ザ・グレート・展開予測ショー

横島忠夫奮闘記 53〜消息報告〜


投稿者名:ぽんた
投稿日時:(05/ 1/26)

「あらー? 横島さん、しばらく会わないうちに随分強くなったのねー。
でもどうして力の殆どを封印してるの? 元の力の九割以上が封印されてるのねー」

ヒャクメの無邪気な発言と共に部屋の空気の一部が静まりかえっていった。
マズい事を言われてしまった、という思いが横島の脳裏を駆け巡る。
同時に事態を打開する為の思考を脳内で構築していく。
ヒャクメの千里眼や心眼を甘く見ていた訳ではないが口の軽さを計算に入れてなかった。
後で口止めはするとしても既に発言された内容に関しては横島が対応するしかない。

肯定するか?否、それは完全に人間の範疇を超えている。話が魔族化の部分にまで及んでしまう。
否定するか?否、弟子二人はともかくタイガーはヒャクメの能力に関しては聞き及んでいるはずだ。
逆ギレして誤魔化すか?否、ある程度自分の性格は知られている為、却って不審を招くだろう。
ではどうするか、弟子二人は比較的誤魔化し易い。タイガーを中心に据えて誤魔化すべきだろう。
どこから切り崩すか、能力は知っていてもヒャクメの性格を詳しく知る程には親しくないはずだ。
ヒャクメと親しい人間など自分以外では美神とおキヌしかいない。この二人が不在なら何とかなる。

元々ヒャクメの口の軽さのせいで自分がいま苦悩しているのだ、ツケを払わせてもバチは当るまい。
一秒にも満たない時間でこれだけの思考を纏めると、如何にもイタイ人を見るような目つきで
ヒャクメを見やりつつ驚いた顔をしている三人に向かって話し掛ける。タマモとパピリオは我関せず
とばかりにゲームに熱中している。取り敢えず後で説明すれば良いだろう。

「三人共あんまり真に受けんなよ? アイツは神族には珍しく虚言癖があるからな」
「失礼な事言わないで欲しいのねー、私は ムグッ!」

小竜姫の手に口を塞がれたヒャクメが視線で抗議しようとするが、それ以上の叱責の意思を
込めた視線に捻じ伏せられる。おとなしくなったヒャクメを横目で見ながら言葉を繋ぐ。

「ピノキオは知ってるな? あれの逆バージョンで嘘をつき通すと乳がデカくなるんだ」

あまりと云えばあまりの馬鹿馬鹿しさに一同胡散臭い顔つきになるが、逆に嘘臭過ぎる為に
信憑性があるような気がしてくる。人というのは不思議なもので相手を騙そうとするのなら
もう少し尤もらしい事を言うはずだと思い込んでしまう。ここまで嘘ッポイ話だと逆に本当の
事を言われている気になってくる。そうなってくると気になるのはヒャクメの胸だ。

ジッと凝視した後で女性二人は自分のソレと較べてしまう。あれは反則だろう。そんな思いが
湧き上がってくるのを止められない。タイガーは記憶の中の別の女性と比較しているようで
何だか考え込んでいるようだった。次にヒャクメの隣に立つ小竜姫のソレと比較して何やら頷いている。

「あの〜横島先生? 小竜姫様って嘘ついたりとかしませんよね?」
「はあ? 当たり前だろ? 小竜姫様は誰よりも優しくて誠実で正直な方だよ」
「そうでござるか・・・まさか本当にそんな事が在り得るとは思わなかったでござるよ」

不動の問いかけに間髪を入れずに横島が応じる、自慢の師匠を褒める言葉など無尽蔵に
出て来るがシロの奇妙な相槌の意味に気付いた時は、既にもう手遅れだった。

「よ・こ・し・ま・さん?」
「はっ、はヒッ!」

穏やかな中に無限の迫力を秘めた小竜姫の声に振り向くと、そこには笑顔の小竜姫がいた。
表面上は笑顔だが、断じて上機嫌では無い事ぐらいはいくら横島でも理解できる。

「お弟子さん達への教育等について、貴方に話があります。隣の部屋まで来なさい。
ヒャクメ、貴女もです。良いですね?」

良い訳が無い。ヒャクメは怯えたようにイヤイヤをするが問答無用で腕を掴まれてしまう。
横島は救いを求めるような表情でジークを見やるが沈痛な表情で目を合わそうとしない。
結局屠殺場に引き出される仔牛のような足取りで部屋を出て行った。

