ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い4


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 2/ 2)

「食事のお誘いか・・・」手紙を読み終えた横島は考え込む。
まさに渡りに船とはこのこと。食糧事情が逼迫している現在、たんぱく質の確保は最優先事項の一つだった。
「さてと、これはどうしようか・・・・」
これ呼ばわりされているのは、無論、文珠によって幻覚を見せられている西条。第三者が見たら、仕事のストレスで薬に手を出した公務員と勘違いするかもしれない。

(とりあえず西条は置いとこう。まずはゴモリーとの食事だ)
西条に関しては、薄情な男だった。

「よし、食事の誘いをOKするとして、まずはこっちに来れるか伝えてくれ」
横島の言葉に、カラスは確かに頷き、飛び去って行った。しばらくして、カラスが戻って来たが、それと同時に事務所内の空間が歪み、彼女が歪から姿を現した。
「久しいな。横島」そう言って懐かし気に声を掛ける。
「といっても、そんなに時間空いてないけどな」
「横島さん、その方は何者です。人間とは思えませんが・・・・」
声の主は人口幽霊一号、声には驚愕している雰囲気がある。
「彼女はゴモリー、魔神だけど敵じゃない。ちょっとした知り合いってとこだ」
「ちなみに、人界では砂川志保と名乗っているが」
流石に、人界を魔神が堂々とうろつくのはまずいらしい。偽名を使うのも、大きな揉め事を起こさないための一つの手段だった。
「一気に来れるんなら、来ればいいじゃねえか」
「いきなり、押しかけて騒ぎを起こしたくなかったのでな。しかし、お主しか居ないのをこいつが教えてくれた」
ゴモリー、ちなみに、彼女は角や翼を消し、魔力を人間レベルに抑え、黒いスーツに身を包んでいる。加えて、左肩にカラスを止まらせる格好が妙に様になっている。

沈黙している人口幽霊一号は・・・
(確かに敵意は無さそうですね)
横島ならば、魔神どころか地底人とでも友達になれそうな気がする。

「ところで、あれは何だ?」ゴモリーの視線の先には、未だにアッチの世界に旅立ったままの西条が居る。
「ああ、あれは俺の忌まわしい宿敵。西条っていう気障な公務員だ。ふざけたことを抜かしたので制裁を加えた」横島が、事も無げに淡々と言う。雇い主の影響をかなり受けている。

「ふむ。一見強そうに見えるが、自分の価値観が崩れると脆そうなタイプに見える。普通の個性の女にはもてるが、それ以上の相手には見向きもされないのでは無いか?」冷静に、的確に西条の分析を出して見せた。
「大体、当たってそうだな。その分析」横島も頷く。
「これでも、伊達に長生きしていない。この男、今まで挫折を知らなかったのでは無いか」敗北を知らない人間というものは、案外脆い。西条を精巧なガラス細工とするならば、横島は粘土細工だろう。前者は簡単に砕けるが、後者はすぐに元通りになる。


「挫折を知らないという意味では、美神さんもそうかもな」どこか、横島は他人事のような口調で呟いた。その響きには、嘲る様な響きさえあった。
「で、どこの店にする。安くて、美味い店知ってるんだけどな」
だが、それも一瞬の事。彼の口調は再び、いつも通りになった。

(先程のこいつの口調は何だ? まるで、冷たい霧を吐き出すかのような・・・)
魔神であるゴモリーですら、薄ら寒いものを感じるものであり、遥か昔に同じ感覚を味わった記憶が有ったが、それがいつのことか思い出せない。

(気のせいだろう・・・)
無理やり思考を切り替え
「その店にしよう。人界の料理は興味深いものばかりだ」横島の誘いに応じることにした。
「ああ、現代の魔女と言われてる人の店なんだよ。そこなら、俺の財政でも大丈夫だし」
「足りなくなったら、私が出すのだが・・・」
「そうしてくれると有り難い」
そう言う横島の声には、先程の冷たさは無い。 
  気のせいだと思いたいのだが・・・・・
(美神除霊事務所の連中は、気付いていないのだろうか・・・それとも近すぎて見えていないのか)

どのような人間、いや神や魔でさえも、光と闇がある。
横島とて例外では無い。しかし、誰一人として彼の『光』しか見ていないのではないか。彼と付き合いの浅いゴモリーだからこそ、横島の『闇』に気付いたのかも知れない。

