ザ・グレート・展開予測ショー

GS新時代 【鉄】 其の四 6


投稿者名:ヤタ烏
投稿日時:(05/ 1/28)


「やあ、お久しぶり・・・・・そしてさようなら」
微笑みを湛えて白蛇は言葉を発する。



ゆらり



軽やかに白蛇の手が宙をなぞる様に動く・・・白いナニカが闇を奔った。



ドシュ!


「うあぁあああ!」

汰壱の左肩に激痛が奔る、いつの間にか汰壱の肩には小型のナイフが刺さっていた。

見えなかった、相手が来てから一瞬たりとも眼を離していない、常に凝視していたにもかかわらず
避ける事は愚か、飛んでくるナイフにすら気付くことができなかった。

刺さったナイフはかなり深く肩に食い込んでいる。
開始早々かなりのハンデを背負ってしまった。

「おっさん!」
叫び、留美が駆け寄ろうするが
「来るな!逃げろ」
「でも・・・」
素人目から見ても明らかに相手の実力が上なのは見て取れた。
「でももヘチマもねえ、ささっと逃げろ」
そう言いながらシロとタマモが封印されている球を留美に投げてよこす。
慌てて受け取り、今にも泣きそうな留美の顔を見て汰壱は無理やりに引きつった笑みを浮かべる。

「なーに心配すんな・・・もう少ししたらよ、それが割れて中からスッゲー強い人たちが嬢ちゃんを助けてくれる・・・
だからそれまれで俺が時間を稼ぐしさ・・・・それに嬢ちゃんがいると戦い辛いんだわ・・・たのむわ」

脂汗を額に浮かべ、無理やり笑みを浮かべる。
恐怖と痛みで頭が凍り付きそうになるが、それでも今やらなきゃならない事ぐらいは判っている。
「・・・・うん」
小さくうなずくと、両手に渡された紫色の封印玉を手に留美はもと来た道を走り始めた。


「逃がさないよ、お嬢さん」
再び白蛇の細い指がゆらりとと手が宙をなぞる

「させるかぁああああ!」
任侠道を抜刀して刃を発射

「ふん」

キィイン
迫る刃をつまらなさそうに、手にしたナイフで弾く

弾かれた刃はそのまま地面突き刺さる。

後を追いかけようとする白蛇の前に汰壱が立ち塞がる
「いかせねぇってんだろがロリコン野朗!」
「やれやれ、君は本当に無粋だな・・・・・・・・・殺すか」

金色の眼が見開かれる。
「うっ!」
白蛇の身体から式神が発する殺気とは比べ物にならない、絞め殺されんばかりの形容しがたい圧迫感が汰壱を襲う
息が止まりそうになる。

眼を開けているのに、視界が暗くなり始める。

自我が根こそぎ持っていかれそうになる。

・・・・ヤバイ飲み込まれる!

いきなり汰壱は自分の肩のナイフを力任せに強引に引き抜いた
グシュゥ

「!!ぐぅううう」
血が噴出すのを手で押さえる、身体が一気に冷たくなるような感覚・・・・・・
腕の肉を強引に引きずり回されるような、激痛に思わず声が零れる。
しかしその激痛のおかげで、気に飲まれる何とか防ぐことができた。
身体に無理やりショックを与えて、一時的に相手からの殺気に対抗して意識をつなぎとめる。

やばかった

ぜーぜーと荒く息をつきながら汰壱は素直にそう思った。
あと少し遅ければ自分は我を失っていた、下手すれば発狂するかもしれない程のプレッシャーだった
歯を食いしばり身体の芯から来ると震え恐怖を水際で食い止める。

獅子猿の時のように自分は文珠は持っていない、もっし相手の気に飲み込まれパニックを起こせば
その途端に自分はこの世と今生の別れをしなければない、今自分は本当の意味で全て自分力で生き延びなければならない。

対峙して構えてはじめてわかる相手の恐ろしさに息が詰まる・¥。

「さてさてさてさてさてさて、次は何処がいい?足か?手か?指か?耳か?鼻か?眼か?もう一度肩を刺そうか?それとも深く深く
貴様の腹に刺して思う存分内蔵を捏ね繰りまわしてやろうか?それとも生かさず殺さずの狭間で頭蓋を切り開き
貴様のたいして皺の無いスベスベの脳漿をゆっくり切り開いていこうか?楽しいだろうな・心地よいだろうな・この私に逆らう
愚かなガキを縊り殺すのは・・・・・さあどこがいい?どこから弄んでほしい。」





