ザ・グレート・展開予測ショー

『GS美神another story』 No:4「平和?な日常風景」


投稿者名:とらいある
投稿日時:(05/ 1/22)

霊力・体力の消耗のしすぎで体が悲鳴を上げていた。
突如頭が持ち上げられ、柔らかい所に置き換えられる。
そして自分を覗き込んできた慈愛に満ちた微笑み。

「ルシオラ・・・」

自然に出たその呟きにルシオラは微笑みで答える。
その笑顔に見惚れながら、自分が膝枕をされている事に気づき頬が熱くなっていった。
ひやり、と首筋に冷たいものが這う感触を感じる。
右手の、白魚の様な指は首筋から顎のラインに沿って這い、左手は頬に添えられていた。
深く、吸い込まれるようなその瞳を、もっと見続けていたいのに瞼が重くなっていく。体に安らぎが満たされていく。
底の無い泥沼に堕ちていく意識。
最後に見たルシオラの瞳はどこか儚げで、憂い気味で。
そして・・・・・・潤んでいた。



意識を完全に手放す寸前に、ルシオラが何か小さく呟いていたのが見えた。

  
              『GS美神another story』

目を覚ました横島が最初に目にしたのは、シミだらけの薄汚れた天井だった。
目覚めたばかりで脳があまり働かない。
だが昨夜のことを思い出し体を調べる。
折れた筈の左腕はなんともなく、痣や擦り傷といったものも見受けられない。
倦怠感以外はいたって健康だった。

(夢・・・だったのか?)

だが鮮明に思い出されるべスパとの攻防戦、夢にしてはリアルすぎた。
まだ寝惚けているからだろうか、と身を起こそうとしたところですぐ近く、
それも数センチも離れていない身近に気配を感じた。
恐る恐る、視線だけを隣に向けると、ビミョ〜に布団が盛り上がっていた。
しかも、一定の間隔で布団は上下している。
この時初めて自分が誰かと同衾していたことに気づいた。

(えっ?ええっ?)

眠気は一気に、どこかへ飛んでいってしまっていた。
という事は全部夢だったのだろうか?
次々と頭の中で逡巡する。
ルシオラへの誓い、べスパとの攻防、ヤったら死ぬとか
ヤったら死ぬとかヤったら死ぬとかヤったら死ぬとか(以下エンドレス)

そこから思考モードへと移行する。

(あれが夢って事は・・・あれからルシオラが俺の部屋に来たって訳で、俺の初めてがルシオラの初めてで
ルシオラが俺の×××を××して@†&¥∋$γ*b∀◆#凵v

思考モードから妄想モードへと強制的に移行していた。
箍が外れ、口から無意識のまま無修正な言葉を出していた・・・
とは言うものの、最後の方は言葉にすらなっていなかったため意味不明なものだったが。
だが傍から見て、時折「ぐふ、ぐふふ」と笑う横島は変質者以外の何者でもない。

一通り妄想し尽して落ち着いた(?)横島は再び隣の膨らみに視線を移した。
完全に布団の中に潜り込んでいるせいか寝顔を拝めない。
一度気になると、もうどうにも止まらない。
可愛い(絶対!)寝顔を無性に見たくなってきた。
欲望に忠実な横島は嬉々として布団を捲る。
それと共に女の子の甘酸っぱいような良い香りが鼻腔を衝いた。

布団を捲るとそこには


自分の枕を抱きかかえたまま


涎を垂らし幸せそうな顔をしながら寝ている






『パピリオ』がいた。

(・・・・・ゑ?)

それを目にした横島は固まり、目も点になってしまった。

(待て待てまてまてマテ。違うだろう)

必死になって目の前の現実を否定しようとする。

(そうだ、これは夢なんだ。今頃本当の自分は暖かい布団の中にいる筈なんや。その証拠に・・・ほら、
頬を抓ったが痛いぞ。やっぱりこれは夢なんだ!はっはっは)

