ザ・グレート・展開予測ショー

ベスト・フレンズ・ストーリー


投稿者名:遁譜村&純米酒
投稿日時:(05/ 1/25)

僕にだって悩みはあるんだ。


整った顔立ちと優しい唐巣神父の教えできれいな心。女の子達の人気も高い彼。

吸血鬼と人間の合いの子ピエトロ・ド・ブラドー。通称ピート。

今、オカルトGメンを目指してべんきょうしている身だけど。


クラスメートや、なかまとの充実した時間を過ごしている。楽しい、思い出に残る体験をいっぱい残るとやりきれない思いになってしまう。

外見こそ、高校生の様に見えるが、前述の通り彼はバンパイアのハーフ。これでもねんれいは700才だ。

ちょっと前まではブラドー島という同じ時を有するなかま達との付き合いが多かった。

『別れ』というものに慣れていないため、そう遠くない未来に別れが迫っている事にあせりを感じ始めていた。

(ぼくは、彼らとの別れに耐えられるのかなぁ?)

視線にの先にいる親友が居なくなったっちゃった事を想うするだけで、暗闇に飲み込まれそうになってしまう。

一人うつむいて、あごに手を当てていると、底抜けに明るい、その親友の一人がぼくに近寄ってきた。

「どうしたんだ?まさか『悩みをかかえる男』がモテるというのを知って」

「違いますよ!」

「ふんだ、美形は何やってもモテるのに!!そうやってまた新しい女を独り占めにする気だな?」

「だから違うって言ってるじゃないですか」

一人で勘違いして的外れな結論になると、どこからか取り出したわら人形に釘を打ち込みはじめた。

誤解したままなのに、突っ走ってしまう友達の性格が少し羨ましく思えていた。



僕のゴーストスイーパーの先生で、居候先でもある教会に着いた時も、どこか浮かない表情をしていたようだ。。

家庭菜園の世話をしていた先生が、そんなピート君の様子を目ざとく見つける。

「おかえりピート君」

「あ・・・、ただいまもどりました」

何処か覇気の感じられない返事に、唐巣神父は何かあったのだと悟ってしまった。

「何か悩み事があるかい?僕に話してみないかな?悩む者をみちびくのも僕の仕事だよ」

「先生・・・・」

ピートは自分の師匠が輝いているように見えた。

でもそれが唐巣神父の人柄ゆえなのか、後退を始めたおでこなのか、あえてしないで置こう。




「ふぅむ。・・・」

ピート君の告白に静かにきいていた神父、頷きながら優しい笑みを浮かべる。

神父という役柄、さまざまなな悩みを聞いてきたが、この悩みばかりは神父にははかりしれないようだ。

人の生は長くても100年。自分自身もまだまだ半世紀ばかりしか世間を見ていない。神父は自分の無力を悟っている。

「そういう悩みならば、私よりもDr.カオスの方が力になれるかもしれないね」

先生の言葉にピート君は我にかえった。。

魔術と錬金術で、死ねない体をを得た人―――

ヨーロッパの魔王とまで呼ばれたその存在に気が付かなかった自分をはじている。

「そうですね・・・今度、暇があればDr.カオスに話してみます。無茶な相談を持ちかけてすいませんでした」

「いや、私も力になれなくてすまないと思ってるよ」

「いいえ。話を聞いてもらっただけでもすごく楽になりました。ありがとうございます、先生」

「こんなことで良いなら何時でも力になるよ」

帰宅した時よりはサッパリした表情の弟子をみて、神父も安心していたようだ。

自室に向う弟子の背を見つめながら十字を切り、おいのりをする。

(主よ、願わくば彼の未来に幸のあらんことを)



