の方をチラチラ見ながら小声で話し合っている。こちらから水を向けると
気魂の刃を実際に見てみたいらしい。未だ成長期途中で体も出来上がっておらず、また女性の身で
ある為、膂力不足を補う為に編み出された技と聞いて興味が湧いたのだろう。普段なら二つ返事で
引き受けるのだがさすがに今は小竜姫と一戦交えた直後で余裕が無い為、後日修行の時に見せる
という事で勘弁してもらった。二人もあの闘いを直接見ていたのでそれ以上は言わなかった。

「ですがここで修行を受ける為に修行に励むというのが少々気に掛かりますね。
別に間違っているという訳でもありませんが・・・」

確かに本来であれば下界での修行に行き詰まり、限界を超える為に修行者が門を叩くのが
本来の手順であるが赤坂家の場合はその成り立ちからして特殊なので仕方が無いのかもしれない。

「辛気臭いのう小竜姫よ、何をブツクサと言っておるか」

そう言いながら部屋に入って来たのは斉天大聖で、何やら考え込んでいる様子の小竜姫を
訝しそうに見ている。

「ご無沙汰しております老師」
「お久しぶりおじーちゃん、遊びに来ちゃった」
「おお、タマモ嬢ちゃん良う来たの。それで横島よ小竜姫は何を考え込んでおるんじゃ?」

タマモには好々爺の笑顔で答えて、横島には素っ気無く小竜姫の様子を聞いてくる。
仕方無く一連の話を老師相手に繰り返した。

一方初めて斉天大聖を見る面々は一見年老いた猿にしか見えない相手が誰なのか気になっていた。

(タイガー殿、あの御仁は何者でござろうか?)
(ワッシも初めて見る顔なんジャー)

(でもあのお猿さんの事、先生が”老師”って呼んでましたよね?)
(小竜姫様の事も呼び捨てにしとったケン、多分二人の師匠なんジャー)

そんな三人の様子をよそに斉天大聖が小竜姫に話し掛ける。

「頭が硬いのう小竜姫よ、姿絵ぐらい良いではないか?」
「老師! お戯れは困ります、私は任務によっては人界に降りる事もあるのです。
私の姿が知れ渡るのは望ましい事ではありません」

その可能性まで考えていなかった横島は少々反省した。別にポスターに印刷して
配布したりする訳ではないが知られないにこした事はない。

「ふうむ、それも一理あるか・・・じゃがのう・・・」

何やらブツブツ言いながら考え込んでいる斉天大聖から遠ざかるように小竜姫が移動している。
何か嫌な予感でもしているのだろうか。横島はといえば両師匠の口論に入れるはずもなく成り行きを
黙って見守るしかない。やがて考えがまとまったのかポンと一つ手をうった。

「うむ、小竜姫よ一枚だけ姿絵を撮らせてやれ、勿論条件付きじゃがな」

抗議しようとした小竜姫が条件の件で取り敢えず続きを聞こうという姿勢になる。
横島も気になったのでおとなしく聞いていると、条件とは一枚だけ写真として出来上がった
物を赤坂家に渡す事にしてそれ以外は破棄する事。そして渡す物に対しては細工をする事。

「普通の状態では見えないようにしておこう、極限まで心気を研ぎ澄ました状態で初めて
姿が明瞭に見えるようにワシが呪を掛けておく。邪念を持つ者では近寄る事すら出来まいよ」
「老師がそこまでして下さるのなら・・・私にとって遠い弟子に当る方の家でもありますし」

更に小竜姫の姿絵に竜気を宿らせその上に斉天大聖の神気を重ねる事によって一種の神体と成し
そこに信仰の想いが加われば道場周辺が擬似的な神域となり、かなり先の話ではあるが下界で活動する
際の拠点にも成り得るとの事で、斉天大聖がそこまで心を砕いてくれるのであれば小竜姫としても
無碍には出来ない。消極的賛成ではあるが了承していた、横島としてはありがたいが疑問に思う事もある。