笑っているのか、怒っているのか、それとも情欲をいだいているのか、おおよそ人間の顔とはかけ離れた凄まじい顔を浮かべた。

殺気が更に増す、どす黒くヘドロが絡みつくような醜悪な殺気。

(落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け)

必死にその言葉繰り返す。

止まらない冷や汗

上がり続ける動悸

息が自然と上がる

身体が熱を持って熱いはずなのに、何処までも冷たく感じる。

(戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え戦え)

必死になって言葉を繰り返して己を鼓舞する。
ヘタリ込みそうになる足に活を入れる。

こんなところでへたり込むために今日まで鍛えてきたんじゃない、思い出せ恐怖に捕らわれるな・・・
成長したはずだ・・・あの時俺は命がけで生き延びた、最も困難な状況こそが人を成長させる。
怯えてる場合か、震えている場合か、ビビッている場合か、これはチャンスだ・・・
目の前にいるこいつは確かに強い・・・・途方もなく強い、だが・生き残れれば・・・・強くなる。
思い出せ・・・・・俺は【最強のGS】になるんだ。


恐怖が消えたわけではない、自分が強くなったわけでもない、いまだに相手が恐ろしいと思うし、自分は弱いままだ。
だがどれほど多く恐怖や絶望の中であっても、この心の中にいる何かが折れる事を断固として拒否する。

眼に光が宿る。


息を深く吸う

深く吐く

繰り返す。

呼吸法を繰り返す。


ここでいくら【真呼吸】をしようが霊力が出るわけでもないし、身体能力が強化がされる訳でもない・・・・
いくら繰り返した所で肩からの出血が止まるわけでもない。

「コオオオオオオオ」

繰り返す、繰り返す、繰り返す、繰り返す

愚直に、ただ愚直に

腰を深く落とし、下っ腹に力を入れる。
チャクラは廻らず、氣は出ない。

それでも眼には光が燈る。


「いくぞ」
「やれやれ、身の程知らずが・・・」

両者が地面を蹴る、有りっ丈の速さで汰壱が直進する、白蛇が邪魔臭そうに構える。
「死ね」
軽やかに流れる手
繰り出されるナイフの斬激と刺突の嵐、不可視の嵐




「ぐぅううううう」
切り刻まれる身体が血を噴出し、身体を赤黒く染め上げる。
それでも前に進む、距離を詰める。
それを寸断するかのように白蛇の前蹴りが汰壱の腹に直撃、鉄製の爪先が食い込み内臓が悲鳴を上げる。

「ゲッハっ!」
こみ上げてくるものを飲み込み耐える
痛みに耐えながら
悠長に腹に突き刺したままの足を両手でホールド、動きを封じ相手の対角線に沿うように上段蹴りを放つ、

ドッゴオ

が蹴りが到達するより速く白蛇の拳が汰壱の顔面に食い込む、口の中に鉄の味が広がる。
更に仰け反ったところに容赦の無い連撃が打ち込まれる。

鋭い一撃一撃が腹を足を顔面を殴打してゆく

(強えええ)

反撃する暇が無い、否反撃しようとしても全てが打たれる前に打たれて一方的な攻撃を加えられる。
足掻けば足掻くほどダメージが蓄積されていく。
痛打の嵐に思わず間合いを取ろうと退がるが、あっと言う間に間合いを詰められ悶絶もんのボディーブローが腹を抉った。


「うぐぉっ・・・・・・げぇえ」
堪らず膝を付くそれと同時に胃の内容物が逆流する。

愉悦の笑みを浮かべながら白蛇は喋る。

「おおかた接近戦ならば勝機があるとでも踏んでいるのだろうが、それは大きな大きな間違いだよ
確かに私の専門は式神と結界術にある。だがね君は大きな勘違いをしている。自分で言うのもなんだが
私ほどの一流の者ともなれば当然接近・格闘戦は想定している。わざわざ自分の弱点なんざ残していると思うかい?
まっさすがに本職と比べれば遅れをとるが、それでも君程度の使い手ならば造作も無いことさ」

「・・・くぅっ・・そが」

「さらに君は私をGSと思っているだろう?違うね私の本業は【殺し屋】それも素手での殺しが好きでねぇ
こうやって相手を嬲って殺すのが好きなのさ・・・・こうやってな!!」

