ザ・グレート・展開予測ショー

アナタがここにいる理由(絶対可憐チルドレン)


投稿者名:偽バルタン
投稿日時:(05/ 1/12)

「み、皆本のばかぁぁぁッ!」


あぁ…まただ…またやっちまった…
当たり前だけど、そう気づいた時にはもう手遅れ…
あたしはいっつもそうなのだ…


「ごはぁッ!!?」


ごぎゃんッ
あたしのテレキネシスでオフィスの壁に叩きつけられる皆本…
とっさに手加減したつもりだったんだけど…最近またパワーが上がってきてるみたいでどうも巧く調整できない。
…いや…違うな…ついついカッとなって口よりも手の方が…ううん、あたしの場合は“チカラ”の方か…が先に出てちまう、この単純な性格の方がモンダイか…

…葵と紫穂が、じと〜っとした目つきであたしのコトを見ている…
何だよ!?少し前までは、お前らだって一緒になってやってたじゃないか!?

何だか物凄く居心地悪い…気分が悪い!
壁にめり込んだ皆本をほっといて、あたしは部屋から飛び出した。




アナタがここにいる理由(絶対可憐チルドレン)




原因はいつもの通り…皆本があたし達の事子ども扱いしたのにカッとなっちゃったんだ…
違うのにね…
皆本の“それ“は、他の連中みたく、あたし等のコト『ガキ』だからって軽く見てるからじゃなくて…
『子ども』なんだからって、ホントに心配してくれてるからこそのものなんだって…ホントは解ってるんだ…
…でもそれってやっぱり面白くないよな?


「…ゴメン…皆本…」
「あ〜…もぅいいよ…でも今度からは気をつけてくれ…」


軽い打ち身と打撲…今回は骨折とかは無かったみたい…ホッとした。
医務室にはふたりきり…診察が終って、ベッドの縁に腰掛けた皆本は…今日もあんまり叱らないで、あたしのことを許してくれた。

叱られずにホッとしている…でも同じくらいガッカリもしてる…
『叱るだけ無駄だって思われてるのかも』って…『見捨てられたのかな?』って…不安になってる。
おかしいよね?
…きっとそれは、前から…ずっと気になって仕方の無いコトが原因なんだと思う…
…なんで…皆本は…


「…なぁ…皆本…
お前…なんでまだ“ここ”に居るんだ?」


思わず、口に出してしまう…


「…は?」


アゼンとする皆本…あたしが何を言ってるのか解らなかったみたいだ。

そう…なんで皆本は…まだ“ここ”にいるんだろ?

いつもいつも…
あたしのサイコキネシスでツブされて…
葵のテレポートで飛ばされて…
紫穂のサイコメトリーでアタマん中覗かれて…
局長から叱られて、周りの連中からは白い目で見られて…
シゴトでもオフでも…言うコトなんか聞きゃしない、あたし等のワガママに散々振り回されて…
…あたしだって…一応は、メーワクかけてんなぁ…って自覚ぐらいあるんだ…

…でも…そんなになっても…皆本のヤツは“ここ“に居る…
あたし達と…一緒に居てくれる…


「…皆本ってさ…確か…何かスゴイ大学とか出てるんだろ?
天才なんだってな?…物凄くアタマいいんだよな?
こんな…バベルなんかじゃなくてもっと楽でイイとこで…どっかの研究室とか…企業みたいなトコで働こうとか思わないのか?
皆本には…“行ける場所”がいっぱいあるんじゃないのか?」


バベルでしかやっていけない…
…“ここ”しかないあたしらなんかと違って…さ…


「…なのに…なんでだよ?
…その…あたし達…オマエにいっぱいいっぱいヒドイ事して…メーワクかけて…オマエのコト困らせてんのに…どーして?
…なんでまだ“ここ“なんかに居るんだよ?…んなキツいトコ、さっさとやめちまおう…とか思わねーのか?」


…それはホントに不思議なコトだ。


「…まさか局長になんか弱み握られてるとか?」
「違うよ…」


苦笑いを浮かべる皆本…

…皆本が“ここ”から…あたし等の前から居なくなってしまう…其れは本当に怖いコトで、本当にイヤなコトだ。
…あたしは、今では素直にそれを認めるコトが出来る。
そして…もし本当にそうなってしまったとしても、あたし等に皆本を引き止める資格なんか無いってコトも解ってる…
当然だよな…今まで皆本にあたし等がしてきたことを思えば…何を今更ってヤツだ。
…ホントに後悔しているんだ…

葵も紫穂も…ちゃんとそのコト解って認めてる…だから、皆本への態度が前とは全然違うんだ。
…でも、それでも尚、あたしはどーすることも出来なくて…前と変らず皆本にヒドイコトしちまうんだ…
今日だってそうだ…カッとして、ついつい“チカラ”の方が先に出ちまって…
…やっちまった後で、後悔して…ヘコんで…自己嫌悪して…


「………」
「なぁ、薫…君は…僕なんか居ない方が良かったかい?
君たちには…僕なんか必要ない?」


優しく…でもどっか寂しげに言う皆本…


「ち…違うッ!…そんなコト無い!ゼッタイ無い!!」
「……」
「…そん…な…コト…無いもん…」


あぁ、チクショウまただ!なんでもっとよく考えてから言わねーんだあたしは!!
今の言い方じゃあ、あたしが『皆本なんか居ない方がいい』って『オマエなんか要らない』って…そう言ってるみてーに聞こえてもおかしくないじゃないか!!
…皆本のこと…傷つけちまったかも知れないじゃないか…


「…たださ…ただ…ずっと気になってたんだよ…」
「そっか…」


気分はサイアク…あたしは、また皆本にヒドイコトをしてしまったんだろうか?


「「………」」


気まずい沈黙。
皆本は何か考えてるみたいだった…
あたしの方はというと…申し訳なくて…でも逃げ出すコトも出来なくて…悶々とイヤなキモチを抱えたまんま、皆本の前で縮こまってるだけ…ミジメだ…
ホント、サイアク…何だか泣きたくなってきた…
…と…


「あのね薫…“ここ”に来れたから今の僕が居るんだ。
バベルに…や、違うか…君たちと出逢えたからこそ、今の僕が居る…っていうのかな?」
「…よく…わかんないよ…」
「ん〜…ゴメン…何か巧く言えないんだけどさ…」
「…聞かせて…くれる?」


あたしは、ベッドに腰掛けた皆本に近づいて、その膝の上にちょこんと座った…紫穂とかが時々してもらってるみたいに。
…こーゆーのあたしのキャラじゃ無いってのは解ってるんだけどさ…何となくそうしたくなったから。
皆本は、苦笑いしながらも、何も言わずにあたしを受け入れてくれた。
下ろそうとはしないで…優しく笑いながらをぽんぽんと背中を叩いてくれた…
何か…とってもキモチイイな…
そのまま、皆本はどっか遠くを見るような目で、話し始めた。


「元々はね…ESPの研究が目的だった…柏木さんに誘われてね?
はは…いやぁ…失敗したと思ったね…最初は。
研究に来た筈が…やらされたのは子ども等のお守り…それも飛びっきりのはねっかえりが三人も…
…君たちには、ほんと〜に手を焼かされてるしね?」
「…ぶー」


…う…ムカつくけど…ホントのコトだから言い返せない…
でもやっぱり悔しいから、思いっきりむくれてやった。


「…でもね…違った…失敗なんかじゃなかった。
“ここ”にきて…色んなコトを見て…色んなコトを知って…色んなヒトに会って…ま、中には犯罪者とかテロリストとかもいたんだけどさ…」


…皆本はとてもいい眼をしていた…“輝いてる”っていうのかな?


「薫や葵や紫穂と逢えて…こーして一緒に居られて…ん〜…なんて言いうのかな…“世界が開けた“?
…“ここ”に来なかったら…君たちと出会えてなかったら…僕は…きっと“変わる“コトが出来なかった…こんな…今みたいな経験は絶対に出来なかった。」
「ふぅん…」
「…ま、確かに?
君たちには相変わらず苦労させられっぱなしで…酷い目にもあわされる…
正直言うと…キツイなぁ〜とは思うんだけど…
けどね…ホント良かったなぁって思えるんだ…“ここ“にこれた事…君たちと出逢えた事…
“ここ”に居るからこそ、僕は今の僕になれたっていうか…」


それにね?
そういって、皆本は膝上のあたしの方に顔を向けた…顔が近いよ…
とっても暖かな眼差し…優しげな微笑…胸がドキッとした…ほっぺたもかぁっと熱くなる。
…コイツってば、普段は何か情けない、頼りないイメージの方が強いから…たま〜にこんな“イイ顔”すると、とんでもなく“キまって”…カッコよく見えるんだよなぁ…(赤)

くしゃくしゃ…
オマケにアタマまで撫でてくるんだもん…
いつもだったらガキ扱いされてるみたいでなんか気に喰わないんだけど、今は皆本の掌の温もりがとってもキモチ良かったりして…
まいったな…胸のドキドキがおさまらないよ…アタマがなんだかぽわぽわとする。


「それにね…凄くキモチが良いんだ。
君たちとこーやって一緒に居るのって…とても落ち着くって言うか…居心地が良いって言うのかな?
願わくば…これからもずっとこうやって君たちと一緒に…なーんて思えたりしてね…」
「…ふぅん…」
「だから…ま、なんだ…“ここ”を去るつもりなんか更々無いんだ…
僕は…これからも君たちの傍に居るよ…」
「……そっかぁ…」


…だらしなく顔がにやけそうになってしまうのを、あたしは必死にがまんした。
皆本が居なくならない事に安心する。
皆本が…あたし(…だけでなく葵と紫穂もだけど)と一緒に居るのが居心地がイイって…ずっと一緒に…って、傍に居てくれるって…そー言ってくれたのが、とっても嬉しい。

さっきまでのやなキモチは…もうどっかに行ってしまった。
…あ〜あ…我ながら単純だよなぁ…


「あ〜…ところで薫…今僕が言ったコト、皆にはナイショな?」
「なんで?」
「や…そりゃだって…は、恥しいだろう?」
「…恥しい…ねぇ?
…でも…あたしに“だけ”は話してくれたんだ?その“恥しい”コト…」


…他の誰でも無いこのあたし“だけ”に…そー思ったら…
あ、ダメだ…顔がにやけるの、どーしてもおさえらんない。


「え…ぁ…そ、それはだな?その場の勢いとーか、言いはじめたら引込みつかなくなったとゆーか…
えぇい!兎に角皆にはナイショだ!黙ってるコト!!いいね?」


顔を真っ赤にして怒鳴る皆本…でも全然怖く無い。
柄にも無い事喋っちゃって、照れてるんだ…なんかカワイイな♪

「え〜…どうしよっかなぁ♪」
「んな!そ、それはないだろ薫!?」
「なんか奢ってくれたら考えてあげてもイイけどな〜♪」


勿論、だれにも言ったりなんかしないさ…
だって、他の皆が知らない皆本とあたしだけの秘密ってコトなんだぜ?これ…
それって、なんだかイイと思わないか?

そのあと、葵と紫穂が“ジャマしに来る”までのしばらくの間、あたしは皆本といっぱいいっぱいおしゃべりした。

…勿論、皆本の膝に乗ったままな♪





終り

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