「でも老師、そんな都合の良い呪なんてあるんですか?」

見る者の条件を限定し、且つ邪念を持つ者を遠ざけるなど聞いた事も無い。少なくとも横島には無理だ。

「馬鹿者が! ワシを誰じゃと思うておる? ”天に斉しい”とまで呼ばれたワシの力を
持ってすれば簡単な事じゃ」
「”天に斉しい”とはご自分で名乗られたのでは?」

「何か言うたか小竜姫?」
「いえ・・・」

師弟間の幕間劇は置いといて、斉天大聖の説明によれば結界術の応用らしく、人払いの結界に
条件付けを施し更に強化した物らしい。他にも色々と聞かされたが術式が複雑過ぎて到底
真似できそうに無い。術に関しては極めたつもりでいたが、そこからの応用と独自のアレンジに
関しては未だ師匠には一歩及ばないらしい。そして呪を破るには術者を上回る力が無い限り
不可能である以上、人界でこの呪が破られる事はありえない。

そういう事情で写真撮影をする事になったのだが、小竜姫が困ったような表情で立ち尽くしている。
何かを言い難そうにしている様子なので気になって確かめてみた。

「私は町娘のように身繕いに長けておりません、どのような格好をすれば良いのですか?」

横島としては呆気に取られる思いだった。小竜姫に今更身繕いなど必要無い、その立ち姿は宛ら一個の
芸術品だ。だが最も美しい状態はやはり本質を顕にした時だろう。横島はカメラを用意しながら話し掛けた。

「今更繕わなくても小竜姫様は本質そのものが美しいから大丈夫ですよ。
だから一番その美しさが映えるのは闘いの時の”顔”ですかね」

横島の言葉の中には嘘もお世辞も無い、思う処を淡々と述べているだけだ。
当然それは相手にも伝わるし、それを不快に思う者などいない。

「あら、ありがとうございます。そういう褒められ方は初めてですが意外と嬉しいものですね」

ニコリと、本当に自然にこぼれたような笑顔になる。

「あ・・・」

思わずその笑顔に見惚れながらも、ついシャッターをきってしまう。

「横島さん?」
「あっ、す・すんません、つい見惚れちゃって」

小竜姫の不思議そうな問い掛けに、狼狽しながらもつい本音を零してしまう。
それを聞いて呆れたような表情をしながらも、不快ではないのか辛うじて平静を装っている。

「闘う姿でしたね? どのような格好が宜しいのですか?」
「あっ、じゃあ神剣を構えた姿で」

横島の要望に従い抜き放った神剣を八双に構えてこちらを真剣に見詰めてくる。
ファインダー越しにも小竜姫の気迫が伝わって来、闘気が肌を震わせる。
息を止めながらシャッターをきりカメラを下ろすと小竜姫も構えを解く。
今迄感じていた圧迫感が急に無くなりホッと息をつく。

「ヨコシマ、自分のカメラも持って来たんでしょ? 撮ってあげるから向こうに行けば?」

横島は竜一から預かったカメラの他に自分のカメラも持って来ていた。機会があれば自分も
写真を撮っておきたいと思っていたのだ。タマモに言った覚えは無かったのだが何時の間に
バレたのだろうか。特に隠そうとしていた訳ではないが。

「パピリオもあっちに行って、小竜姫さんとおじーちゃんも良いでしょ?」

タマモの指示で四人が一箇所に集められる。横島はタマモの予想外の気遣いが嬉しかった。
他の三人も敢えてタマモに逆らおうとはせずにおとなしくフレームに収まった。
横島にとって自分達がどういう存在なのかぐらいこの三人は知り尽くしている。
横島にとってのもう一つの家族の写真が撮られたが、斉天大聖はそこで終わらなかった。

「タマモ嬢ちゃんも入るが良い、ヒャクメ! 気のきかん奴じゃ、早う交代せんか!」
「はっ、はいー!」

斉天大聖の言いつけでヒャクメがカメラマンになりタマモも加えて新たに写真が撮られた。
シロと不動が羨ましそうに見ているが敢えて自分も、とは言い出せない。
斉天大聖の正体が解らない為、近寄り難いのかも知れない。

横島にとっての宝物ともいうべき画像がカメラに収まっている。
それとは別に棚ボタ的にではあるが、他のお宝画像も手に入って言う事無しだ。

「横島さん、赤坂家に渡すのは姿絵の状態で一枚だけ、老師の呪を掛けた後ですからね。
くれぐれも間違えないように、またそれ以外は破棄して下さい、最初の一枚もですよ?」

