ザ・グレート・展開予測ショー

吟詠公爵と文珠使い2


投稿者名:アース
投稿日時:(05/ 1/19)

(魔神ゴモリー・・・・)
横島は、頭の中でそれだけを反芻していた。彼とてアシュタロスを知る一人。あの桁外れの強さと存在感は一生忘れることがないだろう。そのアシュタロスの同族が目の前にいる。
「魔族のお偉いさんが、俺に何の用だ。俺は煩悩が服を着て歩いてるような貧乏学生だぜ」冗談めかして言うが、その声から動揺は隠せなかった。

「人類唯一の文珠使いにして、アシュタロスを出し抜いた男と言われて興味を抱かんわけがなかろう。お主抜きではアシュタロスは倒せなかった。他の者の代わりはいても、お主の代わりはおらぬ。そういうことだ」そこまで言うと魔神は言葉を切って目の前の『文珠使い』を見据える。

「こういう場合、用件に察しはつく、というか殺気をビリビリ出してちゃ丸わかりだな」
つまり、目の前の魔神は自分と戦えと言っているのだ。
確かにこの状況を好むマザコンバトルマニアもいるだろう。
「そちらの都合も考えずのこと。受ける受けないの選択権はそちらにある。受けてくれるなら、隠された財宝の在り処や男女の愛を知る方法を教えよう。断るならすぐに現実世界へ送り返そう」

文字通り悪魔の誘惑を仕掛けてくる。

「俺が負けたら・・・・?」

「お主の持ち物のいくつかを貰おう。命までは取らん」


(男女の愛を知る・・・・美神さんを、いや、しかし・・・・)
実にわかりやすい。というかしっかり悪魔の誘いに乗っていた。

「何を考えているか、容易に想像がつくが、決闘受諾と見てよいな?」それは疑問では無く確認の響き。

「ああ、かかって来い」横島は、思考を戦闘に素早く切り替えた。


        《悠久の砂漠への招待》
魔神が指を一振りすると、周りの風景がさらに一変する。古戦場跡から無限の砂の空間 砂漠へと

「成程、上位の神魔にとってこの位朝飯前ってわけか」ハヌマンの修行空間を体験した横島にとって驚くには値しない。

「その通り、この空間では周りに迷惑はかからん。思い切り強力な文珠を使うがいい。ちなみに暑くはなかろう? 異界を砂漠にしたのは単に気分の問題だ」
ゴモリーはそう言いながら、虚空から三叉の槍を取り出す。

「では、いくぞ」その言葉と同時に、ゴモリーの姿と殺気が掻き消える。さっきまでの存在感が、突然、消失したことで横島の頭が、一瞬真っ白になった。


        ガキリという金属音。
反射的に出した霊波刀と槍が激突する。槍の攻撃を防げたのは全くの偶然。一歩
遅ければ、勝負は決まっていただろう。
「ほう、これを受けきるか。もっとも、この程度できなければメドーサは倒せまい。スケベなだけで無いお主の本質を見せてみろ」
最初にぶつかった霊波刀の部分に連突きを繰り出す。一瞬で霊波刀が砕け、槍の穂先が横島の左肩を薙ぐ。

「ぐうっ・・・」左肩から血が滲むが、距離を取るため『爆』の文珠を投げつける。

爆炎と砂埃が上がる。しかし、これも時間稼ぎ程度。この短い時間で対策を考えつかねばならない。相手は魔神、それをさし引いても槍の腕は寒気がする。
無軌道に暴れまわる魔狼フェンリルとも、知略で攻めてくるアシュタロスとも違う。

砂埃が静まるが、魔神の姿が無い。何処だ。

バサリと羽ばたく音。自分の影に何者かの影が覆いかぶさった。
慌てて横に跳ぶ。だが、それすら読んでいたように、槍が地面に着く直前、突然軌道を変え槍の穂先が横薙ぎにたたき付けられる。右腕に激痛が走る。

