ザ・グレート・展開予測ショー

まごころを君に―3


投稿者名:ゆうすけ
投稿日時:(05/ 1/20)


まごころを君に―3

【7】
それから程無くして、須狩とカミュが銃を構えながら4人のいる小屋に現れた。
「うわ、なにこれ…」
床には血で良く人相が把握できない男と、喉と言うより首を両手で押さえて悶えている少女が。
そしてその先には椅子に拘束された横島とルシオラがなにかのクスリでも打たれたかの様なトリップ振りを醸し出していた。
4人の現状に唖然とする須狩。
カミュは銃を納めると平素な面持ちで横たわっている男の脈を計り生きている事を確認すると、シロに歩み寄り症状を窺う。
「はっはっはっはっはっはっ!!!!!!!」
瞳は虚ろだが大きく見開かれた眼と異常な呼吸数にカミュは眉頭を寄せた。
「これは、過呼吸症ですね」
「過呼吸症?」
近隣にその症状を持った人がいない限り、余り聞く事の無いその症名に思わず聞き返す須狩。
「ええ。周りに気配は無いようですし、社長、すいませんがトランクの中に薬が一通り入っている箱があるので取って来て下さい」
わかったと一言残し、須狩は部屋を出た。こう言った警護態勢になった場合、須狩は指揮権を警護役に一任している。
薬箱が届き中に入っている精神安定剤をシロに打つ。
するとシロの呼吸数は次第に落ち着き、ぐったりと横たわった。
「さて、この二人をどうしようかしらね」
二人は次にトんでいる横島とルシオラの前に立ち、呆れた表情で腕を組む。
薬品系の専門家である須狩には彼等がなにかしら薬品を投与されてない事は容易にわかった。
それは長年こう言った仕事をしているカミュにも同じことだった。
「ほら、起きてください」
「戻ってこーい」
彼等は軽く二人の頬をはたく。
「ふへへへぇ〜♪まてまてぇ〜〜♪」
「うふふ♪つかまえてごらんなさぁ〜い♪」
しかし効果は薄かった。未だにお花畑で追いかけっこをしている。
「とっとと正気に戻らんか、このバカップル!」
余りにアホな寝言を漏らした二人に痺れを切らした須狩は、一瞬美神を思わせる台詞を吐き横島の頬を思いっきりはねた。
「アダッ!!あれ、ここは?」
「キャッ!いったーい!?」
横島に連られてルシオラも目を覚ます。
「…」
横島が自分達に対して大声を上げているのをよそに、ルシオラが反応した事に須狩は顔を顰めた。
「今手錠を外しますね」
カミュは先程の男から鍵を奪い、二人の後ろに回る。
「おいカミュ!お前がカミュならあいつは誰なんだよ!」
「そうよ!それより二人は一体どうなったの!?あの人はまだ生きてるの!?シロちゃんは一体どうなってんの!?」
カミュは全部外してから説明します、と軽く受け答えしながら手早く手錠を外していく。
全部を外し終えると彼はスーツからハンカチを取り出し、三度男に近づいていく。
「良く見てください」
男の顔から首の辺りまでべっとりついた血をハンカチで拭うと、カミュは男の顎の付け根辺りの皮を掴み、力を入れて引っ張た。
カミュと瓜二つだった男の顔は見る見る伸びて歪んでいき、大きく裂けた。
中からはイタリア系の角張った顔をした男が出てきた。
「ザンス製の変化マスクです」
横島は目を丸くしながら頷く。
「でもなんでこの偽者がオレ達の予定やら何やらを知ってたんだ?」
この質問に須狩が横島にクズ鉄のような物を差し出した。
「これが私の部屋の至る所に隠されてたわ」
「これは…」
横島はそれを受け取りまじまじと見つめる。
「あなたもあの美神の所で働いてたんならコレが何かわかるでしょう?盗聴器よ」
語気を荒くしながら須狩は彼から盗聴器を取り上げると床に叩きつけ、踏み潰した。
「じゃあ、この人は一体なんなの?」
「恐らく企業スパイでしょうね」
そう言うとカミュは淡々と外した手錠を男の両手足にはめていく。
「!シロは!?」
横島ははっとしてシロの方に振り向く。
「ああ、その子なら過呼吸症だったんで応急処置ですが安定剤を打っておきました」
「かこきゅうしょう?」
聞き慣れない言葉に横島は不安な表情を浮べた。
「それについては後でお話します。見たところ怪我はありませんでしたよ」
カミュの言葉に横島の不安が少し紛れた。
「ところでこれからどうするんですか?この人を同行させるわけには行かないんでしょ?」
「とりあえず社から人をよこすわ。それで私はこいつを社でこいつに尋問かけるから、車がきしだいあなた達はカミュと空港に向かって。いい?」
「ありがとうございます」










【8】
横島達は無事空港に辿り着き、イギリスへと出発する事が出来た。
飛行機に乗る際、カミュに必ず一週間で戻ってくるようにと散々二人は言い聞かされた。
本物はマメで繊細な人物らしい。横島の対優男センサーの針が振り切れた。


飛行機が滑走路を走っている時、横島は道中でカミュが言っていた事を思い出していた。

『過呼吸症と言うのは文字通り呼吸をし過ぎてしまう症状でして、主な原因は心理的要因…つまり心に

傷を負っているからとされています』

『…その子もGSですよね?しかも体つきからして体術系…。早い所治療した良いです』

『仕事中に発作なんか起こしたら、その子確実に死にます』

『昔の仕事の同僚でいたんですよ。…ええ、私もGSでした』

『酷いもんでした…。恐怖と息苦しさが激しく入り混じった顔をして、獣のような悲鳴を上げながら這

いずって逃げ回ってた。…あれは、見るに見かねますよ…』

彼の話をシロに照らし合わせる。横島は脳内に浮かんだ物にゾクリとした。

―――なにがあったか聞こう…

向こうの状況把握もしなくてはならない。横島達にとってシロの話を聞くのは今が絶好の機会だった。
「なあ、シロ」
「へ?」
高速で過ぎ去っていく外の景色を楽しんでいたシロはきょとんと振り返った。












「なにがあったんだ?」














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