ザ・グレート・展開予測ショー

式姫の願い-8- 作戦開始!


投稿者名:いすか
投稿日時:(05/ 1/26)

「じゃ、ここからは別行動ね。横島クンも熾恵さんもしっかりね」
「うっす。ところで小竜姫様たちは?」
「今日はまだ会場には来ないことになってるのよ〜。メドーサも二日間とも姿を見せるよ
うなことはないでしょうしね〜」
「小竜姫様も幽一さんも目立ちますからねー」
「けっ、あんな男のどこがいいんじゃ」

 ぶつぶつ文句を垂れている横島だが、実際のところあの二人のことは認めていた。ひと
昔の彼なら収拾のつかない騒ぎだろうが、熾恵に悟らされてからは好意の押し付けと親愛
の分別を考えられるようになり、ある種の落ち着きを持てるようになったのだ。もちろん
小竜姫のことは好きだが、だからこそちゃんと幸せになって欲しいと思っているのである。

「そろそろ会場入りしましょ〜、横島さん」
「そーっすね。あー、ちゃんとできるんだろうか俺」
「大丈夫よ、自信を持って」
「横島さん!」

 横島を呼ぶ声に振り返ると、会場の入り口付近の人垣が割れ、金髪の美少年―――ピー
トが熾恵と横島の方へ足早に近づいてきた。

(ピートクンなら自然に振舞っていても平気よね〜)
「ピート!」
「横島さんも来てたんですか! 教えてくれればいいのに!」
「いやーすまん。自分のことで手一杯だったからな。そーかー、お前も受けるのか」
「横島さんのお友達〜?」
「あ、紹介するっす。バンパイアハーフで仕事で知り合ったピートです。ピート、この人
は妙神山熾恵さん。俺の師匠だ」
「はじめまして〜」

 あくまで初対面を装い、にこやかに挨拶をする。書類上の横島の師匠は当然令子である
が、彼自身にしてみれば能力を引き出してくれた熾恵が師匠だと思っているのだ。

「ご丁寧に。ピエトロ・ド・ブラドーです。横島さんにこんな美しい先生がいるとは知り
ませんでしたよ」
「あら、お上手」
「ピ〜ト〜! 何、人の師匠口説いてんだ〜〜あ〜〜〜?」
「い、いえ! そんなつもりでは……」

 イタリア育ちのピートにとって、美しい女性を美しいと評するのは最低限の礼儀なのだ
が、基本的に良い男嫌いの横島には簡単に聞き流せるようなものではない。

「横島さーん! ワッシジャー!!」
「うぉ! タイガー、お前もか!!」
「わっしは、わっしは緊張して……!」
「(タイガーくんは精神感応に注意しないといけないわね〜)こちらも横島さんの?」
「ええ、クラスメートのタイガーです。ほら、タイガー挨拶しろ。俺の師匠だ」
「タイガー寅吉ですジャー。お師匠さんは今日は付き添いですジャ?」
「妙神山熾恵です。私も今回受験するんですよ〜。生徒と一緒に試験を受ける先生ってい
うのもおかしいけど〜」

 笑いながら述懐する熾恵の言葉に、ピートらが目を丸くして驚いているのがわかる。確
かに自分の受ける試験のライバルを増やすような真似は、傍から見れば酔狂にしか映らな
いだろう。

「すごい自信ですね」
「余裕ジャのぅ」
「あのな〜……熾恵さんは物心付いてからずっと天界で修行してたんだぞ? 間違いなく
フリーパスだっての」

 熾恵に対して悪い印象を持ってもらいたくなかったため、横島は妙神山で聞きかじった
ことを暴露する。幸い、ピートたち以外の耳には届かなかったようだが。

「天界って……」
「捨てられていたのを拾ってもらったのよ〜」
「拾われたって、誰にですジャ?」
「孫悟空だよ。あの西遊記に出てくる猿」
「「えええ〜〜〜!!?」」

 想像だにしない名前が出てきたことで、場所を忘れて二人は大声を上げる。この世界に
少しでも触れたことのあれば、斉天大聖孫悟空と言えば10人中10人怖気付こう。急に
上がった声に、何事かと視線が集まる。

「あんまり口外しないでね〜。出来るだけ注目されたくないの」

 人差し指を口の前に出してかわいらしくお願いする熾恵だが、前者はともかく後者の願
いは無理だろう、と3人はなんともいえない笑みを浮かべる。

(すでに十分注目されてますよ、熾恵さん……)
(絶世の美女だもんなー。そこらじゅうから刺さる野郎の視線が痛い……)
(気づいてないんかノー……)
「お願い、ね?」