「げふっ」(読まれてたのか、しかも向こうは本気を出してねえ)口の中に苦い鉄の味。
混乱した頭、傷ついた体でなんとか槍の追撃を捌く。だが、いくつかは捌けずに当たってしまう。《栄光の手》で槍を掴むが、あっさりとゴモリーは槍を手放した。


(何故、武器を捨てる?)思考出来たのは、ほんの一瞬だった。魔神の姿が沈む。
    足払いをかけられた。地面を転がって逃げようとするが、槍の柄で胸を押さえつけられた。槍からゴモリーの魔力が流し込まれ、まるで標本にされた蝶のように動きが硬直する。息は出来るのに指一本動かせない。

「チェックメイトだ、文珠使い」魔神が、口付けが出来るほどの距離に顔を近づけながら、宣告した。目の前には息を飲むほど美しい女の顔。切れ長の瞳と薄茶色の艶やかな髪が目に焼きついた。彼女は、横島のバンダナに手を掛け、そのまま剥ぎ取り、さらに髪をその細い指で梳いた。

「こうして見ると顔立ちは整っているし、髪も綺麗だ。魂の強さも申し分ない。なぜ人間の女は見向きもしない」ゴモリーの指摘はもっともだが、横島の魅力に気づいている女(元幽霊、人狼、妖狐、竜神、戦乙女、アパートの隣人)は多い。だが、横島と女性陣双方の問題で歩み寄れないだけだった。

「何を言ってるんだ。お前」横島は、右腕と左肩の激痛、たたきつけられた衝撃、そして何より女性に押し倒されたような体勢(というかそのもの)とバンダナを剥ぎ取られたせいでそれだけしか言えない。自分の顔が真っ赤なのははっきりわかる。

「何だ。女性を見境無く口説くという評判の割には初心だな」吟詠公爵はその名の通り詠うように囁く。

横島にしてみれば、相手は魔神。勝てるとは思っていなかったし、この魔神は自分を殺す気が無いこともわかっていた。むしろ美女に押し倒されている状況が、彼を動揺させていた。

「それにしても、予想以上の魂の強さだ。ここまで手ごたえのある相手は殆どいなかった。どちらにしても、勝負は私の勝ちだ。賞品としてこのバンダナは貰っていこう。これは、お主にとって体の一部。依存は無かろう?」

「・・・好きにしろ・・・」もとより敗者である横島に選択権は無いし、力関係は歴然としている。 さらに、こんな光景を美神除霊事務所の面々に見られたら、想像するだに恐ろしかった。(霊波刀、狐火、神通鞭、悪霊の盆踊りのフルコース)

現実世界へ戻って来た。
「そんなに時間は経ってないな」横島はホットしたように呟いた。
「ほう、私と一緒にいるのはそんなに嫌か?」ゴモリーの飄々とした声。だが、それには一抹の寂しさがあった。そして彼女の手にはしっかりとバンダナが・・・
なかなか楽しめた。これほど自分が惹きつけられる人間というのも珍しい。

「また会おう。近いうちに」そう言って彼女は姿を消した。まるで一陣の風のように・・・


後書き 

初の二次創作でオリキャラを派手に出した私。この話を書いた切っ掛けは「横島が女性に押し倒されるシュチュエーション」からでした。かといって普通の原作キャラじゃキャラを壊さない限り、そんなことは出来ないだろうし、どうせなら他の女性キャラが出来なかった行為を・・・ということで魔神ゴモリーの登場です。「バンダナを剥ぎ取る」という行為は「キス」以上のインパクトでは無いでしょうか?
(私だけか)


ついでにキャラ紹介を・・・

ゴモリー

ソロモンの魔神の一柱。別名は吟詠公爵、実力的にはハヌマンと良い勝負。霊波出力はアシュタロスのほぼ半分です。彼女は、私の女性の理想像だったりします。飄々として掴みどころが無く、底知れない女性。暇があったら、というか私に余裕があったら続きを書くかも・・・(その時はより良いものを) 


穴だらけの拙作を読んでくれた方、ありがとうございます。

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