言い終わるや否や
下から上に汰壱の頭をサッカーボールか何かのように蹴り抜く
目の前で火花が散る
後方に吹き飛ばされレンガの壁叩きつけられる、体中の骨が不協和音を奏で始めた。

「ぐふぅあぁ」
(まだ・・・まだ・・こんな所で死・・ねるかよ)
膝を手に付き近く壁を背にに立ち上がる。どうやら肋骨が折れたらしい、呼吸をしようとする度に身体の彼方此方が悲鳴を上げる、
それでもまだ戦う意思は萎えていない。
(時間を稼ぐんだ!あと少しあと少しで・・・・それまで食い止めるんだ)
蜘蛛の糸よりつたない希望が汰壱に立ち上がらせることを選択させた。

「ほうなかなかタフだな・・・まだ戦うか」
「たり・・めーだこぉ・・の程度でくたぁ・・ばるか」

口の端を歪めて笑う。
口の中の物を吐き出すカラカラと転がり落ちたのは自分の歯の欠片だった。


「せいっ!」
気合一声、基本の構えいつもと同じ何万回も繰り返してきた、構え。
痛む身体に鞭打って再度の攻撃&突撃
相手に的を絞らせないように、素早いフットワークを駆使し四方八方に動きを散らし縦横無尽に駆け回る





「しつこい男は嫌われるよ」
軽やかに揺れる手
瞬速のナイフの投射

シュカカカカカカ!!

「ふんが!」

白蛇の攻撃モーションを先読みして、来るであろう軌道上にロナルドの残骸を蹴り上げる。
全ては防ぎきれず二・三本のナイフが掠めていく、新たに刻まれる傷には目もくれず自分の目の前にあるロナルドの残骸を
白蛇目掛けて蹴り飛ばした。

上に跳ぶ白蛇、予想道理の行動に距離を詰めながら汰壱も投擲!先程の残骸達の武器を投げ付けまくる。
「ちい鬱陶しい」
舌打ちし全てを払いのける
だが白蛇着地するまでには汰壱は十分な自分の攻撃射程範囲に白蛇を捕らえていた。
攻撃モーションに入る汰壱・・・・

(カウンター・回避は不可能だが防御には十分すぎるな)

瞬時に白蛇はガードを固めた。
だがそれは甘い考えだった


ズガン!!

炸裂弾の様な音が響く
壱の打突で白蛇のガードを抉じ開けた。何千何万回と繰り返したその連突きは初見での反応を許さない
最も基本道理に忠実に繰り返す、真直ぐな弐の中段突きが・・・・・

「ぜいっ!」

ドゴッゴオ!
白蛇の人体急所の正中線に炸裂した。
【真呼吸】なしでも汰壱の素拳はコンクリート程度ならば粉砕できる破壊力がある。
まともに入ればただではすまない。

今ので仕留められなくても、最悪ダメージは与えたはず・・・・・
























「・・・・ざんねん今のは惜しかったよ」

揺らめく手は回避する暇すら与えられず
十重二十重の凶刃が奔った

鮮血が舞う。地面に崩れ落ちる身体・・・・・・

グッ


踏みとどまる

(ま・・だ・・・まだ)
しぶとく・しぶとく足掻く、すでに全身は切り刻まれ出血が酷く、自分着ていた服は血塗れになっている。
相手がわざと致命傷を避けているのか、自分が寸でのところで避けているのかすら解らない。

膝が笑うのを押さえる事も出来ずに、ただ踏みとどまる事しか出来ない。

白蛇の顔が僅かにゆがむ
先程の愉悦の表情でなく、明らかな怒りの表情・・・・・
どうにかしてこいつの絶望させることはできないか?
既に白蛇の思考はそれになっていた。大抵のものはこれほど痛みつければ心が折れ戦う気力を失い、命乞いをする
それを更に弄り痛めつけて殺すのが何よりの楽しみだ。
どうするべきか・・・・・・・どうやって・・・・こいつの希望を砕き、絶望をあたえる?