 どこまでも自分の容姿に無関心な女性の自覚のなさに、やはり3人は顔を見合わせて苦
笑することしかできないのであった。



          ◇◆◇



「どう、雪乃丞? あなたのお眼鏡にかなうようなやつはいた?」

 小指を立てたまま優雅にティーカップを傾けるのは、お姉言葉が特徴的な鎌田勘九朗。
1次試験を終えての昼休み。勘九朗に問いかけられた伊達雪乃丞は握り飯を頬張りながら
も、律儀に言葉を返す。

「バンパイアハーフにバンダナ……あと要注意は黒髪の女だな。力の底がわからん。それ
に……」
「ま、大体そんなところね。それで?」
「ママに似ている……」
「……ほっぺにご飯粒付いてるわよ」

 ちなみに1次試験は皆無事に通過。熾恵はうまく力を抑え、雪乃丞たちの目をごまかす
ことが出来た。別の意味でチェックもされてしまったようだが。

「なんにせよ主席合格は俺たちがいただく! GSのエースおいしすぎるぜ!!」
「陰念は怪しいところだけどね。合格できれば御の字ってところでしょ」
「……アイツは?」
「今日は来ないわ。明日はお見えになられるみたいよ」

 アイツ、と言った瞬間雪乃丞は嫌そうに顔をゆがめたが、勘九朗も黙認。任務に影響が
出ない範囲であれば問題はないと考えているのだろう。

「ムカツク女だぜ」
「聞かなかったことにしてあげるわ。やるべきことをきちっとやりましょう」
「ああ」



          ◇◆◇



 128名に絞られた2次試験受験生は、多少の例外はあっても、皆一様に緊張した面持
ちで天野会長のふるダイスの行く末を見守っていた。

「知り合いとは戦いたくないわね〜。今回は令子ちゃんがいないから〜、私がそのかわり
になるのかな?」

 例外のひとりである熾恵は、観客席でオレンジジュースを飲みながらのほほんとトーナ
メントがどうなるか予想していた。こればかりはどうしようもないので静観して待つしか
ない。しばらくして、大型掲示板に対戦表が張り出される。

(第一試合は横島さんとカオスさんね〜。私と令子ちゃんが入れ替わっただけであとは同
じかしら〜?)

 遠視でトーナメント表を確認しながら熾恵は考えをめぐらせる。少なくとも自分の知人
とは準決勝まで当たらない。おそらく横島か雪乃丞と対戦することになるだろう。決勝は
勘九朗だ。

『オーナー』
『な〜に〜?』

 不意に熾恵の頭に直接声が飛び込んできた。幽一だ。

『オーナーの指示通り、白龍会GSのここ数年の足取りを追ってみましたが、ここ半年程
全く表立って活動を行っておりません』
『姉様はなんていってる〜?』

 幽一は熾恵に括られているような形で存在しているため、双方が意識すれば念話を行う
ことができるのだ。1次試験の後、目に付いた連中がいたということで幽一らに調べさせ
たのだ。

『熾恵オーナーが感じたという魔力の残照のことを考えると、限りなくクロだと。小竜姫
はすぐにでも白龍会に乗り込んでしまいそうなので、場所は伏せてありますが』
『んー、姉様には悪いけど今はその方がいいかもねー。それにしても幽一さんったら〜、
もう姉様のこと呼び捨てなんだ〜♪』
『ちゃ、茶化さないでください! 小竜姫がそう呼んでくれというから……』
『らぶらぶね〜♪ 姉様を抑えるのは幽一さんの仕事だからね〜。後は戻ってから話し合
いましょ〜』
『……了解しました』

 幽一は納得のいかないような微妙な声音を残したが、無視して通信を切る。あの二人に
現地入りしてもらうのは、予定通り明日でいい。

「ん〜! じゃあ、がんばっていきますか〜〜」

 細長い身体を思いっきり伸ばし、熾恵は自分の試合が行われるコートへと向かった。



          ◇◆◇



「「「「カンパーイ!」」」」

 予定通り、カオスの反則負けにより無事一回戦を突破した横島と、力を隠したまま勝ち
上がった熾恵。それにピートとタイガーも加えた4人の明日の健闘を願って、小規模な壮
行会が行われた。場所は言わずもがな、旧渋鯖男爵邸である。

「ふふふ……あと一回勝てばGS! 『GS横島極楽大作戦!』が現実味を帯びてきたー
ーー!!」
「寝言は寝てからいいなさい。万が一合格したって、横島クンはしばらくみ・な・ら・い」
「なああぁじぇええぇ!!?(訳:何故)」