ピシャリ

戸の閉まる音と共に不動・シロ・タイガーが息を吐き出した。
怯えたような声音で互いに話し合う。

「小竜姫様は随分と怒ってるようでござったな?」
「ひょっとして、僕達地雷を踏んじゃったんじゃ・・・」
「横島サン大丈夫ですかいノー」

そんな三人の言葉を背中で聞きながら、タマモが小声で隣に話し掛ける。

「人間って馬鹿ね、あんな話を真に受けてるみたいよ」
「人狼も馬鹿でちゅね、本気で信じたみたいでちゅ」

シロが馬鹿だという意見には全く同感だったタマモは力強く頷いた。

「パピリオは知ってたんでしょ?」
「当然でちゅ、私は修行にも付き合いまちたからね、タマモは知らなかったんでちゅか?」

タマモは魔族化の話は聞かされていたが力の封印の事は知らされていなかった。
だがおそらく相互に関連しているだろう事は推察できるので大して気にならない。
そもそも横島の魅力は強さより優しさにあると思っているので尚更だ。
これはパピリオにも共通する事だ。最初に出会った頃の横島の強さなど貧弱極まるものだった。
それでも横島に惹かれるものを感じたのはその人柄故だ。

「別にどうでも良い事だけどね」
「その通りでちゅね」

二人はごく小さな声で話しているので周囲には聞こえない。
傍から見ると二箇所でヒソヒソ話をしているようで何とも妙な雰囲気だった。

「と・とにかく皆さん座って寛ぎませんか? お茶の用意をしますから、
そちらの二人もゲームはしばらく休憩しては如何です?」

ジークが場の空気を取り成すように声を掛けて、そのままお茶の用意へと向かう。
不動達は畳に座り、ゲーム組も一旦中断して側に来たがタマモはそのまま素通りして行った。

「ジーク、私も手伝うわ。パピリオはハチミツ入りの紅茶で良いのよね?」

タマモがパピリオの好みを確認してジークの後をついていく。残りの三人に関しては文句を
言わせるつもりなど無いのだろう。勝手知ったる他人の家とばかりの振る舞いだ。
残された四人は向き合うように座っており、リラックスしまくっているパピリオに対し
後の三人は若干緊張気味だった。

「あの〜、パピリオ さんでしたよね? 横島先生とは親しいんですか?」

不動が恐る恐るといった感じで問い掛ける。人間と親しい魔族というのがどうもピンと来ないのだ。

「親しい? そんな言葉じゃ足りまちぇん、ヨコシマは私の家族同然でちゅ」

意外と言えば意外な言葉に余計に驚きが募る。不動はまだ横島が人外のモノ達に好かれ易い
体質である事を知らない為、無理も無い。その時にシロがようやく一番最初に気に掛かっていた事を
思い出した。今迄の一連の出来事のインパクトが強すぎて、つい考えが及んでいなかったが
タマモと闘うはずの魔族がこの部屋で呑気にゲームに興じていたのだ、確認する必要がある。

「パピリオ殿、タマモとの勝負とはどういう意味でござるか?」


シロが真剣な表情で尋ねてくる理由は解らないが隠すような事でも無い為、今迄のゲームでの
勝負の変遷を話して聞かせた。自分の早とちりと勘違いに気付いたシロは怒るやら呆れるやらと
大忙しだったが最終的には奈落の底まで落ち込んだ。必死に探し回った自分は何だったのか、
決死の覚悟で闘った自分は何だったのか。小竜姫や横島に言われた様々な事が思い起こされ、
自分がとんでもなく単細胞な子供のように思えて情無くなってしまった。その通りなのだが。



一方隣の部屋では、静かな空気が充満していた。ちなみに静かと穏やかはイコールではない。

「ヒャクメ?」
「はっ!はいぃぃっ!」

「事前に口止めしなかった私にも責はありますが、もう少し喋る前に考えて下さい」
「ごっ、ごめんなさい〜。口が滑っただけで悪気は無かったのねー」
「悪気が無かったで何でも許されると思ってんのか? あアンッ?」