それから数日たったある日の事。

幸福荘という一世代前のアパートの一室に珍しく客人が訪れていた。

ふだんは家賃の取立てにくる大家のおばあさん位しか訪れないのに。

「なんじゃ、土産は饅頭だけか・・・まぁお前さんのところの台所事情も訳ありじゃから仕方ないか・・・」

「も、申し訳ありません・・・」

「まぁいいわい・・・マリア!水と茶を出してくれんか」

「イエス・ドクター・カオス」

お客のお土産にいちゃモンをつけるDr.カオス、何も悪くないはずなのに頭を下げて謝っているのが客人であるはずのピート君だ。

マリアは台所で、いいつけどおり水とお茶を用意している。

「で?相談事ってなんじゃ?ワシに金はないのは知っておろう」

カオスはすでに包装を解いてお土産のお饅頭をてにしている。

ぷーんと甘い匂いがただよってくる。

足の踏み場の無いほどの古本に埋もれた部屋に視線をさまよわせていたピートに話しかける。

「いえ、その事ではなくて・・・」

マリアからもらった水を口にしてから自分のの悩みをうちあけはじめた。



「なるほどのぅ・・・まぁそれは仕方の無い事だ、諦めるしかなかろう。

 お前さんはバンパイア・ハーフ、美神令子達は人間だ。どうしても別れがイヤならお前さんの能力で人間を辞めさせればいい」

カオスの言葉にピート君は打ちのめされてしまった。

自分に他人の生を狂わす力が有ることを、そしてその力を使うつもりも無い事も、既に分かりきっていたことだったのに。

しばらくはカオスがお茶をすする音だけが部屋の中に響いていた。

「・・・・・・あなたはどうやってこの悲しみを乗り越えてきたのですか?」

尋ねてみたものの、答えはなんとなくだが予想が出来た。

いつも側らに居るマリアも、人間じゃない。マリアがのカオスの助けになっていることは、普段の依存っぷりから見て取れる。

またカオスは、他人に自分の人格を移植するという行動をなんどもしているので、他の人とのお付き合いが薄れているのだ。

辛うじて濃い絆を作り上げているのは、彼の知識を満たしてくれる物か、もしくははその手助けになる人物に限られているのだ。

Dr.カオスにとっては「ヒト」との別れはすでに日常の出来事の一つなのだ。

「慣れるしかないのう・・・。まぁこれから先も何度も体験する事じゃて、悩んでも仕方ないのじゃ」

呑気に鼻をほじりながら答えるカオスにピート君は少し落胆した。

「まぁあれじゃ、わしも若い頃はよくお前さんと同じ気持ちになったもんじゃよ。なに、お前さんの人生はこれからじゃ、新しい出会いもあるじゃろう。そう考えれば少しは気が楽にはならんかね?」

最後になぐさめのめ言葉を言うと、立ち上がって着替えをはじめた。



日も傾きはじめ、窓から差し込む西日を浴びて、ピートは結構な時間を過ごしたことに気が付く。

アルバイト用の姿になると、カオスはトイレに籠もってしまった。

相談のお礼と、帰宅の挨拶を言うタイミングを逃したピートは、残っていた水を飲み干すとため息をついた。

(僕もまだまだ子供なのかもしれないな・・・)

苦笑いと共に腰を上げて台所に使ったコップを戻しに行こうとする。

台所にはマリアが居る。そうだ。マリアさんにも話を聞いてみよう、とピート君は考えていた。



台所には無言で働くマリアの姿があった。カオスのために甲斐甲斐しく働くその姿は、アンドロイドとその製作者というよりも、ご主人様とそのお世話かかりといったほうがしっくり来る。
実際にマリアは愛情という物を理解しているような行動が時々見て取れた。

ごちそうさまという言葉とともにコップを渡すと、きちんと応えてくれる。

そんな人間臭い仕草にピート君は思わず彼女にも自分の悩みを打ち明けてみたくなり、本日二度目の告白となった。



マリアは相槌を打ったりしないが、悩みを打ち明けるするピート君を真正面から見つめ続けていた。

作り物の瞳だが、そこには暖かい光が宿っているのをピートは感じていた。

そしてその光が、ほんの少しだけ彼女の心情を代弁するように揺らいだ事も。

「ピートさん、マリアには・心の支えになるものが・2つあります。 一つは・ドクター・カオスもう一つは・『人はむなしく・業績こそ・すべて』という言葉です」

珍しく多弁なマリア。

ピート君は静かに耳を傾ける。

「その人が死んでも・その人の残した業績は・なくなりません。マリアには・それだけで十分です」

そう言って、本棚の奥から一冊の本を取り出し、愛しそうに眺める。

乱雑に、時にはちり紙のような扱いを受けるカオスの本とは違い、その推理小説がとても大切に扱われてきた事がピート君にも判った。

「ありがとう、マリア。君に相談してよかったよ」

マリアが別れを悲しみ、その悲しみを乗り越えて強く生きている事に気が付いた。

そして、長く付き合っていける友人が居る事にも気が付いた。

不安はもうどこにも無かった。

「ノープロブレム・ピートさん」

なんと微笑みを忘れた彼女が微笑んでいた。

マリア自身も友人の為に力になれた事がうれしかったようだ。



「今日はありがとうございました。それでは二人とも、お仕事頑張ってください」

「土産さえあれば、また何時でも来るがいい」

「・・・・・・・・・」



アパートの前でお礼と別れの挨拶をするピート。

カオスとマリアに抱き合ってポンポンと互いの肩を叩きあう。

日本では余り馴染みはないが、それはごく普通の、友情を確かめ合うスキンシップ。

だがそれは、馴染みの無い日本人には恋人とのそれと受け止められる。

そこへたまたま通りがかった小笠原エミは、たまたまマリアとピートが抱き合った場面だけを見てしまったのだ。

ピートの事となると、誰かに似ているとまで言われるエミは、

カオスとマリアと別れ、一人歩き出したピートを、まるで人さらいいのようにエミのオフィスに連れ込むのだった。

(すいません、エミさん。やっと貴方の想いに応える事ができそうです)

攫われたというのにピートの苦笑は何処か嬉しそう。

別れの不安によって曖昧な態度を取り続けてきたが、もう迷いは無いのだ。


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