 薔薇色の未来に目を輝かせていた横島だったが、令子の冷静なツッコミに血涙を流しな
がら言及する。

「GS=霊能力者って言うなら試験なんかいらないわよ。きちんとした悪霊、霊症の知識。
プロの下で積み上げた経験。その両方ともアンタには絶対的に足りない。以上」
「そんなああぁぁ!!」
「ま、まあ、いいじゃないですか横島さん。資格がないと始まらないですよ」
「そうですジャー。明日、一回勝ってから考えても遅くないですケン」

 がっくりとうな垂れる横島を慰めるピートとタイガー。この3人はトーナメント表でも
割りと似通った位置にいるが、資格所得ラインでの潰し合いはないので気を使う必要もな
い。お互いがお互いの合格を願っている。だからこそ、この試験の結果を知っている熾恵
としては、不合格予定のタイガーがいたたまれない。

(タイガーくんはちょっと可哀想よね〜。元々、試合形式向けの能力じゃないし〜)

 どうしたものか。霊力自体は対戦相手の陰念といい勝負なのだが相性が悪い。戦闘力に
特化している陰念と、精神感応を得意とするタイガーでは一対一の状況ではどちらが有利
か一目瞭然だ。

(ん〜、ちょっとくらいアドバイスするのはいいわよね〜?)
「タイガーさ〜ん」
「ン? なんですジャ?」

 ちょいちょいと手招きされ、ひょこひょこと歩み寄ってくるタイガー。小竜姫と幽一に
目配せし、熾恵は小声でタイガーに耳打ちする。

「実はね、今回のGS試験はちょっとした問題があるの」
「問題、ですジャ?」

 変に勘繰られないように『対戦相手が魔族とかかわっているかもしれない』という方面
から話を始める。話を聞くにしたがい、タイガーの表情が引き締まっていく。

「大変ジャ……」
「うん。でも、証拠がないのよ〜。だから証人が欲しいの」
「ワッシが白龍会の陰念とかいうヤツをコテンパンにすればいいわけジャ」
「そうそう。あとは医務室でタイガーさんが聞き出せるでしょ〜?」
「ですジャ」
「でも〜、タイガーさんも自分の能力が戦闘向けじゃないのは知ってるわよね?」
「……はいですジャ」

 タイガー自身、自分が一対一という限定環境下での不利は分かっていた。エミの下で鍛
えたタフネスを武器に、力押しで一回戦も突破したのだ。

「でも、ワッシはエミさんの制御がないと暴走してしまうですケン。苦手でもこの方法し
か……」
「地力が違う相手ならそれで十分よ〜。それでも、次の相手はきついと思うの。だからね
〜……」
「はい?」



          ◇◆◇



 GS試験2日目。
 トーナメントの2回戦から始まるスケジュールだが、資格所得に関係するのは実質初戦
のみ。そういった意味で、選手が各自万全の体制で望めるこの2日に分けられたスケジュ
ールはフェアなものだろう。

「クズには勿体無いくらいの配慮だねぇ」

 ミニのワンピースに身を包み、長い足をもてあまし観客席に陣取るメドーサ。色香溢れ
る彼女とお近づきになろうと、幾人かの男が声をかけようとするが、メドーサは物も言わ
ず視線だけでそれを撃退する。

(あー、うざったいね! やっぱり来るんじゃなかったか……)

 13人目の男を返り討ちにし、メドーサは真剣に帰ろうかと思った。人間の男というの
は年中さかりっぱなしとは知っていたが、さすがに辟易する。これならまだ男色の勘九朗
や、修行馬鹿の雪乃条のほうが百倍マシだ。男のひとりでも侍らしていればこんな思いは
しなかっただろうが。

(私に見合う男なんてそう簡単にはねぇ……クズどもと馴れ合うのは芝居でも嫌だ)

 そう思い嘆息するメドーサだが、種族の垣根を無視しても彼女のお眼鏡にかなうような
男はなかなかいない。彼女自身もそれは分かっているのか、諦めて今日一日は我慢するこ
とにした。そんな彼女に声をかける男がまたひとり。

「すいません。お隣よろしいですか?」
「ああ、もう! いいかげんに……」

 そこらの男ならそれだけで射殺せるような目で、男のほうを振り返ったメドーサだった
が、その男の姿を確認した瞬間、苛立ちから驚きの目に変わる。

「幽霊?」
「お分かりになられますか。渋鯖幽一―――正式名を渋鯖人口幽霊一号と申します」

 目を丸くするメドーサをよそに、14人目の男は深々と会釈をした。



(後書き)
 ダメダメです。文章がとっ散らかってまとまりません。話の上でもこんなところで長々
と時間も取るわけにもいきませんし……。乱文雑文の名の通り、テンポも悪く薄っぺらい
文章と自覚してはおりますが、何卒ご容赦をば。

今までの コメント:
[ 戻る ]
管理運営:GTY+管理人
Original GTY System Copyright(c)T.Fukazawa