横島としてはこの帯電したような空気の原因が自分とヒャクメのどちらにあるのか解らない以上
総てがヒャクメの所為だと思い込みたいので何とか責任の比重をヒャクメ側に傾けようと必死だった。
小竜姫の怒りの矛先から逃れる為にヒャクメを生贄に差し出す。しかしその尊い犠牲は永遠に忘れない。
横島の中で完璧な自己防衛のプランが出来上がっていった。だが、しかし・・・

「横島さん?」
「はっ!はヒぃぃっ!」

「さっきのいい加減な口からでまかせは何なんですか?」
「ああぁぁっ!悪気は無かったんです〜、堪忍や〜仕方無かったんや〜」
「悪気が無いで済めば誰も苦労しないのねー」


ヒャクメとしても必死だった。小竜姫は裏表の無い気の良い友人ではあるが一旦怒り心頭に到ると
仮借ない。以前天龍童子に折檻する処を覗き見た事があるが容赦も何もあったものではなかった。
他の神族からは、例え竜神王の子息であろうと他と区別せず振舞う公正さで名をあげていたが
その連中とてあの現場を見たらそんな事は言えないだろう。ましてやその矛先が自分に向いた日には。

ヒャクメとしては何としても矛先の大半を横島に被せて保身を図りたかった。この辺りの保身の願望は
人も神も大差無い。ヒャクメの胸中では既に横島の記念銅像が出来上がっており、その竣工式迄が進行していた。我が身可愛やホーヤレホー、である。

「あんなその場凌ぎの言い逃れが通用すると思ったんですか?」
「え? いや、でも、あいつら信じてましたよ?」


横島が見た所、三人共に我乍ら馬鹿馬鹿しいと思った言い逃れをかなり真に受けていた。
あのまま押し切れた可能性はかなり高いと思っている。

「あの場にいた三人から他の人達に伝わる可能性を考えなかったのですか?」
「いや、それは口止めすれば・・・」

そこまで言いかけて横島も気付いた。嘘として信じこませた以上は口止めするのは不自然だ。
本当の事でなければ口止めする理由が無い。あの三人を誤魔化す事ばかりに集中していた為、
後になって他の連中に広まる事までは考えが及んでいなかった。となると記憶を消すしかない。

「全く貴方という人は・・・他人の為には惜しみ無く使うくせに、自分の為に使おうという
発想は出てこないんですねぇ。まあ、悪用しようとしないだけ良いのかもしれませんが」
「って事はやっぱ文珠で?」

文珠に《忘》の文字をこめて使えば限られた範囲の記憶のみを消す事は出来る。
力の封印に関する記憶だけ、消すしかないだろう。

「先程貴方が作った文珠がまだ残っています。これを使いましょう」

そう言うと小竜姫の掌の上で文珠に《忘》の文字が刻まれていく。
生成は出来なくとも使いこなすだけなら問題無いが、わざわざ小竜姫の手を煩わせるのは
申し訳無いので自分がやると申し出たのだが、相手も譲らなかった。

(横島さん、小竜姫は他にももう少しだけ消したい記憶がきっとあるのねー)
(もう少しって・・・やっぱさっきの話題か?)

ヒャクメが小声で耳打ちしてきたのに対し、横島も心当たりを尋ねてみる。

(小竜姫は堅物だから言い寄って来た男神を手厳しくハネつけたりしてるのねー
 そのフラれた連中が小竜姫の事を”小乳姫”とか陰口を広めてるのねー
 小竜姫はあの性格だから表には出さないけど内心では傷ついてるはずなのねー)
(神様のくせにそんな事する奴らがいんのか? 許せんなー)

横島は最初驚いたが、考えてみれば神といえど人格者と限ったものではない。
天龍童子の例もある、確かに良い主君になる素質はありそうだったが、だからと言って
あれがどう成長しても完全無欠の人格者になるとは思えない。他の有象無象なら尚更だ。