そうだ

美しい顔が再度愉悦に歪む

「そうだ、良いことを教えよう、がんばる君に良いことを教えよう・・・君は救援を待っているのだろう?
隠さなくてもいい、私には既に解っている・・・あの二人のお嬢さんが封印が解けるまで粘るつもりだね
だがね、それは無駄だ全く無駄だよくっくくく、この空間にいる限りね、あれは解けないんだよ」

「・・・・・・」


「この結界にいる者全ては霊力を奪われる、人間妖怪に関係なく・・・・確かにあの封印玉が通常の空間あるのならば
後二分もあれば自力で封印を解除しただろう・・・だがね、ここじゃあの二人のお嬢さんも我々と同じく力は封じられる
あの状態じゃいくら足掻いた所で私の封印は破れない。くっくくっくくくく・・・・・・
・・・・・・・・・・つまりね・・・いくら君が頑張った時間稼ぎをしたところで救援なんざ来やしないのさ
ヒャハハハハッハハハハハッハッハッハハハハハハハハハハハ」


ザマアミロ・・・まさにそんな言葉道理の顔をした狂人がそこにいた。

「・・・・・・・・・しってるさ」
覚束ない足で立つのがやっと、といった表情の汰壱が静かに呟いた、頼りない足取りでゆっくりゆっくりと移動する

「何?」

「知ってる言ったのさ・・・ロリコン野朗・・・んな事・最初からしってたさ・・・封印が解けないのも・・
救援がいくら待ってもこない・・のもな・・・」

足を引きずりゆっくりゆっくりと移動していく流れ落ちる血が何処までも続いて血の道になる。

「こいつはお笑いだ、では何か?君は端っから全て無駄と判って私と戦ったのか?全くもって度し難い馬鹿だな」

「馬鹿か・・・確かに馬鹿だな・・自分でもそう思う、霊力は三流以下、特殊能力がある訳でもない、
ガタイがさほど恵まれているわけでも、タッパがある訳でもねぇ足も短いし、顔もイマイチ、自分で言うのもなんだが
本当に才能が無い・・・唯一頼みの体術はテンで相手になりゃしない・・・かといってずば抜けた戦術を立てるわけでもない
冷静に考えりゃ勝てる要因なんざねぇってのによ・・・ホント馬鹿だわな」

ゆっくりゆっくりとその場所を目指す。

「でもよ・・・俺は確かに馬鹿で自分でも嫌になるぐらい弱いが、たった一つ自分で気に入ってるところが有るんよ」
「ほーぅ、、それはなんだい?」
完全に勝利を確信しこれからどのように相手を弄るかそればかりを考える

這うような速度で要約汰壱は目的の物を見つけた

「それはな・・・・・【極めて】諦めの悪いとこ」

ドゴッ!!
最後の力を振り絞り汰壱はその見つけた物【配電盤】に自分の拳ごと刃の無い血塗れの【任侠道】の柄を叩き付けた。

「ひゃあはっはっはははっははははは、馬鹿がそれを壊してどうする!大方それを潰して霊気吸引結界を止めようとしたのだろが
そんなもの一つでここの全てが止まるかよ馬鹿が!!」

バチバチバチバチバチバチバチバチ

狂ったように笑い続ける白蛇を尻目に汰壱ただひたすらに耐えていた。
自身の流れる凄まじい電流に崩れ落ちそうになる身体にただひたすらに・・・・

血が蒸発する、嗅覚が自身の焼ける匂いを感知する体中の細胞はヤメロヤメロと騒ぎ立てる。
「うおおおおおおぉおおお」
流れ荒れ狂う電流をその身に受けながらそれでも汰壱は手を引くことは無かった。
有りっ丈の力を最後の足掻きを・・・



   ドン! ドン!! ズガン!! ドン!!!


あちらこちらで電撃の余波を受け小規模の爆発が起こる。汰壱は戦いながら縦横無尽に【任侠道】のワイヤー張り巡らした。
自分血がべったりと付いたワイヤーを・・・・・・
汰壱の手に握られている刃の無い柄から一本の銀線が生えている、凄まじいほどの電流は汰壱の身体と血を
霊的に媒介として汰壱の身体で【真呼吸】を利用大量の電気を僅かずつ僅かずつ霊気に変換していく。
そして必死で創った霊気は大量の電気と共に終点を目指す・・・・・終点は銀の刃最初に発射して弾かれ地面に突き刺さった銀の刃。

銀の刃から地面に、そして地面に描かれた結界陣に干渉した。


大量の電気と意思の介入した霊気は・・・・・

―――――――――シュウウウウウウン―――――――――

全ての結界陣を停止させた。








コインは裏返った。















今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa