ザ・グレート・展開予測ショー

愛の歌 その2


投稿者名:tara
投稿日時:(05/ 1/12)

往かないで                  砕いたのはお前だ

消えないで                  殺したのはお前だ

俺を愛してくれないか             愛する資格もないくせに?

今度こそ守ってみせるから           あの子は傍にいないのに?

あの可憐な少女に               醜いお前が   

あの聡明な少女に               愚鈍なお前が






どろどろに愛されたい            『愛されるわけがない』








………………
…………   
……

涙が止まらない。
優しい彼も泣いている。
ずっとその言葉を待っていた。
頭の中は真っ白。体中の細胞があわ立つ。
愛される喜びに打ち震える。   ……『シタヲ イレナキャ』

「ンッ、…ちゅ、チュッ、んんん、はぁッ!」

自分で舌を入れておきながら戸惑う。私がこんなことするなんて。
思わず口を離す。
微かに声が聞こえる。   ……『ナニシテルノ? ツヅケナサイ』

「ん、愛してるぞ、タマモ」

ソレが自分の本能だと気づき、慄く。
と、同時に怒りが込み上げてくるのを抑えられない。
私の心は私のもの。


正社員になったことをはにかみながら報告された時嬉しかったのは、恋人の実力が認められたと思ったから。
……『アンテイガ ホシイダケ』

成長する彼を見て胸を撫で下ろしたのは、その力が彼自身を守るだろうから。
……『アナタノ ミヲ デショウ』

夕焼けの中で聞いた彼の懺悔に涙が止まらなかったのは、彼の魂の在り方が余りに美しかったから。
……『アンド ノ ナミダ。 モウ カレノ ミリョクヲ シルモノハ イナイ』


違う違う違う違う、違う違う違う違う、ちがう、チガウッッッッッッッッ!!!!!!


『カレノ コトバヲ フクショウ ナサイナ。 ソウシタラ アナタハ モウ………』


ヨコシマ。助けて。


「はぁ…私も、愛して…………愛して……『アナタハ モウ  アンゼンヨ?』……ッ…」



……何で今になって出てくるの!?何で私のクセに私の邪魔をするのッ!?

……『ワタシノ クセニ ワタシガ ジャマ? カンチガイ シナイデ。 ソレハ コッチノ セリフ。 アナタハ タンニ…』


言わないでッッ
  

……単に?



……『ソウイウフウニ デキテルノ』……







絶望。


「ど、どうした?」

「………………」

彼が不安げな顔で伺ってくる。


そんな顔しないで欲しい。悪いのは全て私。この時代に生まれてきたことが間違いだった。
ごめんなさい。だって知らなかったのよ。アンタみたいなのが居るなんて。


「……何でもないわ。ねぇ、ヨコシマ」

告げなくては。今ならまだ間に合う。……いや、もう遅いか。彼は愛してるといってくれた。


優しい優しいヨコシマ。彼は決して私を裏切らないだろう。嫌ってくれないだろう。
私のおぞましい本性を知って尚、抱きしめて「どうでもいいよ」と笑い飛ばすに違いない。
それが何より幸福で、悲しい。それに付け込んで彼の愛を貪ろうとする自分が赦せない。


「おう」


彼の心を私のニセモノで汚したくない。
告げなくては。ごくあっさりと。泣いちゃわないように。


「……結婚の話、無しにして」

……告げた。

「おう。………おお?」

ポカン…とするヨコシマ。


間抜けっぽい顔。一番大好きな彼の顔。
きっと、もう二度と見ることは出来ない。
まずい、涙が込み上げてくる。


「じゃ、おやすみ」




そそくさと布団に滑り込む。


頭から掛け布団を被り目を閉じて耳を塞いだ。

涙が止まらない。でもこの涙だってきっとニセモノだ。

床が揺れてる。彼が馬鹿なことやって私の気を引こうとしているのだろう。

胸が温かくなる。でもこの熱だってきっとニセモノだ。

だったらニセモノを作り出す私もきっとニセモノだ。

信じられることは唯一つ。自分の気持ちが信じられなくて彼を傷つけた。

自分が傷つきたくなくて彼を傷つけた。


(流石は白面金毛九尾の妖孤。自己防衛ってやつね)
自分を嘲る。


音を断った暗闇の中で自己否定に耽っていくうちに彼女は自分が石になったような心地がした。



…………
………
……

気づけば空が白んでいた。
タマモはのそっと起き上がり、背を向けて寝ているヨコシマを数瞬見つめる。
涙は出尽くした、と思っていたがやはり零れる。
彼女は口を強く結んで飛び出した。
行き先は決まっている。








横島はひたすら山中を駆けていた。
『捜』と『索』の文殊で流れてきた映像は二人が始めて出会ったあの山である。

(よりにもよってなんでここに来る!?どうするつもりだ!?)

ここに来るまでの道中ずっと思い返していた。令子の言葉。

(「そもそも金毛九尾っていうのは自己防衛のために時の権力者に近づく妖怪なのね?」)

嫌な予感がする。あいつは真摯なやつだから。

2個の文殊の効果が持続しているにも関わらずタマモの霊波を掴みきれない。
つまり相当弱っているのだろう。

一度立ち止まりポケットをまさぐる。
新たに『探』と『知』の二つの文殊を発動した。
更に鮮明なイメージを得る。

彼はけっつまずきながらも走り出す。

「近いッ!タマモぉッ!!」










『……イツマデ ガンバルノ?』

自分の内からの声に少女は答える。

「……ッうるさいッッ」

『…………』

タマモは殺生石に戻るつもりでここに還ってきた。
しかし思えば彼には文殊があるのだ。おそらく既に近くまできているだろう。
そんな当然のことを失念するほど昨日の彼女は乱れていた。
ただの石っころになるところを彼にだけは絶対見られたくない。

「早く石にならなきゃ、早く、早くッ! 



 ッッッッッッ!!何でッ!?」

殺生石になるのは簡単。極限まで霊圧を下げるだけ。
霊圧の抑止は行為の術ではあるが技術も知識も備えたタマモにはさほど難しくない。
なのに、それが出来ない。
とういうのも昨日からタマモの霊圧が上がり続けているからだ。

「怖い、怖いよヨコシマぁ……」




それも尋常ではない速度で。









taraです。
すいません。まだ終わらないようです。

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