だが既に混乱していた。無理やり自己完結しようとした所に無情な止めの一撃。

「う〜ん・・・ポチぃ。だ、駄目でちゅよぉ〜・・・むにゃむにゃ」

甘えるような恥ずかしがるような可愛らしい寝言。
横島の中で何かが、大きな音をたてて崩れ落ちた・・・



横島の容態の確認と、日が高くなったにも関わらず未だに寝ているパピリオを起こしにその部屋を訪れたルシオラは

「俺はロリコンやない、俺はロリコンやないやー!間違い、そう間違いなんやー!間違い?・・・嫌ぁー!」

自ら柱に頭を打ち続け、額から血を流している横島の姿と

「駄目でちゅよぉ〜ポチ。パピリオの秘密の蜂蜜勝手に食べちゃ〜・・・・拷問決定でちゅ・・・・」

なにやら不穏な寝言を呟いているパピリオを目にするのだった。


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その後ルシオラはパピリオを起こし横島を落ち着かせ、3人で1Fの居間で食卓を囲んでいた。

「体のほうは異常無い?横島」
「なんか精神的にひどく疲れた」
「だらしがないでちゅね〜」

気遣ってくれるルシオラと、精神的に酷くやつれた横島、そんな姿を見て呆れ果てているパピリオがいた。

「どう?横島、初めて作ってみたんだけど。味のほうは大丈夫?」

そう言って横島が口に運んでいる、底の深い器に入った木の実の浮かんだお粥のようなものに目を向ける。

「ああ、甘塩っぱい味つけが変わっているけどいけるよ」
「ご免ね、人間の食べ物を作るの初めてだったからよく判らなかったのよ」

横島は二人の口にしているものを眺める。ルシオラはマグカップに入ったハーブの浮かんだ砂糖水と落雁のような砂糖菓子。
パピリオは檸檬入り蜂蜜ジュースにメイプルシロップのたっぷりかかったクラッカーである。
見ているだけで口の中が甘くなってきた。

「パピリオの蜂蜜も入っているから美味しい筈でちゅ」

自信満々に言い放つパピリオ。横島のお粥が『甘』塩っぱいのは、そのせいだろう。

「もう、入れないでって言ったのに入れるんだから」
「わたちだってポチには早く元気になってもらいたいからでちゅよ。飼い主として当然でちゅ」

ちょっと不満そうに零すルシオラにパピリオは、さも当然とばかりに言ってのけた。

「昨日の夜怪我したのも事実な訳だけど、なんで俺無傷なの?」

自分が抱いている一番の疑問を横島はぶつけた。
いくら怪我の回復が早いのが自慢とは言え、今回のは異常に早すぎる。

「横島が使おうとしていた文珠、あれを使わせてもらったわ」
「あー確かに残ってたな何個か。・・・って、文珠のこと知ってんの?」
「はじめ見たときビー玉かと思ったけど、探知鬼にかけたらすぐ答えが出たし。実際に使ってみて証明もできたしね」

ルシオラの目は、珍しい物を見ることができて幸せそうだった。 

「でも、ちゃんとした施設がないからほとんど調べられなかったのよ。どこでどうやって手に入れているのか知らないけど」

何か知らない?と横島に視線で窺う。
どうやら横島自身が文珠を生成出来ることを知らないらしい。
ルシオラにならこっそりと言っても良いものだが、何処で誰が傍耳立てているかわかったものでない。

「俺も上司から預かっていただけだから良く分からない。『数が少ないからよっぽどの事が無い限り使うな』とは言われていたけど」

だから横島はワザと何も知らないフリをした、念のため美神の名も出さないでおいた。
聞いた途端残念そうに顔を顰めるルシオラ、”研究・開発者”肌のルシオラにとって非常に興味深い検体だったに違いない。
心痛むものを感じた横島は・・・

「実はもう一つ聞きたいことがある。大事な話なんだ」
「な、なにかしら?」

いつになくシリアスな顔にルシオラにちょっとドキッとしてしまうが、横島の真面目な表情に気づき居住まいを正す。
パピリオも食べるのを止めじっ、と横島を見つめている。
視線を感じつつ横島は言った。

「俺にこの服に着替えさせてくれたのは誰なんだ?あと下着はどごげばぁ」

最後まで言い終える事無くルシオラのどつきをモロに受ける。
顔を真っ赤にしたルシオラが、食器を運ぶ際使ったお盆で顔面を殴ったからだった。
横島の今の服装は、トレードマークとも言えるGジャン・Gパン・バンダナ姿ではなく、着流しを着ているだけだった。
そして下着は何一つ着けちゃいなかった。