「も・もちろんですよ、お任せ下さい」
「ん〜ふふふ〜、横島さ〜ん嘘は良くないのねー」

小竜姫の念押しに横島が辛うじて平静を装い答えている時に背中からヒャクメが
しなだれかかって来て余計な事を言ってくれた。

「な・な・な・何を言ってんだよヒャクメ? 言い掛かりはやめろよ」
「それで通用するとは思ってないはずなのねー、悪足掻きはやめた方が良いのねー」

口車で誤魔化すには最悪の相手だった。しかも密着されている為、背中に感じる
ヒャクメの胸の感触に意識の大半を持って行かれており、冷静さのかけらも無かった。

「横島さん? ヒャクメが言っているのはどういう意味です?」
「あう、あう、あう・・・」

真顔で詰め寄って来る小竜姫に対し、動揺しきっている横島はまともに対処できない。

「2・3日後には特大に引き延ばされた小竜姫の笑顔の写真が横島さんの部屋の壁を飾っているはずなのねー」

実にアッサリとヒャクメが秘密の目論見を暴露してくれたので気まずい事この上無い。

「・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・」
「いや、あの、心の支えにしようかと思って・・・」

小竜姫の無言の圧力に負けて心情を吐露する横島に対し、呆れたような声が掛けられる。

「それならそうと早く言って下さい、私が怒るとでも思ったんですか?」

実を言えばその通りなのだが、ヒャクメとて小竜姫が本気で怒るような内容ならバラしたりなどしない。
これだけ慕っているくせに未だに遠慮の残る横島に対し相手の真の懐の深さを教えたかっただけだ。

「まったくもう・・・早く一人前になって下さいね?」
「・・・はい」

バツの悪い限りではあるが許しをもらえた以上は下山したらすぐにでもプリントに出す
つもりだった。そんな横島の表情の変化を見ながらヒャクメが楽しそうに笑っていた。

「ところで今日は見慣れん顔が多いの、そのデカイのはタイガーじゃな、ピートから
聞いておる。そっちの嬢ちゃん二人は横島の縁者か?」
「あっ、はい未熟ながら俺も弟子を持つ身となりましたので師匠方に紹介しようと思い連れて来ました」

そう断って弟子二人を呼び寄せた。

「二人共挨拶して、こちらは妙神山の主で小竜姫様と俺の師匠でもある斉天大聖老師だ」

「初めまして! 拙者横島先生の一番弟子、犬塚シロでござる!」
「僕は横島先生の二番弟子、不動明音です!」

二人が胸を張り元気良く挨拶してくるのを目を細めながら聞き終わった後で、何やら
しみじみと斉天大聖が話し掛けて来た。

「お主が弟子をのう・・まあ良かろう、教える身になって初めて見えて来る事もある。
小竜姫もお主という弟子を持って以来目覚しい成長を遂げたからのう」
「老師、そのお話は・・・」

小竜姫が言い難そうに制止しているが斉天大聖は頓着しない、それによると横島という
弟子を持って以来、小竜姫は型に嵌った闘い方を自ら戒め、貪欲なまでに勝ちに執着する
泥臭い闘い方を自ら望んで斉天大聖より伝授されたがったという。横島が実戦の場で不覚を
取らずに済むよう、あらゆる角度から闘いを突き詰め”負けない闘い方”を進んで身につけた。
自分一人の事であれば不覚を取れば死ぬだけの事、だが弟子の命が掛かっているならば好悪の念は
捨て置いて、生き残る方法を身につけ弟子に伝える為に全力を注いだそうだ。

「別にそういう訳では・・・私は唯自分の未熟を恥じ、高みを目指しただけです」

横島は感動のあまり声も無い。小竜姫の闘いのスタイルが変わった事には無論気付いていたが
きっかけが横島の為だなどとは思いもしなかった。自身も弟子の為に少しでも自らの高みを目指し
できるだけ多くのものを伝えようと決意を新たにする。

「それよりも老師、ご報告したい事があります、魔界の現状についてですが」

小竜姫が強引に話題を変えるが重要な問題でもある。横島の行動が原因で起こった一連の
騒動、それを治めケルベロスを助ける為にワルキューレと交わした取引の事等を報告する。

「まったくお主という奴は、騒動の星の下に生まれついたような男じゃのう」

斉天大聖がほとほと呆れたような口調で言ってくるが横島とて好きで騒動を起こしている訳ではない。
その時に最善と思える事をした結果、それが悉く最悪の事態を引き起こしているだけだ。
言ってて悲しくなってくるような話だが。