「二人共? 何をヒソヒソと話しているのです?」
「いえっ!べ・べ・別に何もないです」
「そっ、そうなのねー。私達別に胸の話なんてしてないのねー」

ヒャクメがまた地雷を踏んでくれた。そもそも”達”などと言えば横島まで巻き込まれてしまう。
胸の話をしだしたのはヒャクメ一人なので、是非一人で尊い犠牲になって欲しかった。
ピラニアのいる河を渡る時の要領で、一頭の牛が食われている間に残りの牛が渡河を済ませる。
だがこの囮は非情に往生際が悪くしがみついて離さない。死なば諸共とばかりで、少しでも
相手を小竜姫側にやろうと押し合っており、見苦しい事この上無い。だが予想した雷は落ちて来なかった。

「胸の話はどうでもよろしい。私は、例え記憶であれ貴方が女性から何かを”奪う”のは
気が咎めるだろうと思っただけです。もう戻りますよ?」

小竜姫はそれだけ言うとサッサと元いた部屋に向かって行った。確かにあまり不在が長くなると
いらぬ心配を掛けてしまうので二人も後に従った。


部屋に戻ると既に小竜姫の手に文珠は無い。記憶の消去は終わったらしい。
部屋に入るとそのままパピリオに連れていかれ、座らされた挙句に膝の上を占領されてしまった。
何時もの事なので放っておいたが丁度その時にタマモとジークがお茶の用意を終えて戻って来た。
タマモが何か文句を言うかと思ったが、見逃してくれるらしい。妙神山にいる時だけなので
パピリオに優先権を譲るつもりのようだ。二人がそこまで仲良くなったのを単純に喜んでいると
部屋の隅の方で膝を抱えて丸まっているシロが目に入った。なんだか不貞腐れているようだ。

不思議に思い残っていた者に事情を聞いてみると脱力してしまうような理由だった。
だがそれを聞いたタマモは焦ったようで慌ててフォローに回っている。

「わ・私が何か言った訳じゃないからね? そこんとこ解ってるわよね?」
「うるさい、黙れ。拙者クソ狐に恩を着せる機会を逃したのが残念なだけでござる」

「と・ところでお茶飲まない?」
「余計な気を使うなでござる」

完全にイジケているようで取り付くしまも無い。暫く放っておくしかなさそうだった。
仕方が無いので他に話題を探す事にしたが咄嗟には思いつかないでいるとタイガーの方から
ピートの事を言い出してくれた。

ジークの話によれば今回は加速時空間は使っておらず通常の時の流れの中で修行しているらしい。
ピートはとうの昔に成長期を終えており、その効果が殆ど無いからだそうだ。
その為、力ではなく技術的な物で戦闘力を増す為に先ずは膨大な知識を詰め込み、その後で
その知識を基に闘い方を工夫するのだがそこで躓いているらしい。

新しい技を創り出すには既成の枠に囚われない自由な発想が必要になるが、真面目過ぎる性格が
邪魔をしてそれが出来ないでいるらしいのだが、そう聞いて不思議そうな顔になる者もいた。

「ですがピートさんには身近に横島さんという良いお手本がいたではありませんか?」

小竜姫がジークに問い掛ける。横島と共に闘った経験の多いピートであればその時の常識どころか
良識の枠からも外れた発想を何度も見ているはずだ。それを活かせない程愚かではないはずなのに
何故そこまで枠の内に囚われているかが疑問でその事を改めてジークに確認する。

「実はその、言い難いんですが、その当の横島さんに対抗心のような物があるようで
 無意識の内に考えまいとしているようなんですよ」
「愚かな事を・・・」

ジークの言葉を聞いて小竜姫が呆れたように応じているが、横島には少々罪悪感がある。
ピートならきっと解ってくれると思い、正月に叩きのめしたがやはりショックは大きかったのだろうか。
根に持つような性格では無いとは思うのだが、言葉でも伝えるべきだったのかも知れない。
男を相手にやたらと言葉を連ねる趣味は無いので行動のみで示したが不足だった可能性もある。

「俺の事、恨んでんのかな?」
「いえ、違います。そういうのでは無くて、期待に応えたいというか、横島さんに
自分の力を認めさせたいというか、そういう気持ちが大きいみたいなんです」
「横島サン、ピートさんは恨んだりするような小さい男じゃないですジャー。
ただあの闘いでのメッセージを受け止めて気合が入り過ぎとるだけじゃと思うけんノー」