「真面目な顔して何を言うかと思ったら!」
「仕方ないやろー、スースーするんだ実際。あとやっぱ気になんだよ」

叩かれた顔をさすりつつ横島は愚痴をこぼす。
ふぅ、と溜息をついたルシオラは呆れながら質問に答える。

「脱がせたのと着替えさせたのはパピリオが、服はもうボロボロだったから捨てるしかなかったわ。でも下着は洗っといたわよ」
「今着ているその服は、この基地に何枚かあった奴でちゅよ」
「・・・一つ聞いて宜しいでしょうか?何故にハニワ兵を使わなかったのでせうか?」

横島は冷や汗をかきながら尋ねた。
ただ気まずかった雰囲気と罪悪感を払う為に、どつかれる事を前提に言っただけなのだ。
てっきり全てハニワ兵がやってくれたものだと思っていたのだが・・・

「「だって」」

そう言ってルシオラとパピリオは顔を見合わせる。

「この地にそんなに長く滞在の予定なんて無かったから、ハニワ兵は全部逆天号に置いてきたし」
「大事なペットの世話は、飼い主の務めでちゅ」

再度固まってしまった横島。

「あの、それでね・・・」
「ナ、ナンデスカ?ルシオラサン」

頬を赤く染め、どこかモジモジとしているルシオラと、なぜか片言の日本語で答える横島。
途轍もなく嫌な予感がするが拒否するわけにもいかず聞くより他に無い。
どこか躊躇していたルシオラだったが、覚悟を決め横島に言った。

「その、ちゃんと定期的にパンツとかは履き替えてね。その・・・黄ばみとか落とすの・・・大変、だから・・・」

言い終わると可哀想なくらい顔を真っ赤に染め上げ俯くルシオラ。
一方横島は・・・真っ白に燃え尽きていた。
うぐぅの音も出ないとは正にこのことだろう。

そんな微笑ましい(?)光景を、パピリオは不思議そうに、だが嬉しそうに見つめていた。
庭先に掛けられた洗濯物(肌着とパンツ)が柔らかな風を受けて緩やかにはためいていた。


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「ほぉ そんな事がのう」

土偶羅はお茶を啜りながら目の前のべスパを見ていた

「チクる訳じゃないけど、パピリオの奴もその傾向があるから。で、もういいかい?昨日のことは不愉快だからあまり思い出したくもないんだ」

むすー、とした表情のべスパ。
機嫌のよろしくないぺスパを尻目に、報告書作成の為のタイプライターの準備をする土偶羅。

「で、お前さんはどうするのかね?」
「とりあえず約束があるからね。ポチの奴がどう決めるか、それまでは待つさ」

タイプし始めた土偶羅は顔を上げずにべスパに尋ねるが、べスパも顔を横に向けたまま不機嫌そうに呟く。

「ルシオラが『ポチの体が全快してから聞く、それまで待ってくれ』と言っていたからそれまでだね」
「だが余り時間はないぞ?」
「は?どういう意味だい?」

べスパは土偶羅の言う「時間が無い」と言う単語に引っかかった。
土偶羅はタイプを一旦止め、べスパの方に顔を向ける。

「昨夜あれだけ派手にやらかしたんだ、ここは山の上だから音も響いたことだろう。霊波計・魔力計なんかに引っかっている可能性もある。人間共が嗅ぎつける前に、予定より早く出立したほうが良いかもしれん」
「と言う事は少なくとも明日の早朝までには決めさせなきゃいけない、か」

そう言って椅子から立ち上がる。

「ルシオラに現状を伝えてくる。ついでに不審な輩がいないか見回りに行って来るよ」
「こちらから先に手を出すんじゃないぞ、今大切なのは時間だ。見つからないに越したことは無い」
「歯痒いねぇ。ま、分かっているよ。先に攻撃されない限り、こちらから手を出すような愚行はしないさ」

そう言って部屋を出て行った。
後姿を見送っていた土偶羅は、小さく溜息をつくと再びタイプライターに向き直った。







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どーも『とらいある』です。ほぼ二週間ぶりですね、果たして覚えている方がいらっしゃるのでしょうか?
色んなトラブルに同時に巻き込まれてしまいこの有様です、申し訳ないです。
まぁ、なんとか解決しましたので、以前みたく3〜4日に一回のUPに務めていきたい所存です。

ですから、その・・・なんというか・・・見捨てないでください(懇願)

 
追記・・・皆さん、PCのデータのバックアップは確実・お早めに・・・ぐふぅ

  

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