実は横島と彼女には浅からぬ縁があるのだが・・・・当人達は知る由も無い。


ちなみに、人口幽霊一号にはゴモリーの記録は口止めをしておいた。事務所の面々は女の魔神と聞いて、妙な勘違いをしそうなキャラばかりだからだ。(特にシロとか)



彼らは、魔鈴料理店に向かっていた。

麻薬患者モドキ、いや西条を置いて・・・・

「令子ちゃん。イギリスでの彼女達は決して・・・・神通鞭は止めて・・・グフッ」

ちなみに、西条は三日間、寝込んだ後は女性関係の清算に奔走したという。


所変わって、魔鈴の店。

「ふむ、これは美味い。材料も店主の腕も一流だ」
ゴモリーは、魔鈴の料理をいたく気に入ったらしい。

「その上、安い。俺のような貧乏人にとっては救いの女神だな」
美神と魔鈴の仲がアメリカとソヴィエト並なので、頻繁には来れないのだが。

「ありがとうございます。最近では唐巣神父も来てくれたんですよ」
神父は、料理と神と魔鈴に祈りを捧げ、涙したという。近所の人々に作ったクッキーを手渡した時には、一緒に居たピートまでも、一緒に泣いたらしい。

「わかるなあ。その気持ち・・」彼らと同じく、貧乏がお友達の横島としては他人事ではない。

「はい、横島さんにも」
そう言って、彼女はクッキーを手渡した。ほんのりと彼女の頬が赤いのは気のせいだろう。
「でも、この代金は・・・」
「試作品ですから、気にしないで」
魔鈴の変化にも全く気づく様子は無い。

(ああ、魔鈴さんの優しさの十分の一でも美神さんにあったら・・・)
本人が聞いたら、最終地獄に落とされそうなことを考えていた。

同じ頃、フランス

「ん?」
「どうしたんですか。美神さん」
「いや、ちょっと無性に横島君を殴りたくなって・・・」
作者的に彼女達は、話の大筋に関わってこないので割愛する。


  舞台は戻って、魔鈴の店


ホンワカした空気が流れる中・・・・・それをぶち壊しにする人物が・・・・

「わーはははは、ヨーロッパの魔王。ドクター・カオス参・・「ビキィ」・・・「ザス」・・・」

何が起こったかというと・・・・
「雰囲気、ぶち壊しにしやがって。黒コートの怪人め」
「人の店先で騒ぐな。馬鹿者」
横島の『縛』の文珠が炸裂、続いてゴモリーの投げたバターナイフが、カオスの額に見事に突き刺さった。

「すまん、店の道具を汚してしまった」謝る点がどこかずれているゴモリー。

「ゴフッ・・・見事」
仰々しい仕草でブッ倒れるカオス。ちなみにカオスの従者である自動人形マリアは、二人の見事なコンビネーションと早業にただ当惑するばかりであった。

これでも、彼はクロウリーやパラケルススを超える錬金術師のはず・・・である。



   『忘れ去られた者達』

戦いの鐘は、静かに鳴り響いていた。

   ー某所ー

「ようやく、復活できたか。これからどうするよ?」
「聞くまでも無い。復讐してやるのさ。横島とかいう小僧にだ。この私をあんな目に奴に・・・」
「成る程、だが、ただ殺すんじゃ面白くない。奴の身の回りの奴を血祭りに・・・特に女は俺が殺すぜ」
「好きにするがいいさ。じゃあ後ほどにな、ベルゼブル」
「ああ、デミアン」
そう言って、蝿と少年は姿を消した。


彼らは、知る由も無い。自分達が、あっさりと舞台から退場させられることを・・・結局の所、彼らは三文役者に過ぎないのだ。


後書き

第四話送ります。実は昨日これも送ろうと思ってましたが、容量の関係で出来ず今日送る形に・・・・冒頭:西条を絡めたギャグと横島の『闇』 中盤:魔鈴の店でのほのぼのとカオスの登場  終盤:新たな戦いの予感、という感じになりました。五話まで、プロットは出来てるんですが・・・・バトルあります。 それと横島の『冷たい霧』という表現はあるゲームからの引用です。(わかる人いるかな)
これからの恋愛路線としては、西条×美神、お互い無自覚ですがゴモリー×横島(←魔鈴)といった形で動いていくと思います。
しかし、妹から五話と六話の組み立てでボツを貰っています。

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