ジークとタイガーの言葉を聞いてなんとなく今のピートの状態に想像がついた。
自身の中の思考の迷路に迷い込んでいるのだろう。だが迷路を抜けられないなら壁をブチ抜けば
良いだけだ。そしてそのような一種デタラメな発想をするのは横島だけではない。
というより横島以上の人間が一人だけいる。

「なあジーク、俺を参考にするのに抵抗があるなら美神さんを真似してみるよう薦めてくれないか?」
「成る程、美神さんの悪どい、もとい、独創的な闘い方を参考にするのは良いかも
しれませんね。早速言ってきましょう」

そう返事するとそのまま立ち上がって部屋を出て行ってしまった。ピートのスランプを
見かねていたのかもしれない。これでピートの話題が終わった為、他の事を考えると
パピリオが喜びそうな事を思い出した。前回の訪問の時に言いそびれていたのだ。

「そういやパピリオ、ケルベロスの事覚えてるか? アイツ元気そうだったぞ」
「えっ? どこにいたんでちゅか? 元気だったんでちゅか?」

パピリオが可愛がっていたペットの事を忘れるはずもなく、嬉しそうに尋ねてくる。
横島もパピリオの笑顔が嬉しくて、ナルニアでの一件を総て話して聞かせた。
淋しい思いをしていたが、横島に会えて嬉しそうにしていた事。パピリオに守られる
よりも本能の赴くままに荒野を駆け巡る事を望んだので魔界へ送り還した事。
それを聞いた時は少々淋しそうな顔をしたが、その方がケルベロスの為に良いと
思ったのか、納得したような顔をしていた。

「でもおかしいのねー、ナルニアの辺りには魔界へのゲートなんか無いはずなのねー」

ヒャクメの疑問に横島が答えようとした時に新たな来訪者があった。

「邪魔するぞ小竜姫、ヒャクメは来ているか?」

そう声を掛けながら入って来たのは横島も良く知る魔族ワルキューレでヒャクメへの用件らしい。
横島やそれ以外の見慣れぬ者達がいるのには驚いたようだったが本来の目的を優先する事にしたようだ。

ワルキューレの話によると魔界の軍刑務所に収監されていた凶悪犯が脱走したと言う。
最も奥深くの警戒厳重な場所に閉じ込めていた者が逃げ出した為魔界全土を捜索中らしい。

「だが人界に逃げた可能性もあるんでな、こちらでの捜索をヒャクメに頼みたい」

ようするに魔界全土を正規軍が捜索している為、人界まで手が回らないと言う事らしい。
その点ヒャクメの千里眼があれば人界全域をカバーするのは難しくない。そうすれば効率良く
捜索出来るのは解るが、それ以前の段階での初歩的な疑問があった。

「待てよワルキューレ、素朴な疑問で悪いんだが何でそんな厳重な警備が破られたんだ?」

横島に問い掛けられてワルキューレが苦虫を噛み潰したような顔になる。
よほど忌々しい思いをしたようだ。

「結界のど真ん中に転移してきた馬鹿者がいてな、そのせいで結界は壊れるわその衝撃で
独房の壁は破壊されるわで大勢の脱走者が出て大変だったんだぞ」

そんな事が出来るのかと驚いたが一定の条件下なら可能らしい。魔界内からの転移であれば
魔神クラスの実力が無ければ不可能だが、他の世界、例えば神界や人界からの異界間転移
であればそこまでの力が無くても可能な事だそうだ。

「でもそれは変なのねー、神族がそんな事するとは思えないし人界にそんな事の出来る
存在がいるとも思えないのねー」

だがそうなると残る可能性は六大魔王の誰かという事になるがそんな事は不用意には言えない。
そもそも何者が転移してきたのか、そいつは無事だったのかも気になったが結界の起点に転移して
破壊した為、総ての衝撃が外に向かい本人は無事だったそうだ。尤も人型ではなく魔獣らしいのだが。

「全く思い出すだに腹立たしい、見つけだしたら八つ裂きにしてやるぞ! あの三つ首の魔獣めが!」

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