「仕方が無いのう、直接の助力は出来んが間接的なら問題無かろう。ヒャクメ、情報面での
サポートをせい。小竜姫よ、竜神の装具を貸してやれ。小僧、何人でやるつもりじゃ?」

斉天大聖がテキパキと指示をしながら横島に問い掛けて来る。

「危険過ぎる相手だと思いますんで最悪一人でやる可能性もありますが、幸い俺には
危険な相手程燃えるっていう物好きな相棒がいますから、最低でも二人だと思います」

横島が同僚のバトルジャンキーの事を思い浮かべながら答えると斉天大聖が難しそうな顔をしていた。

「雪之丞か・・・厳しいのう、話を聞けば少なくとも中級以上の魔族、おそらくは上級じゃろう
せめてもう一人、同程度の手練れがおらんと生き残るのも難しいじゃろうな」
「それでしたら私に一人心当たりがあります」

小竜姫の言う心当たりなら横島にも想像がつく、だが今回は金が足りないので頼みようが無い。
こんな事になると解っていれば、ナルニアの件での報酬10億を残しておけば自腹で依頼出来たのだが
無い袖は振れない以上はどうしようもない。その旨を伝えると意外な返事が返って来た。

「誰の事を言っているのです? 私の心当たりは唐巣さんですよ?」
「ええっ!? 唐巣神父ですか?」

自分や雪之丞に近い戦闘力を持っている者という条件なので、てっきり美神令子の名前が
出て来るものと思っていた為つい大袈裟に驚いてしまったが、確かに唐巣も超一流だ。

「ふむ、別に前衛戦闘型でなくても構わんぞ、というより後方支援型の方が良いかもしれん」
「あーそれならもう一人だけ適任がいるのねー」

斉天大聖の挙げた条件に対し、ヒャクメが更に候補者がいる事を示す。
後方支援型という事は今度も美神ではないだろう。エミの事だろうか?

「違うのねー、普段から貴方の近くにいる女性なのねー」
「まさか・・・所長か? 冥子さんの事か?」

魔族との対決という事柄のイメージから懸け離れ過ぎている為、思いつきもしなかったが言われてみれば、
これ以上無い程の最適の人材のような気がしてきた。確かに基本の霊力で言えばあの美神令子をも上回り、
攻撃、防御、治癒、と多彩な能力を使いこなす。実力だけなら申し分無いが性格が優し過ぎる、魔族との
闘いとなれば凄惨になる可能性もある為、あの優しい女性を巻き込むのには二の足を踏んでしまう。

「もう一人可能性のある奴もおるが、あ奴では間に合わんかもしれんしのう」
「だったら普段から組んでる三人の方が良いのねー、私は六道冥子さんを推すのねー」
「私は純粋な戦闘力の面から唐巣神父を推しますね」

三者三様の意見を聞きながら、横島の考えは定まらない。斉天大聖の言うもう一人とはおそらく
ピートの事だろうが、現時点では駄目なのだろうし間に合うにしてもぶっつけ本番のようなタイミング
では心許無さ過ぎる。冥子であれば確かに雪之丞とも合わせてのコンビネーションも取り易いし、
恐らく最良の組み合わせだろうとは思う。神族調査官たるヒャクメが推すのであれば尚更だ。
だがヒャクメの分析はあくまで能力のみを考慮したもので性格までは入っていないはずだ。
唐巣に到っては普段大した付き合いも無いのに、極め付きの面倒事が起きた時だけ
こちらから一方的に頼るというのも何となく気が引ける。

「まあ今すぐ結論を急ぐ必要も無いじゃろう、雪之丞に事情を話してあ奴が協力を約束してくれる
ようなら、二人で決めるのも良いじゃろう。ただし、くれぐれも二人だけでやろうとするでないぞ」

結局その発言により、この問題は一時棚上げになった。横島も頭をひとつ振り、気分を
切り替えようとしている時に斉天大聖の事も無げな言葉が耳に飛び込んで来た。

「あー、それからもうすぐここに石頭の若僧がやって来るからの、
お主がもう一遍叩きのめして頭を柔らかくしてやれ、任せたぞ?」




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(あとがき)
今回の妙神山訪問を書き終えるまでにいったい何話かかるのか不安になってきました。
次話では派手なバトルシーンは無いと思います、疲れてる横島は省エネで・・・

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